2019年6月11日(火曜日)
9時54分~10時12分
於:記者会見室

冒頭発言

おはようございます。初めに、私から1点申し上げます。

「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の閣議決定

本日、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略が閣議決定をされました。
この戦略は、気候変動問題の解決に不可欠な非連続のイノベーションを、ビジネス主導の「環境と成長の好循環」を通じて実現することを目指します。
具体的には、水素製造コスト10分の1以下の実現を含む革新的環境イノベーション戦略を今年中に策定すること、そして、イノベーション資金の循環を目指して、産業と金融の対話を行うTCFDコンソーシアムを後押しすること、そして、ASEANにおいて官民でビジネス環境整備を促進するCEFIA(セフィア)の立ち上げを進めることなどを掲げております。
秋には、総理提唱のRD20やTCFDサミット、ICEFの際に、世界の研究者、産業界、金融界を代表する方々が集まるグリーン・イノベーション・サミットを開催して、環境と成長の好循環を世界的に展開していきたいと思います。
この戦略は、持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合でも発信していきます。
私からは以上です。

質疑応答

G20デジタル・経済大臣会合

Q:つくば市で開かれたG20の貿易・デジタル経済大臣会合が終了しました。率直な所感と、併せて、会合では米中貿易摩擦を懸念する声も多かったと思いますが、最終的な閣僚声明では「保護主義と闘う」といったような強い文言は盛り込まれませんでした。このことについてどうお考えか、受け止めをお願いいたします。

A:米中の貿易摩擦など各国間の対立が強まる中、議長として大変難しいかじ取りが求められました。私自身も、深夜にアメリカのライトハイザー通商代表と電話会談を行ったなど、あと、会議中も会議の裏側でいろんな国の閣僚と一対一の会合も行って、この取りまとめへ向けて努力を続けるということをやりました。
その結果、「Data Free Flow with Trust」のコンセプトですとか、電子商取引の有志国によるルール作り、そして、WTO改革の具体的内容や産業補助金ルールの強化、そして、WTOの紛争解決制度について行動する必要性などについて合意ができ、具体的にしっかり閣僚声明に書き込めたということは、非常に意義が大きかったと思っています。
世界貿易を取り巻く情勢が厳しくなる中、貿易摩擦の問題に取り組む必要性について、米中を含むG20全体で確認できたということは、大きな成果だったと思います。
確かに、閣僚声明本体に「保護主義」という言葉、これは去年も書けていなかったわけですが、書き込むことはできませんでした。しかし一方で、自由、公平、無差別、透明、予測可能、安定的な貿易及び投資環境の実現という表現は、入れさせていただきました。これはまさに保護主義に対抗するという具体的なアクションでありまして、これだけの要素を全部集めて表現をしたということは初めてでありまして、そういう意味では、保護主義というよりは自由な貿易環境を整えていくということが重要だということを、アメリカ、中国も含めて確認ができたということは、意義が大きかったというふうに思います。
今回、閣僚声明と議長声明を両方出したという形、これもなかなか普通はないケースであります。閣僚声明を、今、厳しい環境の中で最近出している場合は、やはり全体のコンセンサスをやった結果、非常に、中身があまり濃くない内容になるのが普通であります。あるいは、もうコンセンサスが全く得られないということで議長声明だけということもあるわけですが、今回は、しっかりと中身の濃い閣僚声明を出した上で、全体、全員が、20カ国が完全一致といかなかった2点に関してのみ、議長声明で表現ができた。しかも、閣僚声明と議長声明を両方出すということは、議長声明単独で出す場合は、ある程度、議長が裁量でやれるわけですが、閣僚声明とセットということになると、当然、議長声明の中身も関係国が納得しないと、閣僚声明が今度は逆に出せなくなりますから、そういう意味では、議長声明も一定のコンセンサスで出せたということで、非常に厳しい環境の中ではありましたけれども、最大限のものを発出することができたのではないかというふうに思っています。

日産・ルノーのアライアンス

Q:日産・ルノーの関係で伺いたいのですが、昨日、フランスのルノーから日産の指名委員会等設置会社への移行に関して、決議を棄権する意向が出たと日産側が発表しました。これに関してどう御覧になっているのかというのと、あと昨夜、ル・メール大臣と会談されましたが、そのあたりで何かこういった議論はあったのでしょうか。

