• 議事録(PDF形式はこちらから)

日時

2019年7月4日(木)10:00~12:25

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
新川座長、山本座長代理、伊集委員、大森委員、尾嶋委員、八木委員、山田委員
【オブザーバー】
消費者委員会 池本委員長代理、長田委員、樋口委員
【事務局】
二之宮事務局長、坂田参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. ヒアリング(1)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

  • 議事次第(PDF形式:39KB)PDFを別ウインドウで開きます
  • 【資料1】 八木委員提出資料(PDF形式:1303KB)PDFを別ウインドウで開きます
  • 【資料2】 大森委員提出資料
    前半(PDF形式:1625KB)PDFを別ウインドウで開きます
    後半(PDF形式:1230KB)PDFを別ウインドウで開きます
  • 【資料3】 問題意識と検討項目案に関する意見等の概要(第20回地方消費者行政専門調査会)(PDF形式:230KB)PDFを別ウインドウで開きます
  • 【参考資料】地方消費者行政の現状(消費者庁公表資料より抜粋)(PDF形式:989KB)PDFを別ウインドウで開きます

≪1.開会≫

○新川座長 改めまして、おはようございます。

本日は、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、第21回「地方消費者行政専門調査会」を開催とさせていただきます。

本日お伺いしているところでは、所用によりまして、首藤委員、西田委員が御欠席と御連絡をいただいております。

最初に、配付資料の確認をさせていただきます。

お手元、資料はiPadに収納されております。配付資料は、iPadの1ページ目、議事次第の中に表示をされておりますとおりであります。前回、各委員からの御指摘もございまして、参考資料を添付させていただいてございますので、こちらも適宜御参照いただければと思っております。

なお、操作につきましては、慣れておられる方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、不明な点等がございましたら事務局職員までお尋ねいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速でございますけれども、本日の議事を進めさせていただきたいのですが、今日は実質今回の委員になりまして2度目ということで、前回御欠席の委員がいらっしゃいますので、最初に簡単に自己紹介をお願いして始めたいと思っております。

僭越ながら、前回、座長代理として指名させていただきました、東京大学大学院法学政治学研究科教授の山本委員から、簡単に自己紹介をいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○山本座長代理 座ったまま失礼させていただきます。

ただいま御紹介いただきました、山本と申します。

大学では、行政法の研究、教育をしておりまして、この会では専らその観点からということになってしまうかと思いますけれども、私自身も勉強しながら議論をしていきたいと思っております。

私は、消費者委員会の委員をしておりますが、地方制度調査会という別の審議会にも参画させていただいておりまして、それで前回は欠席をさせていただきました。そこでの議論はここでの議論とかなり関連がありますので、適宜その観点からもいろいろ意見を述べさせていただければと思っております。

よろしくお願いいたします。

○新川座長 よろしくお願いいたします。

それでは、引き続きまして、委員名簿の順番に前回御欠席の委員から自己紹介をいただいてまいりたいと思います。

まずは、八木委員からお願いできますでしょうか。

よろしくお願いいたします。

○八木委員 ありがとうございます。おはようございます。八木でございます。

今回、初めて参加させていただきます。

私自身は、民間の会社をずっとやっておりまして、最初はNKK、今はJFEになっていますけれども、ここに18年半、アメリカの会社、GEに13年、最近よく騒がせているLIXILという会社に5年弱おりまして、あのごたごたの前にLIXILを去って独立いたしまして、現在は、日本の多くの上場企業さんを中心に経営改革あるいは人事改革をサポートしています。

基本的なバックグラウンドは、私のキャリアの8割ぐらいは人事をやっておりましたので、民間から見たときに人のことをどういうふうに扱ってきたのかということを、行政では全く素人ですけれども、民間という目から見たときにどのように映るかということを中心に発言をさせていただければと思います。

よろしくお願いいたします。

○新川座長 よろしくお願いいたします。

引き続きまして、山田委員、よろしくお願いいたします。

○山田委員 京都産業大学で法学部の教授をしております、山田です。

ただ、私に求められているのは別に法学部の知識ではなくて、その前に16年間京都府の知事をしておりました。その中で、二之宮事務局長さんとも、消費者の安全を探るために、できるだけ多くの知識を集めてチームを作って消費者問題を解決しようといった試みを京都府政の中でやってまいりました。

また、全国の知事会の会長もしておりましたので、まさに多くの人の安心・安全の基本が行政の一番中心でありますので、その観点から行ってまいりましたので、そうした地方行政の専門家としての立場からこの委員会ではお話しさせていただけたらありがたいと思っております。

よろしくお願い申し上げます。

○新川座長 よろしくお願いいたします。


≪2.ヒアリング(1)≫

○新川座長 それでは、早速、本日の議事にまいりたいと思います。

今日の議事次第の2番目にございますように、今日は各委員からのヒアリングの1回目ということで、各委員からお話しいただき、意見交換をしてまいりたいと思います。本日は、八木委員、大森委員からお話しいただきたいと思っております。それぞれお話しいただいた後、若干の意見交換の時間をとりたいと思ってございます。

それでは、恐縮ですが、まずは八木委員からお話を20分程度で御説明いただけますでしょうか。

よろしくお願いいたします。

○八木委員 ありがとうございます。

それでは、資料のほうは、意見交換資料を出させていただいていますので、これに従ってお話しさせてください。

まず、資料に入る前に、私はGEという会社に勤めておりまして、非常によかった頃のGEで、人が活性化してどんどん自律的に物事が進むという時代を経験しております。そのときの鍵が、任せるということだったのですね。行政はどうしても中央から地方に向かってコミュニケーションがいくというケースが多いかもしれないのですけれども、民間でやってきた経験からしますと、できるだけ任せることによって活性化するというのは一つのポイントではないか。そんな観点も含めながらお話しさせていただければと思います。

資料の1ページ目です。

まず、20年後の我が国の姿ということなのですが、厚生労働省あるいは内閣府の資料を見ますと、20年後にどんな人たちがということで見ていきますと、絵を一つ入れておいたのですけれども、真ん中のほうにある、老人というとこんな人たちばかりが描かれているのですね。非常にステレオタイプで、おじいさん、おばあさんになると役に立たないという感じの絵が非常にたくさんあるのですけれども、果たして20年後の老人とはこんなものだろうかということにクエスチョンをしたいと思います。

私は、過去の延長線上での高齢化とか老齢化といったことではなくて、もっとシニアが活性化して、元気なシニアがたくさんいるという状態も十分に描けるのではないか。すなわち、高齢化、イコール、社会保障給付費が非常にどんどん増えていって面倒くさい人たちが増えるということではなくて、高齢者の方たちも非常に活性化した状態が生まれるのではないか。そんなふうに思っています。

エージングサイコロジーという、老齢化、高齢化の心理学みたいなことが分野としてあるのですけれども、そんな中では、平均値としては大体53から55歳ぐらいで能力が落ちていくという話はあるのですけれども、一方で、自分の能力が落ちないと思っている人たちは幾つになっても能力が伸びていくということがアメリカで証明されておりまして、そういうことからすると、能力が落ちないと信じる人たちを作って、努力する人たちを生み出すという、アクティブに我々が行動することによって社会をむしろ変えていくぐらいの意気込みで取り組んだらどうだろうかと思います。

そこに、高齢者というにはちょっと気の毒なのですが、青い服を着た方の写真を出しています。これは徳島県上勝町というところで、「いろどり」、有名な話ですけれども、山にあるモミジ等の葉っぱを高級な料理店などに納めていくというビジネスをこういう人たちが始めて、70歳、80歳という人たちが非常に活性化して、お金を稼ぎながら生き生きと生活をしていて、実際に医療費なども少なくて済んでいる、そんな例もあるわけでして、そんな生き生きとした社会、高齢者の社会を作っていったらどうかということで、例を幾つか挙げておきました。

高齢者に対する就労キャリアのあっせんとか、支援、あるいは起業。この「いろどり」などは起業の例なのですけれども、ビジネスを起こしていく。そんなことを高齢者になっても進めていくような、そういう支援もあるのではないかと思います。あるいは、働く高齢者に対しては年金繰り延べをするとか、そういった形で減税をしていくような対応をしていくことによっても、何か活性化したものができるのではないか。あるいは、比較的若いうちから、たった一つの会社でしか役に立たないような技能ではなくて、複数の会社、複数の分野で活躍するような人材をこれからどんどん作っていく。そんなことも必要なのではないかと思います。アメリカでは、現在もほぼ半分近くの人たちがフリーランスという人たちになっておりまして、複数の会社で働くという状態がアメリカで起こっています。もちろんアメリカが全て正しいわけではないのだけれども、今後の姿としては、一つの仕事だけではなくて複数の仕事ができるという人たちを作っていくことによって、会社をやめてから後もどんどん活性化して働ける。そんな時代が来る。あるいは、来させなければいけないのではないかと思います。

2枚目の資料ですが、大都市から地方へという人の動きということなのですけれども、これは、リアクティブ、すなわち、何もしないで放っておいて地方がどんどんだめになっていくということではなくて、プロアクティブ、どんどん魅力ある地方を作って人を呼び込んでいくということで、生産と消費の両方を活性化することはどうだろうかと思います。

高齢者で余り働かない人たちがどんどん中心になっていくと、消費ばかりということになるのですが、そうではなく、先ほど申し上げた「いろどり」のような例を、地方が活性化して高齢者の人たちが働いているということで、そこでお金を稼いでそれを使うという循環を考えていったらどうだろうかと思います。

また、多くの若者が地方の移住を検討している。ここはグラフを出しておいたのですけれども、東京在住者の4割ぐらいが地方への移住を希望している。20代に至っては半分ぐらいの人たちが地方に行きたいと言っているということですね。現在の若者は必ずしも大企業に就職して安定した生活を送りたいと思っている人ばかりではないということなので、魅力ある地方を作ることによって、起業家に近いような形で地方で生活する。そんな人たちも呼び込める、引き込めるのではないかと思います。是非そういう人たちを積極的に活用できるような魅力あるまち作りみたいなことを支援していったらどうかと思います。

実際に私が行って見てきたところ、これは、我々の人材の育成ということで、若者たちがいかに生き生きと仕事をしているかということを見せるために、私がLIXIL時代に実際に見てきたものですけれども、例えば、十勝では「十勝未来創生プロジェクト」、非常に若い人たちが、向こうの農業とか、あるいは牧畜の中に入り込んで、生き生きと仕事をしている。そんな姿を見てまいりました。あるいは、高知県の土佐山、ここでは「土佐山アカデミー」というものを作って、東京の大企業で働いていたような人たちが会社をやめて、ここで自然の中でユズの生産を手伝ったり、そんなことをしている姿を見てまいりました。あるいは、長崎県の小値賀島というところでは、「古民家ステイ」というものがありまして、高齢者の人たちが使わなくなってしまった古民家をホテルとして開拓して、ここに観光者を呼び込むということを、これも東京あるいは大阪で活躍していたビジネスマンの方が会社をやめてこういうことをやっている。こんなことが随分行われているので、もっと大々的にこういう支援をしていったらどうだろうかということも考えています。

次のページは、地方自治体によって異なる課題の把握とそれらに対応した地方消費者行政の在り方ということなのですが、これはまさに先ほど申し上げた、私がGEのときに体験した、任せるということです。

GEに私がいたときは、ジャック・ウェルチの時代、その後のジェフリー・イメルトの時代なのですが、ジャック・ウェルチの人事をやっていたビル・コナティが引退する最後の3年間、私は彼の直接の部下でした。そのときに私が彼に言われたことなのですが、彼が私に言ったのは、八木さん、あなたはGEのことをよく分かっているねと。GEの人事のこともすごくよく分かっている、自分(ビル・コナティ)がやろうとしている人事のこともよく理解している、したがって、あなたは私に対していちいち報告の義務はないと。全て好きなようにしなさい、あなたは分かっているのだから好きにやりなさいと。これで私はものすごくやる気が出たわけですね。彼にもう一つ言われたのは、そのあなたがどうしても分からないことがあったときだけ相談に来てくれればそれでいいと、こんな話でございました。

私自身も非常にやる気が出ましたし、いろいろな新しい事例を日本あるいはアジア発でGEの本体に対して提案をするということをやっておりました。ですから、任せるだけの人材をそろえて任せてあげると、いろいろなことが活性化して起こるということの一つの私自身の事例だったように思いますので、中央で方向性を示すということは非常に大事なことだけれども、地方でいろいろなことをやってみたいという人たちに対してやらせてあげるような仕組みも是非必要なのではないかと、全国一律的なアプローチから脱却して、どんどん地方で新しいことができる、自治体ごとに異なったことができる、そんな姿ではないかと思います。

地方自治体と申し上げても、東北地方と近畿地方、あるいは九州、それぞれに違った課題を持っているはずでして、違った課題に対しては違ったアイデアで対応していくことが当然の姿だと思うので、どこまで中央でコントロールをして、どこから任せるかということに関しては、私のような者からすれば、できるだけ地方に任せてあげてほしいなと思っています。あるいは、地方の中でも何でもかんでも好きにできるというわけではないだろうから、場合によっては、特区とか、あるいはレギュラトリー・サンドボックスのような自由にできる枠組みを作って、そこではやってもいいぞ、試してもいいぞという仕掛けを持ったらどうかと思っています。

