• 議事録(PDF形式はこちらから)

日時

2019年4月25日(木)10:00~11:05

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員、山本委員
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、事務局担当者

議事次第

  1. 開会
  2. 取りまとめに向けた検討
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

  • 議事次第(PDF形式:93KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料1】 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ報告書(案)(PDF形式:564KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料2】 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ報告書(案)の概要(PDF形式:227KB)PDFを別ウィンドウで開きます

≪1.開会≫

○事務局担当者 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第21回会合を開催いたします。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載しております。

不足の資料がございましたら事務局までお申し付けいただきますよう、お願いいたします。

それでは、鹿野座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.取りまとめに向けた検討≫

○鹿野座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日も、引き続き取りまとめに向けた検討を行いたいと思います。

本ワーキング・グループでは、昨年3月から「消費者法分野におけるルール形成の在り方」と「ルールの実効性確保に資する公正な市場を実現するための方策」を柱に据えて、これらに関する各論点について検討を行ってまいりました。

そして、昨年9月には中間整理を取りまとめ、今後の検討において重点的に検討すべき論点を整理した上で、後半の議論を重ねてまいりました。

その後、報告書の取りまとめに向けて、特に3点、つまり、第1に「事業者の取組を促す仕組み作り(コンプライアンス体制整備)」、第2に「民事ルールと行政規制の役割分担」、第3に「適格消費者団体の権限の強化・充実」という3点について、更に深く検討していく必要があると認識しまして、昨年12月から本年3月まで、更なるヒアリング等を行い、議論を重ねてまいりました。

本日は、これまでのヒアリングや議論を踏まえて作成しました報告書素案につきまして、議論をさせていただきたいと思います。

お手元に素案がありますが、まずはこの点について、事務局から御説明をお願いします。

○事務局担当者 事務局から御説明させていただきます。

配付資料1がこのワーキング・グループの報告書の案になっておりまして、資料2がその概要になっております。

資料1の素案に基づいて御説明させていただきます。

まず、おめくりいただきまして4ページから「はじめに」と記載しております。こちらでは、このワーキング・グループの目的や議論経過、報告書の構成について概要を示しております。

ワーキング・グループでは中長期的な観点から、消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方や、ルールの実効性確保に資する方策、そして行政、事業者、事業者団体、消費者、消費者団体等の各主体の役割や連携方法を検討するということで、かつて平成15年の国民生活審議会消費者政策部会の「21世紀の消費者政策の在り方について」というグランドデザインが示されましたが、その後15年余りが経過したということで、この間の社会情勢の変化や施策の達成状況を踏まえ、グランドデザインの在り方を再検討する時期に来ているということで、検討を始めた経過を示しております。

5ページから第1ということで、消費者を取り巻く状況と消費者政策を検討する上で重視すべき観点を記載しております。

1ポツが消費者を取り巻く状況ということで、先ほどの国生審の報告書が公表された平成15年5月以降の動きを記載したものです。

アが行政の体制等になっておりまして、6ページのイが消費者法(取引分野)に関連する法制度の動きになっております。

8ページの(2)からは、社会情勢の変化ということで、この間の社会情勢の動きとして、まず、情報通信技術があらゆる年齢層により一層普及していること、決済手段が多様化していること、9ページに行きまして、高齢化や民法の成年年齢引下げ、社会のグローバル化といった動きを指摘しております。

2ポツが消費者政策を検討する上で重視すべき観点ということで、この報告書で重視する観点を記載しております。

10ページ以降が具体的な内容になっておりまして、(1)がルールのベストミックス、11ページの(2)が担い手のベストミックス、(3)が社会情勢の変化への対応、(4)が市場における消費者、事業者の行動の実態の反映ということになっております。

これらの観点を具体化する形で、以降、詳細に入っていくという流れになっております。

12ページの(5)がこの節の小括になっておりまして、当ワーキング・グループの中間整理において重点的に検討すべき論点として掲げた民事ルールと行政規制の役割分担、連携、事業者団体の役割、自主規制の在り方の強化、コンプライアンス体制、消費者志向経営の普及に向けた方策、適格消費者団体の役割の強化、執行の強化、行政とそれ以外の組織による連携を中心に検討結果を報告するということで示しております。

