農林水産省
〇向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)については次のとおりです。
・野菜類では、いちごの灰色かび病の発生が東海、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。施設内の温湿度管理を適切に行うとともに、発生状況に応じて適期に防除を実施してください。このほか、トマトのコナジラミ類等の発生が多くなると予想されている地域があるので注意してください。
・果樹や茶では、翌作期の病害虫防除を効率的かつ効果的に実施するため、翌春の発生を抑制することが重要です。感染落葉やり病部を除去し、土壌中に埋没するなど、適切に処理してください。また、ハダニ類及びカイガラムシ類の発生が多かった園地では、粗皮削りを行うとともに、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、薬剤防除を的確に実施してください。
国の発生予察情報について
国は都道府県の協力の下、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、有害動植物の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、有害動植物の発生調査結果等を分析し、有害動植物の発生予察情報及び防除対策に係る情報を提供しています。
本予報に掲載している情報の詳細は、都道府県病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
発生予察について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
都道府県病害虫防除所
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html
気象
気象庁の向こう1か月の予報(2月6日付け)では、気温は日本全国で高いと予想されています。また、降水量は北日本日本海側で平年並みか少なく、東日本太平洋側及び西日本では平年並みか多いと予想されています。
気象庁ホームページ
参照URL:http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/001_00.html (外部リンク)
水稲
・昨年、いもち病、もみ枯細菌病、ばか苗病等の種子伝染性病害の発生が多かった地域では、種子消毒を的確に実施し、健全な種子を使用した育苗に努めてください。
特に、いもち病では、一部の薬剤において感受性の低下が見られるので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に効果の高い薬剤を選定し、種子消毒を実施してください。
・縞葉枯病は、ヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病であり、経卵伝染により次世代にも媒介が継続されるため、本虫を対象とした防除を実施することが重要です。近年、発生量が増加傾向にある地域では、冬期間中にイネ科雑草の除去及び再生株(ひこばえ)のすき込みを行い、本虫の越冬量の抑制に努めてください。
また、近年、本ウイルスの保毒虫率が高まっている地域では、育苗箱施用剤による防除の実施についても検討してください。
・スクミリンゴカイ(ジャンボタニシ)は、用水路のほか、ほ場内の土中に潜り込んで越冬します。今冬は12月以降、東・西日本を中心に気温がかなり高く、今後も2月にかけて、北日本から西日本の気温は平年より高いと予想されています。このため、本貝の越冬量が多くなると予想されることから、播種または移植前までの対策として、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に、耕うん等による越冬貝の密度低減や、用水路から水田内への侵入防止対策を実施してください。
なお、耕転機などの農機具に付着した泥とともに、スクミリンゴカイが他のほ場へ拡散する事例が報告されています。農機具の泥はよく落としてから移動させるよう、心がけてください。
野菜・花き
野菜・花きで各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
いちご | アザミウマ類 | 東海 | 四国、南九州 |
アブラムシ類 | 北九州 | 北関東、東海 | |
ハダニ類 | 四国、北九州 | 北関東、東海、中国、南九州 | |
うどんこ病 | 関東、近畿 | ||
灰色かび病 | 東海、四国、北九州 | 中国、南九州 | |
きゅうり | コナジラミ類 | 四国、北九州 | 南九州 |
灰色かび病 | 東海 | 四国、南九州 | |
べと病 | 北関東 | 東海、四国、北九州 | |
たまねぎ | アザミウマ類 | 東海、北九州 | 四国 |
べと病 | 北九州 | 四国 | |
トマト | コナジラミ類 | 北関東、近畿、四国 | 東海、九州 |
疫病 | 四国、南九州 | ||
灰色かび病 | 北関東 | 南関東、東海、四国、九州 | |
葉かび病 | 東海、九州 | ||
なす | 灰色かび病 | 四国 | 東海、九州 |
レタス | 菌核病 | 四国 | 南九州 |
灰色かび病 | 四国 | 南九州 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
いちご
・灰色かび病の発生が、東海、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されてされており、長崎県及び大分県では注意報が発表されています。本病は気温20度前後の多湿条件で発病が助長されることから、換気等により施設内の湿度調節に努めてください。
