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 私、少し、だんだん年を経てまいりますと、乱視が強くなりまして、遠くの皆様のお顔もはっきり見えるようにするために、今日はちょっと眼鏡を掛けて登壇させていただいたところでございます。今日もたくさんの皆様にこうしてお集りいただきまして、私も本当にうれしく思います。この講演も今回で7回目となるわけでございまして、今回、臨時国会が閉会しましたが、この会期中、台風19号を始めとした度重なる豪雨や台風が襲来しました。お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表します。また、全ての被災者の皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。私も現場に参りましたが、避難所では、先の見えない不安で大変辛い気持ち、そして大変困難な状況をお伺いしました。ヘリに乗って上空から見渡すと、河川の氾濫がかなりの広範囲にわたっているのが分かりました。家屋、店舗や工場が浸水し、丹精込めて育てた作物が泥に浸かり、中小・小規模事業者の皆さん、また農家の皆さんは、再建への気力を失いかねない、厳しい状況にあります。
 先日、総合経済対策を取りまとめました。来年の台風シーズンに備え、全国の氾濫の危険性が高い河川について、川底の掘削や堤防強化を進めます。また、停電や断水が長期にわたり、生活に深刻な被害をもたらしました。浄水場の浸水対策とともに、鉄塔・電柱の耐風基準、風に耐えるという耐風基準ですが、耐風基準を強化し、建て替えや補強も早急に実施していきます。
 子供たちが明日への希望を失うことがないよう、心のケアを充実させ、そして授業料減免などで就学を支援します。また、お年寄りの日常生活相談のための個別訪問や、仮設住宅暮らしの中で、孤立することのないよう見守り支援を行います。
 そして、いまだ残る土砂撤去、災害廃棄物の撤去を早急に進めるとともに、3年間で3,600億円規模のものづくり補助金やグループ補助金を始め、生業(なりわい)の再建、農地の復旧や営農再開を力強く後押しします。甚大な被害をもたらす自然災害が毎年のように発生する中で、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化を進め、未来の安心を確保していきます。
 こうした中で、臨時国会ではこの1か月、桜を見る会について議論が集中しました。長年の慣行で行われてきたものですが、招待者の基準が曖昧、また、プロセスが不透明といった御指摘を頂きました。来年の開催は中止し、幅広く意見を伺いながら、全般的な見直しを行うことといたしました。一昨年と昨年は、モリカケ問題。今年の春は、統計の問題。この秋は、桜を見る会。この3年ほどの間、国会では政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれてしまっていることを、国民の皆様に大変申し訳なく思っております。
 災害対応もそうですが、デフレからの脱却、社会保障改革、外交安全保障、あらゆるテーマにおいて、しっかりと大きな改革を進めていかなければならない。7年前、政治の信頼を取り戻さなければならないとの決意で、薄氷を踏む思いで、緊張感を持って歩み始めた初心を忘れずに、しっかりと身を引き締め、全身全霊で政策課題に取り組んでいきたいと思います。
 この国会では、米国との貿易協定が承認されました。幅広い工業品について、米国の関税削減・撤廃が実現します。日本の自動車・自動車部品に対して、232条に基づく追加関税を課されないことを、直接トランプ大統領から確認いたしました。この件につきましては、少人数の会合において確認するのみならず、たくさん証人が居たほうがいいですから、大人数の会談においても、しっかり確約を取っているということでございますから、御安心いただきたいと思います。
 農林水産物は、過去の経済連携協定で約束したものが最大限である、とした昨年9月の共同声明に沿った結論が得られました。我が国にとって大切な米についても、関税削減の対象から完全に除外し、米国への牛肉輸出の低関税枠も、大きくこれは拡大しました。アメリカの牛肉消費量は、皆さん、日本の9倍です。ステーキの本場、正にこのステーキの本場アメリカで、和牛に一層チャンスが広がります。