次は、ネットワークを活用した消費者問題への対応の在り方ということなのですが、私は民間企業におりましたので、どのようにして民間企業あるいは団体との連携をしていったらいいのだろうかということで少しお話ししたいと思います。もちろん民間企業や団体の支援を得るということを書いたのですが、地方が活性化しないことにはどうにもならないという民間企業が存在するわけですね。信用金庫とか、信用組合というのは、地方を出ることができないのですね。ですから、地方が活性化していかないということになるとこの信用組合等々は必然的に潰れていくことになるので、この人たちは、自分たちがお金を集め、お金を貸すということ以上に、地方の活性化に対して非常に一生懸命取り組んでいる。そんな事例が幾つも見られるようになってきています。

例えば、秋田県信用組合とか、北上信用金庫になると、地方の活性化のためにお祭りに観光客を集めるということを大々的に支援してみたり、あるいは、地方というにはちょっとあれですが、枚方市などは駅の前の枚方信用金庫というものは、それなりのビルを持っているわけですが、地方に人を集めるために、それを託児所として開放するという事例も出ておりまして、そんな地方を出ていくことができないような企業と連携することは大いに可能だろうと思います。

私は、「日本で最も美しい村」連合の設立に若干関わった人間なのですけれども、京都であると伊根町がそうなのですが、伊根町は私が推薦したのですよね。

○山田委員 ありがとうございます。

○八木委員 そういうものに関わってきたのですが、日本には本当にすばらしい村や町が存在していて、この団体自体はそこの食生活を中心に観光客を集めていくような形、これはフランスとかイタリアの美しい村連合と同様の考え方でこんなものを作っていく。作ったことによって、観光客も集まり、そこで、観光行政というか、そういったものも活性化をして、そこにいる人たち自身も生き生きとしている。こんなものがあるということなので、是非こういったところとの連携も考えていったらどうかと思っています。当たり前ですけれども、自治体間の連携、地方自治ということで、一個一個がばらばらに行動するのではなくて、隣の町と協働する、隣の市と協働する、そんなことも当然あっていいのではないかと思います。

次のページですが、人口減少あるいは高齢化を踏まえた専門人材をどう育成していくかということなのですけれども、まず、最初に私が提起したいのは、今、世界の中で日本の生産性がどのあたりにあるかということなのですね。日本とアメリカとドイツを比べてみますと、1時間当たりの労働者の生産性が日本は48ドルなのです。それに対して、ドイツとアメリカがほぼ70ドルです。生産性において、もちろんいろいろな社会の違いとか構成の違いはあるにせよ、いずれにしても、アメリカとドイツは日本の1.5倍ぐらいの生産性を上げているということです。一人当たりの生産性にすると、日本は、アメリカ、ドイツに比べて、30数%低いということです。今、日本の労働者は6700万人がおりますので、これをドイツやアメリカと同水準の生産性にするとどういうことになるかというと、人が2200万人余るということになるのです。

ですから、日本では、高齢化とか、いろいろなことが言われて、単純に人が足りないということを言われているけれども、生産性を上げていく、構造的な問題を解決することによって、生産性を上げれば人はたくさん出てくるということがあるということ。これは一つ頭に置いておく必要があると思います。

日本の公務員さんは生産性が高いと言われているけれども、そうはいってもいろいろなやり方の中で生産性を高めて人を捻出することは可能ではないかともう一方で思うわけです。さらには、AIとかロボットを活用することによって単純労働をどんどん減らしていく。そのことによって、長い目で、今回は20年という目で見ていますけれども、20年ということで見ていけば、間違いなく人は逆に余ってくる状態になるはずなのですね。ですから、足りないと言わないで、何とかそれを先取りしていって、前倒しに人を生み出していく。そんなことを考えなければいけないのではないかと思います。

採用と活用ということに関していいますと、この問題は、日本の消費者行政といいますか、特に高齢化あるいは地方の人口減少等々の問題は非常に重要な問題であって、日本社会を活性化していく上で非常に貴重な課題だと思います。それを大々的に言うことによって、日本の多くの若者、あるいは若者でなくても、日本の人たちの中に、この問題に対応したいという思いを持っている人がいるのではないかと思います。その思いをいかすという意味で、もっと大々的に人の募集みたいなこともしていってはどうなのかなと思います。手弁当でできるかどうかは分かりませんけれども、若干のお金はかかるかもしれないけれども、こういう難しい問題に対応するときには、アサインをされた人、やりなさいと言われた人によって実践するのではなくて、やりたい、強い思いを持って、それが大義である、誇りに思うという人たちを中心に作っていく。そんなチームとしての行政チームということを大切にしていったらどうかと思います。

自治体の中でも、民間企業ではよくやっている公募ですね。こういったことをやりたい人、是非これに貢献したい人というものに手を挙げてもらってやっていくような形はどうなのだろうか。あるいは、今、まだ10数%ではあるけれども、民間の企業は副業を認めています。この副業は、企業によっては、報酬ゼロでどこかの副業をやっても構わない。自分たちの会社は100%払ってあげるから、ただで働いても構わないよと言ってくれている会社もあります。そういう会社から思いを持った人たちを集めることによってこれを推進していくことも可能なのではないかと思います。

大学の中では、福祉とか、地方行政とか、そういったことを一生懸命勉強している若者がたくさんいるのではないかと私は思うのですが、そういう若者たち、もちろんプロフェッショナルというには随分ジュニアだろうと思うけれども、思いを持っている、こういう人たちを使うということも一つの手ではないかと思います。いろいろな意味で、やりたい、この課題は非常に重要だと思っている人はたくさんいるはずなので、その思いを持った人たちをうまく集める方法を何とか考えられないかなと思います。

さらには、次のページですが、人口減少あるいは高齢化を踏まえた専門人材の育成、活用の方策ということですけれども、今、申し上げたように、育成ということでは、思いを持った人を集めても専門知識がないということであればなかなか活動しにくいということも事実なので、思いを持った人を集めれば、その人たちを、行政という観点から、そのプロとしての意識付けというものをしていかなくてはいけないだろうなとは思います。

さらには、いろいろなアイデアということを申し上げたのですが、アイデアを持った人たちがたくさん集まって、どこの行政で何をしているのかということをタイムリーにシェアしていくような形で、自ら学んでいくといった機会も大事ではないかと思います。

また、これは私がGEにいたときの経験から発想したのですが、GEという会社はコーポレート・オーディット・スタッフというプロフェッショナル集団を持っています。私がいたころには、30万人の社員に対して450名のプロ集団を持っていました。若い人たちです。大体20代後半から30代前半ぐらいの若い人たちが450人おりまして、どこかのビジネスで問題がある、課題があるとなると、2、3人から4、5人ぐらいがチームを作って、その問題解決のために半年間飛んでいくみたいなことをやっていたのですね。

例えば、内閣府の中に地方行政あるいは地方の消費者行政のプロフェッショナル集団をつかんで、問題があるところ、優先順位をつかみながら、一つ一つ解決していく、地方行政と中央のプロフェッショナル集団が一緒になって解決していく、そういうプロ集団みたいなものを作れないかなということをちょっと考えたりいたしました。

さらには、科学の知見を取り入れるということをそこに書いておきましたけれども、高齢者とは一体どんな人なのだろうかとか、あるいは働くとはどういう意味なのだろうかということが、脳科学の世界で、結構、今は解明されつつある。モチベーションの問題とか、あるいは、状況や環境は変わっているのに昔ながらの考え方をしてしまうアンコンシャスバイアスと言われるような問題とか、そういったものをどうやって頭を切りかえていけばいいのかというのが、脳科学とか組織心理学の中で結構議論されている。そういう知見をいかしながら行政の中にいかしていく、そんなことも考えられるのではないかと思います。

今、そこに変な絵が描いてあるのですけれども、左側はエスカレーターですね。一歩一歩の絵に黄色いステップ、足跡が描いてあるのですけれども、止まっている足跡のほうは止まるのですね。足跡が一歩一歩進んでいるほうにこういう足跡を付けると歩くのですね。これナッジ理論というものなのです。別に左側で歩けと言っているわけではないのですけれども、こういうふうにするだけで人は歩くのですね。こんなものも脳科学とか組織心理学の中で扱われていて、上手にこういう知見を使うことによって、地方の消費を活性化させていくことはできないかなということを考えています。

次のページですが、人口減少、高齢化を踏まえた専門人材の育成ということで、活性化は、今、申し上げたことで、目的と意義をしっかり持った人を集めてきて、首長さんたちが、おまえたちに期待しているのだと、非常に青臭いですけれども、こんなことで人はものすごく頑張ってくれるので、私が経験してきた世界はそういう世界だったので、是非、この問題、課題を第一の課題として首長さんたちに関わっていただいて、やる気を喚起する。そんなことも必要ではないか。

さらには、よくやった人とそうではない人の差を付けていくことも大切なのではないか。したがって、実力主義で評価し、やった人に対してはきちんとした報酬を与えていくという考え方もあるのではないかと思います。

次のページは、人口減少、高齢化を踏まえた専門人材の育成、活用の方策、もう一つ書いておきましたけれども、組織としては、ニーズに柔軟に対応するということで、プロジェクトごとにプロジェクトリーダーを決める。固定的にこの人がいつもリーダーということではなくて、プロジェクトごとにリーダーを入れかえていくような仕組みとか、仕事の仕方に関しても、デザイン思考、何事も全て完璧にプランをしてから進めるのではなくて、走りながら考えていくという思考も必要なのではないか。行政というと間違ってはいけないということが多分第一優先課題としてあるのだろうと思うのですけれども、難しい問題に対応するときは、場合によっては間違えるリスクをとってでもやってみる、そして、間違ったら直すというアプローチ、そんなアプローチも必要なのではないかと思います。

さらには、アイデアは、何も委員だけあるいはそこで携わっている人だけに限る必要はなくて、クラウドソーシング、インターネットを使いながら、こういう問題を解決したいのだけれども御意見はありますかということを問うことによってアイデアを募るというのも可能なことではないかと思います。

次のページは、様々な業務を兼務しつつネットワークを活用するということですが、これは兼務というのは当然ですし、副業(組織内外)は、行政の中で2つの仕事を同時にやる、こういうものを自分がやりたいということでやらせてみるという副業であったり、先ほど申し上げた企業から受け入れるということであったり、フリーランサーをうまく活用するとか、学生を使うとか、クラウドソーシング、公募、プロフェッショナル部隊、今日私が申し上げたようなことを是非御検討いただけたらありがたいなと思います。さらには、最初に申し上げた民間企業や団体との連携とか、大学は非常に積極的にこういうことを研究しておられるわけですから、そことの連携とか、自治体間も壁を取り払って連携していく。そんなことができれば、何か今までと違った行政ができるのではないかということで、意見を申し上げました。

国と地方という意味では、一番最後のページは、最初に申し上げた国からのコントロールという考え方でも、地方をどういうふうにいかしていくかという、地方の自由な意思、裁量権をどういかすかということを考えたいということで提案をさせていただきました。

以上でございます。ありがとうございます。

○新川座長 どうもありがとうございました。

非常に多岐にわたる内容をコンパクトにお話しいただきました。

それでは、各委員から、御質問、あるいは、関連していろいろとお考えになられた点、お気づきの点があろうかと思います。御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

どうぞ、大森委員、お願いします。

○大森委員 とても興味深いお話、ありがとうございました。

どれもこれも興味深いのですけれども、私は3つ印象に残ったことがありまして、特にプロフェッショナル集団を内閣府で作って地方自治体に派遣するというのは、とてもすばらしいなと、私も前からそういうことができないかと思っていたところです。

生産性のお話なのですけれども、どうして日本はドイツやアメリカに比べると生産性が低いのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。

最後なのですけれども、働く高齢者への減税、年金の繰り延べとセットとするというお話がありまして、身近な問題として、主人も働くよりも家にいるほうがお金を使わないということで定年を選びまして、私としては非常に不満なのです。実際問題、そういう人は地域で結構狙われまして、自治会の役員とかでこき使われて本人は非常に不満を持っております。今、地域で、防災とか、見守りとか、行政がやらないといけない仕事を地域に無償でやらせているというところがあるので、その辺、今のアイデアをうまく活用できないかなというのが私の感想です。

3つ、よろしくお願いします。

○八木委員 ありがとうございます。

プロ集団というのは、GEにいたときには非常に効果的でした。同じことをLIXILでもやりまして、LIXILでもいろいろな問題が世界中で起こるということがあって、GEの450人には劣るのですが、20人のプロ集団を作って問題解決をする。プロですから、行くところ、行くところでそれなりの問題解決はしてくるのですね。全部できるかというと、全部やろうとするとものすごい数になるのですけれども、優先順位を付けて対応していくということであれば、非常に効果的にできるのではないかと思います。どうしても行政というと、平等に、公平にという考えが出るのかもしれないのだけれども、優先順位を付けて上から当たっていく。GEでは450人ですけれども、20人だったとしても問題は一つ一つ解決できるので、全体ではないとしても何か風穴を開けていくという観点からも、そういう取り組みもしてみたらどうかとは思います。そんなプロフェッショナルの方は多分この行政の中にたくさんいらっしゃると思うので、うまく活用する方法として一回お考えいただけたらと思って提案しました。

