(令和元年6月14日(金)9:38 ~ 9:51 省内会見室)

【広報室】

会見の詳細

閣議等について

大臣:
冒頭、特にございません。

質疑

記者:
年金の財政検証を巡って、与野党から、特に野党ですけれども、早期の発表を求める声が挙がっています。この点について、大臣の受け止めをお願いします。関連して、現状のオプション試算で非常に時間がかかっているというご説明だと思うのですが、可能性としてそれを除いた部分での公表が先行するということはありますでしょうか。
大臣:
昨日の国会でも答弁しましたが、財政検証は現在作業中であり、必要な検証作業が終わり次第、公表することを予定しているということに尽きると思います。そもそも財政検証は、公的年金制度の持続可能性を確保するために、5年に一度人口や経済の長期の前提を設定して、概ね100年間という長期的な給付と負担の収支の見通しを確認するものであります。いわば年金制度の定期健康診断というような性格のものであります。厚生労働省としては、制度改正の議論に資する財政検証をしっかり行うことが重要と考えています。現在、年金部会の議論あるいは未来投資会議での議論等を踏まえて、財政検証本体の試算作業に加えて、新たなオプション試算などの内容の充実を図り、丁寧に作業を行っているところであります。事務方へは、より良い検証となるよう、丁寧な作業を行うよう指示しており、作業の推移を見守りたいと思います。それから、後段のご質問、年金財政の現状と今後の見通しを理解して、それに基づいて今後の制度改正の議論を進めるためには財政検証本体だけでなく、制度改正の議論に資するオプション試算も一体で示す必要があると考えています。
記者:
金融庁の2,000万円の報告書を巡ってなのですが、改めて国民に年金制度を詳しく説明していくことが課題だと思うのですが、大臣のお考えをお願いします。
大臣:
現状の年金制度について改めて申し上げたいと思います。平成16年度の制度改正によって将来世代の負担を過重にすることを避けながら、制度を持続可能なものとするため、将来の保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入しました。これは、マクロ経済スライドを導入することによっておおむね100年間の収支を均衡させる仕組みに改革しました。これは、世界的な制度の中でも日本の年金制度の形は非常に優れた点だと考えています。マクロ経済スライドは、賃金や物価の上昇による年金改定を行う際に、被保険者の減少率や平均余命の延び率に応じて調整する仕組みであります。これによって、現役の手取り収入に対する割合、所得代替率は時間をかけて調整されるということになります。しかしながら、同時に、現在の受給者にも配慮して、マクロ経済スライドによって年金の名目額を下げることはしないという配慮措置を導入しております。今後、人生100年時代という言葉に表現されるように、より長く多様な形となる就労の変化を年金制度に取り込み、長期化する高齢期の経済基盤を充実するという考え方のもとに、経済社会の変化に対応した必要な改革を進めるとともに、年金制度の状況や改革内容について様々な形で説明を重ね、国民の信頼を得られるよう対応していきたいと思います。
記者:
先ほどの財政検証の関係で、成長戦略等を踏まえた新たなオプションを加えて検証作業を行っているということですが、オプションは基本的に審議会で大体どのようなことをするのか決まっていたと思うのですが、そこに新たに条件を加えていくということでしょうか。どのような試算を今検討されていますか。
大臣:
例えば、未来投資会議においては、より長く多様な形となる就労の変化を年金制度に取り込み、長期化する高齢期の経済基盤を充実するという基本的な考え方の中で、被用者保険の適用拡大や、要は、年金受給の時期や組合せの選択肢を拡大する、あるいは在職老齢年金制度等の見直しなどが改革の柱として掲げられております。今回の財政検証では、これらの議論に資するようなオプション試算を実施することにしています。
記者:
もう一点、先ほどの金融庁の報告書なのですが、昨日国会でもやりとりがあったのですけれど、ベースとなっているデータが総務省の家計調査を基に厚労省の職員の方がオブザーバーとして報告をしたデータであるということで、麻生大臣が言う政府の見解と異なるというところと政府が出しているデータがベースになっているという矛盾がどうしても野党や国民にとっては理解ができないのだと思うのですけれども、そこはどのように考えますか。
大臣:
そこはきちんと申し上げたいと思います。まず、高齢期の生活は多様であってそれぞれの方が望ましいと考える生活水準や働き方の希望、収入・資産の状況なども様々であります。現在での国民の老後所得は公的年金を中心としつつ、稼働所得、要は働いて稼ぐ所得、仕送り、企業年金、個人年金、財産所得などが組み合わさっているのが実態であると認識しています。これが我々の基本的なスタンスであります。厚生労働省が従来から示している資料、これは引退した後の高齢期の生活として、家計調査における高齢者世帯、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均的な収入と支出の差、貯蓄の活用の実態を紹介したものであります。その際には、引退後の高齢期の生活は平均的にみて公的年金に加えて貯蓄を5万円程度活用して営まれているこれを厚労省としてそこは説明しました。ただ、5.5万円の不足があるとか、生涯2,000万円不足しているとこういった説明は行っておりません。しかしながら、市場ワーキング・グループの報告書は、これらの数字を比較した単純な議論を行って、あたかも生活費として月5万円不足、30年で総額2,000万円不足するかのように述べております。この点で世間に著しい誤解や不安を与えたとして、これは麻生金融担当大臣もそういうことを述べられております。官房長官もこの旨記者会見で述べられていると承知をしております。これが今回の我々の、あの厚労省の発言に対して私はこのように認識をしております。それから、今回の報告書はワーキング・グループ委員のお考えをまとめたものであると承知しております。厚生労働省としての見解が表現されているものではなく、オブザーバーとして参加しておりますから、そこは協議を受けるような性格のものではないと考えています。
記者:
今ILO総会がジュネーブで開かれておりまして、来週の今日21日にはハラスメント、職場でのハラスメントを禁止する条約が採決される見通しとなっておりますけれども、これに日本は賛同される、要はゆくゆくは批准するかどうかという話になるのですが、その前にまずこれを賛成票を投じる用意があるかどうか。去年総会ではこのハラスメントの定義が広すぎて多くの国が参加できる内容にはなっていないという趣旨の日本は主張をしたのですけれども、現時点では日本がこれ参加できる内容になっているかどうか、素案が示されているわけですけれども、ご見解をお伺いしたいのですが、よろしくお願いします。
大臣:
仕事の世界における暴力とハラスメント、これは働く方の尊厳や人格を傷つけるあってはならないことであります。これをなくしていくための新たな国際労働基準の必要性や意義は大きいと認識しております。我が国では既にご案内のように先般ハラスメント防止対策を強化する改正法が成立したところであり、ハラスメントのない職場づくりに向けて積極的に取り組みを進めているところであります。仕事の世界における暴力とハラスメントをなくすという共通の目標に向けて世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができるよう、今ILO総会の議論に積極的に参加していきたいということで現在ILO総会の議論が行われているという状況にあるということを申し上げておきたいと思います。
記者:
つまり賛成するかどうかはまだわからない、そういうことでよろしいでしょうか。
大臣:
まだ今まさに議論しているところであると認識しています。
記者:
金融庁の報告書に関してなのですけれども、政府としては正式に受け取らないという麻生大臣の対応に批判の声も出ていますけれども、その是非について大臣どうお考えか教えてください。
大臣:
それは金融庁の取り組んできたことであり、その意味で金融担当大臣も兼ねておられる麻生大臣のご判断だと思っております。

(了)