議案審議経過情報

(注)下記の表で内容がない箇所は、現時点で情報が未定のもの、もしくは情報がないことが確定したものです。

項目 内容
議案提出者 阿部知子 君外九名
衆議院審議時会派態度
衆議院審議時賛成会派
衆議院審議時反対会派
議案受理年月日
公布年月日

要項または提出時法律案

第一 総則
 一 目的                                    (第一条関係)
   この法律は、性暴力が重大かつ深刻な被害を生じさせる一方で、性暴力被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であるという性暴力による被害の特性を踏まえた性暴力被害者の支援の重要性に鑑み、性暴力被害者の支援に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び性暴力被害者の支援に従事する者の責務を明らかにするとともに、性暴力被害者の支援に関する施策の基本となる事項を定めること等により、性暴力被害者の支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって性暴力被害者の権利利益の保護を図ることを目的とすること。
 二 定義                                    (第二条関係)
  1 性暴力 性的な被害を及ぼす暴力その他の言動をいうこと。
  2 性暴力被害者 性暴力により性的な被害を受けた者をいうこと。
  3 ワンストップ支援センター 性暴力被害者を支援するための病院又は診療所における拠点であって次のイからハまでの業務の全てを行い、又はこれに併せて性暴力被害者の支援に関するその他の業務を行うもの(以下「病院拠点型支援センター」という。)及び病院拠点型支援センターとしての機能に準ずる機能を関係機関の連携により備えるものをいうこと。
   イ 性暴力被害者が直面する各般の問題について一元的にその相談に応ずること。
   ロ イの相談をした性暴力被害者に対し、必要な医療を提供すること。
   ハ イの相談をした性暴力被害者に対し、性暴力被害者の支援等を行う関係機関の紹介その他の必要な情報の提供及び助言を行うこと。
 三 基本理念                                  (第三条関係)
  1 性暴力被害者の支援に関する施策は、性暴力により、性暴力被害者の人権が著しく侵害され、性暴力被害者が自らを個人として尊重されるべき存在であると認識することが困難になる等の重大かつ深刻な被害が生ずること及び性暴力被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であることを踏まえ、全ての性暴力被害者について個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利が最大限に尊重されるよう、性暴力被害者に対して十分な支援が行われることを旨として講ぜられるものとすること。
  2 性暴力被害者の支援に関する施策は、性暴力の態様、性暴力被害者の特性、被害の状況、被害の回復の段階その他の事情に応じた性暴力被害者に対する支援が、被害を受けた直後から適時かつ適切に行われることを旨として講ぜられるものとすること。
  3 性暴力被害者の支援に関する施策は、性暴力が性暴力被害者の心身の健康に与える影響の特性に鑑み、その特性に応じて性暴力被害者がその心身の健康を回復するために必要な支援を継続的に受けることができるようにすることを旨として講ぜられるものとすること。
  4 性暴力被害者の支援に関する施策は、国籍、年齢、性別、性的指向及び性自認、障害の有無、加害者との関係等にかかわらず、全ての性暴力被害者を対象として講ぜられるものとすること。
 四 性暴力被害者支援基本計画                          (第八条関係)
  1 政府は、性暴力被害者の支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、性暴力被害者の支援に関する施策に関する基本的な計画(以下「性暴力被害者支援基本計画」という。)を定めなければならないこと。
  2 性暴力被害者支援基本計画は、次のイからホまでの事項について定めるものとすること。
   イ 性暴力被害者の支援に関する施策についての基本的な方針
   ロ ワンストップ支援センターの整備等に係る施策に関する事項
   ハ 性暴力被害者に対する支援に係る施策に関する事項
   ニ 性暴力被害者の支援のための環境の整備に係る施策に関する事項
   ホ その他性暴力被害者の支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
  3 内閣総理大臣は、あらかじめ関係行政機関の長に協議するとともに、性暴力被害者支援審議会の意見を聴いて、性暴力被害者支援基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。
 五 都道府県性暴力被害者支援計画等                       (第九条関係)
  1 都道府県は、性暴力被害者支援基本計画を踏まえ、当該都道府県の区域におけるワンストップ支援センターの整備等に係る施策その他の性暴力被害者の支援に関する施策に関する計画(以下「都道府県性暴力被害者支援計画」という。)を定めるものとすること。
  2 市町村は、性暴力被害者支援基本計画及び都道府県性暴力被害者支援計画を踏まえ、当該市町村の区域における性暴力被害者の支援に関する施策に関する計画を定めるように努めなければならないこと。
  3 都道府県は、毎年一回、都道府県性暴力被害者支援計画に基づく施策の実施の状況を公表しなければならないこと。
 六 その他                  (第四条から第七条まで、第十条及び第十一条関係)
   国、地方公共団体及び性暴力被害者の支援に従事する者の責務、連携協力、法制上の措置等並びに年次報告について所要の規定を設けること。
第二 基本的施策
 一 ワンストップ支援センターの整備等に係る施策                (第十二条関係)
  1 国は、ワンストップ支援センターの整備の促進及び機能の充実を図るため、財政上の措置、情報の提供等必要な施策を講ずるものとすること。
  2 都道府県は、当該都道府県の区域においてワンストップ支援センターにより必要な支援が、被害を受けた直後から適時かつ適切に提供されるよう、財政上の措置、情報の提供等必要な施策を講ずるよう努めるものとすること。
 二 性暴力被害者に対する支援に係る施策
  1 被害直後の支援及び継続的な支援               (第十三条及び第十四条関係)
    国及び地方公共団体は、性暴力被害者が、被害後できる限り速やかに、かつ、継続的に、医療の提供、心理に関する専門的な知識を有する者による相談支援その他の支援を受けることができるよう、必要な施策を講ずるものとすること。
