令和元年7月9日(火)

 本日は閣議において,法務省案件はありませんでした。
 私から1件報告があります。本日,閣議前に,熊本ハンセン家族訴訟判決に対する対応についての会議があり,その際,総理から「今回の判決内容には一部に受け入れ難い点もあるが,筆舌に尽くし難い御経験をされた家族の皆さんの御労苦をこれ以上長引かせるわけにはいかない。こうした思いのもとに,異例の措置ではあるが,控訴断念の方向で至急準備に入る」という御指示がありました。法務省としても,この御指示に基づいて,至急準備を進めたいと考えています。

テロ等準備罪の適用状況に関する質疑について

【記者】
 テロ等準備罪についてお伺いします。11日で施行2年となりますが,現在の適用状況を教えてください。また,その理由と,ラグビーワールドカップや東京五輪・パラリンピックを控える中で,今後の方針などがあればお聞かせください。

【大臣】
 テロ等準備罪の創設後の運用状況について質問がありましたが,テロ等準備罪の捜査・訴追については,関係機関において,関係法令にのっとって適正に行われるものと承知しているところですが,組織的犯罪処罰法等改正法の施行後のテロ等準備罪の検察当局における受理件数は,現時点で私が把握している限り,0件です。
 他方で,組織的犯罪処罰法等改正法については,いわゆる国連TOC条約の加盟に不可欠な法律であり,この改正法の成立を受けて,TOC条約を締結することができました。これにより,これまで有効な条約がないため協力を求められなかった又は国際礼譲に基づく善意の協力しか求められなかった多数の国や地域との間で,テロを含む国際組織犯罪について,条約に基づく国際捜査共助や,あるいは逃亡犯罪人引渡しを相互に求められるようになったということ,あるいはその前提としての情報収集において,国際社会とより緊密に連携することが可能となったということです。
 TOC条約の締結については,各国からも高い評価を得られています。私自身,様々な国の司法長官や法務大臣,あるいは検事総長とお会いするときに,高い評価を受けているところです。
 テロを含む組織犯罪は国境を越えて行われることが少なくなく,外国に存在する証拠を取得するための捜査手法として,国際的な捜査共助等を活用する必要性が高いと考えています。御指摘のラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックが控える中,そうした国際的な連携を強化することで,犯罪を未然に防ぐということにつきましても,国際協力を推進してまいりたいと考えています。

熊本ハンセン家族訴訟判決への対応に関する質疑について

【記者】
 ハンセン病訴訟判決について,法務省でも控訴するかどうかを検討していたと思いますが,法務省での検討状況と改めて今回の決定に対する所感を伺います。

【大臣】
 先程申し上げたとおり,総理から今回の判決内容には一部に受け入れ難い点もあるということです。そういった点を含めて法務省としては検討を進めていたということです。今回の総理の御指示は,ハンセン病元患者の皆様,そして,御家族の皆様に寄り添いたいという思いによる御決断だと思っていますし,御決断の重さにつきましては,閣僚の一人として,法務大臣として,共有しているところです。今後は,総理の御指示に従って至急準備を進めてまいりたいと考えています。

【記者】
 判決内容について受け入れ難い点があるという認識を,総理も大臣もお持ちでいらっしゃると思いますが,その辺りについて詳しく,どういう点がどう受け入れ難いのか教えてください。

【大臣】
 本日の段階では,異例の措置ではあるが控訴断念の方向で至急準備に入るよう御指示があり,それに基づいて,我々も準備をするということですので,どのような点がということについては答えを差し控えさせていただきたいと考えています。いずれ,しかるべき時期に,しかるべき形でお話をすることになるだろうと考えています。

【記者】
 総理も大臣も異例の措置という言葉を何度も使われていて,似たような他の裁判に影響が出るのではないかという懸念の声も法務省内にはあったと思いますが,改めてそれについて大臣の御意見等をお願いします。

【大臣】
 法務省としては,今回の判決について,様々な角度から検討してきたところです。そして,しっかりと検討した上でそれらを共有させていただいたところです。その上で,異例の措置ではあるということですが,元患者あるいはその御家族の皆様に寄り添いたいという思い,これ以上,家族の皆様の御苦労を長引かせる訳にはいかないという思いのもとで,控訴断念の方向で準備をするよう指示があったということです。今日のところで申し上げられるのはここまでであろうと思っています。

(以上)