 それでもなお残る農家の皆さんの不安にしっかりと向き合い、牛の増産への奨励金や、畜産設備の拡充、食品加工の設備の整備まで、3,000億円を超える予算で、世界への挑戦を力強く後押ししてまいります。同時に、関連法律を強化して、家畜遺伝資源の流通管理を厳格化し、海外流出や不正使用を防止します。あまおう、シャインマスカットなどの果物、ゆめぴりかや、つや姫。日本産ブランドの保護を徹底します。
 日米貿易協定は、来年1月1日に発効となります。EU(欧州連合)との経済連携協定、TPP(環太平洋パートナーシップ)と合わせて、世界のGDP(国内総生産)の6割、5,000兆円を上回る自由で質の高い経済圏が生まれます。そして、その中心にいるのが、正に日本であります。この自由貿易圏は、我が国経済の成長の大きな基盤となるはずです。
 これまで、日本は、ひたすらルールを守る側だった。しかし、この7年、地球儀を俯瞰(ふかん)しながら、80か国を訪問し、800回を超える会談の積み重ねの上に、今、日本は自由貿易の旗手として、いよいよルールをつくる側に回りました。TPPから米国が離脱した後、日本がリーダ―となって交渉を主導しました。そして今、多くの国からTPPに入れてほしい、そういう声も頂いています。昨日総選挙が行われたイギリスからも、強い関心が示されています。TPPは21世紀の経済ルールを世界に広げる野心的な取組であり、ジョンソン首相の下、イギリスが加盟するのであれば、日本として、心から歓迎したいと思います。
 来週からはインドに向かう予定でありますが、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉も7年目に入り、ルール分野を中心に進展しています。
 グローバル化が進み、企業のサプライチェーンがアジア、太平洋からインドまで広く展開する中にあって、自由で公正な経済圏をつくる意義は、大変大きいと考えています。一筋縄ではいきませんが、16か国の合意に向けて、粘り強く交渉をリードしてまいります。
 世界では、今、対立ばかりが強調され、ある主張をしていると、その主張が通らなければ政治的に負けたとか、取った・取らないの議論に陥りがちだとも言われています。そうした対立ではなく、粘り強く、共通点、一致点を見出していく。新しい元号の令和の英訳は、beautiful harmonyですが、正に、その精神を存分にいかして、G20大阪サミットを、成功裏に終えることができました。
 トランプ大統領、習近平国家主席、ユンカーEU委員長を始め、多くの首脳たちと共に、国境を越えたデータの自由な流通を確保するための国際的なルールづくり、大阪トラックがキックオフしました。
 海洋プラスチックごみについても、新たな汚染を2050年までにゼロにする目標を共有し、実現のための具体的な実施枠組みも合意できました。
 私もG20(金融・世界経済に関する首脳会合)の首脳たちの中では最古参の部類に入るのですが、それでも、G7の3倍近い20の国、しかも、個性あふれるリーダ―たちと意見を調整して、一つにまとめるというのは、なかなか至難の業であります。今回も、例えば気候変動の問題は、大きな意見の対立がありました。大体皆さん予想がつくと思いますが、サミット中も、事務方が夜通しで調整して、それでも、閉会日の朝になってもまとまりませんでした。最後には、私自身が首脳宣言文を持って、意見の対立していた首脳たちの間を回って文言を調整して、ようやく宣言文を取りまとめることができました。
 世界の大きな関心であった米中の貿易をめぐる緊張についても、対立ばかりが強調されがちですが、トランプ大統領、習近平国家主席始め、G20全ての首脳たちと、自由、公正、無差別といった、自由貿易の原則を確認できました。その意義は、大変大きいと思っています。
 二国間外交も、年末まで全力投球です。クリスマス・イブの日には、成都において、日中韓サミットに出席し、この機に習近平国家主席、李克強(り・こくきょう)総理との首脳会談、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との日韓首脳会談を行う予定です。
 昨年、李克強総理と北海道を訪問した際、米を輸出する際の燻蒸(くんじょう)施設が2か所に限られていた。それが5か所に増えました。精米所も1か所に限られていたものが、2か所になりました。
 今年の中国への米の輸出は、昨年の6割増しのペースで伸びています。中国の米の消費量は、皆さん、1.6億トンです。日本の生産量は800万トンですから、20倍の市場が広がっています。中国からの観光客も、政権交代前の3倍以上、今年も、昨年同月比で増加し続けています。
