1. 1 10月2日(現地時間同日),フィジー共和国の首都スバにおいて,我が方大村昌弘駐キリバス大使(フィジーにて兼任)と先方デイビット・テアボ駐フィジー・キリバス共和国高等弁務官(H.E. Mr. David Teaabo, High Commissioner of the Republic of the Kiribati to Fiji)との間で,以下2件の無償資金協力(供与額計8億円)に関する書簡の交換が行われました。

    2 対象案件の概要はそれぞれ以下のとおりです。

    (1)漁業基盤の改善等のための支援(経済社会開発計画)(供与額:2億円)
     キリバスは,太平洋上に点在する33の環礁島から構成されており,海面上昇やサイクロン等の気候変動の影響による災害に極めて脆弱であるとともに,首都タラワ環礁は人口の約9割が集中する過密状態にあります。同国のマーマウ大統領は施政方針演説において,脱・中央人口集中を掲げており,離島開発を重視しています。同国の国家開発戦略においても,住民の生活向上に関する基礎インフラの整備を重点分野として掲げると同時に,新たな戦略としてKV20(キリバスビジョン今後の20年)が2017年7月に採択されており,同戦略において効果的な開発が打ち出され,特に漁業及び観光を主軸とした経済社会開発が喫緊の課題となっています。しかし,同国は離島等地方部での主要産業である漁業分野を開発するための十分な機材を有していない状況にあります。
     この協力では,キリバス政府に対し,水産関連機材(製氷機,魚切断機等)の供与を行うことにより,漁業分野の開発,同国の住民の生活水準の向上及び離島住民の生計向上を図り,もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与することが期待されます。

    (2)保健医療サービスの向上等のための支援(経済社会開発計画)(供与額:6億円)
     キリバスは,太平洋上に約300万平方メートルという膨大な領域を有し,その中に33の島々が散在するという散在性のために,住民への保健医療サービスの提供が困難となっています。同国は昨年2月から7月にかけてデング熱が大流行し,7月末までに総計1,707件の症例が確認され,うち211人が入院,2名が死亡するなどの事態に見舞われました。このように,インフラ,生活環境の整備が不十分であることが住民に保健医療サービスを提供することを困難にしており,今後も同様の事態が発生する危機があります。こうした状況から,感染症対策,公衆衛生環境の改善は同国の喫緊の課題となっています。
     この協力では,キリバス政府に対し,医療機材・医薬品及び浚渫船等の供与を行うことにより,同国の保健医療サービスの向上を図り,もって同国の社会・経済発展に不可欠な脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

    3 上記2つの協力は,昨年5月18日及び19日に福島県いわき市において開催された第8回太平洋・島サミットにおいて,我が国政府が表明した支援の柱である「強靱かつ持続可能な発展の基盤強化」に資する協力(PDF)別ウィンドウで開くとして実施するものです。

    [参考1]キリバス共和国基礎データ
     キリバス共和国は,面積730平方キロメートル(対馬とほぼ同じ),人口約11.6万人(2017年,世界銀行),一人当たりの国民総所得(GNI)は2,780米ドル(2017年,世界銀行)。

    [参考2]第8回太平洋・島サミット
    (1)第8回太平洋・島サミット(PALM8)は2018年5月18日及び19日に福島県いわき市において開催。16の太平洋島嶼国・地域及びオーストラリア・ニュージーランドの首脳級等が出席。キリバスからはマーマウ大統領が参加した。

    (2)我が国は,PALM8において,(ア)自由で開かれた持続可能な海洋,(イ)強靱かつ持続可能な発展の基盤強化,(ウ)人的交流・往来の活性化の3つを柱として,今後3年間でこれまでの実績も踏まえた,従来同様の,しっかりとした開発協力の実施及び成長と繁栄の基盤である人材の育成・交流の一層の強化を表明した。