生産性ですけれども、何でこんなに低いのだろうか。私が、LIXIL、GEで自分の部下の国籍を勘定すると、16カ国あったのですよ。アメリカ人やドイツ人に比べて日本人がばかかというと、決してそんなことはないですね。むしろ日本人のほうが賢かったりするわけですね。ところが、全体の生産性で見ると、3割以上低いというのは国レベルで出ているわけですよ。何でだろうかと私も考えました。これは、無駄なことを随分しているのです。自分もこんな年齢になってからなのですけれども、年功序列で人を上げていく。一番優秀な人を活用するというよりは、どうしても年功で経験のある人を上げていく。ポジションで人を処遇していくのではなくて、能力というよりは、年次の中で、同期入社の中で何割ぐらいという形で管理職を作っていく。そうすると、会社の成長以上に多くの管理職ポジションができ上がっていく。非効率な組織になるのですね。こういうものでやっていくと、なかなか生産性は上がらない。さらには、私は世界中で見ていたので、日本の特徴はルールが多過ぎるということです。人事に関しても、ものすごくたくさんのルールを持っています。ドレスコードも決まっています。定年制というものもあります。初任給というものが決まっています。いろいろなことを全てルールでとやります。ルールを作るというのは、最初は効率的にやるためにルールを作っているのですが、時代とともにルールは環境に合わなくなります。それをしっかり守っていると、非効率はどんどん起こっていく。先ほど最初に申し上げた、任せるということをやっていくほうが、効率がいいものが出来上がるというのが私の感覚です。任せるためには、任された人たちの実力を上げることがセットなので、これをやるしかないのですけれども、それをやらないで任せるとろくなことになりませんけれども、ルールでやっていくよりは任せるという活動をした方が効率的だというのが、私が民間の会社で経験してきたことです。したがって、何とか無駄なことをやめる。そういうことを基本にして生産性を上げていけばいいのではないか。私がLIXILにいたときは、最初に入った年に、人事の人間が350人ぐらいいたのですね。4万人の会社、日本に4万人、海外に4万人で、日本の中で350人がおりました。この数を1年目に250人に減らしたのですね。全く同じ以上の仕事を250人で完璧にやってくれました。これは、変なルールを取り下げて、どんどん任せていくことによってそれが可能だということなので、生産性は是非そういう形で上げていきたいなと思います。

働く高齢者の方たちということですけれども、私は、53から55歳で能力が平均的には落ちるというアメリカのデータは、そこから自分たちは年齢が高くなっても能力が落ちないと思っている人たちをセグメント化してとると伸びていくというのが分かったわけですね。これはどういうことかというと、そう思っただけで上がるのではなくて、基本的には努力をしているかどうかなのです。高齢化していっても、努力さえしていけば能力は上がるというのが、これも脳の世界の中ではっきりと証明されている。したがって、高齢者の方に、例えば、日本の民間の会社だと、55歳ぐらいで役職定年というものになるのですね。60歳になると、給料が半分ぐらいになるのですね。65歳になると、出ていけと言われるのですね。役に立たなくてもいいと会社からメッセージを出されているわけです。そうではなくて、我々は、年齢とは関係なくて、役に立ってください、あなたたちの力はどこででも十分に役に立ちますと。現に役に立ちます。私は、今、63歳なのですけれども、人生で一番調子がいいのです。こういう人を使わないと損だよということを私は言っていくべきではないか。多分、大森先生の御主人も、恐らく十分どこでも役に立つものがありながら、社会の仕組みとして65歳になったらやめてくださいとか、定年してくださいということで、無理やり仕事をやめさせているのではないかと思うのですね。だから、そういう人たちを、そんな制約を外して、もっと役に立てる場所をどんどん作っていくことによって、高齢の人たちも活性化していくのではないかと思います

長くなりましたが、以上です。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

どうぞ、池本委員長代理。

○消費者委員会池本委員長代理 オブザーバーの池本でございます。

非常に興味深いお話をいただきまして、幾つもお聞きしたいところがあるのですが、絞ってお伺いします。

専門人材を育成し活性化するという言葉の中には、自治体の中の職員自体が、そもそも消費者行政の位置付けが自治体で低いものですから、しばらくいて2年くらいでほかへ移ってしまう。どちらかというと、消費生活相談員に相談業務を任せて、職員は余り動いていない。率直に言うと、そういう問題がある。そういう職員の専門性を高めるという側面と、特に強調されていた地域の中での専門人材を育成すること、最近よく言われる官民連携の形で地域での消費者問題の課題解決に取り組む、という2つの側面があるかと思います。

最初のほうの職員の専門性を高めるというところは、これは自治体の内部あるいは国からどういう形でそれを進めていくかという課題かと思うのですが、その点についてもまたヒントがあれば教えていただきたいのですが、むしろ後半の地域における官民連携を高めていくというところです。

私が受け止めているのは、今、消費者庁も地域での官民連携で高齢者の見守りネットワークを構築しようということを言っているのですが、どちらかというと、高齢者福祉の分野の民生委員さんとか、地域包括支援センターの方とか、社会福祉協議会とか、福祉の専門職の人に消費者問題もちょっと勉強してもらって、見守りに協力してもらおうというところにとどまっていて、逆に、その人たちは、福祉だけで手いっぱいなのに、防災やら、消費者やら、いろいろな課題が来てあっぷあっぷですよという感じに、今、なっているように感じています。

残念ながら、我が国では地域の消費者問題に関心を持って行動するという消費者団体的なものが今は低調になっていて、もっと消費者問題を学びながら地域で伝える、官民連携で動く人をどう作っていくかということが課題ではないかと思っているのです。そのあたり、どういう作り込みの仕方が考えられるのかというあたりについて、ヒントをいただければ幸いです。

○八木委員 ありがとうございます。

1つ、私が思いますのは、このお話をいただいたときも、ずいぶん狭い範囲で取り組まなければいけないのだなという印象を持ちました。どうして、消費者行政の地方の消費者みたいなところにフォーカスをして、そこだけの問題を議論していくのかなと。現実にいろいろ聞いてみますと、非常に幅広くいろいろな問いも受けましたので、そうではないアプローチだと思ったのですけれども、単純に、高齢化とか、消費者とか、先ほどおっしゃった見守りとか、こういうものだけで考えると、守りの行政のような気がするのですね。正直に申し上げて、面白くないのですよ。民間の人たちは、面白くないと来ないですね。ですから、もっと面白いテーマにしてみたらどうなのだろうか。

だから、狭い範囲で、消費生活とか、高齢化とか、そういったところに絞るのではなくて、地方をどうやったら活性化できるのか。地方を活性化することによって、高齢化問題をむしろ積極的に活用していく。高齢者の活用をする。私は、アクティブとか、ポジティブとか、そういう言葉をよく使うのですけれども、前向きな姿勢を出していくことによって、面白いのではないかという意識が出てくるのではないか。

今のものを見ていくと、沈み行く日本を何とかしなければいけません的な、守りの、面白くないという感じになるので、そうではなくて、面白いではないかと。言われていることではあるけれども、高齢化先進国、本当にそうだと思うのだったら、高齢化先進国で何かを守るのではなくて攻めるという、高齢者をどういうふうにいかしていくか、面白いではないか、日本にはすばらしい高齢者がいっぱいいるぜと。高齢者というのは、何も病気をしてよぼよぼになって、福祉の必要な人ではないのだと。知恵を活用し、そういう人たちが生き生きとした世界を作るというのはすごく面白いことだと言えば、私は、人は集まってくると思います。優先順位も高まるだろうと思います。学びも出てくるのではないかと思うのですね。

学びというのも、何も国あるいは地方行政からこういうことを学びなさいとやらなくても、そういう面白いことを前面に出し、面白いからやってみようという人が出てくれば、私はその人たちは自分で勉強すると思います。我々民間でやるのは、会社から教えられたことばかりやっていたのでは全然成長はないよと。だから、自分がどこかの分野をやろうというのだったら、会社から教えてもらえることは、それはベースであって、それ以上に自分がこれは必要だなと思うことをどんどん勉強しなさいと。その勉強した人たちの中から立派な人たちが随分育ってくる。

そのときの鍵は、将来、私はこの世界で生きていくのだ、これは面白いのだというところが鍵なので、是非、そのテーマ自体を、やってみたい、面白いという形で位置付けていくことが必要なのではないかと思います。

○新川座長 どうぞ。

○消費者委員会池本委員長代理 大変ありがとうございます。

私も、先ほど地域での消費者問題に取り組む人が我が国では衰退していると申し上げたときに、30年、40年前のような、消費者問題を専門にやる団体を作れということをいっても、それは今の地域社会で、30年、40年前の専業主婦の人たちが食の安全から始まってグループを作るというのは、今の条件の中では難しいのだろうと思います。むしろ、地域のコミュニティーに活力を持たせるという大きな枠組みで考えていってはどうかということを、もやもやとは考えていたのですが、八木委員がおっしゃったような産業の活性化も含めた大きな枠組みというところまでまだ思考は至っていないのですが、地域コミュニティー全体を活性化するために、これも地域の中にどういう関連する課題があるのかを探っていかないと、どういう枠組みを作っていいのか分からないと思うのですが、そういう広い枠組みの中で関心を持って集まる人を作り出していくと理解すればよろしいのですね。

○八木委員 そうだと思います。

実際に今日申し上げた「土佐山アカデミー」などというものは、まさに高知というすばらしい自然をいかして、自分たち若者がここで面白い社会を作りたいのだといって、それこそユズを作っている人たちは、すごく高齢のおじいちゃん、おばあちゃんが作っているのですけれども、その人たちと一緒になって、人手が足りないと自分たちで助けに行くみたいなことをして、すごく面白おかしく楽しそうに仕事をしているのですよ。そういう生き生きとした地方、その中に地方の消費者行政が息づいているような形を作れば、私は、日本の若者たち、あるいは若者たちでなくても、たくさんの人がやってみたいと思うのではないかと。私自身もやってみたいと思いますし、そういうものを何か作れないかと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

どうぞ、山田委員。

○山田委員 八木委員から大変示唆に富んだプレゼンテーションをいただいたと思うのですけれども、今、それを突き詰めていくと、非常に方向として何となく違う方向が出てくるのではないかと思います。

こう申しますのは、高齢化社会において本当に安心・安全を確保しようとすると、今、おっしゃいましたように、守りではなくて攻めていかなければならない。高齢者が、社会からフェードアウトをするのではなくて、できるだけインクルードをされて、その中で地域のために働いていくということをやっていかなければいけない。そうすると、そこにソーシャルキャピタルが出てきて、いろいろな面で話し合う相手ができて、知見も高まっていくということは、そこでは消費者行政はあくまでワン・オブ・ゼムにしかならない。そのワン・オブ・ゼムにしかならないというところが、まさに地方において消費者行政の専門家の地位が低いということにそのまま反映しているのですね。

まさに、今はもっと幅広い体制でやらなければいけない。例えば、消費者の問題だけに関わっているのではなくて、高齢者が働けば、健康になる。そこで、医療費が下がる。そして、社会的に更に知見を高めて、消費者問題にも対応できる。そういう形で包括的な立場になればなるほど、その地域自身がよくなる。ところが、そこに消費者問題のプロフェッショナルというものがどう絡んでくるのだろうかということが非常に聞いていて分かりづらかったです。

私自身、地方行政のプロフェッショナルとして国で育てられて地方に派遣をされてきた者でございますけれども、地方行政のプロフェッショナルとして育てられてきて派遣されている人間がどれだけいるのかというと、非常に数が少ない。役割も限定されている。行く限りは生産性を上げなければいけない。まさに消費者行政自身はそんなに生産性の高いものではないと思っています。一番の弱者、弱い人たちを守っていく行政、そこに生産性を持ち込んでいくこと自身が一つの矛盾になってしまうのではないか。

ですから、生産性の問題で割り切っていくと、消費者行政はもっと隅に追いやられてしまう。その中で、どうやってプロフェッショナルが生きていけるのか。私は、生産性では考えられないのではないか、もっと社会の基盤的なインフラとしての問題として考えていかないといけないのではないかと思うのですけれども、そのあたり、まさにトータルな形で地域を活性化していく中で、消費者行政という専門家行政がどれだけ生産性の高いものとしてインクルードをされているのかというところが、今、聞いていて分からなかったところです。御質問したいと思います。

○八木委員 生産性ということを申し上げたのは、消費者行政の生産性ということではなくて、日本全体として人が足りないというのはうそだよねと。だから、非常にテーマとして前向きなテーマを出していくことによって、人が足りないという状況ではなくて、必ずそこに手を挙げてくる人が出てくるのではないか。だから、消費者行政の生産性と申し上げたわけではないので、そこは消費者行政をどう生産性を上げるかといわれると、今のところ、私自身も答えがございません。これは全くのど素人でございまして。

ただ、今、申し上げたようなことは、人がいない、だから、行政も大変だということではなくて、いろいろな意味で日本の生産性はこれからどんどん上げていくことができるので、人が足りないという考え方はやめましょう、その中で高齢者も含めてどんどんいかしていきましょうということで申し上げたつもりです。

専門家ではない人であれば、私は半分リタイアした高齢者の方を活用するということでやっていけば、社会全体の生産性は上げていけると思うし、それはあると思うのですけれども、専門家自体をどうするかということについては、私はここではほとんど触れていません。

○新川座長 今、山田委員から御質問がありましたもう一つのほう、これからの日本社会全体を考えていったときの専門性あるいは行政の役割として、こういう地方消費者行政的なものを改めて地域社会の活性化といったことの中にどんなふうに位置付けていけるかという御質問はとても興味深いと思いながら、八木委員はこれにどういうふうに答えられるのだろうと、ちょっと興味があったのですけれども、いかがですか。