 日中関係は、完全に正常な軌道に戻りました。日中は切っても切れない関係であり、両国はアジアや世界の平和、安定、繁栄に大きな責任を有しています。
 新しい令和の時代の始まりに当たり、この責任を果たすべきとの認識を習近平国家主席と共有し、その意思を明確に示していく。そのことが、今、このアジアの状況において、さらに国際社会からも、求められているのだと思います。
 中国との間には、様々な懸案が存在していますが、これまでも、こうした懸案は習主席に直接提示してきており、主張すべきはしっかりと主張し、前向きな対応を強く求めていく考えに変わりはありません。来春の習主席の訪日を、日中新時代にふさわしい有意義な訪日にしていきたいと思います。
 世界の注目を集めたラグビーワールドカップ、スコットランド戦で、タックルを受けながらも、パスをつないだ上での、笑わない男・稲垣選手による初トライ、鮮やかでしたね。決勝戦のイングランド・南アフリカ戦は、日本開催の世界スポーツ大会において、歴代最多の観客数でありました。あの、2002年のサッカーワールドカップの決勝、ブラジル・ドイツ戦の数を上回ったんです。海外からも多くのファンが駆けつけ、出場国のイギリスは8割増、オーストラリア、フランス、カナダといった国からの観光客も2割から3割増えています。豪州、そして欧米からの観光客の数自体は、アジアに比べてまだまだ少なく1割ほどですが、一人当たりの消費金額も、日本人は5万円程度でありますが、その4倍以上であります。そして旅のスタイルも、個人旅行が中心で、長期滞在、そして、その地方にしかない自然や伝統文化を楽しむ人が大変多い。
 昔、私をスキーに連れてって、という映画がありました。私と同じくらいの年齢の方は御存じかとも思いますが、今や、白馬では6割、そして妙高では8割が、欧米、オセアニアからの観光客であります。正に今、スキー場というのは、欧米、あるいはオーストラリア等からの観光客によって支えられていると言ってもいいんだろうと思います。私も、白馬の方々にお伺いしたのですが、もう街には英語があふれていて、まるでかつての白馬とは全然違う世界になっているという話をしておりました。人口3,600人の野沢温泉には、平日でも2,000人の外国人観光客が滞在し、街はごった返しているそうであります。
 こうしたスノーリゾートの再生、さらには、夜の時間をもっと楽しみたいという、そういう声にも積極的に応え、観光名所の夜間開業や、ライトアップなどを各地で進めています。
 里山の自然の風景、古民家、山奥の温泉。全国津々浦々の美しい風景、味わいある田舎の暮らしにも、もっと触れてもらえるよう、交通アクセスが必ずしも良くない場所へのラストワンマイルについて、マイカーを使った観光送迎サービスを一気に進めていきます。大自然の残る離島のPRや、国境離島においては、観光メニューづくり、交通費の割引に加え、宿泊や食事に使える5,000円ほどのクーポンも発行し、幅広い国からの観光客の呼び込みを支援いたします。
 来年には、羽田空港・成田空港の発着枠も拡大し、海外から多くの皆さんが日本へやってきます。これを契機に、オリンピック・パラリンピック後の更なるインバウンドの拡大につなげていきたいと思います。
 我が国初めての、1964年の東京五輪。その頃、私は小学生でありましたが、重量挙げで金メダルに輝いた、小さな巨人と言われた三宅(みやけ)選手の真似をして、学校にある箒(ほうき)で重量挙げのポーズをしたことを、いまだによく覚えておりますが、世界の強豪たちと肩を並べ、熱戦を繰り広げる日本選手たちの姿を見て胸が熱くなり、未来に希望を持ったことを鮮明に思い出しております。
 このオリンピック・パラリンピックを、未来を担う子どもたちに感動や、夢や希望を与える大会にしたい。そして、日本の新たな未来を切り拓(ひら)く大きなきっかけにしたいと考えています。
 1964年の当時は、新学期になれば新しい教科書が一人一人に配られ、今年はどんなことを習うんだろう、とわくわくしながら、新しいページをめくって、ちょっと落書きも書いていたかもしれませんが。それから半世紀が経ち、デジタル時代に私たちの生活が大きく変わった今、パソコンやタブレットといったIT端末が、教科書に並び、学用品に加わるのは、当然のことだと考えています。
