議案審議経過情報

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項目 内容
議案提出者 中川正春 君外四名
衆議院審議時会派態度
衆議院審議時賛成会派
衆議院審議時反対会派
議案受理年月日 2013-11-13
公布年月日

要項または提出時法律案

 我が国は、地理的及び自然的な特性から、多くの大規模自然災害による被害を受け、自然の猛威は想像を超える悲惨な結果をもたらしてきた。我々は、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。以下同じ。)の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。
 我が国においては、二十一世紀前半に南海トラフ沿いで大規模な地震が発生することが懸念されており、加えて、首都直下地震、火山の噴火等による大規模自然災害が発生するおそれも指摘されている。さらに、地震、火山の噴火等による大規模自然災害が連続して発生する可能性も想定する必要がある。これらの大規模自然災害が想定される最大の規模で発生した場合、東日本大震災を超える甚大な被害が発生し、まさに国難ともいえる状況となるおそれがある。我々は、このような自然の猛威から目をそらしてはならず、その猛威に正面から向き合わなければならない。大規模自然災害から国民の生命を保護し、及びその生活を守ることは、国が果たすべき基本的な責任の一つである。
1. もっとも、自然災害が多発する我が国において、求められる防災及び減災に係る対策には限りがない。その一方、当該対策を実施するための財源は限られている。今すぐにでも発生し得る大規模自然災害に備えて早急に防災及び減災に係る対策を進めるためには、災害に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な防災及び減災に係る対策を実施して大規模自然災害に強い国土及び地域を作るとともに、自らの生命及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させることが必要である。また、大規模自然災害から国及び国民を守るためには、大規模自然災害が発生した時に、人員、物資、資金等を、優先順位を付けて大規模かつ集中的に動員することが必要である。このためには、国や地方公共団体だけではなく、地域住民、企業、関係団体等も含めて被災状況等の情報を共有すること、平時から大規模自然災害に備えておくこと及び新たな技術革新に基づく最先端の技術や装置を活用することが不可欠である。加えて、東日本大震災により甚大な被害を受けた地域の復旧復興に国を挙げて取り組み、災害に強くてしなやかな地域社会を再構築することを通じて被災地に希望を与えることも重要である。
 さらに、我が国のこのような大規模自然災害に対処する取組を諸外国に発信することにより、災害対策の国際的な水準の向上に寄与することも、東日本大震災を経験した我が国が果たすべき使命の一つである。
 ここに、災害予防、災害応急対策及び復旧復興の各段階において、施設等の整備に関しない施策と施設等の整備に関する施策を組み合わせた大規模自然災害に備えた防災及び減災に係る対策を推進するとともに、地域の実情に応じた防災及び減災に係る対策を推進するための体制の整備を推進することにより、大規模志自然災害から国民の生命を保護し、及びその生活を守る国民生活の強靭化の取組を推進するため、この法律を制定する。
第一 総則
 一 目的                                    (第一条関係)
   この法律は、国民生活を強靱化するための大規模自然災害に備えた事前の防災及び減災に係る対策(以下「国民生活強靱化対策」という。)の推進に関し、国等の責務を明らかにし、及び国民生活強靱化基本計画の策定その他国民生活強靱化対策の基本となる事項を定めるとともに、国民生活強靱化推進本部を設置すること等により、国民生活強靱化対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。
 二 国、地方公共団体等の責務等                  (第二条から第五条まで関係)
1 国は、国民生活強靱化対策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有すること。
2 地方公共団体は、国民生活強靱化対策に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有すること。
3 事業者及び国民は、国民生活強靱化対策の重要性に関する理解と関心を深め、国及び地方公共団体が実施する国民生活強靱化対策に協力するよう努めなければならないこと。
4 国、地方公共団体、事業者その他の関係者は、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならないこと。
 三 法制上の措置等                               (第六条関係)
 政府は、国民生活強靱化対策を実施するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならないこと。
第二 基本方針等
 一 基本方針                                  (第七条関係)
 国民生活強靱化対策は、次に掲げる基本方針に基づき、推進されるものとすること。
[1] 大規模自然災害に際して、人命の保護が最大限に図られること。
[2] 予測することができない大規模自然災害が発生し得ることを踏まえ、施設等の整備に関しない施策と施設等の整備に関する施策を組み合わせた国民生活強靱化対策を推進するための体制を早急に整備すること。