○八木委員 それは山田先生がおっしゃるとおりで、包括的に捉えないと、狭い分野だけ、例えば、私なども人事をやっていますけれども、おまえ、採用だけをやっていればいいよと言われたら、やる気は全然出ないですね。人事というものを経営の中で位置付けて、私は人事担当副社長で大きな会社のキャリアを終えているのですけれども、できるだけ上のポジションに立って大きな仕事がしたいとは思っていました。

そういうものがあるからどんどん勉強もするし、大きな経営の中で人事というものはどういうふうな役割があるのかということも考えてきたつもりなのですね。先ほど山田先生がおっしゃったように、大きな行政の枠組みの中で地方というものがどういうふうな役割を果たしていて、そんな中で地方消費者問題はどういう役割を果たしていて、大きな中で、こういう仕事をしている。それが将来のキャリアの中でもこんなふうに生きていく。そこの位置付けをしっかりとできれば、消費者行政の優先順位が低いということに対しては、もっとアクションをとっていけるのではないかと思います。キャリアという観点からも非常に重要な位置付けがあって、その先に非常に大きなキャリアが、あるいはやりがいが広がっているということを示してあげることが大事だなと思います。

○新川座長 とめさせてしまって、すみません。

山田委員、お願いします。

○山田委員 その中でもう一つ質問がありまして、私も消費者問題が専門ではないから、そうした面でお聞きしたいなと、これは別に八木委員だけに限らずお聞きしたいなと思うのですけれども、先ほどから「専門人材」という言葉がずっと出てくるのですね。

ただ、私が実際に地方の現場にいますと、この消費者問題がものすごく多様化して複雑化している。例えば、オレオレ詐欺的なものもある。産地偽装的なものもある。リフォーム詐欺的なものもある。最近では、IoTを使って、毎日のように私のところにもメールが入ってきますけれども、そうしたものもある。トータルにこれを専門的に解決できる人は本当にいるのだろうか、この場合で言っている「専門人材」とは一体何なのだろうか、消費者問題だからと切り込めていける話になってきたのだろうかというところがものすごく疑問でして、そこが私どもの消費生活相談員でも一番大変なところで、ありとあらゆることにどんどん進展が出てくる。そこで、例えば、IoTなどが入ってきてしまったりすると、分からない人たちはいっぱい出てくるわけですよね。そうした問題に対して、ここでいっている「専門家」というのは一体何なのだろうかという疑問があるのですけれども、誰かお答えいただければありがたいなと思います。

○新川座長 どうぞ、池本委員長代理。

○消費者委員会池本委員長代理 池本でございます。

非常に本質的な御質問、問題提起があって、私も大変興味のあるところなのです。

消費者問題の課題についてというものが、現に起きてしまったトラブルを解決する、それを補佐する、支援する役割という意味では、消費生活相談員がまさに我が国では専門家集団であろうし、各自治体に配置されています。その消費生活相談員については、毎月のように新しい課題の研修会をやったり、個々の自治体の相談員だけで手に余るときは国民生活センターがその支援相談をやって全体のレベルを上げるということをやっています。

問題は、その個別案件の解決のところは一定のシステム化ができているのですが、被害の防止に向けたところが非常に不十分だと感じています。本当は、それは職員さんが、しかも消費者行政だけで被害の防止はできませんので、一方では高齢者福祉、他方では、若者であれば教育委員会とか学校、あるいは公民館とか、いろいろな自治体の中のあらゆる部署と連携をして、そこの中で啓発をしたり、あるいは警察や規制部門とも連携して取り締まってもらったりというコーディネート力が必要だと思うのです。

ですから、自分で解決するというよりは、それができるところを動かしていくコーディネート力です。ところが、それがほとんどこれまで養成されてきていなかったというのが、今、議論している、内部におけるコーディネート力を持った専門性ということではないかと考えているところです。

○新川座長 ありがとうございました。

この点は、当地方消費者行政の検討の、ある意味では、20年後をどう見据えて、それに向けて何を取り組んでいかないといけないかというときの一つの大きな重要なポイントで、私たち自身もここをもう一度しっかり捉え直しながら進まなければならないと思っております。いろいろな御意見がおありかと思いますが、今後の大きな課題ということにもさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 先ほどいろいろ明確にお答えいただいて、ありがとうございます。

3つ目の、働く高齢者への減税というか、年金繰り延べとセットでというところなのですけれども、うちの主人は非常に計算高くて、わずかなお金で雇われるよりは年金生活のほうが得だという計算的な判断なのですね。実際のところは、リタイアした男性は地域の自治体で非常に頼りにされて、断り切れずに、ボランティアで、今なども災害があるとかといったら自治会館を開けたり、そういうことばかり無報酬でやらされている状況で、そういうことをいろいろやらされるということに対して自治会に入らないよという人も増えてきたり、結局、行政のやる仕事を無報酬で地域に委ねるがゆえに、地域自体の連携がむしろできなくなっているような問題があるのですね。

そこで、例えば、うちの主人のように計算高いリタイア組が、地域のそういう行政の仕事を肩代わりするようなことをやれば、報酬がもらえ、それをもらったとしても年金を減らされることはないというシステムができると、もう少し早くリタイアをして地域のために動いてくれる人が増えるのではないかと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○八木委員 おっしゃるとおりだと思います。ただ、お金を支払う、年金を受け取るということを時間軸の中で考えたほうがいいと思うのですね。今もらうか、将来もらうか。今、働いて、報酬をもらって地方行政に携わっていく。そのことによって年金を先送りすることによって、いつ死ぬか分からないですけれども、先に年金をプールされていくような仕組みをもし作れれば、必ずしも自分は年金を損しているという形ではなくて、将来に向けてため込んでいる。今は、その分働いている。非常にえげつない言い方やけれども、人間はいずれ死にますので、そこをうまく計算することによって、社会に負担をかけないような形でどういうふうにすればそれが実現できるのかというのは、私はそこの専門家ではないので答えを持っているわけではないけれども、何かソリューションがあるのではないかという感じはします。

ただで働くというのは人は嫌なので、計算高くなくても、普通、なかなかただでやらないので、何かそこにメリットを出していくことによって活性化していく。そのかわりに、失うと思ったものを失わないように、将来にため込むというやり方ができないかなと思いますよね。

○大森委員 ありがとうございました。

○新川座長 ありがとうございました。

伊集委員。

○伊集委員 御報告をどうもありがとうございました。

先ほどから出ている論点にもつながると思うのですけれども、やる気のある人材というか、問題意識のある人材を、消費者問題だったり、あるいは広く地方の問題に登用していくということが大事になっていくというのは本当にそのとおりだと思うのですけれども、日本の場合だと、例えば、民間にいるような人材をどうやって公共的な仕事に参加してもらうかというときに、割と職務としての区分みたいなものが問題になってくるようなところがあるのかなという気がしています。私は財政の専門家として参加させていただいているのですが、諸外国に、例えば、ヨーロッパとか、ドイツとか、スウェーデンとか、イギリスとかに調査に行って、いろいろそこの市役所の人たちに話を聞いたりすると、日本の場合は、公務員の位置付けが、民間の職員と公務員はかなり身分の違いが明確になっていて、そこになかなか交流がないところはあるのですけれども、例えば、スウェーデンのストックホルムなどに行くと、そこのストックホルム市の財政課で働いている人は、もともと民間の銀行で働いていて、ある数年間、市役所に入ってきて仕事をするのだけれども、それが終わるとまた民間に戻っていくみたいなものがあるし、ドイツでもそういうようなお話がある。そういう民間部門と公共部門の職務としての垣根が結構低いということがある。そういう仕組みがあると、人の交流は割とあるのかなと。印象でしかないのですけれども。

仮に御提案いただいたようなやる気のある人を民間からでも登用していくとなると、日本の場合は、そういう人たちはその市の職員としてやってもらうのか、そうすると、いろいろ問題も結構出てくるのかなと、場合によっては市役所の内部から反発が出てくるということももしかしたらあるのかもしれないし、そうすると、扱おうとしている問題を官民連携のようなところの位置付けとして人を採用するということが現実的なやり方としてあったりするのか。これまで海外でもお仕事をされている中で、そういう民間の人が公共部門の仕組みに関わっていくというところで日本との違いがあったりするとか、そういう感覚とか、御経験とか、もしあればお聞かせいただきたいなと思ったのですけれども、いかがでしょうか。

○八木委員 残念ながら、その経験はないです。ただ、内閣府さんにも民間企業からたくさん人を出向で受け入れておられますよね。これは文部科学省もそうです。いろいろなところで民間から人を受け入れておられて、全く枠組みがないというわけではないとは思います。

さっきの「土佐山アカデミー」ではないですけれども、そこで会った人は、もともと農業をやっている若者で、アメリカで博士号をとって日本に貢献したいと帰ってきている人ですけれども、この人は全く民間で自分で勝手に仕事をしている人ですけれども、高知市と一緒に仕事をしているということも枠組みとしてはあります。

どんな枠組みを作っているか、私は知りません。だけれども、明らかに私がそこにいるときにも役場の人たちが3から4人来ていろいろ話をして帰っていきましたし、いろいろな形で連携は可能なのだろうと思うのですね。それは首長さんがどういうふうにされたいと思っておられるのか。その地域の人たちが、どういうふうにそういう民間の人たちを受け入れていくのか。状況によって随分違うだろうと私は思うのです。ですから、一律にやるのではなくて、例えば、山田先生のような方が知事でいらっしゃった京都だったらこういうふうにできるよというものを、京都だけにやらせていただけるのだったらこうというものは多分おありになったのではないかなと。

むしろ山田委員に聞いてみたいのですけれども、そういうものは、自由にやらせてくれたらこんなことはもっといろいろできるぞというものがあるのだったら、やればいいのではないかと思うのですね。ストックホルムでできていて日本でできないことはないと思うのですね。それは、みんな一律でやろうとすると、問題がいろいろあるところで難しい問題を抱えるけれども、この地域でここでだったらこれはできるということをもっと許していけばいいのではないかと思うのですけれどもね。山田委員、どうでしょうかね。

○新川座長 飛んできましたが。

○山田委員 幾つかやり方がありまして、今、かなり日本も官民の境は消えてきていて、一般的に言えば、任期付職員という形で民間の方から迎えている。京都府でも、例えば、観光関係はJTBから迎えたり、IoT関係はソフトバンクから来てもらったり、やっています。そのときに一番問題になるのはお給料の問題で、圧倒的に官のほうが低いですから、いい人に来てもらうと、かなり本人が我慢するか、会社が補填するかという形になってまいりますので、そこの調整のところが結構難しいなと。JTBから来た人の場合には、非常につらい中で来てもらっているけれども、本人が意欲を持ってきてくれたのでやってくれたのですけれども、戻ったときにどれだけ戻れるかという話があって、そこは大変厳しい点があります。

地方において働いている人たちの給料を払おうという例は、一番典型的なものが消防団員さん。消防団員さんは、これは特別公務員という形になっておりまして、お給料は払われております。払っていない地方公共団体もあったのですけれども、払われることになっております。ですから、この特別地方公務員を使えば、基本的には払うことができる。私ども京都府では、そういう形で特に地域の活性の核になる人を募集して、これを特別職の公務員という形で、働くのは半分でいいよと、つまり、週20時間ぐらい働いてもらって、そこの部分の20時間のお給料は払いますよと。ただ、残りのほうは、自分で農業をやるのもいいし、ほかのことをやるのもいいですよという形でやっているところです。

ただ、一番難しいのは、そのときの管理ですね。消防団員ですと、一定の訓練があり、一定の火災現場活動があるので、そのあたりは管理ができるのですけれども、「半公半X」の方をどうやって管理していくのかという問題は常に我々は危険性との境にいるということが現状です。

ですから、多分消費者問題などについても、そういう方を増やしていくというやり方はこれからどんどん出てくるのではないかと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

どうぞ、尾嶋委員。

○尾嶋委員 特に質問ではないのですが、先ほどの専門人材のことについて、消費者行政の専門職員はなかなか育っていないというのが現状です。

大体職員ですと3から4年ぐらいで異動してしまうのですけれども、消費生活センターでは、あっせんといいまして、事業者と交渉をしますが、自治体の中では、これが特殊な業務なのです。ほかのところでそういう業務を行っていないので、異動してきますと大変驚くのです。それでようやく理解したところでほかのところに異動してしまうというのが現状です。消費者行政職員は消費生活相談員が育てているのだということを言われる方もいらっしゃいますし、私は相談員ですけれども、消費者行政の専門職員の養成が十分にされてこなかったことがこれまでの大きな問題ではないかと思っています。

もう1点ですが、八木委員が様々な業務の兼務をしつつ、ネットワークを活用し、多様化、複雑化する消費者問題への対応ということをおっしゃいましたけれども、相談員は待遇が悪いですけれども、次第に改善はされつつありますが、それに伴って制約が強くなってきているように思います。相談員は、通常の業務のほかに、いろいろな消費者団体や、弁護士さんと交流を持ち、勉強したり、学んだり、情報を得ているのですけれども、自治体の中には制約を次第に強めてきているのではないかと感じることがあり、その辺を私は危惧しています。今の民間の八木先生のお話は非常に興味がありました。

