令和元年11月13日
農林水産省


〇向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)については次のとおりです。

・野菜類では、いちごのハダニ類の発生が、中国、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に適期に防除を実施してください。このほか、いちごのアブラムシ類等、病害虫が多くなると予想されている地域があるので注意してください。
・果樹や茶では、翌春の病害虫防除を効率的かつ効果的に実施するため、病害虫の越冬量を低下させ、翌春の発生を抑制することが重要です。果樹の病害対策として、感染落葉やり病部を除去するとともに、翌春までに園外に持ち出すか、土壌中にすきこむ等、適切に処理してください。また、虫害対策として、ハダニ類及びカイガラムシ類の発生が多かった園地では、粗皮削りやマシン油散布による防除を実施してください。茶のカンザワハダニが多発した園地では、秋整枝後の薬剤散布等の防除を実施してください。

〇ツマジロクサヨトウの発生が、7月3日に鹿児島県において初めて確認されて以降、複数府県で確認されています。本虫の防除には、早期発見が重要であることから、疑わしい虫を見つけた場合は、都道府県病害虫防除所又は植物防疫所まで御連絡をお願いします。

国の発生予察情報について

国は都道府県の協力の下、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、有害動植物の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、有害動植物の発生調査結果等を分析し、有害動植物の発生動向及び防除対策に係る情報として、発生予察情報を提供しています。
本予報に掲載している情報の詳細は、都道府県病害虫防除所のホームページ等を参照してください。

発生予察について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
都道府県病害虫防除所
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html

気象

気象庁の向こう1か月の予報(11月7日付け)では、気温は北日本で平年並か低く、西日本で平年並か高く、沖縄・奄美では高いと予想されています。また、降水量は北日本日本海側及び東日本日本海側で平年並か多く、東日本太平洋側、西日本及び沖縄・奄美で平年並か少ないと予想されています。

気象庁ホームページ
参照URL:http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/001_00.html (外部リンク)

野菜・花き

野菜・花きで各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

作物名 病害虫名 発生が「多い」と予想される地域 発生が「やや多い」と予想される地域
いちご アブラムシ類 東海、中国、北九州 北関東
ハダニ類 中国、四国、北九州 甲信、南九州
炭そ病 東海 四国
キャベツ 黒腐病 南関東、東海  
きゅうり コナジラミ類   南関東、四国、北九州
うどんこ病 四国 南関東、東海
だいこん アブラムシ類 南関東 東海、近畿
トマト コナジラミ類 東海、四国 甲信、南九州
なす うどんこ病   東海、四国
アブラナ科野菜 コナガ 南関東、東海 近畿、中国
野菜・花き共通 オオタバコガ 東海 近畿、四国
シロイチモジヨトウ   南関東、近畿、四国、北九州
ハスモンヨトウ   関東、甲信、東海、近畿、中国、四国
きく アザミウマ類 北九州 沖縄

注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。

いちご

・アブラムシ類の発生が、東海、中国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルス病を媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定してください。農薬散布のみならず、天敵による生物的防除等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。

・ハダニの発生が、中国、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されており、愛媛県及び長崎県では注意報が発表されています。本虫は発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定してください。農薬散布のみならず、天敵による生物的防除等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。

キャベツ

・黒腐病の発生が、南関東及び東海の一部の地域で多くなると予想されています。本病は、降水量が多いと発生が助長され、特に、植物体に傷がつくと、病原菌の侵入口となり感染しやすくなります。このため、台風等の影響があった地域においては、圃場の観察を行うとともに、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、防除を実施してください。

トマト

・コナジラミ類の発生が、東海及び四国の一部の地域で多くなると予想されており、愛知県では注意報が発表されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルス病を媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性が発達しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定してください。農薬散布のみならず、天敵による生物的防除等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。

アブラナ科野菜

・コナガの発生が、南関東及び東海の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は薬剤抵抗性が発達しやすく、ジアミド系の一部の薬剤において、本虫に対する感受性の低下が報告されています。都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤を選定するなど防除を的確に実施してください。

果樹・茶

果樹で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

作物名 病害虫名 発生が「多い」と予想される地域 発生が「やや多い」と予想される地域
かんきつ かいよう病 東海 近畿
ハダニ類 沖縄 南九州
カンザワハダニ 近畿 南九州

注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。

果樹・茶共通

果樹や茶では、翌春の病害虫防除を効率的かつ効果的に実施するため、病害虫の越冬量を低下させ、翌春の発生を抑制することが重要です。
果樹の病害対策として、感染落葉やり病部を除去するとともに、翌春までに園外に持ち出すか、土壌中にすきこむ等、適切に処理してください。また、虫害対策として、ハダニ類及びカイガラムシ類の発生が多かった園地では、粗皮削りやマシン油散布による防除を実施してください
茶のカンザワハダニが多発した園地では、秋整枝後の薬剤散布等の防除を実施してください。

都道府県が発表した警報、注意報及び特殊報

令和元年10月16日以降、都道府県が発表している警報、注意報及び特殊報は以下のとおりです。

警報

・重要な病害虫が大発生することが予測され、かつ、早急に防除措置を講ずる必要がある場合に発表します。

発表はありません。

 

