農林水産省
向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)については次のとおりです。
・水稲では、縞葉枯病の発生が北関東及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。本病はヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病であるため、当該虫を対象とした適切な防除を実施してください。
・野菜類では、ねぎのアザミウマ類の発生が南関東及び四国の一部の地域で多くなると予想されています。ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
・果樹では、果樹カメムシ類の発生が関東、近畿及び四国の一部の地域で多くなると予想されています。本虫の飛来状況は地域や園地により異なるので、園内を注意深く観察し、適期に防除を実施してください。このほか、かんきつのハダニ類等、地域によっては多くなると予想されている病害虫があるので注意してください。
国の発生予察情報について
国は都道府県の協力の下、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、有害動植物の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、有害動植物の発生調査結果等を分析し、有害動植物の発生予察情報及び防除対策に係る情報を提供しています。
本予報は、都道府県が提供する発生予察情報を取りまとめた情報になりますので、地域における情報の詳細は、都道府県病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
発生予察について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
都道府県病害虫防除所
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html
気象
気象庁の向こう1か月の予報(6月6日付け)では、気温は沖縄・奄美を除き、平年並みか高く、降水量は西日本日本海側で平年並みか少なく、沖縄・奄美で多いと予想されています。
気象庁ホームページ
参照URL:http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/001_00.html (外部リンク)
水稲
水稲で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
水稲 | イネミズゾウムシ | 北陸、中国、四国、北九州 | |
ニカメイガ | 北関東、中国 | ||
縞葉枯病 (ヒメトビウンカ) |
北関東、北陸 | 北海道、南関東、中国、四国 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
・縞葉枯病は、ヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病であり、経卵伝染により次世代もウイルス媒介が継続するため、当該虫を対象とした防除を実施することが重要です。北関東及び北陸の一部の地域では、今後の発生が多くなると予想されており、ヒメトビウンカの本ウイルスの保毒虫率が高かった茨城県では注意報が発表されています。
育苗箱施用剤を施用した苗を移植した水田において当該虫の防除を実施する場合は、薬剤抵抗性の発達を助長しないよう同一系統の薬剤の連続使用を避けてください。
野菜・花き
野菜・花きで各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
きゅうり | アブラムシ類 | 北東北、北陸、近畿 | |
べと病 | 南関東 | 南九州 | |
トマト | アブラムシ類 | 北陸、近畿 | |
コナジラミ類 | 南関東、四国 | ||
なす | アブラムシ類 | 北陸、近畿 | |
ハダニ類 | 南関東、近畿 | ||
たまねぎ | アザミウマ類 | 北海道 | 北陸 |
ねぎ | アザミウマ類 | 南関東、四国 | 北東北、北関東、北陸、近畿、北九州 |
アブラナ科全般 | コナガ | 近畿、四国 | |
野菜共通 | オオタバコガ | 南関東、甲信、近畿、四国、南九州 | |
シロイチモジヨトウ | 近畿、四国 | ||
ハスモンヨトウ | 近畿、四国、南九州 | ||
ヨトウガ | 北東北、南関東 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
ねぎ
・アザミウマ類の発生が、南関東及び四国の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルスを媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤を選定するとともに、天敵生物等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。
果樹
果樹で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
かき | アザミウマ類 | 北陸、近畿 | |
ハマキムシ類 | 北陸、北九州 | ||
炭そ病 | 東海、四国 | ||
かんきつ | ハダニ類 | 東海、近畿、四国、北九州 | 南関東、中国 |