A:ル・メール大臣との議論は、具体的にはもうお互いに言わないということになっていますが、今、起こっていることについては、それぞれ情報交換、意見交換等を行ったところであります。
また、日産の株主総会の議案について、一部、ルノーが棄権するという報道等があるわけであります。個社の具体的な経営に関することは、コメントは差し控えたいとは思いますが、一般論として申し上げると、アベノミクスの中で、コーポレートガバナンス改革というのは極めて重要な要素であります。アベノミクスでコーポレートガバナンス改革を推進してきた結果、思ったよりも、非常に日本はコーポレートガバナンス改革が進んでいるということで、マーケットからも高い評価を受けていたわけであります。
ところが、ここへ来てゴーン前会長の事件によって、やっぱり日本のコーポレートガバナンスはまだまだだと、改革はまだまだだということで、日本全体のコーポレートガバナンスに対する信頼が毀損したわけであります。
そういった中で、日産は第三者による特別委員会まで立ち上げて、そして、コーポレートガバナンス改革に今、一生懸命取り組んでいて、そして今、日産が取り組もうとしている、まさに株主総会の議案としてかかっているコーポレートガバナンス改革は、指名委員会、あるいは監査委員会の設置、そしてその中身の考え方も含めて、この第三者委員会の示した日産のコーポレートガバナンス改革というのは、グローバルスタンダードから見ても極めてレベルの高いものでありまして、マーケットからも高く評価をされていて、これをしっかりやれるかどうかということが、日本のコーポレートガバナンス全体のマーケットからの信認にも影響してくるというふうに思っています。
そのような重要なコーポレートガバナンス改革に関して、ルノーが棄権するのかどうか、賛成するのかどうか、そういったことについては重大な関心を持って注視をしていきたいと思っています。

Q:追加で1点、ルノーがそういう意向だということは、ル・メールさんと会う前にはもう御存じ、その情報はお耳に入っていたのですか。

A:入っておりました。もうプレスリリース等も出ていたと思います。

Q:今の点に関連して、ルノーのその意向については、ある種、大株主という立場を利用した提案というか意向というふうにも解釈できると思いますが、その観点で今の重大な関心というのは、どのように受け止めていますでしょうか。

A:これも一般論として申し上げますけれども、当然、資本主義社会においては、株をたくさん持っている人の権限の方が強いわけでありますが、一方で今、世界的にコーポレートガバナンスを語る上で極めて重要なのは、少数株主の権利の保護であります。今回の日産のコーポレートガバナンス改革は、まさに少数株主、しかもルノーは大株主とはいえ過半数を持っていないわけであります。そういった中で、少数株主の権利をどう保護するかという視点がきっちり盛り込まれている、そういう意味でコーポレートガバナンスのスタンダードからいっても、極めて当然の改革だというふうに思っています。

Q:その点でいいますと、ルノーはこの議案について、やはり賛成すべきと。

A:いや、これはもう個別の企業の行動に関することでありますから、重大な関心を持って注視していきたいと思っています。

コンビニの本部と加盟店の関係

Q: コンビニエンスストアをめぐっては、本部と加盟店との間の契約取引関係に不満が出ていまして、それで、公正取引委員会が調査を検討しているようです。これは別途、経産省でも調査を検討しているのか、一緒にされるという理解でよろしいのか。調査されるのであれば、近く設置される有識者会議で方策を練るための判断というものになり得る話なのかどうか教えてください。

A: 公取とは基本的に、公取は独禁法に基づいた権限を持っているわけですから、我々の取組と公取の取組というのは、法的には別個のものになるんだろうと思いますけれども、一方で連携は必要だというふうに思っております。公取の取組を、よく我々としては注目をしていきたいというふうに思いますし、経産省としても、以前から申し上げているように、近々、有識者による検討会を立ち上げて、オーナーさんやユーザーさんなど幅広い関係者からも意見をしっかりと伺いたいというふうに思っているところであります。

Q: 意見を伺うというのは、調査というかヒアリング調査という形でやるということですか。

A: 検討会を立ち上げて、その検討会の場で何らかのヒアリングをしたいというふうに思っています。
特に、オーナーさんも声を聞いてほしい、昨日もそういった御要望が我が省に届いておりますので、公平、公正に選ばれたオーナーの代表の皆さんですとか、あるいはユーザー、ユーザーといっても、朝一番で使う人と夜中に使う人では考え方も違うと思いますから、そういったユーザーの声もちょっとすくい上げる方法をよく考えながら、幅広く話を聞いて、そして、その結果を各コンビニ本部に共有することで、両者のコミュニケーションも促進していきたいというふうに思っています。

水素社会実現、高レベル放射性廃棄物の最終処分

Q: 今週末のG20のエネルギー・環境大臣会合について2点お伺いします。
IEAの水素レポートの発表に大臣も出席するということで、水素社会の実現に向けた国際協力で日本が果たす役割、また、国際協力をいかして水素を日本の成長戦略の中で、どう新たな産業創造につなげていくのか、大臣の所見をお伺いしたいのと、もう一つは、高レベル放射性廃棄物の最終処分の件なんですけれども、今回、秋にも国際的な枠組みのラウンドテーブルを設けるように提案するような方針ということですけれども、今回のタイミングに合わせるに至った日本の問題意識、そこをお尋ねします。