○新川座長 ありがとうございました。

大分時間を過ごしてきましたが、もう一つ御報告もございますので、何かこの点だけはというものがあれば、どうぞ。

○伊集委員 もう一点だけ。

質問というよりは感想なのですけれども、今日御報告いただいた前半のほうに出てきた、今後の20年後の我が国の形であったり、あるいは地域の形で、高齢者が、本当に社会保障の恩恵を受けるだけの存在ではなくて、より自立して、こちらでは「アクティブシニア」と書かれている。実際に変わっていくし、私も高齢者になっているのだけれども、さらに若い人たちが高齢者を見ていく見方も変わっていくと思うのですね。その地域の中で、今、いわゆる高齢者として捉えられている人の位置付けも大きく変わってくるのだと思うのですけれども、もう一方で、あえて言うならアクティブシニアに対して、パッシブシニアというか、働ける状態ではなくなって、介護とか医療とかを受けているという人も当然いるわけです。そのときに、地域という視点から大事なのは、そこが単に福祉を受けて全体で負担になっているという捉え方ではなくて、むしろそこは確実に介護や医療の需要を生み出しているというところになるわけです。そこに対してそれこそ若い人が地方に移っていくというときには、そこに仕事がないといけなかったりするし、そこで仕事は作っていかなければならないのですけれども、そういう福祉分野の雇用は、非常に安定して、需要が確実に見込めるわけです。今、介護などの分野は非常に賃金も低いので、人が安定しないし、離職が多いわけなのですけれども、そういうところでしっかりと安定して仕事ができるとなれば、高齢者がいればそこにしっかりと若い人がついてきて、そこに子供がいて、地域の生活があって、そこに所得が生まれて地域の消費に回っていくという、地域の経済循環で考えた場合には、高齢者がいて福祉を受けているということは、一方で、そこがもう一回りしていくと、地域経済を循環させていく非常に重要な契機になると思います。もともと日本の場合は高度成長の中で地域間格差を埋めるために公共事業をやってきたわけだけれども、それが効かなくなっているときに、どちらが生産性や波及効果が高いかという議論はあるけれども、福祉をしっかり充実させていく。しかも確実に需要があるところをしっかり埋めていくというところは、地域経済を活性化するという意味では、もう一つ重要な視点があるかと思ったので、こういう高齢者の形も、このアクティブという形に変わってくるけれども、一方で、福祉の地域経済の中での重要な位置付けという視点も入っていくといいのではないかという感想を持ちました。

○新川座長 ありがとうございました。

八木委員。

○八木委員 当然だと思います。

私の立場で申し上げたかったのは、「パッシブ」とおっしゃったけれども、そういう福祉の対象になるような高齢者は当然存在するのだけれども、アクティブで元気なかなりの数を占めている高齢者のことを忘れていませんかと。その人たちをもっとうまく活用するということを同時並行でやっていかないと、社会のコストばかりが大きくなっていきますよねという思いを持ってこのアクティブのほうを強調したということでございます。

○新川座長 ありがとうございました。

山本先生、どうぞお願いします。

○山本座長代理 先ほど、山田委員から、消費者行政における専門性とは何だろうかという非常に根源的な問いかけがあって、私もそれは確かによく分からないと思って伺っていたので、これはまさに今後議論していく課題であると座長もおまとめになって、そのとおりであろうと思います。

専門人材の不足という問題は、特に技術分野で今後ますます深刻になるだろうと言われていまして、これは恐らく消費者行政に限らない問題だろうと思います。ただ、技術職になると比較的専門性といったときにイメージがしやすいのですけれども、確かに消費者行政の専門性になりますと、それに比べて輪郭がぼやけるところがあります。恐らく専門性といっても、まず、時代によってだんだん必要なものは変わっていくだろうと思います。私も自分は専門を持っているつもりではあるのですけれども、若い頃に比べると随分必要とされるものが変わってきた感じがあります。また、消費者行政といっても、まさに御指摘がありましたように、非常に範囲が広い。それぞれの人が1人で全ての分野をカバーするのはおよそ不可能であって、結局、そうすると、ほかの専門性とのつながりといいますか、このあたりの話であれば大体ここに持っていけばうまくいくのではないかという当たりを付けるというか、専門性そのものというよりは、まさにつながる能力というか、そこのところが重要なのではないかと感じました。

今後、そうすると、組織全体、あるいは一つの組織だけでなく地方公共団体の連携ということになると、更に連携する地方公共団体の全体でということになるかもしれませんけれども、その中でどういう専門性を確保していくかということが重要になってくるかと思います。

感想にすぎませんが。

○新川座長 ありがとうございました。

山本先生にまとめていただいたので、いいかなと思いますが、時間も押しておりますので、大変恐縮ですが、八木委員からのお話はこれぐらいにしたいと思います。後ほど時間があればまたと思っておりますし、今後も議論しなければならない論点はたくさんありますので、また改めてということにさせていただきたいと思います。

ポイントの1つ目は、キーワードは任せるということだったかと思います。その上で、地方消費者行政について、地方がどのくらい自主的・自律的に自由にできるかというのは、一つ大きなポイントに挙げられました。

大きな2つ目に、それをやるときにも、本当の意味での消費者行政のプロ集団のようなものがきちんと機能をしていく、モグラたたきになるかもしれませんが、問題解決をきちんとやっていくというところがこれからきっと大事になるだろうという御示唆もいただきました。

大きな3つ目は、社会の変化の中で、こういうプロのような専門集団を国も地方も含めてどういうふうに養成をしていくのか。あるいは、備えていくのか。そのときに、皆様方から御示唆いただきましたのは、山本先生からもございましたが、ネットワーク型で多様な専門性をどう適切につないでいけるかという、そこら辺がポイントになるかもしれないということで、これも八木先生のお話の中にありました。

それらがうまく働く社会、コミュニティーのようなものをどういうふうにこれから考えていくのか、そこにはアクティブな方々もパッシブな方々もいろいろな立場の人がいて、その人たちが一緒に暮らしていけるような、適切に働く持続可能な社会みたいなものを考えた中で、この消費者行政をどう位置付けていくかというのは、今後、皆さんと一緒に議論していければと思っております。

平板なまとめになったかもしれませんが、そういうところぐらいで、大変恐縮ですが、八木委員のお話は以上にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

引き続きまして、大森委員から、少し御意見をいただければと思います。

○大森委員 トップページもないし、終わりのページもない、非常にお行儀の悪いスライドを用意しましたけれども、八木委員の「Thank You!!!」の後にいきなり出てまいります。

私からは「消費者教育」をテーマにお話をしたいと思います。

まず、消費者教育の関連施策についてまとめましたので、振り返ってみたいと思います。

2004年に消費者基本法ができまして、消費者教育を受ける権利というものがきっちりとうたわれました。2005年に消費者基本計画ができまして、学校とか社会教育施設における消費者教育の推進、学校での消費者教育の充実ということで、2008年に小・中、2009年に高等学校と、学習指導要領も改訂されました。

次のスライドなのですけれども、2012年に消費者教育推進法という法律ができまして、消費者市民教育の重要性というものが盛り込まれました。幼児期から高齢期まで、段階特性に配慮した体系的な推進と、多様な主体間の連携による効果的な推進というのがうたわれております。

これを受けて、消費者教育推進計画が都道府県、政令指定都市などで次々に立てられて、消費者教育推進地域協議会というのも立ち上がっております。

次のページなのですけれども、2013年に消費者教育推進会議が消費者庁にできまして、消費者教育体系のイメージマップが公表されました。それぞれの対象者に合わせて、こういう教育が要るのではないかというのを具体的に示されました。

次のページですけれども、2018年には消費者教育推進に関する基本方針が改訂されて、誰もが、どこに住んでいても、様々な場で、消費者教育を受けることができる、体系的、総合的に推進していこうということが書かれました。若者の消費者教育、消費者の特性に配慮した体系的な消費者教育の推進、高度情報通信ネットワーク社会に対応した消費者教育の推進が重点事項になっております。

2018年、民法が改正されて、成年年齢が引き下げられました。2022年4月1日から18歳で成人になることになりまして、若者への消費者教育推進に関するアクションプログラムが公表されまして、若年者の消費者被害の防止・救済、主体的かつ合理的に社会の一員として活動する自立した消費者教育の育成ということが掲げられました。

若年層への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議が設けられて、2018年から2020年の3年間を集中強化期間とすることになっております。

右下に載っております「社会への扉」は、成年年齢引下げに対応するために作られた教材で、徳島県では実験的に全ての高校で実施され、これを広めようということで、消費者庁が全国に普及のPRを行っております。

今まで施策でしたけれども、一方、消費者教育はどのように変わってきたのかをまとめました。消費者基本法ができる前は、消費者保護基本法の時代でございまして、消費者は保護されるものだ、企業に比べて弱い立場であるので、消費者の被害の未然防止、消費者の被害の回復というものが主な目的で、賢い消費者を目指そうということで、消費生活センターを周知したり、クーリング・オフという制度があることを知らせたりするというのが、主な啓発の内容でした。

2004年は消費者基本法ということで、「保護」が取れまして、消費者は保護から自立、自立を支えるために教育をしていこうというふうに、「保護」よりも「自立」という面が強くなりました。これに関しては、消費者団体は、消費者はまだ自立するほど強くはないのだという反論も多く出ております。消費者の権利の尊重、消費者の自立の支援というのが、大きな目的になりました。

2012年になると、消費者教育推進法という法律ができまして、消費者市民社会とか持続可能な生産と消費というものが大きなテーマになって、消費者市民社会の担い手となるような消費者を育てていこうということになりました。これまでは、消費者は自分の被害の回復とか被害の防止が主な目的でしたけれども、それだけではなくて、自分の損得だけではなく、社会全体のために動ける消費者を育てていこうと大きく変わりました。

次のページです。最近のトレンドですけれども、SDGsとかエシカル消費というのが今のトレンドで、SDGsは国連で合意された、今、世の中にいろいろな問題があって、それを17のテーマでそれぞれできることをやっていこうということがうたわれて、日本も誰一人取り残さないということで、内閣でもこれを進めている状態です。

エシカル消費というのは倫理的消費ということで、この12の「つくる責任 つかう責任」のあたりをスポットライトに、今、盛んに行われている教育です。環境関係もSDGsの中には多く含まれていますので、そのあたりの教育も行われております。

手法ですけれども、アクティブラーニングとかワークショップというふうに、今まで学校では、どうしても一方的なワンウエイの授業が多かったのですが、自分で考えて、自分で結論を見つけていくような参加型教育方法に変わってきています。

私の所属するNPO法人の活動の御紹介です。次のページになります。1997年に自主グループとしてスタートして、翌年に消費者問題神戸会議で「子どもの消費者教育プログラム」を発表しました。その後、学校の先生の学習会だとか、消費生活センター親子講座、PTAの授業とか、国民生活センターのセミナーなどで講師を務めてきました。

次のページですけれども、これが、私たちが初めて作った教材です。食育のプログラムとして「おやつの城たんけんすごろく」というものがありまして、例えば「チョコレートを食べすぎ鼻血ブー 3つ下がる」とか、「焼き芋でおなかも快調 もう一回振る」とか、子供たちが遊びながらいいおやつが選べるようなプログラムです。

その下の「ぐりーん・ちぇっく」というのは、子供たちの身近なことで、ケチャップを出し過ぎたことがあるとか、そういう生活を振り返って「あなたは地球ととっても仲よしさん」とかを、判定するチャートです。

右上の「どうしよう?! べんりノート」というのは、アメリカではデシジョンツリーというものがあって、意思決定のためにいろいろなケースを考えるという手法がありまして、子供たちもお金を使うときに、今すぐ使ったほうがいいのか、ちょっと後のほうがいいのか、ちょっと考えてみようというノートです。

この教材を作ったのですが、これを学校に届けただけでは、校長室の隅に積み上げられて、ごみをかぶって、あとは燃やされる運命だということで、教育プログラムもワンセットで出前講座をするようになりました。子供たちは理屈よりも楽しいことに脳みそが柔らかくなって、よく学んでくれますので、最後に楽しくて分かりやすいものが要るねということで、右下のパネルシアター「ぼくはカイタロー」という劇みたいなものを付けまして、イベントなどでもやっています。

次のページですけれども、だんだん高齢者対象とか、高校での総合学習とか、消費生活センター主催の学童保育の出前講座とか、生協の組合員対象の教養講座とか、子供だけではなくて一般にも広がってまいりまして、2005年からはきっちり学校の授業で出前講座ができるようになりました。

その後、NPO法人を取得しましたので、委託事業、教材の開発とか出前講座も受けるようになりました。

2011年ごろからは、イベントで消費生活センターからの依頼のブースを設けて、啓発を実施するようにしています。

次のページですけれども、これは高校での総合学習の内容です。徹底リサーチ「ネットとケータイ」というのは、2003年ぐらいだったと思うのです。まだ携帯の時代です。全校生徒にアンケート調査をして、自分たちで気を付けないといけないことなどを「オリジナルケータイガイド」ということで、1年かかってまとめました。

その下は徹底リサーチ「地域のミッション」ということで、地域のためにこういうことをしたいというのを生徒が提案して、採択されたものを地域をフィールドにして実際にやるということで、このときは留学生に案内する日帰りツアーなどが採択されました。右の写真がその時の様子です。

次のページですけれども、こちらは中学での授業風景です。「グリーンコンシューマになろう!」というのは、今のエシカル消費などにつながる内容ですけれども、早くから学校でやっておりました。右は食品ロスに関するプログラムで「もったいない! 食べ物を大切に」と。左下は「契約ってな~に?」という中学生の授業で使うプログラムで、豊中市からの委託で作ったものです。あと「省エネすごろく」などが右に載っております。

