令和元年7月29日(月)

 本日の閣議においては,法務省案件はありませんでした。
 閣議後,アイヌ政策推進本部の第1回会合に出席し,アイヌの人々に対する偏見や差別の解消等に向けたこれまでの法務省の取組を紹介した上で,引き続き,アイヌの人々に対する国民の理解を深めるとともに,相談窓口の周知等にも努めてまいる旨発言しました。
  続いて,私から1件報告があります。
  7月24日(水)から7月27日(土)にかけて,フィリピン共和国及びインドネシア共和国に出張してまいりました。
  フィリピンにおいてはゲバラ司法大臣及びベリョ労働雇用大臣,インドネシアにおいてはヤソンナ法務人権大臣,ハニフ労働大臣,そして,リムASEAN事務総長とそれぞれ会談しました。
  会談では,特定技能制度に基づく外国人材の受入れ促進等に向けた意見交換を行うとともに,法務・司法分野におけるASEAN諸国との連携を強化していくことを確認し,来年4月に開催される第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)への参加を要請しました。
  今回の様々な成果を踏まえ,司法外交を更に推進してまいります。

日本弁護士連合会提出の意見書に関する質疑について

【記者】
 日弁連が同性同士の結婚を認めない現在の法制度は「婚姻の自由を侵害し,法の下の平等を定めた憲法に違反する」とする意見書をまとめ,国に対し戸籍法などの関係法令の改正を求めています。法務大臣としての御見解と,今後の対応を教えてください。

【大臣】
 御指摘の意見書については承知しています。
 一方で,憲法第24条第1項は,「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立」すると規定しているところ,身分関係の創設を伴う家族法上あるいは関連法において,同性婚を認めるか否かについては,権利の創設とともに扶養義務などの義務の創設も伴うものです。
 そうしたことを含めて,我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であると考えており,極めて慎重な検討を要するものと考えています。

法制審議会に関する質疑について

【記者】
 本日から,法制審議会の部会で民法の摘出推定と懲戒権の見直しについて議論が始まりましたが,改めて現状の課題と,部会にどのような議論を期待されるか教えてください。

【大臣】
 御指摘のとおり,今年の6月20日に法制審議会の臨時総会を開催して,新たに諮問したところですが,それを受けて,本日,民法(親子法制)部会の第1回会議が開催されているところです。
 懲戒権の規定については,児童虐待を行う親によって,自らの行為を正当化する口実に利用されているとの指摘があり,また,先般の通常国会で成立した「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」では,改正法の施行後2年を目途として,その規定の在り方について検討をするとの条項が設けられているところです。こうしたことを踏まえると,懲戒権に関する規定の見直しの検討が必要であると考えられます。
 また,無戸籍者問題については,国民でありながら,社会的基盤が与えられておらず,社会生活上の不利益を受ける方が存在するという重大な問題であります。法務省では,これまで無戸籍者に関する情報の収集や手続案内など,その解消のため様々な取組を行ってきたところです。他方で,民法の嫡出推定制度が無戸籍者を生ずる一因であるとの指摘があることを踏まえると,この問題を将来にわたって解消していくためには,嫡出推定の制度の見直しの検討も必要であると考えています。
 いずれの課題についても,今後は,この部会において検討が進められることになりますので,諮問した者として,充実した調査審議が行われることを期待しています。

大村入国管理センターにおけるナイジェリア人男性死亡事案の調査に関する質疑について

【記者】
 入管行政のことで質問があります。6月24日に大村入国管理センターに収容されていたナイジェリア人男性が死亡した件で,出入国在留管理庁で調査チームを立ち上げて事実関係を調査するということを,先日の記者会見で伺いましたが,その後の調査の進捗状況と,調査結果は公表されるのかされないのかを教えてください。

【大臣】
 御指摘のとおり,6月24日の死亡に至った事案につきましては,本当に遺憾に思っています。そして,即日,調査チームを立ち上げ,調査をしているところです。これらの経緯について,今現在,調査中であるということで,結果が出ていない中で,進捗状況をお答えするということは差し控えさせていただきますが,極めて重要な事案と考えていますので,公表の在り方や必要性についても,できるだけ速やかに調査を含め,結論を得て,適切な対応を執るように出入国在留管理庁には指示をしているところです。