なし | アブラムシ類 | 北陸、東海 | 南関東 |
シンクイムシ類 | 南関東、北陸 | 中国、北九州 | |
ハダニ類 | 北東北 | 南関東、北陸、近畿、中国、北九州 | |
ハマキムシ類 | 南関東、北陸、中国、北九州 | ||
黒星病 | 北陸 | 近畿 | |
もも | せん孔細菌病 | 南東北 | 甲信、北陸、東海、近畿 |
りんご | 黒星病 | 北海道、北東北 | 南東北 |
果樹共通 | カメムシ類 | 関東、近畿、四国 | 北東北、甲信、東海、中国 |
茶 | カンザワハダニ | 東海、近畿 | 南関東、北九州 |
ハマキムシ類 | 南関東、北九州 | 近畿、南九州 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
果樹共通
・果樹カメムシ類の発生が、関東、近畿及び四国の一部の地域で多くなると予想されており、5月中旬以降、埼玉県、東京都、京都府、徳島県及び香川県では、山林等の越冬量の調査、予察灯への誘殺数等から、越冬世代の果樹園への飛来量が多いとして注意報が発表されています。
気象庁の発表によると、2019年(平成31年)冬(2018年12月~2月)の日本の天候は、東日本以西では冬の平均気温がかなり高くなったことから、本虫の越冬量が多くなったと推測されます。今後気温の上昇とともに山林部から園地に移動し、もも、なし等の幼果を加害すると予想されるため、注意が必要です。
本虫の飛来状況は地域や園地により異なるので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしつつ、園内を注意深く観察し、飛来が認められた場合は、飛来初期から防除を実施してください。
かんきつ
・ハダニ類の発生が、東海、近畿、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。園内を注意深く観察し、発生状況に応じて防除を実施してください。
なお、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に同一系統の農薬の連続使用を避けてください。
なし
・アブラムシ類の発生が、北陸及び東海の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、地域ごとの防除基準に従って防除を実施してください。
・シンクイムシ類の発生が、南関東及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、地域ごとの防除基準に従って防除を実施してください。
もも
・せん孔細菌病の発生が、南東北の一部の地域で多くなると予想されています。本病は、春期に枝に形成される春型枝病斑(スプリングキャンカー)が伝染源となり、降雨や風により葉及び果実へと次々と感染が拡大します。
梅雨入りを迎え、本病の発生を助長する気象条件となるため注意が必要です。
対策にあっては、薬剤による防除を実施するとともに、本病の防除は薬剤散布だけでは不十分であるため、園内を注意深く観察し、り病部を確実に除去してください。また、防風ネットの設置、早めの袋かけ等の耕種的防除の実施を検討してください。
りんご
・黒星病の発生が、北海道及び北東北の一部の地域で多くなると予想されています。昨年の発生量が多かった地域では、伝染源が多くなっていると予想されることから、特に注意が必要です。対策に当たっては、伝染源となるり病部の除去、薬剤散布等の防除を実施してください。
また、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に効果的な薬剤による防除を実施してください。
茶
・カンザワハダニの発生が、東海及び近畿の一部の地域で多くなると予想されています。この時期は、茶園に生息するカブリダニ等の天敵の活躍により発生が抑えられる園地もありますが、カンザワハダニの寄生葉率が高い場合又は天敵の密度が低い場合には、薬剤による防除の実施を検討してください。
また、本虫は地域及び薬剤の種類により効果が異なることが知られています。都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤の選定をするとともに、薬剤の使用前日数等に留意し、適切な防除を実施してください。
・ハマキムシ類の発生が、南関東及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。ハマキムシ類の幼虫は、茶葉をつづり合わせて内部を食害しますが、葉をつづり合わせてからでは薬剤がかかりにくくなるため、ふ化期~若齢幼虫期を対象とした薬剤散布が効果的です。
地域の予察灯やフェロモントラップの誘殺状況を参考に、前世代成虫の発生最盛日の7日後程度を目安に防除を実施してください。
都道府県が発表した警報、注意報及び特殊報
令和元年5月15日以降、都道府県が発表している警報、注意報及び特殊報は以下のとおりです。
警報
重要な病害虫が大発生することが予測され、かつ、早急に防除措置を講ずる必要がある場合に発表します。
発表はありません。
注意報
警報を発表するほどではありませんが、重要な病害虫が多発することが予測され、かつ、早めに防除措置を講じる必要がある場合に発表します。
発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
5月24日 | 京都府 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
