令和元年10月18日(金)

 本日私から3件御報告をさせていただきます。
 まず,本日の閣議で,即位の礼に当たり恩赦を実施することが決定いたしました。
 新しい令和の時代を迎え,即位の礼が行われます。この慶事に当たり,罪を犯した者の改善更生の意欲を高めさせ,その社会復帰を促進するという刑事政策的な見地から,今般,恩赦を実施することとなりました。
 その恩赦の内容は,国民の皆様の感情,特に犯罪被害者やその御遺族の心情等に配慮して,1つ目,政令恩赦として,罰金刑を受け終わった者であって,かつ,3年間再び処罰されていない者について,刑に処せられたため生じた資格の制限をなくす「復権」を行います。併せて,2つ目,特別基準恩赦として,一定の基準を定め,これに該当する者について,犯情,本人の性格及び行状,犯罪後の状況,社会の感情等を個別に審査して行う「刑の執行の免除」及び「復権」を実施するというものであります。
 その規模は,政令恩赦と特別基準恩赦を合わせておよそ55万人と見込まれております。今後,この恩赦が適正かつ円滑に実施されるよう,法務省としても全力で努めてまいります。
 2件目,台風19号による被災の関係であります。本日の閣議で,「令和元年台風第19号」が「特定非常災害」に指定されました。そして,特定非常災害特別措置法及び総合法律支援法に基づく特別措置を適用するための政令が閣議決定されました。これによって,今回の台風で被災された皆様に対し,法務省の所管に関わる次の支援措置を実施してまいります。
 まず,総合法律支援法に基づく措置として,日本司法支援センター,通称「法テラス」におきまして,来年10月9日までの間,被災者の皆様を対象に,無料法律相談が実施をされます。また,法テラスにおきましては,既に,被災者の方々の生活再建に役立つ情報提供として,ホームページに今回の台風に関する法的な困りごと,相談についてのQ&Aの掲載を行っているほか,本日より,専用のフリーダイヤルを利用していただけるようにしております。
 次に,特定非常災害特別措置法に基づく措置として,3点あります。
 1つ目,債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例。2つ目,相続の承認又は放棄をすべき期間の特例。3つ目,民事調停の申立手数料の特例。他にもございますけれども,こういったことを実施いたします。
 さらに,これらの法律に基づく措置ではありませんが,被災地域にお住まいの外国人の方々を対象として,被災により在留資格等に関する各種手続や在留管理制度における届出が期限までにできなかった場合について,柔軟に対応することとしています。
 また,先日の記者会見で一部申し上げましたが,法務省におきましては,発災直後から,東京拘置所,あるいは府中刑務所など,一部の矯正施設において,避難者の受入れなどの支援を行ってきておりますが,昨日,長野県須坂市からの要請をいただき,刑事施設職員を派遣し,災害ゴミの集積場における廃棄物の整理・分別などの支援を,継続することといたしております。
 昨日の法務省における災害対策本部の2回目の会議の冒頭でも申し上げたとおり,こういった甚大な被害が出た災害,復旧,復興の支援,これは法務省の本来業務の一つとしてしっかりと位置づけ,総力を挙げて被災者の皆様方の生活再建に少しでもお役に立つことができるよう,引き続き,これからも力を尽くしてまいります。
 3件目ですが,今日の閣議におきまして,「会社法の一部を改正する法律案」と「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」及び「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
 「会社法の一部を改正する法律案」は,株主総会の運営や,取締役の職務の執行の一層の適正化につながるものであると考えております。
 「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案」につきましては,企業の国際取引の増加に伴う外国法に関するサービスのニーズの増加,及び国際仲裁の活性化に向けた国内における基盤整備の必要性等を踏まえ,所要の措置を講ずるものであります。
 これらの法律案につきましては,国会において十分に御審議いただき,速やかに成立させていただけるよう,努力してまいりたいと考えております。

恩赦に関する質疑について

【記者】
 本日閣議決定されました恩赦につきまして,更生に果たす役割について教えてください。また,一方で政府が皇室の慶弔に合わせて行う恩赦には「前時代的な制度だ」との批判もありますが,どのように受け止めますか。

【大臣】
 恩赦には,例えば,資格制限による社会生活上の障害あるいは精神的な負担を取り除くことにより,犯罪をした者の改善更生の意欲を高めさせ,その社会復帰を促進するという刑事政策的な意義があります。今,おっしゃいましたように,恩赦について様々な意見があることは承知しておりますけれども,今回の恩赦は,憲法第73条の規定に基づき,恩赦制度の趣旨,先例,社会情勢,国民の皆様の感情等諸般の状況を総合的かつ慎重に勘案した上で,先ほど述べました刑事政策的な見地から実施することといたしました。国民の皆様の御理解を是非いただきたい,そう考えています。

(以上)