2020年3月16日

本日、経済産業省は、電気事業法第27条第1項及び第27条の29において準用する同項の規定に基づき、関西電力株式会社に対して業務改善命令を発出しました。

1.概要

昨年9月27日、関西電力株式会社の役職員が、福井県高浜町の森山元助役から多額の金品を受領していたという事案に関して、電気事業法第106条第3項の規定に基づき、本件に関する事実関係、原因究明を行った結果及び他の類似の事案の有無について、書面で報告するよう求めました。

3月14日、経済産業省は、同社から書面での回答を受領し、その内容を精査した結果、本日、電気事業法第27条第1項及び第27条の29において準用する同項の規定に基づき、同社に対して業務改善命令を発出しました。

2.処分の理由

電気事業法第106条第3項の規定に基づき、令和元年9月27日付け「電気事業法第106条第3項の規定に基づく報告徴収について」(20190927資第12号)により、関西電力に対して求めた報告について、その内容(添付資料である令和元年10月9日付けで同社が設置した第三者委員会の調査報告書の内容を含む。)を検証したところ、以下の問題が認められた。

(1)同社の発電事業関係及び一般送配電事業関係の役職員による多額の金品受領

  •  コンプライアンス意識が欠如していたこと等により、同社の役職員が、長年にわたり、福井県高浜町の森山元助役(以下「元助役」という。)や元助役と一定の関係を有すると認められた企業(以下単に「本件取引先等」という。)から、多額の金品を受領していた事実が認められた。

(2)本件取引先等への不適切な発注行為等

  •  同社及び同社の子会社において、元助役の要求に応じる形で、本件取引先等に対して工事等を発注することを約束し、当該約束に従い発注を行ったり、同社から元助役に対して、本件取引先等が関与する工事概算額等の現在又は将来の工事に関する情報を事前に提供したりするなど、発注前の情報提供に係る明確なルールが定められておらず、発注プロセスの適切性や透明性を歪める行為が行われていた。

  •  必ずしも合理的な理由なく特命発注がなされ競争発注を経ていないような事例が認められた。

  •  同社から高浜町への協力金の拠出に当たり、本来高浜町の口座に入金されるべき現金が同町の町長名義の口座に入金され、その使途が同町長らにより独断で決定されたとして、住民から疑義が呈される事案が存在した。

(3)ガバナンスの脆弱性

  •  経営陣の一部が、本件問題を認識しながら、長年何らの対策も取らず、税務調査を契機として当該問題が発覚するまで漫然と放置し続けていたという責任感及び決断力の深刻な欠如がみられた。

  •  社内調査報告書(平成30年9月)において、役職員の多額の金品受領が明らかになりながら、経営陣の判断により、調査結果を対外的に公表せず、取締役会への報告等を行わなかった。また、同報告書について認識した監査役も、取締役会への報告を行わなかった。

  •  原子力事業本部のトップである事業本部長や歴代の幹部が本件問題を把握していたにもかかわらず、脈々と問題行為を引き継ぎ、当該問題を是正することができないなど、原子力事業本部の閉鎖性及び同部に対するガバナンスの不足がみられた。

上記は、電気事業という公益事業を担う事業者であって、社会との信頼関係を築いた上で事業を進めていくべき電力会社として不適切な行為であり、電気事業や電気事業制度全般の健全性を貶め、ひいては公共の利益を阻害するおそれがあるものである。

上記点に鑑み、同社の役職員の責任の所在の明確化を行い、法令等遵守体制、工事発注等に係る業務運営体制、経営管理体制等について、抜本的な見直しを早急に図る必要がある。

3.命令の内容

1. 公益事業である電気事業の運営の健全性及び適切性を確保するため、以下の事項を含む問題事案の再発防止のための実効性ある具体的方策(以下「再発防止策」という。)を策定し、及び実施すること。

(1)今回の処分を踏まえた役職員の責任の所在の明確化

(2)健全かつ適切な業務運営に取り組むための法令等遵守体制の抜本的な強化並びに法令等遵守を重視する健全な組織風土の醸成(以下に掲げる事項を含む。)

  • 外部人材を活用した法令等遵守の取組を推進する体制の再構築
  • 公益的な役割を担う企業の役職員としての法令等遵守意識の醸成・徹底のための研修の実施
  • 贈答・接待等に関する社内ルールの十分性の検証、関連規程の整備及び周知徹底
  • 内部通報制度の利用促進、法令等遵守に係る実効的な相談窓口の構築及び不祥事件等に関する報告体制の整備

(3)工事の発注・契約に係る業務の適切性及び透明性を確保するための業務運営体制の確立(以下に掲げる事項を含む。)

  • 工事の発注・契約に係るルールの明確化(特定の者に不透明な形で事前の情報提供をしないこと及び特命発注理由の明確化を含む。)及び工事を実施する部署から独立した調達担当部署による当該ルールの透明な運用
  • 外部人材を活用した発注・契約の審査体制の構築
  • グループ会社を含めた発注・契約の透明化
  • 寄付金・協力金の拠出に係る透明性の向上(個人が他用途に利用することが可能な口座への拠出の禁止、使途の明確化の徹底及び外部人材を活用した拠出状況の審査を含む。)

(4)上記を着実に実行し、定着を図るための新たな経営管理体制の構築(以下に掲げる事項を含む。)

  • 指名委員会等設置会社への移行の検討も含めた外部人材を活用した実効的なガバナンス体制の構築
  • 原子力事業本部に対する実効的なガバナンス体制の構築
  • 監査部門の体制強化及び事務局機能の拡充

2. 1.の再発防止策を実施するに当たっては、当該再発防止策の実効性について、外部人材を活用した審査体制も含めて組織的に検証する体制を構築すること。また、当該再発防止策の実効性が不十分であると認められる場合においては、必要に応じて追加的な改善策を策定し、及び実施すること。

3. 上記1.及び2.に係る業務の改善計画を令和2年3月末までに提出するとともに、必要な取組について株主総会の開催などにより速やかに決定し、及び実行し、その決定及び実行の状況について同年6月末までに報告を行うこと。その後も、経済産業省のフォローアップに誠実に対応すること。

担当

資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課長 吉野
担当者: 石井、稲葉、山岸

電話:03-3501-1511(内線 4731)
03-3501-1746(直通)
03-3501-3675(FAX)