次のページですけれども、これは小学校での授業風景です。「コンビニ食ってどんな食?」というのは、農水省の助成金をいただいて、和歌山大学と連携で開発したプログラムで、コンビニでお昼御飯を買って、その栄養バランスをそれぞれレーダーチャートを作って振り返るという内容なのですが、この写真は準備の段階から子供たちがおいしそうと言ってやってくる様子で、やはりグッズというものはすごく威力のあるものです。

右の「近くのものからいただきま~す!」というのは、これは地産地消とか、フードマイレージをテーマにしたもので、これは和歌山大学の官民連携の事業で作りました。

左下は「夢の実現」という金銭教育のプログラムですけれども、今の社会的責任投資の内容が含まれておりまして、もう10年も前に作っていますけれども、最近急に人気が出てきました。

右下は「おやつ調査隊」ということで、1週間の自分のおやつを記録して、おやつのパッケージを持ってきてもらう。そのパッケージを見ながら、お砂糖がどれだけ含まれているとか、どんな添加物があるとか、振り返るような内容です。

次のページは、学童保育での講座風景です。学校での授業はなかなか入っていきにくくて、消費生活センターも交渉するのですが、なかなか学校へ入っていけない。ところが、学童保育の子供たちは年々増えて、夏休みも退屈しながら学校に来ている。では、同じ子供たちだから、学童保育でお楽しみ要素を増やして出前講座をしようということで始めました。金銭とか、環境とか、いろいろやるのですけれども、子供たちは家庭での協力がなかったら、なかなか実現、実行できないし、子供たちを通じて親を啓発したいということで、必ずお土産教材を工作などで作って持って帰ってもらうようにしています。

次のページですけれども、これは特別支援プログラムといって、知的障害の方のプログラムです。これは消費者庁の先駆的プログラムに採用されて、兵庫県とコラボして作りました。このとき、以前、兵庫県がアンケート調査したものとか、今回、別途にヒアリングもしましたけれども、驚くべきことに、相談先として消費生活センターが1件も挙がりませんでした。いかに閉ざされた社会で消費生活センターのことを知らなかったかということがよく分かりました。

次のページが、主な委託事業を載せております。左上が静岡市からの委託で、パワーポイントの教材で、10本程度にテーマが分かれておりまして、組み合わせによっていろいろな授業ができると。左下が先ほど御紹介しました豊中からの委託の中学生の契約プログラムです。右側が消費者庁からの委託で、小学生向けの「みんなで危険を安全に」というプログラムですが、先ほどの消費者教育のマトリックスの中で、小学生の安全のプログラムが少ないということで、委託を受けました。

次のページですけれども、これはイベントでの講座風景です。幾ら開催型にしようが、出前型にしようが、来てくださる方は大抵十分賢い方が多くて、なかなか一般の方に啓発できないというのが、この消費者教育の難しいところで、イベントなどで、まずは消費生活センターを知ってもらうとか、こんな悪質商法があるのだとか、ちょっとしたきっかけ作りに大変役立っております。

次のページですけれども、成年年齢引下げに対応して、私たちが実践していることを御紹介したいと思います。まず、ネット関連のプログラムなのですけれども、2005年、中学校からスタートして、どんどん広げてやっていたのですけれども、学童保育からネットもやってよというニーズがもともとありました。成年年齢引下げもあるから、できることからやっていかないといけないということで、今年から学童、小学校低学年向けのプログラムも開発して行う予定です。

2つ目は、カードのプログラム、これも2012年ごろから、中学生からいろいろなところに発展してやっていたのですけれども、2017年から小学校高学年、2018年から学童保育と、低年齢にもやれるように広げていきました。

3つ目、中学生の契約プログラムなのですけれども、2010年に豊中から委託で受けたときは、契約の基本を中心に、教室でできるプログラムだったのですが、成年年齢引下げもあるので、もうちょっと事例を増やさないといけない。学校でも学年全体でもお願いしたいということがありましたので、事例を多くしたパワーポイントバージョンに変更したのですが、さらに「社会への扉」でまとめるような内容を高校でやっているのですが、中学生でもやってほしいということで、これは今年度からやるつもりです。

最後、高校生向けの契約なのですけれども、高校生向けも2015年ごろから本格的に実施しておりますけれども、「社会への扉」でまとめができるように見直して、50分、100分のパワーポイントを作りました。今年はワールドカフェを使った150分バージョンを企画しています。

最後のページです。消費者教育の現状と課題なのですけれども、この辺はまた皆さんとじっくり議論したいところです。

まず、現役世代への消費者教育ということで、契約当事者になることが一番多いサラリーマンだとか子育て中のお母さんに対して、ほとんど消費者教育が行われていないというのが、大きな課題だと思います。

2つ目、学校でのタイムリーな消費者教育。学校の先生は、消費者教育が苦手な先生が圧倒的に多いのです。なぜかというと、どんどん変わるから、フォローし切れないのですね。学校での授業というのは、学習指導要領がバイブルになっておりますから、そこに載ったことしかできないということがあって、学習指導要領を改訂していたら、今の流れにはついていけないのですね。なので、このあたりをどう学校にタイムリーな消費者教育を実践するか。これも課題だと思います。

3つ目ですけれども、必要な人にいかに届けるか。先ほども申し上げましたように、出前講座についても、開催型の講座にしても、本当に必要な人はなかなか出てきてくれないのです。十分賢い人ばかり集めて、賢い人に伝えるケースが多くて、本当に必要な人にどういうふうに分かりやすく伝えるか。これが課題だと思います。

4つ目、担い手の育成ですね。先ほども専門家がいないというお話がありましたけれども、この消費者教育の担い手をどう育成していくか。これも大きな課題。この4つのあたりを皆さんとじっくり議論できたらと思います。

以上です。

○新川座長 どうもありがとうございました。

消費者教育のこれまで、そして、その中での課題、さらには大森委員が主宰をしておられますNPOでのこれまでの実践、それを踏まえて、これからの消費者教育の課題に触れていただきました。どうぞ、御質問、御意見、御自由にいただければと思います。よろしくお願いします。

どうぞ、池本委員。

○消費者委員会池本委員長代理 池本です。

私はこのキッズ・ネットワークの活動は以前にもお聞きしたことがあって、恐らく我が国でも消費者教育の任意団体としてやっている中ではトップランナーの一つだろうと思います。

最近の活動実績よりはスタートから順調にいくまでのところの経験からお伺いすることになると思うのですが、まず、全国的な平均値で言えば、消費生活センターの相談員はいろいろな相談事例を経験していますから、そういうものを地域の消費生活センターでつながりのある団体のところに行ってお話をするという出前講座、相談員か職員が行って、何とか消費者教育、啓発をやっているというのが平均的なところで、キッズ・ネットワークのように本当に伝え方や教材作りも含めて高い専門性で、しかも、広くやっているというのは、本当にうらやましいところだと思うのです。

そこで、お伺いしたのは、最初は団体を作っても、地域の中で講座をやりますよといっても、あなたは誰というふうに知られていない段階から始まるのだろうと思うのですが、そういう派遣先というか、出前先の開拓ということについて、消費者行政との連携あるいは消費者行政から何かコーディネートしてもらって広げるというあたりは、どんなことがあったのか、あるいは、今後ほかの地域でも同じような団体が広がっていくためには、行政との官民連携で何が必要なのかという点が1点です。

もっと重要なのが、この担い手の育成と書いておられるところで、キッズ・ネットワークは今、何人ぐらいの方でやっておられるのか。しかも、かなりの期間でやっておられるので、新しい人も迎えてやっておられるのではないかと思うのですが、地域の中でこういう意欲のある人たちに参加してもらって、いわばこういう担い手を育成することについては、このキッズ・ネットワーク独自の活動で今はできているのか。それとも、それ自体についても、何か行政との連携、支援というものがあるのかどうか。特にほかの地域でこれからやるためには、団体だけで人を集めるといっても限界があると思うので、そのあたりについての官民連携のヒントがあれば。この2点についてお伺いしたいと思います。

○新川座長 大森委員、お願いします。

○大森委員 御質問ありがとうございます。

まず、消費生活アドバイザーの受験対策講座というものが、兵庫県ではコープこうべを中心に、いろいろなところで開催されていたというのが大きかったと思います。私がアドバイザーの受験講座を教えていただいた先生がそこにいらして、私もそこの講師をするようになって、受験資格を取った人に活動の場を与えないといけないということで、コープこうべも非常に協力して、いろいろな店舗ウオッチングをするとか、C・キッズの活動も応援してくださって、最初の3つの教材を作るときの費用は貸していただいたのです。最終的には全部お返ししましたけれども、そのように、何かせっかく資格を取ったのだから、みんないろいろやったらいいよという、コープの応援というのがとても大きかったと思います。

まず、そこでどんどん有資格者で出てきまして、C・キッズにも入っていただいた。その中には、C・キッズに入らないけれども、相談員になったりとか、子育て中のお母さんとか、いろいろいらして、相談員になった人は、うちのセンターでC・キッズの講座を夏休み親子講座でやってほしいとか、子育て中の人は、うちの子供たちにC・キッズの消費者教育を受けさせたいから、学校の授業に出前講座に来てほしいとか、結構アクティブな消費者市民社会を担うようなお母さんがどんどん出てきたものですから、自分のこうしたほうがいいと思うことでどんどん動いてくださって、いろいろなところで講座ができたということがあると思います。

担い手の育成なのですけれども、アドバイザー養成講座をコープこうべで開いていたうちは、どんどんうちに入ってくださっていたのですが、結局アドバイザーの資格試験というのも、私たちが取ったころは、主人は仕事、私たちは子育てで家庭に入る。社会に復帰するときに、ずっと家庭にいただけの人が社会に参戦するには何か資格が要るだろうということで、生活体験をいかしたアドバイザーの資格を取ってということで取る人が多かったのですが、最近はずっと働き続ける方とか結婚しない方が多くなって、アドバイザーの講座も、家庭に入った主婦というよりは、企業が消費者志向経営をアピールするために、うちはアドバイザーが何人いますという形で取るようになって、その資格制度を受ける人、取る人のメンバーががらっと変わりまして、一般の家庭経験のある主婦が学び直して社会に提案するというスタイルが薄らいできたというのが、担い手の大きな問題になっていると思うのです。

私たち自身の会員は、今40名ぐらいで、実動部隊は20名ぐらいです。いろいろな事情があって離れているとか、活動しにくかったりして、20名できりきり舞いです。でも、それまでに、いろいろな人が会に入っては巣立っていっているのです。相談員になったりとか、行政職員になったり、うちはパソコンを使ったり、いろいろ全部するものですから、何もできなかった人が、企画もできるし、講師もできるし、プランも立てられるし、パワーポイントも作れる、アンケート集計もできるということで、あっという間にトラバーユして、いつも人材不足なのです。

でも、会の活動がそういう意味で担い手を養成し続けていたと思うのですけれども、入ってくる人が減っているということで、私たちもすごく危機感を持っていまして、会費を下げたりとか、学生ボランティア会員を作ったりとか、いろいろ工夫しているのですけれども、なかなか増えてこないというところが実情です。

行政のほうも、担い手養成講座の委託をC・キッズに頼んで、C・キッズがテキストを作ってやったりもするのですが、行政は一過的に、今予算があるからこういうことをやろうというだけで、後のフォローには関わらせてもらえないので、私たちが紹介して受けた人も、あれはどうなっているの、あのままだけれどもとか、よく言われるのです。その辺は先ほど尾嶋委員も言われたように、行政の人が異動していくとか、そういうところが問題で、なかなか継続性がなく育っていかないというのが大きな課題だと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

どうぞ、尾嶋委員。

○尾嶋委員 ありがとうございました。学校教育の中の消費者教育に協力して、活動を活発にされているということで、すばらしいと思いました。今まで学校において消費者教育は、消費者問題に関心の高い先生がやられていたと思うのですけれども、2年前に学習指導要領が告示されて、消費者教育重視という視点が盛り込まれましたので、これからは、学校における消費者教育に関しては、充実し進んでいくと大きな期待を私は持っているのです。

その中で、キッズ・ネットワークさんなどの消費者団体といろいろな専門家や行政などがいかに学校と連携してやっていくかというのが一番大きなポイントかと思います。学校は壁が高いと言われていますので、その壁を低くして、実践的な消費者教育を学校の中でやっていただければ、かなり進んでいるのかなと思っています。

ただ、そういう中でも、大森委員のようなこれまでの活動というのが、また更に重視されていくのではないかと思いますけれども、今、20人でということなのですが、団体の人数がだんだん少なくなっている。消費者団体は、どこもそうかと思いますけれども、そういう消費者団体の活動を今後も少しずつ拡大していく必要かあると思います。

学校の消費者教育はこのように今後に期待するところですが、サラリーマンなど社会人の消費者教育をどうしていくか。現在、高齢者の見守りにポイントが当てられていて、それは大変重要だと思いますけれども、社会人の消費者教育をどうするか、非常に大きなトラブルを抱えている方が多いので、そこら辺がこれからの課題かと思っているところです。

以上です。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

どうぞ、山田委員。

○山田委員 大変貴重な体験、ありがとうございました。

その中で、これを見ておりますと、本当に食育から環境教育から消費者教育まで、ものすごく幅広い形になっているのですけれども、こうした情報ですね。教材を作るときの情報、これはどういう形で得られているのかというのが一点と、逆にそこからどう発信されているのか。

結局、私はどうしても行政側の立場に立ってしまうのですけれども、学校の壁が高いというよりは、学校の場合には多分、非常に信用性とか信頼性の問題が出てくる。ですから、多くのNPOの皆さんが作り上げた教材、これが抽出されて、標準形になっていけるような過程があれば、学校はとりやすいのです。逆に学校はそういうものを求めていると思います。

