冒頭発言

【河野外務大臣】8月12日から4日間にわたり,ブルガリア,スロベニア,クロアチア,セルビアを訪問しました。
 これらの諸国は,経済分野でそれぞれに強みがあり,日系企業にとって投資先あるいは投資拡大の潜在性のある地域だと思います。先方の政府から日本の投資に対する期待も非常に高いものがあります。
 今回は,実際に現地に進出している日本企業の成功例を視察しながら,先方外務大臣とこれからの経済・投資の強化について色々意見交換をいたしました。
 また,「西バルカン協力イニシアティブ」の推進も今回の訪問の重要な目的であります。西バルカンの,この地域のいわば要でありますセルビア,それから西バルカン諸国のEU加盟を推進しているブルガリア,スロベニア,クロアチアそれぞれと,日本の西バルカン諸国に対する関与,それから支援を歓迎するという話があり,具体的な協力に関する意見交換も行いました。
 またそれぞれの国との間で,海洋における法の支配の確立の重要性,あるいは北朝鮮に関する対応の連携など,国際社会における課題についても連携を確認をすることができました。
 こうした各国との協力の強化というのは,日本にとって重要なパートナーであるヨーロッパの安定と一体性の強化,それから基本的価値の下での結束というものに寄与するものだと思います。
 この後はベネチアに移動をして,明日から始まります「ダイアローグ」にしっかり参加をしていきたいと思っております。

質疑応答

【記者】改めてになるかもしれませんが,今回4カ国で西バルカン諸国の支援というものを強調されました。これを日本が行う意義というものがどこにあるのか,大臣のお考えをお聞かせください。

【河野外務大臣】日本にとって,ヨーロッパが結束をし,安定している,そして,日本と共通の基本的価値の下で,この一体性を強めていくというのは非常に重要なことだと思っております。その中で,この西バルカン諸国がまだEUの加盟を果たしていないわけで,こうした国々がEU加盟に向けて,あるいはNATOの加盟に向けて,様々な国内経済の改革を行う,あるいは社会的な改革を行っていくということが,このヨーロッパの一体性にとって非常に重要だと思っておりますし,逆にこの西バルカン諸国のEU加盟が進まないことが,このヨーロッパの中で,いわば,少し亀裂を生む原因になりかねないというふうに思っております。そういう中において,日本がこうした国々の,EUその他国際的な枠組みへの加盟をしっかり後押しをしていきたいというふうに思っております。

【記者】この地域を巡っては,中国もすごく進出をしていると思うのですが,大臣の認識とですね,日中で,この第三国市場協力といったことをやられてますが,この地域での協力の可能性をどのようにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】やはり,中国のインフラプロジェクトというのは,我々が常に申し上げている国際スタンダード,開放性,透明性,あるいはライフサイクルに関する経済性,そして,相手国の債務の健全性,こうしたものにしっかりとした配慮が行われるということが大事なんだと思います。この地域のインフラにおいても全く同じことが言えるだろうと思っております。日中間のこの第三国協力についてはやはり,この質の高いインフラの実現ということを念頭に置いて,この地域がいいかどうかということはいろんな議論があると思いますが,少なくとも日中の第三国協力においては,質の高いインフラをしっかりと推進するに値する,そういうプロジェクトを考えていきたいと思っております。

【記者】日本企業に関して聞きますが,この進出に向けてですね,バルカンのこの広い地域,日本政府としては具体的にどう支援していくか,何かビジョンがあれば教えていただきたいと思います。

【河野外務大臣】この地域は,一つは極めて質の高い労動力を有している。ブルガリアのIT人材もそうですし,あるいはスロベニアといったところの非常に質の高い労働力,あるいは,クロアチアの整備されたインフラ,そしてセルビアも,非常に質の高い,しかし他のヨーロッパ諸国と比べるとコストが安い労働市場,というそれぞれの強みがある中で,やはり,スエズ運河を抜けてくる,日本からの物資がヨーロッパの最初の入り口になり得る地域だと思います。そういう意味で,この日本からのゲートウェイとしてのインフラの整備,それからこの日本にだんだん少なくなってきているIT人材を非常に安いコストで雇うことができる。そういう強みを日本企業にしっかりと情報提供してもらうというところをまず日本として念頭に置いてやっていきたいというふうに思っております。もういくつか成功例が出ておりますので,そういう成功例を参考に,多くの日本企業が投資をしてくれるということが,この若い世代が今,西バルカン諸国から頭脳流失をしているという現実がありますので,それを止めるという意味でも非常に有意義だと思っております。

【記者】ちょっと今回の訪問から離れてですね,韓国のことをお伺いしたいんですが,まだ大臣に,韓国が日本の輸出管理の点でホワイト国から外したということに対する受け止めをお伺いしておりませんでしたので,改めてお伺いします。

【河野外務大臣】韓国の措置については理由もよくわかっておりませんので,何とも申し上げようがございませんが,経産省の方で実務レベルでの情報提供をお願いをしているというところと思っております。

【記者】日韓の対立の根源は,徴用を巡る韓国側の国際法違反の状態にあると,日本はそれを是正をずっと求めていると思うんですけれど,こればっかりやっていてもらちが明かないんじゃないかという指摘もあります。日本政府として,今後どのように対応と言いますか,考えておりますか。

【河野外務大臣】今の日韓関係,状況が悪化している最大の問題は,この旧朝鮮半島出身労働者に関する大法院判決でございますから,韓国政府には速やかに国際法違反の状況を是正していただくというのが必要だろうと思います。

【記者】問題の解決といいますか,対立の解決に向けては対話の再開なども必要かなと思います。先日,日韓次官級協議というふうな報道も韓国側から流されましたが,その開催の如何について,なんと言いますか,可能性といいますか,その部分は大臣はどういうふうに。

【河野外務大臣】報道は承知しておりますけれど,全く事実はございません。

【記者】今後,そういった次官級はやっていく必要があると。

【河野外務大臣】外相会談を始め,外交当局間,ずっとかなり密にやり取りをしておりますので,今後ともそれはしっかりと続けていきたいと思っております。

【記者】光復節での文大統領の発言について,まだ耳にされておりませんか。

【河野外務大臣】概要は承知しております。しっかりと,この国際法違反の状況を是正するリーダーシップを大統領にとっていただきたいと思っております。

【記者】最後に,日・アラブ政治対話というものが,二年に一度開かれるということで,まもなく開かれる可能性があると思うんですけれど,もし開かれた場合,テーマ設定,大臣としてどのように考えておりますか。

【河野外務】日・アラブ政治対話はしっかりやっていきたいと思いますが,まだ次回の日程その他,何ら決まったものはございません。

【記者】ホルムズ海峡についても話す予定は。

【河野外務大臣】まだ,何も決まったものはございません。