5月29日 | 徳島県 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
5月31日 | 愛知県 | かんきつ | チャノキイロアザミウマ |
5月31日 | 愛知県 | かんきつ | ミカンハダニ |
6月3日 | 埼玉県 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
6月3日 | 東京都 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
6月4日 | 北海道 | たまねぎ | ネギアザミウマ |
6月4日 | 静岡県 | 茶 | カンザワハダニ |
6月6日 | 茨城県 | 水稲 | イネ縞葉枯病(ヒメトビウンカ) |
6月7日 | 香川県 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
特殊報
各都道府県において、新たな病害虫を発見した場合並びに重要な病害虫の生態及び発生消長に特異な現象が認められた場合であって、従来と異なる防除対策が必要となるなど、生産現場への影響が懸念される場合に発表します。
病害虫の生態等の生物学的情報や防除に関する情報の詳細については、各都道府県の病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
5月20日 | 茨城県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
5月23日 | 島根県 | トマト、ピーマン | 茎えそ病及びえそ輪点病 |
5月31日 | 富山県 | ねぎ | ネギハモグリバエ(別系統) |
6月3日 | 奈良県 | トマト、なす | タバコノミハムシ |
6月3日 | 沖縄県 | アセロラ | アセロラ炭そ病 |
病害虫防除に関する留意事項
一般
病害虫の防除を効果的に実施するためには、注意深くほ場観察を行うことにより、病害虫の発生状況を的確に把握することが必要となります。病害虫の発生は天候の影響を大きく受けるので、天気の推移に注意しつつ、各都道府県の防除指針に従い、適期に適切な防除を実施してください。
薬剤防除を実施する場合は、病害虫が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。また、農薬の使用基準を遵守して適切な薬剤を選択するとともに、散布対象外の農作物等に農薬が飛散しないよう対策を講じてください。
露地栽培
引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
施設栽培
ウイルス病を媒介するアザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類等の侵入や野外への飛び出しを防止するため、施設の開口部に防虫ネットを設置する等の対策を実施してください。また、雑草はこれら害虫の発生源となるので、施設内及び周辺の除草を定期的に行うよう努めてください。引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
作物残さは、害虫の発生源となり、り病葉及びり病果は、病害の伝染源となります。栽培終了後は、作物を枯死させ餌をなくすことで生存虫を死滅させてから搬出し、土中に埋める等、確実に処分をしてください。
施設内が過湿になると、病害の発生が助長されるため、雨水が施設内に入らないように留意するとともに、過度なかん水を回避する、循環扇を設置する、換気を行う、作物の株間の通風を図る等により、施設内が過湿にならないように管理してください。また、病害の早期発見に努め、伝染源となるり病葉及びり病果は除去し、適期に薬剤防除を実施してください。
用語解説
(地域)
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北東北:青森県、岩手県、秋田県
南東北:宮城県、山形県、福島県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
北関東:茨城県、栃木県、群馬県
南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
甲信:山梨県、長野県
北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
北九州:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県
南九州:熊本県、宮崎県、鹿児島県
沖縄:沖縄県
(発生量(程度))
多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
(平年値は過去10年間の平均)
(参考)今後の発表予定日
第4号:7月10日(水曜日)
第5号:7月24日(水曜日)
第6号:8月7日(水曜日)
第7号:9月11日(水曜日)
第8号:10月16日(水曜日)
第9号:11月13日(水曜日)
第10号:令和2年2月12日(水曜日)
(参考)これまでの発表
第1号:4月17日(水曜日)
第2号:5月15日(水曜日)
お問合せ先
消費・安全局植物防疫課
担当者:白石、渡邉、宮木
代表:03-3502-8111(内線87977)
ダイヤルイン:03-3502-5976
FAX番号:03-3502-3386