 AIで、一人一人の状況に応じて苦手な分野はじっくり学んで、弱点を克服する宿題が出れば、取り残されることなく基礎学力を身に着けることができます。豊富な資料や動画で、子供たちの旺盛な知的好奇心にも応えることができます。先生たちにとっても、教材の準備の負担を減らすことができる。そして小学生、中学生、一人一人が、IT端末を持つ。この春から支給を始め、4年で全ての子供たちに行き渡るようにいたします。しっかりと使いこなし、デジタル社会の読み・書き・そろばんである、プログラミングを学ぶ環境を整備します。
 ビッグデータ、IоT、人工知能、デジタル技術の急速な進歩が、第4次産業革命とも呼ぶべき変化を、世界にもたらしています。この分野でのイノベーションの成否が、国の競争力に直結し、安全保障のあらゆる分野に大きな影響を与える時代です。私たちは、この壮大なチャレンジに、決意を持って臨んでいかなければなりません。これまでの発想に捉われない、大胆な対策で、我が国の未来を切り拓いていく。正に国家百年の計です。
 本日、補正予算を閣議決定いたしますが、ポスト5Gを視野に入れた研究開発支援、さらには、大胆な税制によって、5Gへの投資をしっかりと後押しします。Society5.0を切り拓くベンチャー企業への投資も、異例なまでの措置で応援しますので、今日は、企業の皆さんもたくさんお越しいただいていると思いますが、今こそ、内部留保を、積極的に力強く投資していただきたいと思います。
 さて先月、歴代通算在職日数が憲政史上最長となったことで、様々な取材で、レガシーは何ですか、と聞かれます。私の任期はまだ2年近くありますので、もうそんな話ですかと、まだ終わったわけではありませんから、と思わなくもありませんが、皆さん、ここで成果をいろいろとお話しいたしましても、この後の豪華なランチの直後で寝てしまうのではないかと思いますので、一つに絞って申し上げたい。それでも一つはお話しさせていただきたいと思います。安倍政権では、若い人たちに光を当てることに、いつも、心を砕いてまいりました。
 日本が長引くデフレに沈む中、若い人たちが、どんなに頑張っても、なかなか働く先が見つからなかった。そうした中で政権を奪還し、3本の矢を放ち、正社員の有効求人倍率が、史上初めて1倍を超え、一人に一つ以上の正社員の仕事があるという真っ当な経済を取り戻すことができました。
 雇用環境が好転したこの状況をチャンスに、この夏から、ハローワークで就職氷河期世代をターゲットにした求人を始めました。早速、求人を開始した企業があります。山九という会社でありますが、社長は43歳、御自身も就職氷河期を経験した世代です。物流・プラントメンテナンスの企業なのですが、この業界は、人手不足が深刻で、新卒採用だけでは足りない。そこで、これまでの発想を変えて、3年で300人の就職氷河期世代の募集を始めました。プラント設計や通関業務の基礎研修も準備して、独身寮も作った。早速、応募があるそうです。
 こういった企業や、民間の職業紹介、就職サイトにおいても、求人における年齢制限を見直し、就職氷河期世代に的を絞った採用も可能となるよう、検討していきたいと思います。
 政府も、隗(かい)より始めよということで、今年度中に、この世代を対象に、国家公務員の中途採用を始め、来年夏には全府省庁で実施したいと考えています。地方公共団体にも、要請を行っていきます。
 未来を担う子供たちについても、どんな経済環境にあっても、夢に向かって頑張ることができる社会をつくり上げていかなければなりません。
 戦後、小・中学校9年間の普通教育が無償化されて以来、70年ぶりとなる幼児教育・保育の無償化が始まりました。来年4月からは、真に必要な子どもたちの高等教育の無償化、そして私立高校の実質無償化を実現します。
 社会保障制度についても、お年寄りの安全は大前提としながら、子供や現役世代にも安心できるものに、改革していかなければなりません。2022年には団塊の世代が75歳以上の高齢者となり、現行の社会保障制度を前提とすれば、若い世代の皆さんの負担が大きく上昇することが想定されます。どうしても、この問題は、給付のカットと負担増の議論ばかりが先行しがちです。確かに、生産年齢人口はこの5年で450万人減少しています。平均寿命は延びていくことが分かっている。