また、本病は一部の薬剤に対する耐性菌の発生が確認されています。伝染源となるり病部は早期に除去するとともに、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に効果の高い薬剤を選定し、散布むらがないよう的確に散布してください。
・ハダニ類の発生が、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されており、佐賀県及び長崎県では注意報が発表されています。本虫は発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、発生初期をとらえた防除が重要です。ほ場の観察をきめ細かく行い、適期の防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定してください。農薬散布のみならず、天敵による生物的防除等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。
きゅうり
・コナジラミ類の発生が、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルスを媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定してください。農薬散布のみならず、天敵による生物的防除等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。
たまねぎ
・べと病の発生が、北九州の一部の地域で多くなると予想されており、長崎県では注意報が発表されています。暖冬傾向の本年は、越年り病株の初発時期が早く、り病株が増加するおそれがあります。このため、ほ場を見回り、り病株の抜き取りを実施するとともに、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤防除を的確に実施してください。
トマト
・コナジラミ類の発生が、北関東、近畿及び四国の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルスを媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定してください。農薬散布のみならず、天敵による生物的防除等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。
果樹
果樹共通
・果樹や茶では、翌作期の病害虫防除を効率的かつ効果的に実施するため、翌春の発生を抑制することが重要です。
翌春までの間に、感染落葉やり病部を除去し、土壌中に埋没するなど適切に処理してください。また、ハダニ類及びカイガラムシ類の発生が多かった園地では、粗皮削りを行うとともに、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤防除を的確に実施してください。
都道府県が発表した警報、注意報及び特殊報
令和元年11月13日以降、都道府県が発表している警報、注意報及び特殊報は以下のとおりです。
警報
発表はありません。
注)重要な病害虫が大発生することが予測され、かつ、早急に防除措置を講ずる必要がある場合に発表します。
注意報
発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
11月15日 | 長崎県 | トマト | トマト黄化葉巻病(TYLCV) |
11月25日 | 宮崎県 | ピーマン | ヒラズハナアザミウマ |
11月28日 | 佐賀県 | いちご | ハダニ類 |
12月2日 | 沖縄県 | さとうきび | メイチュウ類 |
12月24日 | 宮崎県 | きゅうり | キュウリ黄化えそ病(MYSV) |
12月24日 | 宮崎県 | トマト | トマト黄化葉巻病(TYLCV) |
1月16日 | 長崎県 | いちご | イチゴ灰色かび病 |
1月16日 | 長崎県 | いちご | ハダニ類 |
1月29日 | 佐賀県 | いちご | ハダニ類 |
1月31日 | 茨城県 | トマト | トマト灰色かび病 |
1月31日 | 沖縄県 | さとうきび | メイチュウ類 |
2月1日 | 大分県 | いちご | イチゴ灰色かび病 |
2月7日 | 長崎県 | たまねぎ | タマネギべと病 |
注)警報を発表するほどではありませんが、重要な病害虫が多発することが予測され、かつ、早めに防除措置を講じる必要がある場合に発表します。
特殊報
発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
11月13日 | 福島県 | コリアンダー | コリアンダー褐斑病(仮称) |
11月14日 | 栃木県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
11月15日 | 三重県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
11月15日 | 島根県 | ぶどう | コウノアケハダニ |
11月21日 | 三重県 | さつまいも | ヨツモンカメノコハムシ |
11月26日 | 長野県 | レタス | レタスコルキールート病(仮称) |
11月29日 | 神奈川県 | キャベツ | トビイロシワアリ |
11月29日 | 和歌山県 | うめ | ヨコバイ科の一種 |
12月2日 | 和歌山県 | もも | クビアカツヤカミキリ |
12月2日 | 愛媛県 | ばれいしょ | ミツユビナミハダニ |
12月3日 | 奈良県 | ほうれんそう | クロテンコナカイガラムシ |
12月5日 | 広島県 | オリーブ | オリーブ立枯病 |
12月10日 | 福島県 | きゅうり | トマト黄化えそウイルス(TSWV)による病害 |
12月11日 | 滋賀県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