[3] 防災及び減災のための取組は、自助、共助及び公助が適切に組み合わされることにより行われることを基本としつつ、大規模自然災害については、国が防災及び減災のための取組の中核的な役割を果たすこと。
[4] 大規模自然災害を未然に防止し、大規模自然災害が発生した場合における被害の最小化並びに国家及び社会の諸機能の代替性の確保等を図ることにより、大規模自然災害が発生した場合における我が国の政治、経済及び社会の活動を持続可能なものとし、並びに大規模自然災害からの円滑かつ迅速な復興に資することを旨とすること。
[5] 現在のみならず将来の国民の生命を保護し、及びその生活を守るために実施されるべき施策については、人口の減少等に起因する国民の需要の変化、社会資本の老朽化、国民生活強靱化対策を実施するために必要な財源の不足等を踏まえ、財政規律の維持の観点から、その重点化を図ること。
 二 対策の策定及び実施の方針                          (第八条関係)
 国民生活強靱化対策は、次に掲げる方針に従って策定され、及び実施されるものとすること。
[1] 大規模自然災害の発生から七十二時間を経過するまでの間において、迅速かつ適切な救助活動を行うために必要な措置を集中的に講ずること等により、人命を保護することを最も優先して行うこと。
[2] 内閣府(防災に関する事務を所掌する部局等に限る。)及び消防庁を中核とした組織を設置し、大規模自然災害への対処に係る事務を総括する機能の強化を図ること。
[3] 大規模自然災害が発生した場合における応急対策の実施を支援する機能の強化を図ること。
[4] 大規模自然災害が発生した場合における応急対策の実施に関する指揮命令に係る権限を整理すること。
[5] 防災及び減災に関する法制について、体系的な整備を行うこと。
[6] 国民生活強靱化対策の推進を図る上で必要な事項を明らかにするため、防災及び減災の観点から、大規模自然災害に対する脆弱性の評価(以下「脆弱性評価」という。)を行うこと。
[7] 大規模自然災害に起因する国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化に資すること。
[8] 人命を保護する観点から、土地の合理的な利用を促進すること。
[9] 地域における国民生活強靱化対策の推進体制の強化等を図ること。
[10] 学校及び地域社会における防災及び減災に関する教育の推進を図ること。
[11] 国民生活を強靱化するための地域における活動並びに災害から得られた教訓及び知識を伝承する活動を推進すること。
[12] 地域の特性に応じて、自然との共生及び環境との調和を図ること。
[13] 防災又は減災に関する専門的な知識又は技術を有する人材の育成及び確保を図ること。
[14] 科学的知見に基づく研究開発の推進及びその成果の普及を図ること。
[15] 大規模自然災害に関する観測及び測量の実施の強化を図ること。
[16] 既存の社会資本の有効活用等により、対策の実施に要する費用の縮減を図ること。
[17] 施設又は設備の効率的かつ効果的な維持管理に資すること。
[18] 民間の資金の積極的な活用を図ること。
第三 国民生活強靱化基本計画等
 一 国民生活強靱化基本計画                   (第九条から第十一条まで関係)
  1 政府は、国民生活強靱化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地方公共団体の国民生活強靱化対策の実施に関する主体的な取組を尊重しつつ、第二の基本方針等及び国が本来果たすべき役割を踏まえ、国民生活強靱化対策の推進に関する基本的な計画(以下「国民生活強靱化基本計画」という。)を、国民生活強靱化基本計画以外の国民生活強靱化対策に係る国の計画等の指針となるべきものとして定めるものとすること。
  2 国民生活強靱化基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
   [1] 国民生活強靱化基本計画の対象とする国民生活強靱化対策の分野
   [2] 国民生活強靱化対策の策定に係る基本的な指針
   [3] 国民生活強靱化対策に関する予算編成の方針
   [4] [1]から[3]までのほか、国民生活強靱化対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
  3 内閣総理大臣は、国民生活強靱化基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならないこと。
  4 内閣総理大臣は、3による閣議の決定があったときは、遅滞なく、国民生活強靱化基本計画を公表しなければならないこと。
  5 政府は、国民生活強靱化対策の実施状況を踏まえ、必要に応じて、国民生活強靱化基本計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとすること。
  6 国民生活強靱化基本計画以外の国の計画は、国民生活強靱対策に関しては、国民生活強靱化基本計画を基本とするものとすること。
  7 内閣総理大臣は、国民生活強靱化基本計画の実施について調整を行うため必要があると認める場合においては、関係行政機関の長に対し、必要な勧告をすることができること。
 二 国民生活強靱化地域計画                    (第十二条及び第十三条関係)