A: まず水素については、交通、産業、電力といった、あらゆる分野の脱炭素化を図ることができる、新たなエネルギーの未来を切り開くキーテクノロジーになり得ると考えています。
特に日本は、1980年代から水素の可能性に着目をして、技術開発等に取り組んでいます。燃料電池分野の特許出願数は、世界一になっています。製造から貯蔵、運搬、そして利活用に至るまで一気通貫で技術を持っている世界唯一の国だというふうに思っています。
こうした技術力で水素エネルギーの導入拡大を図って、水素社会の実現に向けて世界をリードしていくことで、まさに環境と成長の好循環を達成できるのではないかというふうに思っています。
こうした中、去年の10月には水素閣僚会議を開催をして、東京宣言というのを取りまとめているところであります。今週末のG20軽井沢大臣会合においても、各国との連携を強化して、グローバルな規模で水素を利活用するムーブメントを一層高めていきたいというふうに思っています。
また、最終処分の実現については、これは日本だけではなくて、原子力を利用してきた全ての国の共通の課題であります。その実現に向けて各国が努力を続けている中、それぞれの経験ですとか知見を、国際的な連携の下で共有をして、それぞれの取組を強化するということは、非常に重要だというふうに思っています。
そのため、今週末のG20軽井沢大臣会合において、世界の原子力主要国の政府が参加をする国際ラウンドテーブルを、初めて立ち上げることなどに合意をしたいというふうに思います。
なぜこのタイミングかというと、なかなかこれだけの新興国も含めて各国のエネルギー担当大臣が集結するという機会はなかなかありませんので、ここを逃さずにやっていきたいということであります。最終処分は、どの国であれ次の世代に先送りをしてはならない重要な課題でありまして、積極的な国際協力の下に、引き続き国が前面に立ってしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。

カーボンリサイクル

Q: G20絡みでカーボンリサイクルなんですけれども、この間、ロードマップを策定されました。2030年以降の普及を掲げていますけれども、カーボンリサイクルがエネルギー政策といいますか、エネルギーミックスに与える影響をどう見通していらっしゃるのかが1点と、あとさらに、エネルギーミックスの中でも石炭火力は世界的に批判が上がっていますけれども、カーボンリサイクルはその打開策みたいになるのでしょうか。

A: 共同通信さんからの御質問にお答えする前に、共同通信に対しては、昨年9月の「事実上、MOX再処理を断念」とする記事について、重ねて訂正を強く求めたいと思います。私がこうやって申し上げるのも12回目、令和に入って3回目ということになります。
なお、英語版の記事だけについては、昨年10月の会見で日本語版との明らかな不整合を指摘したところ、その後、英語版は、見出しだけではありますけれども、訂正がされているわけであります。英語版だけ直して、元になっている日本語の記事を訂正しないというのは、いかがなものかと思います。誤っているところは、きちっと訂正できるはずですので、内容面での誤りもしっかりと日本語も含めて訂正をしていただきたいと思います。
その上で今の御質問にお答えいたしますけれども、カーボンリサイクルは、CO2を燃料や原料として活用して、既存製品と同程度のコストを目指していくためのイノベーションを促進する取組であります。
軽井沢では、この取組の重要性を各国との共通理解にするため、先週7日に公表した技術ロードマップの紹介や9月の国際会議への参加要請を行う予定であります。
カーボンリサイクルは、気候変動問題にイノベーションでチャレンジするものでありまして、今後、どのような技術が実現するか、現時点では予測できないわけでありまして、2030年以降の見通しや影響というのを示すことは困難だと思っていますが、将来的にはCO2排出削減に大きく貢献することを期待をしています。
石炭火力との関係についても、どんな技術が実現するか現時点で予測困難ということを前提とすると、お答えすることは難しいと思っています。いずれにせよ、今後も官民を挙げてカーボンリサイクルを含む、あらゆる選択肢を追求をしていきたいと思っています。

原子力技術の人材育成

Q: 原子力人材の育成に関してなんですけれども、民間企業なども入って関係省庁の連携会議の実施を検討されていますけれども、現状認識と狙いをお聞かせください。

A: これは経産省がやっているというよりは、2010年に設置された産学官で構成される原子力人材育成ネットワークにおいて、原子力技術を担う人材の育成を強化する取組が検討されているわけであります。
昨年7月に閣議決定されましたエネルギー基本計画も踏まえて、原子力技術・人材の維持・発展を図るべく、現在、事務局が中心となって、関係省庁と産学との協力・連携について協議する会議の設置も含めて、具体的な取組について議論を行っていると承知をしています。

以上

最終更新日:2019年6月10日