(令和元年7月2日(火)11:26 ~ 11:48 省内会見室)

【広報室】

会見の詳細

閣議等について

大臣:
私から3点冒頭申し上げたいと思います。まず幹部職員の人事異動等であります。本日の閣議で、局長級以上の幹部職員の人事異動について、内閣の承認が得られました。今回の人事異動の内容については、お配りしている資料のとおりであり、これらの人事は、7月9日付で発令します。宮川晃厚生労働審議官が退官し、その後任に土屋喜久職業安定局長を登用します。女性の登用については、引き続き3名を本省局長級のポストに登用します。官房長である定塚由美子を、吉本明子人材開発統括官の後任に充て、吉本明子は中央労働委員会事務局長に登用し、子ども家庭局長に渡辺由美子大臣官房審議官を登用します。今般の幹部人事異動に併せ、発令日7月9日に、厚生労働省改革を着実に進めていくための体制を整備します。かねてから申し上げてきたとおり、厚生労働省改革には、大臣である私が先頭に立って、職員全員が一体となって取り組んでまいります。このため、私の指示の下に、厚生労働省改革の具体策を検討・実施し、その進捗管理を行うことを目的として、事務次官をトップとする厚生労働省改革実行チームを新設します。また、厚生労働省改革に関し助言をいただくため、厚生労働省改革アドバイザリー・ボード、要は私の下でアドバイザリー・ボードを設置させていただいて、外部有識者の方、数名を新たに任命することを検討しています。外部有識者については、人選が固まり次第、改めて発表させていただきたいと思います。次に、厚生労働省改革の当面の具体策についてお話しをいたします。まず、厚生労働省が国民の期待に応えられるよう、厚生労働行政の重みに対応した、しっかりとした組織のガバナンスを確立するためには、大臣を補佐する官房機能の強化が必要であります。このため、大臣官房総括審議官を室長とする大臣官房総括調整室を新設するとともに、同室の室長代理として、新たに大臣官房参事官2名を配置して、官房機能の実務を担う体制を強化することとします。また、厚生労働省には、人の暮らしを支える社会保障と働き方を一体で改革し、少子高齢・人口減少社会の様々な課題に対応する政策を打ち出していくことが求められています。このため、政策統括官組織について、社会保障や雇用労働といった旧来のくくりをなくす、例えば就職氷河期世代の活躍支援など横断的政策課題について、政策統括官組織が事務局となり、関係部局の幹部がチームとなって検討する体制を整備するなど、時々の政策課題に横断的に対応できる体制を整備します。最後に統計改革の推進について申し上げます。統計改革については、まず、今般の幹部人事異動に併せ、統計部門の組織改革として、政策統括官部門に、統計担当の審議官を配置します。具体的には、政策立案総括審議官の担務追加を行います。また、新たに企画官級職員2名を統計総務室に配置し、うち1名は民間から公募するなど、職種等にとらわれずに体制の強化を図ってまいります。さらに、統計改革については、「厚生労働省統計改革ビジョン2019」、これは仮称ですが、策定のための有識者懇談会を設置することと致しました。厚生労働省としては、総務省統計委員会の「第一次再発防止策」を踏まえつつ、まずは、厚生労働省として、常に正確性が求められる公的統計の重要性に対する基本認識を明確にする。また、社会の変化を適切に反映し統計ユーザー視点に立った統計を作成できる組織へと生まれ変わる。こうしたことが必要です。このため、広く外部有識者の意見を伺いながら、「厚生労働省統計改革ビジョン2019」を策定することといたします。外部有識者については、配付資料に記載の5名の方々に加え、今後何名か追加を予定しております。また、第1回会合については、7月上中旬に開催の方向で日程を調整しております。数回の議論を経て、8月下旬にとりまとめを予定しております。第1回会合の日程及び追加の委員の方については、決まり次第、お知らせをいたします。また、このビジョン作成のための省内体制として、厚生労働審議官をトップとした統計改革チームを7月9日付けで新設し、体制の強化を図ります。こうした取組により、厚生労働省が政府全体の公的統計を牽引するような統計行政のフロントランナーとなることを目指してまいります。厚生労働省改革及び統計改革については、このような体制の下で更に検討を進め、必要なものについては、8月末の概算要求や組織・定員要求を行ってまいります。厚生労働省改革及び統計改革について、それぞれ資料を配付していますが、ご要望があれば事務方から補足説明をする機会を設けるので、詳細については事務方にお尋ね下さい。次に有効求人倍率についてであります。令和元年5月の有効求人倍率は1.62倍と、前月より0.01ポイント低下しました。また、正社員の有効求人倍率は1.15倍と、前月より0.01ポイント低下しました。現在の雇用情勢は、着実に改善が進む中、求人が求職を大幅に上回って推移していると判断しています。次に東京オリンピック・パラリンピックの開催、観光立国推進に向けた検疫体制の強化パッケージについてであります。本日は、厚生労働省における検疫対策の強化についてお知らせいたします。観光立国の推進に伴い、訪日外国人旅行者が年々増加しております。また、本年のラグビーワールドカップ、来年の東京オリンピック・パラリンピックの開催等による訪日外国人旅行者のさらなる増加などを考えると、水際対策の体制強化が必要です。そのため、今回、①計画的な人員の増員など、検疫所の体制の増強、②検疫所の認知度向上と情報発信、③主要空港への多言語翻訳タブレットの設置など、外国人への検疫案内の強化を3つの柱として、パッケージで検疫体制の強化を図ることとします。そのうち、検疫所の認知度向上の取組の一環として、このたび、新たに、検疫所のイメージキャラクターを選定しましたので、ご紹介いたします。名称は「クアラン」です。検疫の英語である「クアランティン」が元になっています。今後、この「クアラン」を活用して、7月14日の検疫記念日を中心とした各地でのイベント開催など、幅広い年齢層の方々に検疫についてアピールしてまいりたいと考えています。本日午後私は羽田空港の検疫所を視察いたします。以上です。