 こうした中で、今年の年金財政検証の結果、将来の年金給付に係る所得代替率は悪化するのではないかと思われる方は多かったのではないでしょうか。実際、選挙の前、野党の皆さんは、この財政検証を選挙の前に示すべきだ、おそらく悪化しているんでしょうと、そう示して選挙をやんなきゃいけないんじゃないですかと、こういう要求をされました。でもこの年金財政検証というのは、ちゃんとした手続きを踏みながら、政治状況とは関わりなく淡々とやっているものであります。果たしてどうだったでしょうか。結果は、実際には、所得代替率は、悪化するどころか、改善しました。政治的に、恣意的に発表できるのであれば、選挙の前に公表してますよ、これは。そういう数字だったんですが、その要因は何かと言えば、その要因は、アベノミクスによって女性や高齢者が働き始め、年金の支え手が500万人増えた結果であります。政策次第で、皆さん、年金は増やすことができるんです。
 皆さんよく御存じのとおり、麻生副総理財務大臣、大変お元気でありますが、来年は、いよいよ80歳を迎えられるということであります。大変お元気ですよね。予算委員会等でも、はつらつと答弁しておられます。これは、御存じないかもしれませんが、健康の秘訣は、早朝の早歩きの散歩。さらには、腹筋と腕立て伏せ。毎日やっておられるそうであります。私は、いくつか。私は65歳でありまして、いよいよ高齢者となったわけでありまして、介護保険の第1号被保険者にもなりました。麻生さん80歳ですから、私にもあとまだ15年あるな。でもそんな事は、私考えていません。まず本当に元気に今の任務を果たしていく、ということだけを考えておりますが。
 しかしながら、身体能力は10年で10歳若返ったというデータもあります。60歳以上の働く方々にアンケートを取ると、8割の人が70歳以降も働きたいと、こう答えています。高齢者の増加イコール年金の貰い手の増加という、ステレオタイプな考え方からは脱却し、令和の時代にふさわしい年金制度へと改革していかなければなりません。
 年金の受給開始の年齢は、今、60歳から70歳までの範囲で選択できますが、これを、75歳までに拡大します。1年繰り下げるごとに、8.4パーセントずつ受給額がアップしますので、75歳に開始した場合、これは84パーセントのアップになります。意欲ある皆さんに、65歳以降も働いていただける機会を確保します。労使の話合いによって、定年の廃止や70歳までの定年延長、継続雇用や起業支援といった様々な選択肢を用意した上で、皆さん、それぞれの事情に合った形態を選んでいただく。
 今年のサラリーマン川柳では、働き方改革をテーマとしたものが多かったそうであります。一つ紹介いたしますと、再雇用 昨日の部下に 指示仰ぐ、ということであります。アンケートを取ったら、それも気にならないという答えも意外と多い結果が出ております。そういう時代になったわけでありますが、私も、安倍一強と言われていることは十分に認識しておりますから、先を読みながら若い皆さんにも優しくしていかなければなと、こう思っているところでございます。
 来年4月からは、同一労働同一賃金が始まります。正規と非正規の壁がなくなる中にあっては、厚生年金の対象をパートの皆さんへと広げていくことも、自然の流れとなります。2年後の10月から、従業員数101人以上、その2年後には、51人以上の企業に、段階的に適用を広げていくことを基本に考えています。
 こういった改革の具体的な方向性を、来週の全世代型社会保障検討会議において、取りまとめたいと思います。世の中の変化を大きなチャンスと捉え、新しい時代にふさわしい社会保障制度を、大胆に構想し、実行に移していきたいと思います。
 今年は、ほぼ200年ぶりとなる皇位の継承が行われた歴史的な節目であり、憲政史上初となる御退位と御即位に伴う一連の式典を、国民や世界からの温かい祝福の中で、つつがなく終えることができました。この一年、日本人はどういう歴史を紡いできたのか、悠久の中で培ってきた伝統や文化に思いをはせる機会が増えたのではないでしょうか。
 新元号については、公表の4月1日が近付くにつれて、緊張感がますます高まり、内閣、官邸にある種の重苦しい雰囲気がありました。私自身、国民の皆様から受け入れられるかどうか、受け入れてもらえなければ取返しのつかないことになる。相当なプレッシャーでありましたが、お陰様で、祝福の中で国民の皆様から評価していただき、肩の荷が下りて、本当にほっといたしました。
 新元号は、我が国始まって以来、初めて国書を典拠といたしました。万葉集にある、初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉を披(ひら)き 蘭は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す、との文言から引用したものです。
 厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいとの願いを込めました。
 候補となった元号の案が、その真偽はさておき、何故か、テレビや新聞にたくさん出ていましたが、新元号の決め手は何だったか。我が国が誇る悠久の歴史、薫り高き文化、伝統の上に、次を担う世代のために、未来に向かってどういう日本を築き上げていくのか。次の時代への願いを示す上で、最もふさわしいものは何か、という点でありました。そうした意味で、令和の中心を担う若い人たちが、元号を評価し、この新しい時代を、良い方向に進むと、思っている。大変、うれしいことであります。
 元号発表前の情報漏洩対策も、やりすぎではないかと御批判もありましたが、官房長官、今やあの令和のおじさんですね。令和のおじさんが、新しい元号は令和です、と発表する瞬間を、国民がテレビやインターネットで一緒に見守り、私たちの新しい時代が幕を開けるとの思いを共有する。この歴史的瞬間を共に過ごせたことは、本当に良かったな、こう思っています。
 新しい時代が始まり、来年はいよいよオリンピック・パラリンピックが開幕します。大きな節目にあって、強い経済、社会保障制度改革、国益を追求する外交、新しい国づくりを進めていかなければなりません。その先に、令和の日本がどのような国になっていくのか、どのような国を目指していくのか。その道しるべとなるのが憲法です。
 憲法改正を最終的に決めるのは、国民の皆さんです。私たち国会議員には、その判断の材料を提供する責任があります。
 これまで、憲法審査会における議論は、残念ながら、立憲民主党や共産党を始め、一部の野党が議論に出席しなかった結果、衆議院では1年間でたった2時間あまり、参議院では3分しか議論がされていませんでした。ですから、この夏の参院選においても、憲法は大きな争点の一つでした。私は街頭に立つたびに、議論する政党を選ぶのか、あるいはそうでない政党を選ぶのか、議論すらしない政党や候補者を選ぶのか、と訴えました。
 せっかくですので、時事通信さんが7月5日から8日にかけて行った世論調査の結果を紹介すると、あなたは、参議院選挙の後に憲法改正の議論を進めることについて賛成ですか、反対ですか、という質問に対して、賛成が41.2%、反対が26.3%、どちらともいえない・わからないが32.6%となっています。他の調査においても、議論はすべき、という回答が多数を占めています。
 先の臨時国会では、憲法審査会で2年ぶりに自由討議が実施されました。正に国民の皆様の声に押されて、これまで議論に応じていただけなかった野党の皆さんも、憲法審査会に出席せざるを得なかったのではないでしょうか。さらには、憲法の中身について議論すべきだ、という意見が、野党の中からも出されました。この大きな変化は、民意の勝利であると思います。
 国民の皆さんは、憲法審査会において、どういった議論が行われたのか、しっかりと見ているのではないでしょうか。それに応え得るような、中身の議論が行われることを期待したいと思います。
 今日は正月事始め。お正月に向けた準備を始める日だそうであります。私も、穏やかな正月を迎えるべく、これは今少し調整中なのでありますが、明後日からインド、これは今実際調整中になっておりますが、来週には中国とラストスパートとなります。
 年を越せば、十二支の始まり、ねずみ年が始まります。相場の格言で言えば、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄と言われていますが、正に、今年は、歴史的な皇位継承、世界最大級の国際会議・G20大阪サミットに、ラグビーワールドカップ。そして、教育無償化がスタートし、最大の課題、少子高齢化に向けて、大きな一歩を踏み出すことができました。しっかりと良い流れを固めることができたと思います。
 来年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックを迎えます。さらに、2025年には、大阪・関西万博も控え、日本全体が、未来への躍動感あふれる一年となります。
 私の任期は、まだ、2年近くもあります。チャレンジャーの気持ちで、現状に甘んずることなく、教育、働き方、社会保障、日本の社会システム全般を改革し、激動する国際情勢にあって、真のリーダーシップを発揮していきたいと思います。
 どうか、皆さん、よいお年をお迎えくださいませ。御清聴、ありがとうございました。