第2から実質的な内容に入っておりまして、1つ目の柱が、市場を公正に機能させるためのルール形成の在り方になっています。

1ポツが民事ルールと行政規制の役割分担・連携について記載しております。

初めに伝統的な整理を示した上で、2段落目の「もっとも」からで、近時、両者の役割が接近している状況があるということを示しています。

「たとえば」として、民事ルールのみによっては種々の権利利益の実現が困難であるという限界に対処する機能ですとか、逆に行政による対応の限界を民事ルールが補うといったことを記載しております。

12ページの最終段落からですが、同一の規制対象に対して、行政規制と民事ルールのそれぞれが作用する仕組みが採られる形で、双方のルールが協働するものもあるということを指摘しています。

以上を踏まえまして、13ページの2段落目のところですが、これらを踏まえて、ルール形成に当たっては、消費者被害の予防救済という目的を実現する手段として、どのように組み合わせることが最善かという観点から、制度を検討する必要があるということを示しています。

2ポツが規程の明確性・具体性についてということで、大きく分けて民事ルール一般と行政規制についてと、消費者契約法についてということで分けて記載しています。

(1)が民事ルール一般と行政規制についてですが、各法制度の役割との関係を意識して、民事ルールについてはある程度解釈の余地がある形で、各規定の要件が定められることも多く、また、一般条件に見られるように、抽象的な規定を定めて、判例の蓄積により、具体的な規範が形成されることも認められていること。あるいは、ある条文の立法趣旨に鑑みて、その条文の文言を超えた類推適用を行うことも認めていることを示しています。

他方の段落で、行政規制については民事ルールほどではないにしても、法文上は中層的な規定が置かれることが多いこと。その上で審査基準、処分基準、ガイドライン等によって予測可能性との調整が図られていることを示しています。

最後に「なお」ということで、個々の規定の在り方は想定される適応対象に応じて違いがあり得るということで、例えば正常な事業活動では想定されない悪質な行為対応を対象とする規定を設けるに当たっては、当該行為を適切に捕捉し得る規定とすることが重要である。形式的に明確性、具体性を強調する余り、本来適用対象とすべき行為が適用から外れることになってはならないということを示しております。

(2)が消費者契約法についてですが、おめくりいただいて14ページの2段落目からになります。このような消費者契約法のルール形成の在り方について、トラブルが多発する行為類型について具体的な要件を定めた規程を追加しつつも、不当勧誘被害の受皿となるような包括的な規程を設けることが望まれるということを指摘しています。

3ポツがまた別の観点になりまして、「平均的な消費者像」の見直し-情報や交渉力に限られない消費者の継続的・一時的「ぜい弱性」の考慮の必要性という観点になっております。

従来、消費者法(取引分野)では十分な情報を得る機会が与えられれば、情報を適切に収集、分析し、主体的・合理的に判断することが期待できる平均的な消費者像が前提とされ、消費者と事業者との間の情報の質及び量、並びに交渉力の格差を是正することを目的とし、消費者の自己決定と、それに基づく自己責任を担保する政策が講じられてきたということを指摘しています。

もっとも、いかなる消費者も情報を得る機会さえ与えられれば、常に情報を適切に収集、分析して、合理的な判断ができるわけではないということで、様々な要因により、合理的な判断が困難で、消費者被害に遭いやすい状況に置かれることを「ぜい弱性」ということで示しています。

次の段落からは、この「ぜい弱性」に2種類あるということで、一つが、「ぜい弱性」の中には継続的なものとして、継続的ぜい弱性というのを指摘しています。

例えばということで、高齢者や認知症の障害を有するもの、子供等が知識、経験、判断力の不十分さ等の要因を有する場合などを挙げています。

もう一つが15ページのところで「しかし」の段落ですけれども、継続的なものには限らないということで、たとえ通常は合理的な判断を行っているものであっても、市場の特徴、商品、サービスの特性、取引の性質、勧誘行為の内容、勧誘者との人間関係等の要因によって、一時的にぜい弱性を有することがあるということで、一時的ぜい弱性を示しています。