質疑

記者:
大学病院の無給医の問題についてですが、文部科学省が先日地方の大学病院で働いている医師のうち2,191人の給与が支払われないといった調査が公表されました。無給医の多くは雇用契約を結ばず労災保険にも未加入ということで厚労省としての今後の対応について伺えればと思います。
大臣:
今回の事案は、大学病院が医師を養成する教育機関であると同時に、医療機関として患者に診療を提供していることから生ずる構造的な問題であると認識しておりますが、給与を支払われていない医師がいたことは極めて遺憾であります。賃金不払いは、労働基準法違反であり、すみやかに改善が図られる必要があります。本件については、各大学及び文部科学省において、今後、すみやかな改善が図られるものと考えますが、労働者からの申告等によって、労働基準法違反の継続が疑われる場合には、状況をよく確認し、法律に基づき、適切に対応してまいりたいと考えます。
記者:
改めて本日の幹部人事のポイントについて教えていただきたいのと、鈴木事務次官は不祥事、統計問題などがある中でなぜ続投させるかということについて教えてください。
大臣:
まず今回の人事は厚生労働省改革すなわち現役世代の減少が進む中、2040年頃を見据えて全ての世代が安心できる社会保障制度の構築に向けた取組みを推進するとともに、組織のガバナンスを強化するため官房機能の強化、政策統括機能の強化を行う、あわせて統計改革を進めるための体制強化を行うなどの観点から適材適所の人事を行うものであります。今回の幹部人事はいわゆる統計不正の責任問題とは関係がありません。やはり大事なのは国民の期待に応える厚生労働省へ変革するために厚生労働省改革、さらに統計改革を推進する観点を含めてこの人事異動、そして当面の組織改革を行うものであります。人事については適材適所の観点で配置をいたしました。
記者:
組織改編の関係で改革実行チームの設置は以前から大臣がおっしゃっている官房機能の強化だと思いますが、既存の幹部で作るチームだとお見受けしますが、このチームを作ることによってどのように官房機能が強化されるのかを教えてください。もう一点、先ほどの無給医についてですが、雇用契約を結んでいない無給医もいたという調査結果が出ています。こうした無給医については労基法にも当てはめていくことが難しいと思うのですが、その辺りはどのように対応していく必要があるかお考えを教えてください。
大臣:
官房機能の強化ですが、私は大臣就任以来、厚労省は官房機能が弱いと感じてきましたので、大臣を補佐する官房機能の強化、これはガバナンスの強化という観点と、政策については様々な厚労省を横断的にまたがる政策がありますから、その政策における機能強化の必要性という観点で、今回、官房機能を強化ということで、組織の今の段階でやれることは全部やるという観点で組織を作り上げたということであります。これは私が大臣をやっていて常々感じていたことですから、これは厚生労働省は官房機能を強化することで対応したということであります。無給医の問題はどういう観点のご質問かもう一度お伺いできますか。
記者:
雇用契約を結んでいない形での無給医の存在も調査結果で明らかになっています。そうすると労基法に当てはめていくことも法律上難しいのではないかという指摘がありますが、その辺りはどのように対応していこうと現時点でお考えでしょうか。
大臣:
基準法上の労働者性については、実態を見て判断していきたいと思っております。医療機関は、受診者に対して、診療契約に基づき診療を提供する債務を負っておりますが、どのような方法で診療を提供するかは、医療機関の裁量に任されており、様々な立場の医師が診療に従事すること自体には問題はないと考えております。医療の質や医療の安全の確保、医療事故等の対応が適切に行われるか、これは重要な観点ですが、雇用関係の有無や当該医師が無給で働くか否かにかかわらず、診療体制に適切に組み込まれているか、必要な研修が実施されているか、医療事故発生時の責任について適切に分担されているかによります。今後、大学病院で診療に従事する医師については適切に雇用関係が結ばれる等の対応が図られていくものと考えております。そして、賃金未払いは労働基準法違反であって速やかに改善が図られる必要があります。本件については、各大学および文部科学省において速やかな改善が図られるものと考えますが、労働者からの申告等によって労働基準法違反の継続が疑われる場合には、状況をよく確認し法律に基づいて適切に対応していきたいと思います。
記者:
