令和元年11月29日(金)

 今朝の閣議においては,法務省案件として,「平成30年度再犯の防止等に関する施策」が閣議決定されました。また「令和元年版犯罪白書」について,閣議において配布したことを報告いたします。
 続いて私から3件報告がございます。
 まず1件目は,冒頭で申し上げた,「平成30年度再犯の防止等に関する施策」,いわゆる「令和元年版再犯防止推進白書」についてです。
 この白書は,昨年度から作成しているものであり,「再犯防止推進計画」に掲げられた115の施策に関し,平成30年度末までに政府が講じた取組のほか,再犯防止施策に関する指標の最新データを掲載しています。
 特に,政府においては,令和3年までに,刑務所出所者が,出所後2年以内に再び刑務所に入る割合を16パーセント以下にするとの目標を掲げているところ,直近では16.9パーセントと初めて16パーセント台になり,目標達成に向けて着実に低下しているところです。
 また,特集では,薬物依存の問題を始めとした依存症対策を取り上げ,矯正施設や保護観察所で実施している指導や支援の取組のほか,保健医療機関や民間団体,地方公共団体と連携した地域社会における支援・治療の継続のための取組などを紹介しています。
 なお,本白書では,各章の冒頭ページに少年院在院者等の制作した絵画作品を掲載しています。改善更生に向けて努力する彼らの作品に触れていただくことで,国民の皆様にとって,再犯防止に関する関心と理解を深めるきっかけになることを期待しております。
 次に,本日の閣議で配布した,令和元年版犯罪白書についてです。
 この白書では,「平成の刑事政策」を特集しております。
 まず,刑事司法に関する立法の動きを振り返りますと,例えば刑法の改正が平成期は昭和期よりも多数回行われるなど,時代の変化や要請に合わせ,法制度においても迅速な対応がなされました。
 また,平成期の犯罪情勢を振り返りますと,前半は刑法犯の認知件数が増加傾向にあり,平成14年に戦後最多となりましたが,その後は毎年減少し続け,平成30年も戦後最少を更新しました。
 しかし,近年の状況を個別に見ますと,児童虐待,配偶者間暴力等が増加傾向にあり,暴行も高止まりの状況にあるほか,再犯者率も上昇を続けるなど,予断を許さない状況にあります。
 また,平成期においては,各種犯罪対策に加え,裁判員制度の導入を始めとする司法制度改革,処遇の充実強化等が図られた矯正・更生保護における改革,再犯防止対策,被害者保護のための諸制度の導入等の各種刑事政策が行われました。
 法務省としましては,これらの白書の内容を活用しながら,犯罪者の改善更生・再犯防止のため,より一層効果的な施策を検討・実施してまいりたいと考えております。
 また,国民の皆様におかれても,平成期における犯罪情勢や犯罪者処遇の実情等についての理解を深める資料として,これらの白書を利用していただければ幸いであると思っております。
 2件目でございますが,人権週間についてです。
 12月4日から10日までの一週間は,「第71回人権週間」です。
 法務省では,この人権週間の期間を中心として,人権について皆様に理解を深めていただくため,関係機関等の協力を得ながら,全国各地において集中的な人権啓発活動を実施します。
 例えば,ハンセン病療養所からお借りした当時の療養所の写真等を展示するパネル展や,全国中学生人権作文コンテストの地方大会の表彰式などのイベントが実施されます。
 そして,人権週間に先立ち,本日11時から,人権イメージキャラクター「人KENまもる君・人KENあゆみちゃん」の無料LINEスタンプの配信を開始します。
 各種のイベントへの参加やスタンプの利用を通じて,人権について理解を深めるきっかけとなりますよう,その周知・広報への御協力をお願いします。
 3件目でございます。最後に,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の見直しについてです。
 同法の附則には,施行の日から5年ごとに,法律の施行状況について検討を加え,廃止を含めて見直しを行う旨の規定が設けられているところ,今般,所要の見直しを行い,同法を現状のまま存続させることといたしました。

再犯防止推進白書に関する質疑について

【記者】
 今年の犯罪白書と再犯防止推進白書が本日公表されました。刑務所出所者の2年以内再入率は16.9パーセントと,政府が目標に掲げる16パーセントに近づくなど,再犯防止対策に一定の効果が見られていると思います。
 再犯防止推進白書では,依存症患者の推移もまとめられました。再犯防止や依存症への対策を今後どのように進めていくのか,大臣の見解を聞かせてください。

【大臣】
 御指摘のとおり,直近の刑務所出所者の2年以内の再入率は,16.9パーセントと,初めて16パーセント台になりました。
 しかし,釈放事由別で見ると,仮釈放者が10.7パーセントであるのに対し,満期釈放者は25.4パーセントと高く,再犯防止のためには,満期釈放者対策が重要な課題と認識しております。
 また,犯罪をした者等の中には,薬物依存症を始め,何かしらの依存症を抱えている者が少なくなく,再犯防止のためには,依存症からの回復に向けて,矯正施設や保護観察所における指導や支援のみならず,その後の継続的な治療や支援を実施することが重要と認識しております。
 法務省においては,これまでも,「再犯防止推進計画」に基づき,例えば,満期釈放対策としては,仮釈放の積極的かつ適切な運用,受刑者の出所後の安定した帰住地や必要な支援の確保などに努めており,また,薬物事犯者の再犯防止対策としては,矯正施設や保護観察所における専門的処遇プログラムの実施,ダルク等の民間支援団体との連携などの取組を進めているところです。
 法務省としては,「令和3年までに2年以内再入率を16パーセント以下にする」という政府目標の達成に向け,こうした取組をより一層推進するとともに,満期釈放者や薬物事犯者の再犯防止対策の在り方について,更に検討を進めてまいりたいと思います。

「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の見直し」に関する質疑について

【記者】
 団体規制法の検討についてですが,今回現状のままということになりましたが,その理由や意義について大臣のお考えがありましたらお願いします。

【大臣】
 団体規制法に関しては,適用対象団体であるオウム真理教の活動状況,これに対する観察処分の実施状況に加え,関係地方公共団体及び地域住民の要請等を踏まえて見直しを行い,法を廃止せず存続すべきとの結論に至ったところです。
 オウム真理教が,麻原彰晃こと松本智津夫の死刑執行後も同人の強い影響下で活動を継続し,活動拠点の地域住民を始めとする国民の不安感は今も根強い現状にあることからすれば,法を存続すべきとの結論は妥当なものと思料します。
 引き続き,公安調査庁が,団体規制法に基づく観察処分を実施すること等により,地域住民の方々を始め,国民の皆様の不安感の解消・軽減に努めていくものと承知しております。

資産公開に関する質疑について

【記者】
 森法務大臣が資産を公開されました。資産公開制度についてのお考えと,御自身の資産に対する評価をお聞かせください。

【大臣】
 資産公開制度については,公職にある者としての清廉さを保持・促進し,行政への国民の信頼を確保し,行政の円滑な運営に資することを目的とするものと理解しています。
 これまでの参議院議員としての資産公開でも正確な報告を心掛けてまいりましたが,今回の資産公開についても,ありのままの資産状況を報告させていただきました。