その次の「そもそも」の段落ですけれども、これらのぜい弱性については、消費者、事業者に共通した取引に影響を及ぼす要因と捉えるべきであるとして、ぜい弱性の影響に対処することは、様々な状況にある消費者が自らの意思に基づき、安全に、安心して初期行動ができる環境を整備するものであるし、そのような消費行動により公正な事業活動が正当に評価されるという形で、経済の健全な発展にとっても不可欠な前提となるものであるということを指摘しています。

以上を踏まえると、従来の消費者と事業者との間の情報の質及び量、並びに交渉力の格差の是正を目的とし、事業者から消費者に対する適切な情報提供の確保を中心とした施策のみでは対処できない、ぜい弱性による影響を是正する観点からも、被害予防救済に資する法制度を整備することが不可欠であるということを示しています。

16ページが4ポツで、ルール形成のプロセスの在り方になっております。1段落目では、被害事例の収集、分析方法の一層の充実について指摘しておりまして、2段落目の「もっとも」につきましては、顕在化した被害事例だけでは被害の実態を十分に把握できないので、社会情勢の変化等により、一定の被害の発生の蓋然性があることなども考慮することや、行動経済学、認知心理学といった知見も活用することを指摘しています。

3段落目では、立法事実のもう一つの事業活動に与える影響について、コストのみを捉えるのではなくて、民事ルールにおいて不当な事業活動に伴って生じた被害を回復することは、やり得を防ぐことにつながり、公正な事業活動が適切に評価されることにも資するという側面も意識される必要がるということを指摘しています。

最後に、市場における取引が多様化する中で、様々な利益主体の意見を調整することも求められるので、専門的な知見を有する者のほか、市場を形成する多様な利益主体を構成員に含む第三者機関の意見を尊重し、意見内容を適切に反映するようにすることが重要であるということを指摘しております。

17ページの5ポツでは、民間におけるルール形成ということで、自主規制の活用を指摘しています。

(1)が自主規制の意義です。

(2)が自主規制の対象とする範囲です。どういった範囲を捉えるのが適切かというものです。

(3)が自主規制作成の視点ということで、法令上の規制状況や自主規制団体の組織率等を踏まえて、自主規制の内容や実効性確保のための仕組みを検討する必要があるということで、以下で具体的な点を指摘しております。

18ページに行きますと、(4)が自主規制の適正性の確保、(5)が自主規制の実効的な運用、(6)が自主規制から法規制の転換というものを指摘しています。

更に19ページのところでは、(7)で努力義務規定の活用ということで、自主規制と併用することによって双方の効果を高めるということを指摘しています。

6ポツがまた別の話題になりまして、デジタル時代の市場におけるルール形成の在り方です。近時、情報通信技術の一層の普及に伴い展開されている新しい形態の取引として、オンラインプラットフォームにおける取引を例示しています。

このような取引におけるプロファイリングやスコアリングといった新しい手法が可能となっていることや、これらの特徴との関係で、新しい課題が数多く生じているということを指摘しております。

20ページでは、このような物理的に存在する店舗等における取引とは大きく異なるデジタル市場での取引、とりわけ販売事業者、利用者、これは販売側と購入側がありますが、そしてこれを仲介するプラットフォーム事業者という3者が複雑に関わる取引では、取引の実態や変化を追いながら、事業者、事業者団体の自主規制や努力義務規定といったソフトローと、民事ルールや行政規制といったハードローとをベストミックスして、消費者被害の予防・救済に関し、ルールや手続をより実効性のあるものへと継続的に改善していく必要があるということを指摘しています。

また、特にこのような取引が国境を越えてグローバルに展開していることからすれば、そのルール形成に当たってもグローバルな観点を踏まえることも必要であるということを指摘しています。