今週木曜日に中央最低賃金審議会が今年も始まりますが、骨太の方針に賃金をより早期に1,000円を達成する方針が盛り込まれましたが、一方で3%という目安の基礎になるものもありますが、今後この骨太の方針を中央最低賃金審議会にどういう風に反映していくか、大臣のお考えをお教えください。
大臣:
経済の好循環の拡大に向けて最低賃金の継続的な引上げは重要であり、これまでも、働き方改革実行計画等において、「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1,000円となることを目指す。」とされていること等を踏まえて、平成25年度以降の6年間で、全国加重平均で125円の大幅な引き上げを行ってきたところであります。本年の骨太の方針では、最低賃金について、中小企業・小規模事業者に対してきめ細かな伴走型の支援を粘り強く行っていくことなどを通じて、経済成長率の引上げや生産性の底上げを図りつつ、賃上げしやすい環境を整備することとしており、今後関係省庁と連携しながらしっかり取り組みたいと思います。なお、最低賃金は、公労使からなる最低賃金審議会において、地域における労働者の生計費、賃金及び企業の支払能力の3要素やその時々の事情を総合的に勘案して決定されてきており、7月4日から始まる本年の夏の審議会でも真摯な議論を期待したいと思っています。
記者:
遺伝性の乳がん患者が将来のリスクを下げるため、がんがない方の乳房を取る予防的な手術について公的医療保険の対象とするか検討を始めると一部報道がございました。現時点での事実関係について教えてください。
大臣:
現時点において厚生労働省は予防的切除に対する保険適用について検討を開始したという事実はありません。遺伝変異を有し、乳がんになりやすい方に対する予防的手術への保険適用については、がんの原因となる疾病に対する治療と位置づけられるかという課題や、他の方法で早期発見の可能性があるかどうかという論点がありますので、エビデンスを確認しつつ、関係者の意見を聞きながら慎重に検討を続ける必要があります。一方で、がんを発症された方の生存率を改善させる治療のあり方という観点から、同じ遺伝子に起因する他の部位に対する治療を医療保険においてどのように取り扱うかという点については、学会等の要望に応じ、疾病と療養の関連性やエビデンスの状況等を踏まえて、中医協において検討していきたいと考えています。
記者:
先週のハンセン病の熊本判決についておうかがいしますが、国として初めて家族の差別を認定して国に賠償を命じるという判決でした。改めて大臣の受け止めと控訴の判断についてお伺いできればと思います。
大臣:
判決内容は精査中でありますが、国の主張が認められなかったと認識しています。今後の対応については、現在、判決内容の詳細を確認し、関係省庁と協議するなど検討しているところであります。
記者:
先週豊中市へ視察に行かれていらっしゃると思います。その前段で、全国ひきこもり関係団体との懇談もされていると思いますが、豊中市は地域共生社会の先進地と言われていますが、その中で今、俎上に上がっている中高年のひきこもりの対策として何か得られた物はあったのか、全国的に横展開できるものがあったのか、視察の成果としてお伺いできればと思います。
大臣:
豊中市は非常に先進的な取組みをしていると思いました。6月28日は、一般社団法人キャリアブリッジと豊中市社会福祉協議会にお邪魔しました。キャリアブリッジは、地域若者サポートステーションや生活困窮者自立支援事業の受託先であり、地元企業との緊密な連携の下で、一人一人の状況に応じたきめ細かい支援を実践していて、私も伴走型支援が必要だと常々思っておりましたが、伴走型支援の必要性を改めて感じました。先日のひきこもりの関係のある皆さん、あるいは、支援する団体の皆さんとも懇談いたしましたが、それも合わせてやはり伴走型支援の必要性を改めて感じました。豊中市社会福祉協議会では、60歳以上の男性の居場所として設置された都市型農園「豊中あぐり」、ひきこもり状態にある方の居場所や就労体験の場である「びーのマルシェ」、「断らない相談」を実践する地域福祉の活動拠点である「遊友(ゆうゆう)」を訪問しました。空き家や農地などの地域資源を活用し、社会福祉協議会、民生委員、地域住民等が協力して、地域課題を把握・解決する様子は、地域共生社会の未来図そのものであったと思います。要は、発見力と解決力とおっしゃっておりました。私もそういう取組みに注目いたしました。現在、就職氷河期世代活躍支援プランや、ひきこもりの状況にある方への支援、また、地域共生社会の推進に取り組んでいるところであり、豊中市で拝見した取組みが全国に広がるよう、今回の視察で得た知見、あるいはヒントも施策に反映させて、強力に推し進めていきたいと思います。
 

(了)