令和2年1月10日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はありませんでした。続いて私から1件御報告があります。
「車座ふるさとトーク」についてです。1月14日,福岡県福岡市に所在する福岡県立福岡高等学校において,法務省として13回目の「車座ふるさとトーク」を実施することになりました。今回は,「成年年齢の引下げ~若者がいきいきと活躍する社会へ~」をテーマとして,義家法務副大臣が,高校1年生を中心とする,25歳以下の若い方々と,率直な意見交換を行います。この機会に,参加される皆様から多様な意見をいただいて,約2年3か月後に施行される成年年齢の引下げに向けた,各種の取組に活かしていきたいと思っております。

所有者不明土地問題に関する質疑について

【記者】
法制審議会民法・不動産登記法部会で取りまとめられた中間試案について,パブリックコメントの手続が開始されましたが,いわゆる所有者不明土地問題の解消に向けて,大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
所有者不明土地問題については,新年の職員に対する年頭所感の中でも挙げさせていただいたとおり,大事な問題だと思っています。法務省においては,所有者不明土地問題の解決に向けて,昨年2月,法制審議会に対し,民法及び不動産登記法の改正に関する諮問を行い,昨年3月以降,法制審議会民法・不動産登記法部会において調査審議が行われてきたところでございます。
この部会においては,昨年12月,相続登記の申請の義務化や,土地所有権の放棄等を内容とする中間試案が取りまとめられました。法務省においては,本日から2か月間,この中間試案をパブリックコメントの手続に付すこととしたものであり,国民各層からの幅広い意見が寄せられることを期待したいと思います。
なお,所有者不明土地問題は,先ほども申し上げましたとおり,政府全体で取り組むべき重要な喫緊の課題だと思っており,関係する政府方針において,民事基本法制の見直しについては,令和2年中に必要な制度改正の実現を目指すこととされておりますが,法務省としては,この問題の解決に向け,引き続き,関係省庁とも連携しながら,対策を推進してまいりたいと思います。

刑事司法制度の見直しに関する質疑について

【記者】
ゴーン被告人の逃亡を受けて,先日自民党法務部会が開かれまして,議員からGPS着用を求める声が多く挙がりましたけども,法務省は今後どのように対策を講じていくのか,大臣のお考えをお願いいたします。

【大臣】
保釈中の被告人の逃亡を防止して確実に収容できることは極めて重要であると考えております。既にお答えしている内容にはなりますが,どのような見直しが必要かについて,既に検討をさせているところではございますが,近時発生している逃亡事案や,各方面からの御指摘も踏まえつつ,速やかに十分な検討を加速化させてまいりたいと思います。

【記者】
ゴーン被告人に関するものです。今現在レバノン政府は犯罪人引渡条約に入っていないと。日本として現在引渡条約を交わしている国は米国と韓国だけ,米国は約70か国,英国に関しては120か国引渡条約に加盟していると。加盟しない理由として,日本では死刑制度が,それから起訴前の長期の勾留が人権問題ではないかと,そのような御意見がありますが,刑法制度,司法制度の抜本的な見直しは考えていないのでしょうか。

【大臣】
条約については外務省の所管でございますが,我が国の刑事司法制度について質問に含まれておりましたので,お答えをしたいと思います。
我が国の刑事手続について,様々な御指摘,御意見があることは承知しております。しかし各国の刑事司法制度には様々な違いがありまして,これまでの歴史や文化,そして国民の皆様の理解の下に,それぞれの国で積み上げられてきた制度であると思います。制度全体を把握して,理解していただきたいと思っておりまして,個々の制度だけを切り抜いて単純に比較をすることは適切ではないと思っております。その上で,時代の流れや,それからグローバルな動きに即応した見直しを不断にしていくということは重要でございます。これまでも,取調べの可視化など,様々な見直しを国民の皆様とともにしてきたところでございますので,今後もそのような姿勢をしっかりと取ってまいりたいと思います。

