1.  9月23日午前8時(日本時間午後9時)から約90分間,ニューヨークの国連本部で「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」第2回会合が開催されたところ,概要は以下のとおりです。

    1 冒頭,共同議長を務めるソールベルグ・ノルウェー首相及びレメンゲサウ・パラオ大統領から,始まりの挨拶が行われた後,出席した各国首脳が持続可能な海洋経済に関するそれぞれの見解を述べました。

    2 この会合に日本政府代表として出席した塚田玉樹地球規模課題審議官は,同会合に寄せた以下の安倍晋三内閣総理大臣のメッセージを代読しました。

    • (1)本日,持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネルとして14か国の首脳が一致して「海洋における気候アクションの呼びかけ」を発出できることについて,ソールベルグ・ノルウェー首相のイニシアティブに敬意と祝意を表したい。
    • (2)美しい青い地球を次世代に引き継ぐためには,多岐にわたる海洋問題に取り組む必要があるが,本日,自分からは特に,海洋プラスチックごみ問題に焦点を当てたい。
    • (3)海洋プラスチックごみ問題については,G20大阪サミットにおいて,新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有し,その実現に向けて,各国が継続的に情報を共有・更新しながら具体的な対策を進める実施枠組にも合意した。
    • (4)この問題は世界の全ての国が協調して取り組むことが必要であり,ハイレベル・パネルのメンバー国も,是非このビジョンを共有し,取組に参加していただきたい。また,2020年6月の国連海洋会議にハイレベル・パネルとして発出する勧告において,世界の全ての国による「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の共有と,ビジョン実現のための具体的な行動を呼びかけることを提案したい。
    • (5)この問題の対応では,プラスチックができるだけ廃棄物とならないよう,3R(リデュース,リユース,リサイクル)に一層取り組むことが重要である。日本は,2025年までにプラスチックのデザインをリユース,リサイクル可能なものとするなどの目標を掲げた「プラスチック資源循環戦略」を策定したところであり,これに基づき施策を推進する。
    • (6)同時に,廃棄物となったプラスチックへの対処も重要。日本は,これまでの経験と技術を活用し,世界で2025年までに廃棄物管理人材を1万人育成するなど,途上国の廃棄物管理を積極的に支援していく。
    • (7)海洋プラスチックごみ問題の解決にはイノベーションが大きな役割を担う。日本の企業も,海水中であっても分解される生分解性プラスチックの開発・普及などに取り組んでいる。技術の進展を踏まえつつ,国際的な連携を進めていきたい。
    • (8)G20大阪サミットにおいては,IUU漁業対策の重要性についても,議長国の我が国から提起し,G20首脳で一致した。これらを含む海洋経済の重要事項について,来年6月の国連海洋会議に向けて,引き続きハイレベル・パネルのメンバーと協力していくことを楽しみにしている。

    3 第2回会合の最後に,以下の勧告を発出しました。

    【勧告の名称】
     海洋における気候アクションの呼びかけ

    【勧告の目的】
     パネル第2回会合と同日(9月23日)に開催予定の国連気候アクションサミットにおいて,本パネルとして全ての関係者に対し呼びかけることを目的。

    【勧告の概要】
     パリ協定やSDGs,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書等に言及しつつ,気候変動対策となる海洋における6つのアクション(下記)を,全ての人々に呼びかけるもの。

    • 1 自然現象を利用した気候変動対策への投資
    • 2 海洋再生可能エネルギーの利用
    • 3 海洋産業の脱炭素化
    • 4 未来のための持続可能な食料確保
    • 5 炭素回収・貯蔵(CCS)の導入推進
    • 6 海洋観測・研究の拡大

    [参考]続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル

    (1)ノルウェーが立ち上げを主導し,安倍総理を含む以下の海洋国家の首脳で構成;ノルウェー,パラオ,日本,インドネシア,ポルトガル,メキシコ,ジャマイカ,カナダ,ガーナ,ケニア,ナミビア,フィジー,チリ,豪州

    (2)持続可能な開発目標(SDGs)の実現への貢献を目的とし,健全な海洋環境保全や持続可能な海洋経済の構築等に向けた方策を議論する。

    (3)2018年から2020年まで,国連総会のマージン等で年1回程度パネル会合を行い,パネルの議論の成果物として,最終報告書を作成。

    (4)最終報告書は,SDGsの中でも海洋の保全・持続可能な利用に関する目標14の実施に関し議論する,2020年の「国連海洋会議」で発表予定。