注意報

・警報を発表するほどではありませんが、重要な病害虫が多発することが予測され、かつ、早めに防除措置を講じる必要がある場合に発表します。

発表月日 都道府県 対象作物 対象病害虫
10月31日 愛知県 トマト コナジラミ類
10月31日 愛媛県 いちご ハダニ類
11月1日 長崎県 いちご ハダニ類

 

特殊報

・各都道府県において、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表します。
病害虫の生態等の生物学的情報や防除に関する情報の詳細については、各都道府県の病害虫防除所のホームページ等を参照してください。

発表月日 都道府県  対象作物 対象病害虫
10月18日 鹿児島県 さとうきび ツマジロクサヨトウ
10月21日 島根県 フェロモントラップ誘殺 ツマジロクサヨトウ
10月23日 京都府 ローズマリー ヨコバイ科の一種
10月24日 和歌山県 フェロモントラップ誘殺 ツマジロクサヨトウ
10月25日 岩手県 レタス レタス根腐病(レース2)
10月31日 茨城県 キウイフルーツ キクビスカシバ
11月1日 香川県 フェロモントラップ誘殺 ツマジロクサヨトウ
11月5日 新潟県 ねぎ ネギハモグリバエ(別系統)
11月7日 愛知県 飼料用トウモロコシ ツマジロクサヨトウ
11月8日 静岡県 ブルーベリー オウトウショウジョウバエ
11月11日 京都府 フェロモントラップ誘殺 ツマジロクサヨトウ
11月12日 岩手県 水稲 クモヘリカメムシ

 

ツマジロクサヨトウ対策について

ツマジロクサヨトウの発生が、7月3日に鹿児島県において初めて確認されて以降、青森県、福島県、茨城県、千葉県、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、九州全県及び沖縄県でも確認されています。
本虫の防除には、早期発見が重要であることから、疑わしい虫を見つけた場合には、都道府県病害虫防除所又は植物防疫所まで御連絡をお願いします。
都道府県病害虫防除所及び植物防疫所の連絡先は、以下のURLに掲載されています。

ツマジロクサヨトウ対策について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/syokubo/190709.html

都道府県病害虫防除所の所在地一覧
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html

各植物防疫所(国内検疫担当)の問合せ先
参照URL:http://www.maff.go.jp/pps/j/guidance/outline/contact.html

病害虫防除に関する留意事項

一般

・病害虫の防除を効果的に実施するためには、注意深くほ場観察を行うことにより、病害虫の発生状況を的確に把握することが必要となります。病害虫の発生は天候の影響を大きく受けるので、天気の推移に注意しつつ、各都道府県の防除指針に従い、適期に適切な防除を実施してください。

・薬剤防除を実施する場合は、病害虫が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。また、農薬の使用基準を遵守して適切な薬剤を選択するとともに、散布対象外の農作物等に農薬が飛散しないよう対策を講じてください。

露地栽培

・引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。

施設栽培

・冬季を迎え、施設栽培では、夜間を中心とした加温により施設内の気温が高くなることで病害虫が発生しやすい環境になります。

・ウイルス病を媒介するアザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類等の侵入や野外への飛び出しを防止するため、施設の開口部に防虫ネットを設置する等の対策を実施してください。また、雑草はこれら害虫の発生源となるので、施設内及び周辺の除草を定期的に行うよう努めてください。引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。

・作物残さは、害虫の発生源となり、り病葉及びり病果は、病害の伝染源となります。栽培終了後は、蒸し込み処理等を行い、作物残さでの生存虫を死滅させてから搬出し、土中に埋める等、確実に処分をしてください。

・施設内が過湿になると、病害の発生が助長されるため、雨水が施設内に入らないように留意するとともに、過度なかん水を回避する、循環扇を設置する、換気を行う、作物の株間の通風を図る等により、施設内が過湿にならないように管理してください。また、病害の早期発見に努め、伝染源となるり病葉及びり病果は除去し、適期に薬剤防除を実施してください。

用語解説

(地域)
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 
    北東北:青森県、岩手県、秋田県 
    南東北:宮城県、山形県、福島県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 
    北関東:茨城県、栃木県、群馬県 
    南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
甲信:山梨県、長野県
北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 
    北九州:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県 
    南九州:熊本県、宮崎県、鹿児島県 
沖縄:沖縄県

(発生量(程度))
多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
(平年値は過去10年間の平均)

(参考)今後の発表予定日
第10号:令和2年2月12日(水曜日)

(参考)これまでの発表
第1号:4月17日(水曜日)
第2号:5月15日(水曜日)
第3号:6月12日(水曜日)
第4号:7月10日(水曜日)
第5号:7月24日(水曜日)
第6号:8月7日(水曜日)
第7号:9月11日(水曜日)
第8号:10月16日(水曜日)(10月17日訂正)

お問合せ先

消費・安全局植物防疫課

担当者:白石、渡邉、宮木
代表:03-3502-8111(内線4562)
ダイヤルイン:03-3502-3382
FAX番号:03-3502-3386