その下の第3からが、もう一つの柱になっておりまして、ルールの実効性確保のための手段ということで、担い手のベストミックスを示したものです。

第1段落で記載しておりますとおり、各関係主体それぞれがその役割を十分に発揮できるような方策を講ずることが必要である。

以下、関係主体ごとに、まず概要を示しています。

事業者団体、事業者については、その自主的取組において重要な役割を果たし得るということで、このような自主的取組を促すために、公正な事業活動を競争力に変える方策が必要であるということを指摘しています。

21ページの初めの段落ですが、消費者もその主体的な行動によって公正な市場の形成に寄与し得る重要な役割を担っているということで、そのような消費者の主体的消費行動を実現するために、前提となる環境整備が不可欠であるということを指摘しています。

次の段落では、適格消費者団体や特定適格消費者団体も、公正な市場の形成に関し重要な役割を担っているということで、事業者側の自主的な取組ではカバーされない消費者被害に対処しているということを指摘しています。

最後のほうの行になりますが、適格消費者団体、特定適格消費者団体がこの制度において期待された役割を発揮できるような方策を講じることが必要であるということを指摘しています。

最後に、民事ルールのみでは消費者被害の予防・救済が十分に図られない場合などについて、行政の役割が特に重要であるということを指摘しています。

これらそれぞれを今後、各論的に示しておるのですけれども、まず、21ページの一番下が1ポツで、公正な事業活動(コンプライアンス体制、消費者志向経営等)を競争力に変える方策になっております。

22ページの(1)が、これらの普及・促進をさせることの意義を指摘しておりまして、大企業に限らない事業者全体にコンプライアンス体制、消費者志向経営等の公正な事業活動を普及・促進させるために、そのような活動を市場や社会において適切に評価する仕組みをつくることが重要であるということを指摘しています。

そのような仕組みとして、(2)では市場や社会一般における評価の仕組みを示していまして、(3)が行政処分における評価の仕組みとして、「例えば」の段落ですけれども、景品表示法における課徴金制度について、見直しの際に、アメリカの連邦量刑ガイドラインを参考に、コンプライアンス体制の構築等を考慮して課徴金額を算定する仕組みを導入することを指摘し、以下で具体的な内容を指摘しています。

23ページの最後の段落ですが、「そして」ということで、そのような仕組みが導入された場合には、その運用状況も踏まえて、取引分野等の表示分野への課徴金制度の導入も検討対象とすることが考えられるということを指摘しています。

24ページの上の段落ですが、「このほか」ということで、同じく景品表示法における課徴金制度の見直しの際に、具体的な返金対象者が不明で、事業者による自主的な返金が困難な場合に消費者利益に資する活動やそのような活動を助成する基金等に対する寄付を減算・減免事由として考慮することも改めて検討されるべきであるということを指摘しています。

(4)がまた別の観点になるのですが、適切な人材の育成、活用ということで、事業者の自主的取組を促進し、実効性を高めるためには、制度・仕組みの整備と併せて、実際にこれらを運用する適切な人材が不可欠であるということを指摘しています。

具体的な内容を示した上で、最後の段落で、行政においては、行政内部で人材を育成、活用することはもちろん、資格制度の一層の普及や民間における人材の育成・活用の動きを支援するべきであるということを指摘しています。

2ポツからが、次の担い手として、消費者の主体的な行動のための一層の環境の整備-地域ネットワークや消費者団体の活性化等に対する支援ということを指摘しています。

(1)が消費者の主体的な行動と、公正な事象活動との相互作用を示しています。

25ページが(2)ということで、消費者団体等の役割ということで、従来から各地で消費者団体が様々な活動を展開してきたこと、もっとも最近では、従来の活動を維持することが様々な事情により困難になっている状況にあること。他方で、取引の複雑多様化、高齢化、民法の成年年齢引下げといった社会情勢の変化や事業者の自主的な取組も多様化していることなどを踏まえて、官民連携による地域のネットワークやコミュニティーの再構築の重要性が指摘されていることなどを指摘しています。

下の(3)消費者団体等の支援に向けた行政の役割ということで、具体的な記載をしています。

26ページに行っていただきまして、2段落目「こうした取組は」のところですけれども、消費者行政部門が消費者団体を育成・支援することにより連携を図るということだけでは足りず、消費者行政部門が地方公共団体の各種部門と連携しつつ、各部門が関係する地域の各種民間団体・関係者に働きかけて、地域コミュニティーが総体として消費者問題に関心を高め、情報共有や声かけの取組を広げることが求められるということを指摘しています。

