(令和元年9月12日(木)14:38 ~ 15:06 省内会見室)

【広報室】

会見の詳細

質疑

記者:
来週、選出される政府の全世代型社会保障検討会議について改めてお伺いします。西村大臣は、年末に中間報告、来年末までにとりまとめというスケジュールを示しました。大臣も昨日、議論の論点に幅広い項目について挙げられていますが、給付と負担の問題もあると思うのですが、この会議で大臣は何のテーマが最も焦点だと思われるか、お伺いします。
大臣:
西村大臣の話がありましたけれども、どういう幅のものをどういうふうにやるのかということについて、お示しをされていないと承知していますので、そのうちどこかと言われても、全体像が出てない時に、ここというのはまだ早いのだろうと思います。ただ、昨日申し上げたように、これからの社会保障を考えていく、社会保障といっても、いわゆる医療、年金、介護といった、昔で言えば厚生省だけなのか、働き方を含めてもっと幅広い、特にこれまで人生百年時代、高齢者就労、年金、全部つながってきますから、幅広く議論をされていくのだろうと思います。したがって、やはり大事なことは、これからの2025年、2040年を見据えながら、全体のシステムとしてどうしていき、その中で今、何が特に取り組むべきなのか、そういう観点からしっかり議論していく、したがって、パーツだけではなく、全体に対する見通しも一定共有しながら、答えを出していくことが大事であり、そのことが国民の皆さまの将来に向けての懸念の払拭、あるいは安心につなげていけると私は思います。
記者:
安倍首相は、消費税率について、10年間の間は10%から引き上げる必要はないとの考えを示しておりますが、一方で、少子高齢化に対応して社会保障制度を維持するには、10%よりも挙げる必要があるという意見もございます。大臣ご自身は消費税率を10%から引き上げる必要があると考えますかというのが一点、もう一つが、近く発足する全世代型社会保障検討会議で消費増税も議論のテーマにすべきと考えられますでしょうか。
大臣:
まず、総理の発言は、参議院選挙の党首討論の中で議論されたことを言っておられるのだと思いますが、あの頃はご自身の任期もあるので、自分の今ある任期においては上げない、今後については個人としては上げなくてもいいのではないかと思う、そういった発言だったと記憶をしています。まず、今、大事なことはこの10月の消費税引き上げを円滑に導入し、そして、それによって実施しようとする様々な施策をしっかりやっていくということ、これが第一だと思います。その上で、大丈夫かどうかという議論、それが何を念頭に置かれたかはわかりませんが、例えば、プライマリーバランスということで言えば、先般の中期財政見通しで2020年半ば頃には成長経済ケースでは脱却をしていくという道筋、これは、一定の前提を置いた推計ではありますが、見えているわけでありまして、そういった意味においては、総理は逆にしっかりと経済をやっていくということを強く言われたかったのではないかと思います。これから考えるときに、いずれにしても、負担と給付というものはすでに、今回社会保障制度改革の中においてもどういう形の負担でどういう形の給付かはともかくとして、一つのポイントになるのは間違いないと思います。その中で、今、負担についてどうなのかということについて、消費税の引き上げ云々という段階には私はないと思います。
記者:
先ほどの全世代型社会保障会議でも、厚労省の社会保障審議会と被る面も出てくるかと思いますが、被っても混乱する面もあるのではないかという指摘も想定されると思いますが、その点どのように考えておられるのか、どう棲み分けをして、お互い良い形で進めていけるか、どういったイメージを持っておられるか、お伺いします。
大臣:
それはまさにこれからのデザイン、全世代型の会議がどういうメンバーになっていくのかを含めて、そうした全体のあつらえだと思いますが、ただご承知のように我々がやる施策についてかなりの部分はそれぞれの審議会を経て具体的な実行に進めていく、例えば法案を作るのであれば、そこでの審議をしていただくということでありますから、当然そこと流れとして整合性を持ってやっていく必要はあると思います。
記者:
そのあつらえの部分でこういう形のあつらえがあったら良いという期待はあれば教えて下さい。特に、こういう議論を行ってほしいというものは何かありますか。
大臣:
最初の質問と被ってしまいますが、これからの時代の全体を見た中で、今やるべき課題が出てきているわけですから、それに対してしっかり答えを出していくという議論の場、そして、それが今回の会議だけではなく、次の、我々で言えば社会保障審議会等々での議論に流れ込んでいけるように、我々は努力していかなくてはいけないと思います。
記者:
財政検証結果の受け止めというのを改めてお願いしたいのと、年金制度改革の今後の焦点をどういう風に考えるか、お考えを教えて下さい。
大臣:
年金制度の財政検証については、すでに前の大臣からもお話をされていると思いますが、経済が成長して労働力参加が向上するケースについて、5年前と若干数字の前提は違いますけれども、それについてはほぼ同じような結果、細かく見ればやや改善したということは言えるのかもしれません。そういう状況だと思っております。そういった意味で、元々の検証の法律的な規定で言えば100年間、いわゆる一定の所得代替率50%が見通していけるかどうか、という意味においては、そうした状況に今のところなっているのではないか、というふうに思います。その上で、大事なことは、マクロ経済スライドとして入れたり、年金制度改正をやってきていますから、それが進む中で、いわゆる所得代替率は下がります。しかし、実際の購買力、物価で見た実質の数字はほとんど変わらない、あるいは若干増加する等の結果が出てきているわけですから、それを見ている中で、やはり個々の方々がその年金を自分で上乗せしていける、こういったことを考えていく必要があるということで、今回の試算の中でも、いくつかそれを前提とした適用拡大や、繰り下げなどそういった試算も出させていただいておりますから、それをベースにしっかりとこれから議論していきたいと思います。
記者:
関連で、厚生年金の適用拡大については給付水準を改善させる方法もあったという結果が示されましたが、適用拡大すると一方で企業側の負担も増えると思いますが、そういったものを議論していくにあたって、企業側をどう納得させていくのか、大臣のお考えがあれば教えて下さい。
大臣:
前に適用拡大したときの議論に私も参加しました。もちろん企業の方からすれば、費用負担が増えるということにつながりますから、それに対応できるような、一番大事なことは、いずれにしても生産性を上げて対応していく、体力をしっかりつけていってもらう、ということが大事だろうと思います。同時に、やはり働いている方々の安心にもつながっていくわけですから、その辺も含めてよく理解をしていただきながら、どういう形にするのかはこれからの議論ではありますが、よくそれぞれの事情を聞かせていただきながら、進めていく必要があると思います。
記者:
ハンセン病患者の家族による集団訴訟について、厚労省や議員懇談会が新たな補償制度の創設に向けて、原告側と協議を進めているかと思います。臨時国会の時期も来月に迫っており、救済策を盛り込んだ法案の準備なども時間が迫っている一方で、原告側はイチイチの補償や補償額の増額を求めていますが、今後はどのように対応していかれたいとお考えでしょうか。また、大臣ご自身も今後改めて原告団の方々と面会されるお考えはあるのでしょうか。
大臣:
大臣に就任したぶら下がりの時に少し触れさせていただいたと思いますが、福祉入所という政策の中で、家族、患者さん、あるいはご家族の方々に対して、社会的に大変厳しい差別があって、皆さん方が大変なご苦労をされてきた。そのことを、我々はしっかり受け止めないといけないですし、私も1年間、厚生労働大臣をやらせていただきましたけれども、そういう立場からも、そうした反省とお詫びの気持ちをもってこの問題には対処していきたいというふうに思います。具体的には、先般の判決、あるいはそれに対する総理談話等を踏まえて、今、原告団、弁護団からの要請を含めて協議がなされております。また、与党においても議論がなされていると聞いておりますから、それはしっかり対応していきたい。もう一つ、偏見差別解消のための方策をこれからしっかり対応していかなければいけないということで、そういった面では法務省とか文科省とも連携をしっかり図っていきたい。いずれにしてもご家族の方々のこれまでのご苦労を踏まえて我々としても対応していきたい。具体的に、法案を出して制度を作っていかなければなりませんから、これについては、どういう形にしていくかも含めて、原告団、弁護団、あるいは与党とも相談をしながら進めていきますが、大事なことは、一日も早くそうした方々が話されてきたことに対し我々として対応していくと、そういった立場に立って進めていきたいと思います。面会については、前大臣も会われたと聞いておりますが、私としてもよく調整してお話を聞かせていただきたいと思います。
記者:
待機児童数についてお伺いいたします。先日、発表された待機児童数は約1万6,700人。前年より3,000人ほど減りはしましたけれども、このペースですと20年度末にゼロという政府の目標は厳しい状況なのかなというところがあるかと思います。また10月から幼保無償化が始まりまして、教育ニーズが高まるとも思いますけれども、20年度末のゼロの目標をどのよう達成するお考えかということと、もう一つ、いわゆる隠れ待機児童という問題も指摘されています。こういった隠れ待機児童の問題についてもどのように取り組むお考えか、お聞かせいただければと思います。
大臣:
先日、発表させていただいた待機児童数は確かに減少していて、1万6,770人ということで、私がやっていたころは2万人前後でしたから、それから比べれば確かに減少しているということですが、まだそれだけ待機されている方がおられる、その現実はしっかり見ないといけない。そういう意味では、子育て安心プランということで、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を確保して待機児童の解消を図るということで進めてきているわけですから、引き続き、その目標の達成に向けて努力していく。ただ、中身を見ると減少している自治体があったり、中にはたしか若干増加している自治体もあったりと記憶しておりますが、それぞれの実情を踏まえながら、よく連携を取りながら、対応していきたいと思っております。隠れ待機児童とはどういう定義ですか。
記者:
たとえば、他に空きがあっても希望する保育園に入れない場合には、除外するということで、そういう方が7万4,000人くらい居ると。そういったところで、数字上に1万6,000人くらいに現れていないところにも、実際には入れない方がいらっしゃると思うのですけれども。
大臣:
最初の時も定義の議論をしたことがあったと思います。ですから、今言われたところについても、市の中でどこか空いているからそこだ、という話なのか、一定の常識をもって見れば、そこは通わせる範囲なのか、それをベースに定義していたと記憶していますけれども、いずれにしても実態に合った形で待機児童を解消していかないといけない。子どもを預けられる立場に立って進めていくことが、すごく大事なことだと思います。
記者:
子育てに関連して、話題が変わってしまうのですけれども、小泉進次郎環境大臣の育休取得について話題があがっていますけれども、閣僚や国会議員の育休取得について、厚労大臣としてのお考えがもしありましたら。
大臣:
育児休業そのものは雇用されている方について使われている言葉と思います。したがって、休業なのですね。我々国会議員の場合はこの時間からこの時間まで働いて歳費をいただくということではないので、そのままパラレルで言うのはいかがなものなのかなという気はいたします。いずれにしても、子育てというのは女性だけじゃなくて男性も積極的に対応していく、出産の支援をしていく、これは大変大事な姿勢だと思いますので、今、大臣をされておりますから、国会対応とか政務の問題はあると思いますけれども、そういう中で子どもさんに対してしっかりやっていこうという姿勢を示していただけるということは今、申し上げたことに対する世論の喚起とか認識の向上とか、私は非常にプラスの効果と思っております。
記者:
農福連携についてお伺いします。政府としても推進ビジョンを掲げられまして、取組が加速しているところだと思いますが、まだ認知度が低いとかですね、課題があるかと思います。農業者、福祉、障害のある方からの期待の大きい施策なのですが、今後どのように進んでいかれるか、大臣のお考えをお聞かせください。
大臣:
私の地元でもですね、そういう形で進めておられる方がいて、ただ、残念ながら7月の岡山県の豪雨の時に田んぼが厳しい状況になって、今、それから立ち直ろうとされているのですけれども、いずれにしても農業において、そうした障害のある方々が参加をされて、そして雇用の場であり、生きがいの場を提供されている、色々な意味で効果というのですかね、プラスが出てきていると私も認識しておりますので、そうした対応をしっかり進めていけるような支援について、農業側の支援もあると思いますし、こちら側の福祉的な支援もあると思います。よく農水省と連携を取りながら、そうした取組をしていく。そういう中で、所得をあるいは賃金をしっかり獲得していただくことが非常に大事でありますから、そういったところ含めて、我々もよく分析しながら、そういった対応が、さらに推進していくように進めていきたいと思います。
記者:
重要施策の一つである原爆被爆者の支援対策について、来年被爆75年の節目を迎えますが、広島・長崎からは支援や事業の強化、原爆症認定の見直しを求める声があります。大臣の思いをお聞かせ願います。
大臣:
私も広島と長崎に行かせていただき、被ばくされた方々から話を聞かせてもらいました。今年は根本前大臣が対応され、お気持ちを聞かせていただきながら、一つひとつその解決を図っていくという話をされたと思いますが、その姿勢をしっかり受け継ぎながら、引き続き、皆さまからの声をしっかりと聞かせていただいて、対応させていただきたいと思います。
記者:
戦没者の遺骨事業について伺います。先般から日本人のものとして持ち帰っていた遺骨の取り違えの疑いが、事実上放置されていたと思われるような問題が相次いで明らかになり、今までに検証が進んでいる野田と思っていますが、今の状況についてどのように感じていらっしゃるのか、また、近く公表されるであろうその検証結果がいつごろ公表できるのか、加えて、その後ロシアとの協議をどのように進めていくのか、今後の方向性についてお願いします。
大臣:
まず、遺骨収集について、ロシアだけではなく、戦後70年以上経っているわけですので、一日も早く遺骨をご家族の元へ、あるいは日本に戻していく、これは本当に力を入れてやっていかなければいけないと思っております。そういった中で、ロシアに関し、また、その前にフィリピンにおきましても色々ありましたが、遺骨の収集というのがどういうものなのか、そして、遺骨に対して皆さまがどういう思いをお持ちになっているのか、我々は常にそのことをしっかりと認識して対応していかなければならないと思います。そういった中で、遺骨として収集した中に違うかたちのものが入っていたとするのならば、それに対してどう対応していかなくてはならないのかということを含めて、非常に感性を高めて対処していかなければいけないと思っています。一連の作業につきましては、今回、聞かせてもらっていますし、既にお話があったようにロシアとの関係というものがあります。それから、確認と検証作業の進め方については、1か月を目処に整理する作業を今やっている報告は受けています。やはり最初の原点である遺骨というものに対して、我々はどう対応していくのかという点をしっかりと認識しながら、この問題に当たっていかなくてはならないということです。
記者:
戦没者遺骨の関係でお願いします。戦没者遺骨収集法が定めた遺骨収集の周知期間は、24年度までで折り返しを迎えます。遺族が高齢化する中、一体でも多くご遺族の元に返すために、どのような取組が必要か、どのように取組をされるのかお聞かせ願います。
大臣:
これは議連からも一日も早くという声を常に頂いているところでありますので、それに向けて予算もしっかりと確保しながら、また皆さんの協力を頂きながら、一日でも早く、それぞれの戦地に残っておられる遺骨の皆様方が日本に戻ってこられるよう、また地元に帰ってこられるよう対応していきたいと思っていますし、また、同時に様々な技術が、例えば遺骨収集や遺骨の判定に当たっての技術など進歩しておりますので、そういったものを積極的に取り入れながら、一日でも早く遺骨がそれぞれのご家庭に帰れるよう最大の努力をしていきたいと思います。
記者:
今の技術の関係で、ご遺族側からは、DNA鑑定の条件が厳しすぎるため条件を緩和すべきという声があります。また、原則、遺骨からDNAを採取してデータベース化すべきだという声もありますけれども、そういったお声に対してはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
一つひとつについて技術的な問題に何があるのかは承知しておりませんが、そうしたご家族の声に応えられるものはしっかりと応えていきたいと思います。
記者:
目黒や千葉県、そして鹿児島県で幼児虐待が相次いで発覚していますけれども、これについてどのようなスタンスで取り組まれるのかという点と、直近の鹿児島県でのケースでは行政機関の連携不足が指摘されています。この点について、どのような問題意識をお持ちか、この二点についてお願いいたします。
大臣:
私が担当していたときに、虐待の問題、また、もっとこういうことをしていたら防げていたのではないかということがございました。昨年7月に緊急総合対策を策定して以降、昨年末には新プランで児童福祉司を大幅に増員しました。また、昨年3月には児童虐待防止対策の抜本的強化が決定されましたし、前回の通常国会では、児童福祉法の改正法も成立したところでありますから、そうした決めたことを実現するために、来年度において必要な財源をしっかり確保し、こうしたことを進めていきたいと思っています。いずれにしても、大事なことは早期に発見すること、それから、リスクが高い場合がある、例えばその方が引っ越しをされたという場合には、自治体間でしっかりと連携をとるといった、これまで様々な教訓を得ているわけですから、それがしっかりと実行できる体制を作っていきたいと思っていますし、子どもさんが虐待で命を落とされるという痛ましいことは二度と引き起こさない、そんな思いで対応していきたいと思います。
記者:
先ほどお話のありました男性の育児休業のお話ですが、小泉さんだけの問題ではなく、例えば地方の議員、区議長さんでも問題になりますし、企業では休みは他の方に休んでもらえますが、支持者も居て、結局は色々あって休みが取れないという問題が常にあるのですが、厚労省として、議員といった特別職に就いている方が育児休業をとるのが良いのか悪いのかという点について考えを整理されるというのはできないのでしょうか。
大臣:
育児休業というのは業を休むと書くのですから、業を休むというのは雇用関係の中にある方がその雇用関係から離脱するということですから、その雇用関係にない方に対しては、また違う面があるのだと思われます。例えば、国会議員であれば、大臣でなくとも国会との対応、特に委員会であればある程度対応はできるかもしれませんが、本会議での採決はどうするのかといった様々な課題があると思われます。それは、それぞれのところで議論していただく必要があると思います。ただ、我々としては男性の育児参加というものを積極的に進めていきたいという立場でありますから、そういった立場から申し上げられることはしっかりと申し上げていきたいと思います。
 

(了)