12月17日 | 大阪府 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
12月19日 | 東京都 | きゅうり | キュウリ黄化えそ病(MYSV) |
12月20日 | 山口県 | なし | コスカシバ |
12月24日 | 福岡県 | シクラメン | キク茎えそウイルス(CSNV)による病害 |
12月25日 | 愛知県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
1月9日 | 秋田県 | ぶどう | ブドウ斑点細菌病 |
1月28日 | 秋田県 | アスパラガス | アスパラガス褐斑病 |
1月28日 | 東京都 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
1月30日 | 香川県 | トマト | トマト黄化病(ToCV) |
2月6日 | 佐賀県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
注)各都道府県において、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表します。
病害虫の生態等の生物学的情報や防除に関する情報の詳細については、各都道府県の病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
病害虫防除に関する留意事項
一般
・病害虫の防除を効果的に実施するためには、注意深くほ場観察を行うことにより、病害虫の発生状況を的確に把握することが必要となります。病害虫の発生は天候の影響を大きく受けるので、天気の推移に注意しつつ、各都道府県の防除指針に従い、適期に適切な防除を実施してください。
・気象庁の「令和元年12月以降の高温と少雪の状況について(速報)」(1月24日付け)では、令和元年12月以降、東・西日本を中心に気温がかなり高く、今後も2月にかけて、北日本から西日本の気温が平年より高いと予想されています。このため、平年とは病害虫の動向が異なる可能性がありますので、ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、適期に防除を実施してください。
気象庁ホームページ「令和元年12月以降の高温と少雪の状況について(速報)」
参照URL:http://www.jma.go.jp/jma/press/2001/24b/press_r01shousetsu20200124.html(外部リンク)
・薬剤防除を実施する場合は、病害虫が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。また、農薬の使用基準を遵守して適切な薬剤を選択するとともに、散布対象外の農作物等に農薬が飛散しないよう対策を講じてください。
露地栽培
・引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
施設栽培
・冬期間中、施設栽培では、加温により施設内の気温が高くなることで病害虫が発生しやすい環境になります。
・ウイルス病を媒介するアザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類等の侵入や野外への飛び出しを防止するため、施設の開口部に防虫ネットを設置する等の対策を実施してください。また、雑草はこれら害虫の発生源となるので、施設内及び周辺の除草を定期的に行うよう努めてください。引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
・作物残さは、害虫の発生源となり、り病葉及びり病果は、病害の伝染源となります。栽培終了後は、作物を枯死させ餌をなくすことで生存虫を死滅させてから搬出し、土中に埋める等、確実に処分をしてください。
・施設内が過湿になると、病害の発生が助長されるため、雨水が施設内に入らないように留意するとともに、過度なかん水を回避する、循環扇を設置する、換気を行う、作物の株間の通風を図る等により、施設内が過湿にならないように管理してください。また、病害の早期発見に努め、伝染源となるり病葉及びり病果は除去し、適期に薬剤防除を実施してください。
用語解説
(地域)
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北東北:青森県、岩手県、秋田県
南東北:宮城県、山形県、福島県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
北関東:茨城県、栃木県、群馬県
南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
甲信:山梨県、長野県
北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
北九州:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県
南九州:熊本県、宮崎県、鹿児島県
沖縄:沖縄県
(発生量(程度))
多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
(平年値は過去10年間の平均)
(参考)これまでの発表
第1号:4月17日(水曜日)
第2号:5月15日(水曜日)
第3号:6月12日(水曜日)
第4号:7月10日(水曜日)
第5号:7月24日(水曜日)
第6号:8月7日(水曜日)
第7号:9月11日(水曜日)
第8号:10月16日(水曜日)(10月17日訂正)
第9号:11月13日(水曜日)
お問合せ先
消費・安全局植物防疫課
担当者:白石、渡邉、宮木
代表:03-3502-8111(内線4562)
ダイヤルイン:03-3502-3382
FAX番号:03-3502-3386