令和2年3月9日

1 3月9日(現地時間同日),インドのニューデリーにおいて,我が方鈴木哲駐ブータン特命全権大使(インドにて兼轄)と先方ヴェツォプ・ナムギャル駐日大使(H.E. Mr.Vetsop Namgyel, Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary of the Kingdom of Bhutan to Japan)(インドにて兼轄)との間で,無償資金協力「第二次賃耕のための農業機械整備計画」及び「廃棄物管理改善計画」に関する交換公文の署名及び書簡の交換が行われました。

2 対象案件の概要

(1)「第二次賃耕のための農業機械整備計画」(供与限度額4億2,700万円)
 ブータンにおいて,農業はGDPの約15.2%を占め,労働人口の57.2%が従事する基幹産業であるが,国の大部分が険しい山岳地帯であることから,耕作可能な面積は限られ,農家一戸あたりの経営面積は小規模であり,主食であるコメの自給率は46.7%に留まります。また,近年,若年人口の都市部への流出により,農村部の労働力不足や高齢化が深刻化しているなど課題に直面しています。
 この計画は,ブータン全土において,賃耕サービスに必要な農業機械(耕耘機,トラクター等)の整備を行うことにより,農家の農業機械へアクセスの改善及び農業生産性の向上並びに食料安全保障の改善を図り,もって同国の持続可能な経済成長に寄与するものです。この協力によりブータンの年間耕作面積が,10,492ha(2018年時点)から,17,008ha(2023年時点)に増加し,また,農業機械サービスによる年間収穫面積が,805ha(2018年時点)から,1,945ha(2023年時点)に増加することが期待されます。加えて,農作業効率化,休耕地の活用促進,農業生産性向上,ブータンにおける食料安全保障の改善と農村部での雇用促進(例:オペレーターの採用等)に貢献することが期待されます。

(2)「廃棄物管理改善計画」(供与限度額:5億900万円)
 ブータンでは,都市化に伴う人口増加や所得水準上昇に伴う生活様式の変化により,廃棄物発生量が増加し,廃棄物処理サービスの充実が急務となっています。しかし,現状では,各市所有のごみ収集車等廃棄物管理機材は,多くが他国から贈与された中古機材であり,老朽化による故障と機材不足が常態化しています。このため,定期的及び計画的なごみ収集がなされない,処分場が適切に管理されないといったサービス低下を引き起こしており,住民の不法投棄の増加や不適正な廃棄物処分が生じ,生活環境の悪化に繋がっています。
 この計画は,ブータンにおいて中核都市に位置づけられ,都市化が進むティンプー,プンツォリン,ゲレフ及びサムドゥプ・ジョンカルの4都市に対して,廃棄物収集・運搬及び最終処分場運営に係る機材(コンテナ,ブルドーザー等)を整備することにより,廃棄物管理能力の向上を図り,もって対象地域の生活環境改善を通じたブータンの都市環境悪化に対する脆弱性の軽減に寄与するものです。この協力により,対象4都市において,一日当たりの廃棄物収集量が2019年時点から2024年時点にかけて増加する(ティンプー市:52.4トン→68.6トン,プンツォリン市:15.3トン→17.3トン,ゲレフ市:5.4トン→5.8トン,サムドゥプ・ジョンカル市:5.1トン→5.8トン)ことが期待されることに加え,廃棄物の減少等を通じた上記4都市の生活環境が改善すると共に,同4都市の廃棄物管理能力が向上することが期待されます。

[参考]ブータン王国基礎データ
 ブータン王国は,面積38,394万平方キロメートル(日本の九州程の大きさ),人口約75.4万人(2018年,世界銀行),1人当たり国民総所得(GNI)は3,080ドル(2018年,世界銀行)。