【記者】
今後引渡条約を各国と締結していく,条約に加盟していくというお考えはございますか。

【大臣】
条約につきましては外務省の所管でございますので,私からはお答えを差し控えさせていただきます。

【記者】
今回の事例が法務行政にとって障害になっていることもあろうかと思うのですけども,安倍首相が,「企業がもっと活躍できる国」というような方針を述べていらっしゃいますが,ゴーン氏に限らず,海外からの経営者,海外から働きに来られる方が大変多くなると思います。現状に合わせて司法制度を変えていくお考えはございますか。

【大臣】
外務省を始めとした他省庁と連携して,今回のような事案が生じないように対応しているところでございます。また,海外の皆様がこの国で安心して経済活動をできるように,法制度について,今般会社法の改正も行ったところでございます。我が国の司法制度は適正な手続で,適正に運用されておりますので,安心して経済活動を行っていただきたいと思っております。

出入国管理行政に関する質疑について

【記者】
今司法手続の見直しについての質問が出たので伺いたいのですが,一方で法務省が所管する入管難民法で無期限の長期収容が続いていると。これは法務大臣の広大な裁量権と,実際は入管行政での退去強制手続のみ,司法や第三者機関が関与せずに,帰国できない事情がある人々の長期無期限収容が続いているということで,今大変問題になっているわけです。
今,収容と送還に関する専門部会などもあるわけですけれども,日弁連からも昨年11月25日付けで,収容を極力回避するということとか,仮放免の運用方針を明らかにして,それをもって収容を撤回するといったような,そういう申入れも出ているわけですが,今後司法手続に準ずる形で,きちっと入管行政について,収容とか送還について,第三者的な機関も関与するとか,司法も関与するといった形で,客観的な検証をできるように,そういった機関を作るとか,入管法の見直しみたいなことをやるお考えは将来的にありますでしょうか。今の現状があまりにもひどいので,確認したいということです。

【大臣】
いつも重要な御質問をありがとうございます。昨年の11月25日に,日弁連から今言及された勧告書が提出されたところでございます。 送還忌避者が増加をしておりまして,収容の長期化といった課題も出てきているわけでございますので,昨年10月21日に,法務大臣の私的懇談会である第7次出入国管理政策懇談会の下に,「収容・送還に関する専門部会」を設置しました。専門部会では,庇護を要する者に適切な保護,そして送還が困難な者に適切に対処する,そういった措置でしたり,仮放免を含む収容の在り方等も論点とされて,現在,具体的な方策について議論されているところでございます。法改正の要否等についても,この専門部会における議論の結果を踏まえて検討することになりますので,現在正にその議論が行われている最中でございますので,しっかりとそれを見守ってまいりたいと思っているところです。

カルロス・ゴーン被告人の会見に関する質疑について

【記者】
カルロス・ゴーン氏が日本からレバノンに逃げました。レバノンに着いて最初にしたことは,記者会見を開いて,日本の司法を批判したことでした。法務大臣として,これについてどのようにお感じになり,また,どのように応答されますか。

【大臣】
ゴーン被告人が出国をしたことについては,正式な手続を経ずに出国をしているわけでございますので,これは不法出国の罪に該当する可能性があると思っております。

【記者】
彼の批判について反応していただけますか。それに対してどのように思ったか教えていただけますか。

【大臣】
ゴーン被告人の会見において,ゴーン被告人が我が国の刑事司法制度について様々な批判をしておりますけれども,その多くが抽象的な内容で,趣旨が判然としない,そして,根拠が伴わないものでございます。自身の逃亡について正当化するために,世界に対して我が国の法制度について虚偽の事実を申し述べて,喧伝をしていることでありますので,法務大臣としては看過できないと思っております。重ねて申し上げますが,我が国の司法制度は人権を保証し,適正な手続が規定されており,適正に運用されております。これを世界の皆様に理解していただけるように,御説明を続けてまいる所存でございます。

(以上)