ただ、それがばらばらにいろいろな団体で各地域になっていると、今度は個人的なつながりとか、そうしたものだけで動くことになると、非常にリスクが先生のほうにかかってきてしまう。そうすると、だんだん先生のほうは後ずさりしてしまうということがあるので、どういう形でこれだけのすばらしい情報やすばらしい教材をまた一つのものにしていくことができるのか。そういう過程があるのかないのかを教えていただければありがたいと思います。

○新川座長 大森委員、お願いします。

○大森委員 私たちは全てネットを使って、情報交換とか情報を集めたりしています。メンバーの中には、大学の講師とか、ファイナンシャルプランナーとか、相談員とか、学校の教師とか、それぞれの分野で活動している者もいます。20人いますけれども、20人全てで一つのプログラムを作るわけではなく、例えば子供の金銭教育で、こういうテーマで作りたいという意見があれば、それが例会などで認められれば、そこでチームを作ります。3人から5人ぐらいのチームを作って、情報を集めて、いろいろプログラムを作っていくわけです。

その作ったものは、チーム間ではもちろん練習したり、全部シナリオに起こしているのです。パワーポイントとシナリオとグッズがあります。なので、カリスマ講師が1人いるわけではなくて、誰が行っても一定の効果があるということで、例えば豊中市などは9クラスあるのですけれども、3人の講師がそれぞれにグッズを持って、3クラス同時進行で午前中で全部終わってくるとか、そういう形で、誰が行ってもその時間内に一定のことが伝えられる内容を一番基本に置いています。

それを作るときには、例えば子供の教材であれば子供だとか、今一番新しいネットの学童向けのプログラムを作るときは、小学校の教師がおりますので、どういうものが一番問題になっているかとかをヒアリングして、できたものも見てもらって、こういうことを入れたいのだけれども、どうでしょうとか、絶えず意見のやりとりをします。できたものは、例会でそれぞれの対象者になってもらってシミュレーションをするし、もちろんその対象の人を持つお母さんに話を聞いたりということでやっています。

私たちのいいところは、先ほど紹介した「コンビニ食ってどんな食?」という農水省の助成金をいただいたプログラムですけれども、あれも半年間に50講座をやったのです。学校、大学の先生は、一人でやっていたら50年かかります。このプログラムを1年間にやれるところは1コマしかないのです。だから、C・キッズとネットワークを組んだから、この半年間に50講座という実績でブラッシュアップできたということがありますので、そういう面では信用性の高いものができていると思うのです。

講座依頼ですけれども、例えば豊中市などは、年度の初めに小学校、中学校の先生を呼んで、私たちがプログラムの紹介をします。その時点で質疑があって、申し込まれる先生も多い。そういうシステムができまして、一度受けた先生がこれはいいよと口コミで言ってくださるということもあって、和歌山県でも先生間の口コミでかなり広がっていきましたので、実績でブラッシュアップして信用性を高めているというところでしょうか。

○新川座長 ありがとうございました。

どうぞ、山田委員。

○山田委員 これまた、私も次のときには提案しようと思っていたのですけれども、まさにそこの部分が今一番大切なのではないかと思います。これだけネットが発達して、情報自身のリンクはできて、その中でデータの蓄積ができる。しかし、実際問題としては、それが国レベルではなされていない。消費者問題についてのデータベースはあるのですけれども、正直に言って、動かそうと思ったら、これはとてもではないけれども、そう簡単には動かせるものではない。

ところが、実際に世の中では、例えば、みんなは食べるのでしたら「食べログ」を見ていく、旅行に行くのだったら「トリップアドバイザー」を見ていく、いろいろものを調べるのだったら「ウィキペディア」を見ていくという形で、多くの人が持ち寄って、その中で信頼性で淘汰されていくような仕組みが全てネットの世界では出来上がりつつあるし、逆にそちらのほうが日々更新をされて、新しいものが入っていって、そちらのほうがよほど有用だと。官製で作られたデータベースよりも、そうした多くの方々が持ち寄られてデータベースをやっていくほうが、はるかに信用性が高く、はるかにいいものができる。

そうしたものがあれば、その中でいいものをとっていけばいいわけですから、先ほどおっしゃいましたように、農水省からの補助金があってそれができている。それはある面でいきますと、個人のノウハウなのかもしれませんけれども、国の財産でもあるわけですね。そうしたものが共有されていくシステムがあれば、学校のほうの壁ももう少し低くなるのではないと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

そのあたりは前回からも議論になっておりまして、消費生活相談だけでも莫大なデータがある。こういったものを本当に有効にどう活用していけるのか。様々な制約がある中で、将来に向けてこれをどのように上手に消費者政策の中に落とし込んでいけるか。ここは私たち共通の大きな課題だと考えておりますので、今後また少し皆さん方と御議論できればと思っております。

どうぞ、池本委員。

○消費者委員会池本委員長代理 池本です。

先ほど、山田委員から問題提起のありました、すばらしい教材を作っても、学校教育で、しかも多くのところが採用するためには、ある程度オーソライズされていないと安心して採用してもらえないという非常に悩ましい問題があるというところ、私もそこが非常に大きなネックになっているのかなと思います。

実は消費者庁も「消費者教育ポータルサイト」といって、いろいろな団体が作った教材を検索できるように並べていて、調べていると、こんなにたくさんあるのかというくらい、あることはあるのです。ただ、残念ながら、おっしゃったように、一般の人がそこへアクセスして調べるよりは、民間のところへ行ってしまう。

例えば、先ほどの報告の中で、資料16ページに静岡市委託事業とか豊中市委託事業、消費者庁委託事業、あるいは農水省ですか。そういう行政と連携して作ったものとなると、学校なり地域で採用しようというときに、ある程度オーソライズされた中身でやっていくというときには、それが非常に有効に機能しているのかなと。

あるいは、キッズ・ネットワークぐらいになれば、もうかなり今はその名前で信用される段階になっていると思うのですが、地域でこれから広げていくときには、その学校なり地域社会の中で安心して依頼できる、あるいは教材も含めて、そこはやはり何か官民連携の糸口を作っておくことで広がりが作りやすくなるのかなと。どうすればいいのかという答えなしで、ただ思いだけですけれども、そのように感じています。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

どうぞ、八木委員。

○八木委員 まず、すばらしい活動をされているなと思いました。私は何もやっていないで、ただ意見を言っただけですけれども、地道にきちんと活動されているのは、本当にすばらしいと思いました。

民間企業にいた身からすると、このすばらしい活動を、我々民間の会社の、割合に決定権のある人間が知っていたら、もっと協力できると思います。先ほど、民間の会社の中で本来の意図とは違う形で資格を取る人が増えてきてしまってというお話があったと思うのですが、そういう人たちの中にも大森委員のやられているようなものに対して、賛同する人たちは随分いらっしゃるような気がします。

そして、民間企業というのは、それなりにボランティア活動などもサポートしている会社は結構あるのです。ですから、趣旨をシェアしていただいて、そういう資格を持った人たちの中からボランティアのような形で協力をすることは、かなり可能なのではないかという気がいたします。

私がGEにいたときも、ボランティア集団というものを取りまとめて持っておりましたし、お話をいただければ、是非紹介みたいな、そんなこともあったと思うのです。今は私もGEを離れていますから、あれですけれどもね。LIXILでもボランティア団体というものをしっかり持っていて、そこはうまく情報さえあればやれたのではないかと。私も大変申しわけないのですが、こういう活動があることをLIXIL時代もGE時代も知らなかったので、何もできなかったですけれども、知っていれば、恐らく協力できたと思うので、何か民間の会社でも、この人はボランティアで、ただなので、情報をシェアされたら目的を同じにする人が集められるのではないかという感じはいたしました。

もう一つ、全然別の視点なのですが、山田委員からネットあるいはデータを是非活用すべきだと。私も大賛成です。そして、それを国レベルで上手に集めていくことによって、データを使っていくというのは、そのとおりだと思うのです。

もう一方で、Amazonなどというとんでもないやつがおりまして、皆さんもお使いになっていらっしゃると思うし、私も使っているのですけれども、実は私たち消費者の情報を嫌というほどただで集めているのです。この人たちは、この情報をどう使うかは分からないです。もちろん、民間企業で法治国家の中にいる会社なのでというのはあるのだけれども、しかし、彼らは膨大な情報を持っていて、これをどう使われるかによっては、消費者にとってはものすごく大きなリスクを抱えることがある。いろいろやられている課題の中に、Amazonのような巨大なネットを使った販売業者といいますか、そういうものに対してこれからどのように我々が臨んでいかなければいけないかというのは、消費者委員会そのものの中で大きなテーマとして考えていかなくてはいけないのではないかと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

それでは、少し時間も押してまいりましたので、大森委員からは、消費者教育の推進ということでお話をいただきました。そして、C・キッズ・ネットワークでの充実した活動について御報告をいただきました。

それにしても、最初に印象深かったのは、なかなか本当に知ってほしい人たちに知ってもらうというのは大変だなというのを改めて、ここは永遠に私たちも頑張り続けないといけないのかなと思いながらお話を聞いていました。

論点の一つは、その中でも現役世代、今、働いている人たち、若い人たちにどう知ってもらうか。私などは大学で教えていても、大学生たち、大丈夫かなと思うことも結構あって、この辺ももう一回教育しないといけないかなとか、つい思いながらお話を聞いていたのですが、こういう世代も含めて、ここにどうアプローチをしていくのか。これは重要な課題かと思いました。

大きな2つ目は、これも含めてですが、学校教育の中にいかにタイムリーに、しかも、専門性を持って入っていくか。先生方の負担は限界に来ていますので、これに対してどのように市民の側、行政の側が関わっていくことができるか、あるいは企業がどう関わっていくか。このあたりが今後大きな課題かと思っていますし、むしろそうしていかないと消費者行政そのものが成り立たなくなるかもしれないということもちょっと感じながら、お話を聞いていました。

大きな3つ目は、その中でも担い手ということにも関わるのですが、消費者活動、消費者運動をされる市民団体というものがもっともっと育っていかないといけないということがあって、これも市民が自主的、自発的におやりになるのが基本ですから、なかなか悩ましいところはあるのですが、こういう活動をどうやったら活発にしていけるのか。ここは私たちとしても考えないといけないなと思いながら、改めてお話を聞いていた次第です。

そうしたこれからの消費者運動というものを、特に消費者教育を更に充実させていく方向の中で、いかにその活動を様々な担い手とネットワーク、リンクをさせていくのか、そして、情報活用をしていくのか、新しい技術も積極的に取り入れながら進めていくのか。そのことを通じて、社会的な信用であるとか、社会的な評価をきちんと獲得していって、いろいろな分野で使っていただけるようにしていく。このあたりが今後大きな課題になりそうなのですが、大森委員には是非これからもしっかり頑張っていただきたいということを申し上げて、まとめにしたいと思います。どうもありがとうございました。

○大森委員 ありがとうございました。

○新川座長 それでは、お二方からの意見発表、それにつきましての意見交換は以上にさせていただきます。

本日、もう一つだけ、最後に全体を通しまして、少し御意見をいただきたいと思います。資料3ということで、既に各委員にはあらかじめお示しをさせていただいております問題意識、そして、検討項目、これについて、いろいろ御意見をいただきました。各委員から文書でいただいた御意見、それから、前回はそれぞれの委員からも御発表をいただいたもの、これを事務局で取りまとめてくださっています。これにつきまして、御意見を改めていただきたいと思いますが、まず、事務局から簡単にこの資料について御説明をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○友行企画官 それでは、資料3を御覧いただけますでしょうか。「問題意識と検討項目案に関する意見等の概要」ということで、前回、問題意識と検討項目案をお示しいたしましたが、前回の御議論やコメントペーパーなどを踏まえまして、関連するところにそれぞれの御意見等を当てはめて、整理させていただいたものでございます。

簡単に御紹介いたしますけれども、まず、最初の「1.問題意識」の(各委員からの意見)のところでございますが、例えば現状において人員と財源の制約が高いのは事実だが、国と地方の役割分担も含めながら、財源確保(国民/住民負担の純増)を行っていくという視点も重要になるといった意見がございました。

また、幾つかの「典型的な高齢者」を想定して、必要な政策の在り方を議論すると分かりやすい。生活者視点、ユーザー視点での問題の考察の手法(「デザイン思考」とも呼ばれる)を活用するのも一案といった御意見もいただいたところでございます。

また、少し飛びますが、地方公共団体の中で消費者行政のための組織・予算を区切って、それを拡大することを全ての地方公共団体に求めることは、一定水準で必要であるが、今後ますます難しくなる。消費者行政と他の行政部門との間、地方公共団体相互間及び国と地方公共団体との間、さらに公・共・私の間における連携の在り方を検討する必要性がますます大きくなるといった御意見もいただいているところでございます。

「2.検討項目案」のところでございますけれども、最初の「20年後の我が国(地方自治体の姿)」のところにつきましては、少ない若者の税収で高齢者を支える社会となり、地方自治体における職員・予算は減少し、各種サービスのために外国人を雇用する場面が増加するといった国際化の視点などについての意見もいただいております。

また、短期的には、孤立化、空き家の増加など地域コミュニティーにおけるソーシャルキャピタル(社会・地域における人々の信頼関係や結びつき)の低下、安心・安全の面での地域対応力の低下、長期的には、過疎高齢化による地域コミュニティーの消滅・崩壊を念頭に置くべきといった意見もいただいております。