  2 その他                           (第十五条及び第十六条関係)
    緊急時における安全の確保及び性暴力被害者が子どもである場合の支援について所要の規定を設けること。
 三 性暴力被害者の支援のための環境の整備に係る施策
  1 周知                                  (第十八条関係)
    地方公共団体は、当該地方公共団体の区域において受けることができるワンストップ支援センターによる支援その他の支援について周知するために必要な施策を講ずるものとすること。
  2 捜査等の過程における配慮等                       (第十九条関係)
   イ 国及び地方公共団体は、刑事事件の捜査若しくは公判又はその他の裁判所における手続の過程において、性暴力被害者が更なる精神的苦痛を受けることを防止するため、関係者の連携の強化、研修の実施等必要な施策を講ずるものとすること。
   ロ 国及び地方公共団体は、性暴力被害者が子どもである場合には、その保護、刑事事件の捜査若しくは公判又はその他の裁判所における手続の過程において、性暴力被害者が子どもである場合の特性に応じた配慮が行われるよう、必要な施策を講ずるものとすること。
  3 正しい知識の普及等                          (第二十一条関係)
    国及び地方公共団体は、性暴力被害者を支援するとともに、併せて性暴力の防止にも資するよう、教育活動、広報活動等を通じて、性暴力となる行為、性暴力の実態、性暴力が性暴力被害者の心身に及ぼす影響、性暴力被害者が置かれている状況、性暴力被害者の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等について、正しい知識を普及することにより、国民の理解を深めるために必要な施策を講ずるものとすること。
  4 その他            (第十七条、第二十条及び第二十二条から第二十五条まで関係)
    支援体制の整備、捜査の過程に係る苦情の処理、調査研究の推進等、人材の育成、民間の知識及び経験の活用等並びに情報の共有について所要の規定を設けること。
第三 性暴力被害者支援連絡会議                        (第二十六条関係)
  政府は、内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、警察庁その他の関係行政機関の職員をもって構成する性暴力被害者支援連絡会議を設け、性暴力被害者の支援に関する施策の総合的、計画的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うものとすること。
第四 性暴力被害者支援審議会等
 一 性暴力被害者支援審議会                         (第二十七条関係)
  1 内閣府に、性暴力被害者支援審議会を置くこと。
  2 性暴力被害者支援審議会は、次のイからハまでの事務をつかさどること。
   イ 性暴力被害者支援基本計画に関し、第一の四の3の事項を処理すること。
   ロ 第三の連絡調整に際して、性暴力被害者支援連絡会議に対し、意見を述べること。
   ハ 性暴力被害者の支援に関する施策に関する重要事項並びに性犯罪の処罰並びに性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程における被害者の保護に関する制度その他これらに関連する制度について調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び関係各大臣に対し、意見を述べること。
  3 性暴力被害者支援審議会の委員は、性暴力被害者及びその家族を代表する者、性暴力被害者の支援に従事する者並びに学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命すること。
 二 都道府県性暴力被害者支援協議会                     (第二十八条関係)
   都道府県は、当該都道府県の区域における性暴力被害者の支援に関する施策を推進するため、性暴力被害者及びその家族を代表する者、性暴力被害者の支援に従事する者、当該都道府県の関係機関等をもって構成する都道府県性暴力被害者支援協議会を組織するよう努めなければならないこと。
第五 施行期日等
 一 施行期日                                (附則第一条関係)
   この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、二の1から3までは、公布の日から施行すること。
 二 検討
  1 捜査等の過程における保護のための制度についての検討          (附則第二条関係)
    政府は、刑事事件の捜査及び公判並びにその他の裁判所における手続の過程において性暴力被害者が更なる精神的苦痛を受けることを防止するための制度の導入について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
  2 公訴時効等についての検討                       (附則第三条関係)
   イ 政府は、未成年者に対する性犯罪について、その特性に鑑み、未成年者に対する性犯罪に係る公訴の時効について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
   ロ 政府は、未成年者に対する性犯罪の特性等に鑑み、未成年者に対する性暴力により生じた不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
  3 性暴力を防止するための措置の在り方についての検討           (附則第四条関係)
    政府は、性暴力が重大かつ深刻な被害を生じさせ、性暴力被害者の人権を著しく侵害するものであることに鑑み、この法律の公布後三年を目途として、性暴力の防止の観点を含む性教育を推進するための措置、性暴力の加害者が性暴力を繰り返すことを防止するための措置その他の性暴力を防止するための措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な施策を講ずるものとすること。
  4 性暴力被害者支援基本計画の作成及び推進に関する事務を所掌する行政組織についての検討
(附則第六条関係)
    政府は、性暴力被害者支援基本計画の作成及び推進に関する事務を所掌する行政組織について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
 三 その他                                 (附則第五条関係)
   関係法律について所要の規定の整備を行うこと。