1. 1 本9日(現地時間同日),パキスタン・イスラム共和国の首都イスラマバードにおいて,我が方進藤雄介駐パキスタン臨時代理大使と先方イグナシオ・アルタザ国連開発計画(UNDP)パキスタン事務所長(Mr. Ignacio Artaza, UNDP Country Director in the Islamic Republic of Pakistan)との間で,無償資金協力「ハイバル・パフトゥンハー州新併合地域における平和構築のための法の支配強化計画」(供与額3億8,100万円)に関する書簡の交換が行われました。

    2 パキスタンにおけるアフガニスタンとの国境地域に位置する旧連邦直轄部族地域(FATA)は,独自の部族社会的構造により,歴史上,英領インド及びパキスタンの全般的な権力機構に組み込むことができず,これまで,地元部族民による独自の統治形態が維持されてきました。このため,同地域は,特に2001年の米国同時多発テロ以降,同地域内でのテロ組織の結成やテロ訓練キャンプ等の設置,テロリストの流出入等により,テロの温床と変化していきました。この状況を受け,パキスタン政府は,累次の軍事掃討作戦の他,同地域の前近代的統治形態からの脱却のため,2018年に憲法を改正し,同地域をハイバル・パフトゥンハー(KP)州に併合することを決定しました。現在,同地域における,KP州行政による住民サービスの提供,地裁や高裁による司法公正化,同州警察による治安維持,同州議会や州レベル以下の地方会議を通じた立法等のための取組が行われていますが,旧FATAのKP州への迅速な実質的併合のため,新たな体制の構築やインフラの整備を含め,引き続き多くの取組が必要とされています。

    3 この計画は,パキスタンのKP州に併合された旧FATAにおいて,モデル警察署の建設,地域別年次警察計画策定支援,及び現地部族警察等への研修等を行うことで法の支配の強化を図り,もってパキスタンの平和と安定の確立に寄与するものです。この協力により,対象地域に居住する約7,500人への警察サービス向上やコミュニティの安全性向上による裨益,約500人の部族警察官のジェンダー意識を含む警察能力向上等が期待されます。

    [参考]パキスタン・イスラム共和国基礎データ
     パキスタン・イスラム共和国は,面積79.6万平方キロメートル(日本の約2倍の大きさ),人口約1.97億人(2017年,世界銀行),1人当たり国民総所得(GNI)は1,580ドル(2018年,世界銀行)。