「地方自治体における職員、予算の状況」のところに関しましては、地方自治体職員・予算減少に反し対応すべき課題は多様化しており、深刻な事案の増加や職員の業務量の増大が見込まれ、自治体間の広域連携、共通業務の分担等を検討、推進させる必要があるといった御意見をいただいております。

また、都市部においても急速に進む高齢化への対応に追われ、消費者行政に対し、職員を養成し十分な予算を割くことはかなり難しい状況に陥ることを念頭に置かなければならないといった御指摘もいただいております。

(2)の「地方自治体により異なる課題の把握とそれらに対応した地方消費者行政の在り方」のところにつきましては、次のページにまいりますけれども、消費者庁は、地方自治体ごとの現状と課題の把握を行い、解決策を国と都道府県、市町村が協同して考える枠組みが必要ではないか。その際、実態の把握に各地域の消費者団体・NPO等を巻き込むことで、消費者団体の活性化やスキルアップにつながり、より消費者の視点に立った実態把握ができるのではないかといった御指摘をいただいております。

(3)の「ネットワークを活用した消費者問題への対応の在り方」につきましても、御意見をたくさんいただいております。真ん中ぐらいになりますけれども、自治体においては、福祉分野と消費者行政分野の連携が必要である。現在の地域包括システムに寄せられる課題は福祉分野が中心であるが、今後は消費者課題(高齢者、障がい者の消費者被害等)の対応についても消費生活センターとして独自の専門性を高めながら、ともに連携、活動していくことが必要ではないかといった御意見がございます。

また、優良な行政支援サービス(行政のアウトソース化)を安心して利用できるような認証制度(例えばアクティブシルバー認証など)、活性化制度のデザインも必要ではないかといった御意見がございました。

また、行政・コミュニティーなどのステークホルダーが一体となって地域全体の課題に取り組む体制が求められているといった御意見でございます。

それと、消費者行政を単なる単独の行政として捉え対応する時代ではなく、まさに住民の皆さんの生活を守る総合行政の一部として捉えるべき。消費者行政は高齢者の生活介護の一環として地域包括ケアの中に取り込むことも考えられるといった御指摘もございます。

さらには、地方消費者行政の場合、問題の発生を予防し、あるいは問題を発見する場面では、地域に密着した行政活動が必要である一方で、問題を調査し問題に対応する場面では、地域を越えた連携が必要になる場合が多く、消費者行政の成果(となる公益)も地域を越えて及ぶという特徴は、必要な視点ではないかといった御指摘もいただいております。

(4)の「専門人材の育成、活用の在り方」のところでございます。今日、八木委員からたくさんの御指摘もいただいたところでございますが、そのほかの意見といたしまして、若い世代の育成も必要であり、大学で専門的な知識を得た人物を登用するなど、行政や企業に専門知識で就職できるようなシステム作りが必要ではないかといった御指摘もいただいております。

また、少し飛びますけれども、専門人材の育成は必要であるが、網羅的で十分な数の確保は現状において望めないと考えるのが現実的。それだけに、育成した数少ない人材をいかに効果的に配置するかという点を考える必要があるといった御指摘もいただいております。

「ITツールの活用」のところでございます。こちらにつきましては、悪質商法の手口などは、タイムリーに紹介できる(例えばタブレットを地域の担い手などに配付、配信する)システムを構築すべきではないかといった御意見をいただいております。

また、ITツールの活用による相談業務の効率化も考えられるが、市民の安全・安心の観点から、活用は工夫する必要があるといった御指摘もいただいております。

また、きめ細かい取り組みには(行政だけの努力では)限界があると思われるので、行政だけではなく、民間・NPOなどとの連携(行政イノベーション)も視野に入れることも必要。

また、PIO‐NETなどは、データ駆動型社会のPDCA、データを利活用した政策の立案と効果評価として、とても大きな可能性を持っている。AIによる課題発見と、人の知見によるソリューション開発を組み合わせた「AIと人とのハイブリッド行政」の好例になるのではないかといった御指摘もいただいております。

次に「都道府県、政令市、市町村の役割の在り方」のところでございますけれども、予算や職員に限りがあるので、都道府県、市町村という行政サービスの実施場所や仕事の範囲ではなく、実施目的や内容に応じて、地域横断的・効果的なサービスの展開が必要となるといった御指摘をいただいております。

さらに、市町村は住民の安全を守る総合行政の中で、消費者問題を考える。そのうち、解決に専門的な支援が必要な事象について、都道府県への対応を求めるべき。都道府県は、専門的な相談窓口の開設と、市町村から求められた事象の解決について、警察や弁護士とチームを形成し、解決に当たるべきではないかといった御指摘をいただいております。

最後の「地方自治体と国との関係」のところでございますけれども、ここにつきましては、まず、前提として、一律な支援は対応できないという御意見をいただいております。また、国が個別事案について乗り出すことは、人員的にも予算的にも難しいのが現状。地方団体への財政的な裏付け支援(交付税措置や臨時的支出に対する支援)や全国的なデータベースの構築とAIによるリモート支援を考えるべきといった御意見をいただいております。

さらに、地方自治体が主体的に行動できる環境を作ることが一番の支援。そのためにも、標準的な財政需要を明確にし、交付税の基礎数値の充実を図ることなどが必要といった御意見をいただいているところでございます。

以上でございます。

○新川座長 どうもありがとうございました。

前回までの各委員からいただきました御意見をこういう形で取りまとめをさせていただいてございます。また、今日もたくさんお二方の御報告、そして、討論の中でいろいろ付け加えるべきことも出てきたかと思いますが、今日の段階で、この問題意識や検討事項について、何かこんなことを入れてはどうだろうかとか、こういうところはどうなっているのだろうかという御意見、御質問などがございましたら、いただいていければと思います。特に、こういうことを加えないとだめだよねというものがありましたら、是非よろしくお願いをしたいと思います。

お願いいたします。

○消費者委員会長田委員 オブザーバーの消費者委員の長田でございます。

私は今年の3月まで地婦連というところの事務局をずっとしてまいりました。地域の活動、地域と行政の連携はすごく大切で、地域婦人会も様々なところで協力を、どの地域でもさせていただいています。

先ほど、大森さんからも御指摘があったのですけれども、地域で活動している人は、結局、社会福祉の場面で出ていく人も、環境でも何でも、同じ人たち、同じ団体ということが、地方へ行けば行くほど多いのだと思います。それぞれの福祉の場面でも、環境でも、この消費者問題でも、様々なところで行政と地域、民間の連携というものが出てくるのですけれども、行政の側から、1対1の関係でいつもその組織を見てしまうところがあると思っています。常に様々なところから1対1の関係を求められても、それはもう無理なのだと思うのです。むしろ1つの地域、場所に対して、行政がまず自分たちで調整をして、その中で話を持っていく。もうその時代ではないかと思います。その調整が行われることによって、結果的にその行政のところでのネットワークができるということではないのかという思いがありまして、どこにとかということはないのですけれども、問題意識としてはそう思っていますということをお伝えしたいと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

重要な御示唆をいただきました。住民まで縦割りにしてしまっているので、それではうまく働きませんぜということだろうと思っております。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 関連するのですけれども、消費者教育推進地域協議会とか、見守りネットワークとか、全国的に数はできているのですけれども、実態は、1回年初に集まってあとは何もしないみたいな形式的になっているところが非常に多くて、連合婦人会会長とか、子ども会会長とか、テーマは全く違っても同じような方が来られていることが多い。幾つもあると、またかみたいな感じで、行政のほうもいろいろなものを作らされても大変だと思うので、一本化して全てを網羅的に進めていくようなシステム化が要るかと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

身近な地域の自治の仕組みで、むしろ総合的に地域課題を解決するような地域自治協議会のような仕組みをお作りのところも出てきています。もちろん完全にうまくいっているわけでも何でもないのですが、そういうことも含めて、地域のコミュニティーの力のようなものをもう一度消費者行政の中でもきちんと位置付けて考えていくことも必要かもしれません。

そのほか、いかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。

先生、何かありますか。

○山本座長代理 特に何か付け加えるということではないのですけれども、ここに挙げられていることには、かなり前から言われていることも含まれていると思うのです。ですから、それが言われているのだけれども、なぜ実現をしないのかということについて、先進的な取り組みをしている自治体もそうですし、やろうとは思っているのだけれども、なかなかできていないといった自治体もそうかと思うのですけれども、その辺は少し具体的な調査をして、一体どこに問題があるのかを探っていくことが必要かと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

このあたりは前回も少し御意見をいただいて、参考資料の最後に、これまでの消費者行政の財政あるいは主要な施策などについて、少し資料をいただいてございます。こうしたものを今後の消費者行政を考えていく上で、どのようにちゃんと評価をして、問題点を明らかにして、それを乗り越えるような、そういう方策として提案できていくのか。このあたりは、事務局、大変かもしれませんが、いろいろな政策評価、施策評価をやっておられるはずですので、そういうものもデータとか資料としてお出しいただいて、今後に向けての参考資料にしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

そのほか、いかがでしょうか。

○八木委員 超ど素人からのお話として聞いてください。なぜ進まないかということなのですが、私はこうやって素人として参加させていただいて、非常に重要な問題なのだと感じることができるのですけれども、一般の人たちは、消費者問題をこのまま放っておいたら何が起こるのかというリスクをしっかりと把握していないと思います。リスクがないところでいろいろな対策だけ出しても、なかなか理解ができない。すばらしいことをいっぱいやられているのですけれども、消費者問題はこのまま放っておくとこんなにひどいことが起こる可能性があって、そのためにこんなことをやっているのだと、専門家の皆さんは当たり前だと思うのですけれども、私みたいな者がいることを前提に、放っておくととんでもないことになるのだという危機意識のところを、もう少しはっきりと伝えたほうがいいのではないかと思います。

○新川座長 ありがとうございます。

実はリスクコミュニケーションというものが一番難しくて、リスクを回避したがる人が多いものですから、ここのコミュニケーションがなかなか成り立たない。しかし、これは御指摘のとおり、ひょっとすると私たちにとっても一丁目一番地になるかもしれないということで、しっかり議論ができればと思っております。

そのほか、いかがでしょうか。

お願いします。

○山本座長代理 今の御指摘は、大変重要であると私も思います。先ほど地方制度調査会のことを申しましたけれども、その場でも、今までは右肩上がりを前提にして議論する傾向があったのですけれども、このままでいくとこういう状態になります、こういうリスクがありますということを、まず明確に各自治体あるいは住民全体がコミュニケーションをとりながら認識をする。まず、そのプロセスが非常に重要であって、その上でどういう政策を打っていくかを考えるべきであるということを強調する議論が非常に多く出ました。もちろん将来予測は常に不確実性を伴いますので、明確に今の時点で先のことまで確実に見通せるわけではないのですけれども、しかし、その時々にそういった認識を共有するプロセスがまず必要で、そのための工夫をどのようにしていくかということも、この場の議論のテーマになるかと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

どうぞ、尾嶋委員。

○尾嶋委員 前回、広域連携が今後進むことが考えられるというお話をしたのですけれども、今の実態はどうなのかということを十分に把握する必要があるというお話もさせていただきました。山本先生からのお話と同じようなことになるとと思いますが、例えば事務局に用意していただいた資料の3ページ目に、消費者行政担当職員の配置状況のところに、消費者相談員の有資格者がどれぐらいかという緑色の表があるかと思います。ここで、平成30年度は、全体の相談員が3,400人、有資格者が81%となっているのです。

これを御覧になって、80%も資格を保有しているというふうに思うか、これを問題とするかどうかということなのですけれども、実は全国消団連のほうで、この調査を消費者庁の現況調査の前に行ったところ、首都圏とか大都市圏は100%の保有率なのですけれども、地域により非常に格差があります。それを平均的にすると80%で問題が少ないように思えますが、細かく分析したり、調査していくと、問題が出てくるということなので、是非平均ではなくて、それぞれの地域の特性とか実態を明らかにすることを行ってほしいと思っています。

○新川座長 ありがとうございます。

御指摘のとおりで、恐らく全国一律の消費者行政あるいはそのための政策、制度の運用では、対応できない。そういうところまで来ている。さらにそういう状況がもっと大きな違いとなって現れてくる2040年をどのように迎えていくかというのが、私たち地方消費者行政を議論する立場でも大変重要になってくると思っております。この点、今後、大きな課題にさせていただきたいと思います。

そのほか、いかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。

それでは、ただいまも貴重な御意見をたくさんいただきました。地方消費者行政、それぞれが対応していくそれぞれの地域の課題にしっかり応えていくことができるか。しかし、そのときに、市民、住民の団体、こちらも消費者行政だけで縦割りにされていたのでは、もう動きようがない。地域によっては非常に厳しいところもある。そうした状況の中で、改めて地域の組織化やコミュニティーの在り方、そして、それに対応するそれぞれの地域特性に合わせた消費者行政の在り方、これを考えていかないといけない。

そのときに、こうした消費者行政そのものが背景に持っている消費者問題の極めて大きなリスク、特に将来、そのリスクが更に大きくなることを、いかに予防的にであれ、あるいは事後的にであれ、コミュニケーションしていくのか、共通認識を作っていくのか。こうしたところを、この検討項目の中に更に盛り込んでいただいて、次回以降の整理につなげていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、特に御発言がなければ、以上にしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございました。


≪3.閉会≫

○新川座長 本日も、長い時間にわたりまして、熱心に御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

以上をもちまして、本日、閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

(以上)