  1 都道府県又は市町村は、国民生活強靱化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、当該都道府県又は市町村の区域における国民生活強靱化対策の推進に関する基本的な計画(以下「国民生活強靱化地域計画」という。)を、国民生活強靱化地域計画以外の国民生活強靱化対策に係る当該都道府県又は市町村の計画等の指針となるべきものとして定めることができること。
  2 国民生活強靱化地域計画は、国民生活強靱化基本計画との調和が保たれたものでなければならないこと。
第四 国民生活強靱化推進本部
 一 設置及び所掌事務                       (第十四条及び第十五条関係)
  1 国民生活強靱化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、内閣に、国民生活強靱化推進本部(以下「本部」という。)を置くこと。
  2 本部は、次に掲げる事務をつかさどること。
   [1] 国民生活強靱化基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること。
   [2] 関係行政機関が国民生活強靱化基本計画に基づいて実施する施策の総合調整に関すること。 
   [3] 防災及び減災のための体制の整備の推進に関する企画及び立案並びに総合調整に関すること。
   [4] [1]から[3]までのほか、国民生活強靱化対策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。
 二 国民生活強靱化基本計画の案の作成                     (第十六条関係)
  1 本部は、国民生活強靭化対策の推進を図る上で必要な事項を明かにするため、脆弱性評価の指針を定め、これに従って脆弱性評価を行い、その結果に基づき、国民生活強靭化基本計画の案を作成しなければならないこと。。
  2 本部は、1の指針を定めたときは、これを公表しなければならないこと。
  3 脆弱性評価は、起きてはならない最悪の事態を想定した上で、科学的知見に基づき、総合的かつ客観的に行うものとすること。
  4 脆弱性評価は、国民生活強靱化基本計画の案に定めようとする国民生活強靱化対策の分野ごとに行うものとすること。
  5 脆弱性評価は、国民生活強靱化対策の分野ごとに投入される人材その他の国民生活強靱化対策の推進に必要な資源についても行うものとすること。
  6 本部は、脆弱性評価を行ったときは、国民生活強靱化基本計画の案を作成する前に、当該脆弱性評価について、政令で定めるところにより、検証を受けなければならないこと。
  7 本部は、国民生活強靱化基本計画の案の作成に当たっては、作成手続における透明性を確保しつつ、公共性、客観性、公平性及び合理性を勘案して、実施されるべき施策の優先順位を定め、その重点化を図らなければならないこと。
8 本部は、国民生活強靱化基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、都道府県、市町村、学識経験を有する者、国民生活強靱化対策に係る事業者及び国民生活強靱化対策の推進に関し密接な関係を有する者の意見を聴かなければならないこと。
 三 組織                          (第十七条から第二十一条まで関係)
  1 本部は、国民生活強靱化推進本部長、国民生活強靱化推進副本部長及び国民生活強靱化推進本部員をもって組織すること。
  2 本部の長は、国民生活強靱化推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てること。
  3 本部に、国民生活強靱化推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び国民生活強靱化担当大臣をもって充てること。
  4 本部に、国民生活強靱化推進本部員を置き、次に掲げる者をもって充てること。
[1] 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣
[2] 災害対策基本法第二条第五号に規定する指定公共機関の代表者、経済団体の代表者及び学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する者
 四 資料の提出その他の協力                         (第二十六条関係)
  1 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人及び地方独立行政法人の長並びに特殊法人の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができること。
  2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、1の者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができること。
第五 雑則
 一 国民生活強靱化対策の推進を担う組織の在り方に関する検討          (第三十条関係)
   政府は、国民生活強靱化対策の推進を担う組織(本部を除く。)の在り方について、政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置を講ずるものとすること。
 二 国民の理解の増進                            (第三十一条関係)
 国は、広報活動等を通じて国民生活強靱化対策に関する国民の理解を深めるよう努めなければならないこと。
第六 施行期日                                (附則第一条関係)
  この法律は、公布の日から施行すること。