3ポツが、3番目の担い手として、不当な取引行為を是正・排除する適格消費者団体、特定適格消費者団体の役割の強化です。

(1)が適格消費者団体、特定適格消費者団体の役割でして、第1に、これらの団体が民間団体として消費者の視点で市場を監視しつつ、公正な市場を実現する公的役割を果たすこと。第2に、法的解釈等について裁判所の積極的な判断を引き出すことによりルール形成にも寄与すること。第3に、都道府県による執行と併せて、地方支分部局を持たない消費者庁の役割を補完する機能を持っていること。第4に、不当な取引行為を市場から排除し、それらの行為による財の不公正な分配を是正することで市場において公正な事業活動が適切に評価されることを可能にしていることを挙げています。

(2)の上辺りからですけれども、そのような機能や義務に見合った行政による支援や制度整備が検討される必要があること。また、現状、適格消費者団体、特定適格消費者団体と事業者との間においても、情報量・交渉力・資金力の格差があり、その格差を是正するのは行政の役割であるということを指摘しています。

(2)が適格消費者団体、特定適格消費者団体に期待される機能を発揮させるために必要な制度整備ということで、具体的な内容を記載しております。

今後、差止請求制度や集団的消費者被害回復制度を見直す際には、以下のような観点からも検討がなされるべきであるということで、まず、アが共通するものということで、28ページをおめくりいただきまして、情報面の支援や各団体の連携を恒常的に行えるようにするための支援などを具体的に示しています。

イが差止請求制度についてということで、差止請求権の対象や証拠の偏在の問題などについて、具体的に指摘しています。

ウが集団的消費者被害回復制度に関係しまして、29ページに行っていただきまして、裁判外で活用する権限や事業者の資力等の関係で生じる回収可能性の問題への対応、通知・公告の負担の軽減などを指摘しています。

(3)が適格消費者団体、特定適格消費者団体の財政基盤の整備ということで、各団体の財政基盤の整備が大きな課題となっている中で、行政において、各団体の独立性を確保しつつ、設立や認定のための基盤を整備し、各団体が本来の機能を発揮できるようにするための財政的支援がなされることが必要である、地域の実情に応じた地元行政による支援も重要であるということなどを指摘しています。

30ページに行きまして、4ポツが、最後の担い手として、行政による悪質商法、不当な取引行為に対する対応の徹底です。

(1)が実効的な行政規制の整備と行政による法執行の強化ということで、1段落目は行政の役割を指摘しています。2段落目で、今後、取引の複雑多様化が一層進む中で、隙間事案の後追いとなることを防ぐために、現に発生している悪質商法を実効的に規制できるような立法措置を迅速に講ずるだけではなく、受皿規定の導入や取引類型を横断的に、あるいは取引場面を全体的に規律する立法対応等の実効的な法整備も検討されるべきであること、次の段落で、法執行の面で、違法収益の剥奪や制裁金について強化すること、行政機関による破産申し立て、財産保全等の制度の整備も検討されるべきであることを指摘しています。

31ページの一番上の段落ですが、犯罪が成立する可能性がある行為についても、行政が端緒を把握できるようにし、関係機関と適切に連携することや、消費者への注意喚起、啓発ができるようにすること。厳格な刑事罰により抑止すること、犯罪収益の没収とそれにより被害回復を図る仕組みを拡充することが重要であるということを指摘しています。

(2)が行政による法執行と適格消費者団体による差止請求との役割分担ということで、1段落目、2段落目でそれぞれ具体的な内容を記載しています。

2段落目のほうは、都道府県との関係を特に指摘していまして、執行部門との関係では、権限が及ぶ範囲の地域的限定の有無などの違いを踏まえて、適切に役割分担すること。また、消費生活センター等の相談部門に関しては、相談処理を行うに当たって、被害の再発・拡大防止も視野に入れた聴取・処理を行い、その観点に基づき、執行部門や適格消費者団体とその特徴を踏まえた適切な連携を図ることが望まれるということを指摘しています。