東日本入国管理センターにおけるハンガーストライキに関する質疑について

【記者】
 その一方で,茨城県牛久市の東日本入国管理センターで,今年の5月以降,ハンガーストライキが続いています。その中で体調を壊したイラン人の男性4人が7月9日に仮放免されましたけれども,その内2人が7月22日に東京入管に仮放免執行したところ,再収容されて,即日,牛久に移送されたという報道もありました。それに反発した被収容者が,過去最大の100人規模のハンガーストライキを続けているということですが,なぜわずか2週間で2人のイラン人の仮放免を取り消して再収容したのか,法務省の幹部や大臣も承知の上での措置なのか,どういう意図でこういった再収容を行ったのかということについて大臣の御所見をお願いします。それから,ハンガーストライキが,今現在100人規模で続いていることに対して,どのように対処されるのか,大臣のお考えがあれば教えてください。

【大臣】
 個別の事案を前提にされたと思いますけれども,個別の事案に関して回答は差し控えたいと思います。
 他方で,一般論で申し上げれば,仮放免が認められた者であっても,仮放免を認める理由がなくなれば再収容することになるということです。入管収容施設において収容されている方は,例えば,我が国において罪を犯し刑罰を受けるなどして,退去強制令書の発付を受けた者です。また,我が国において在留を引き続き認めることが適当でないということで,退去強制令書の発付を受けた者については,やはり我々は一刻も早い送還を期すべきと考えています。そして,入管収容施設は,被収容者が退去強制令書に従い出国することで,直ちに収容状態が解かれるという性質の施設です。そういったこともありまして,長期収容は,送還の促進によって解消すべきものであると考えています。
 また,ハンガーストライキに関しては,大変遺憾に考えていますけれども,これに関しては,仮にそういう事案があったとしても,現状の法制の中では強制的に栄養を摂取させるということはできないわけです。したがって,我々としては栄養の摂取をするようにという説得を続けているところでして,現に,少なからずの方々が栄養の摂取を再開しているということも報告を受けているところです。そういったことも含めて,法に基づいて,適切に対応してまいりたいと考えています。

仮放免及び在留特別許可の運用に関する質疑について

【記者】
 今の点ですけれども,常々,大臣は,速やかに強制送還の手続を進めることが,長期収容を解消するためには効果的であるとおっしゃっているのですが,その一方で,帰国できない事情があって長期収容されている方も大勢いらっしゃると思います。以前は,仮放免の許可や在留特別許可を認めるといったことが多数行われていた時期もあると思うのですけれども,そういった人道的な配慮に関して,まず,なぜこういうふうに在留特別許可が厳しくなったのか,政策的な面で,何か法務省の判断ですとか,例えば首相官邸から新たな外国人労働者を受け入れるに当たり,非正規滞在者,入管に収容されている人は早く送還するようにといったような政策の方針があったのかどうか。大臣の基本的な考えをお聞かせいただきたいのですが,人道的な配慮について,特別在留許可について,どのように考えていらっしゃるのかお願いいたします。

【大臣】
 これについては,平成30年2月に当時の入国管理局長指示が出ていますように,退去強制令書を発付されたものの,送還の見込みが立たない被収容者については,仮放免を許可することが適当でない者を除き,出入国管理及び難民認定法第54条に規定する仮放免を活用する一方で,適正な仮放免の運用を担保するため,対応がなされているところです。私も,この方針に従って,出入国在留管理庁においてもなされているという認識です。
 また,仮放免につきましては,個別の事情を見て,個々の事案で判断しているということですので,一定の方針に基づいて行っているということはありません。

【記者】
 在留特別許可についてはどうなのでしょうか。

【大臣】
 在留特別許可について,特段の方針変更など,一定の方針に基づいて行っているものではありません。つまり,在留特別許可をすべき特段の事情があるかどうか,そういったものを個別の件に即して見ているということです。

(以上)