以上が実質的な内容になりまして、最後に「おわりに」ということでまとめをしています。

2段落目からですが、「何より重要なのは」ということで、消費者被害の予防・救済が図られる公正な市場を実現することが、消費者にとってだけではなく、事業者、そして社会全体にとっても利益の最大化につながるということが、我が国の社会において共通認識となり、各主体が共通の目的に向けてそれぞれの役割を果たし、連携することであるということを指摘しています。

ついては、「関係省庁においては」ということで、今後、消費者法(取引分野)の法制度の整備その他の政策を立案・実施するに当たって、本報告書が提示する観点を踏まえられたい、また、本報告書が指摘するような民間の取組の普及・促進に向けた支援を行うこと、及び、それらの政策を実施する上で、関係省庁間の連携を更に推進することを求めると指摘しています。

「また」ということで、消費者、消費者団体、事業者、事業者団体等の民間の主体においても、本報告書の内容を踏まえ、各自の役割を改めて意識し、更なる活動と連携が展開されることを期待したいということを指摘しています。

説明は以上になります。

○鹿野座長 ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方はお願いします。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本です。

昨年3月から始めて、議論をしているうちにどんどん対象範囲、論点が広がっていって、思いのほか時間がかかり、1年を若干超えてしまいました。

ただ、この間、議論をしてきたこと、更に言うと、最後この1カ月くらいの間、内部でも委員間での意見交換をする中で、全体取りまとめが、ここまでお出しできたと思っています。

基本的にこの中身で異論はないところですが、2~3、特に私のほうで、この観点はこういう意味で受け止めていただきたいというところを、少し補足説明というか強調させていただきたいと思っています。

まず、14ページで、平均的消費者像、継続的・一時的ぜい弱性の考慮という言葉があります。もともと消費者基本法や消費者契約法の中で、消費者と事業者との間の情報の質及び量と交渉力に構造的な格差があるのだという、格差を踏まえた施策を講ずる必要があるということが指摘されています。

ただ、そこで言う消費者と事業者というのは、平均的消費者と平均的事業者間でまず大きな格差があるのだということが出発点で、消費者契約法などは、それに対して消費者に一定の情報をきちんと提供することによって、格差がある程度、是正されるという観点でした。

その後、そういった平均的消費者とは別に、高齢者とか若年者とか、特にぜい弱性の顕著な人がいるのではないか。ただ、その議論も、属性としての消費者のぜい弱性がある方という捉え方をするのは、ちょっとミスリーディングになる可能性がある。そういった継続的なぜい弱性があるという観点ももちろん大事なのですが、ある取引場面なり、あるやり取りの状況によって、受けとめ切れないぜい弱性が顕著になるということもあるのではないか。

その意味では、消費者と事業者の格差を3段構えで捉えていく必要があるのではないかということを議論しました。今後、いろいろな施策を作るときに、どの観点でまず押さえる必要があるのか、その中の一つのところを強調する余り、他の観点がおろそかになってもいけないので、そういう全体像を見てほしいという意味がここには込められているということを申し上げておきたいと思います。

それから、申し上げたいことはたくさんあるのですが、もう一点だけ、ちょっと後ろのほうに飛びます。30ページの行政による悪質商法や不当な取引行為に対する対応の徹底というところです。この間、このワーキングでは、事業者の自主規制の面、それから適格消費者団体などの取組という、行政だけではない、他の当事者、他のプレーヤーの役割が重要だということ、それを総合して考えるべきだということを強調してまいりましたが、一番肝心の行政についても、改めて、今の状態で十分とはまだ言えないわけで、更に体制を強化したり、迅速に動いていただく必要があるのではないか。

その意味で、30ページの(1)の2段落目にありますが、どうしても、分野ごとに被害が起きるとそれを切り取って、規制をする。あるいは、被害が拡大すると、そこにまた少し付け足すという手法をこれまで採ってきていました。もちろんそれは重要です。例えば、昨今の預託商法の問題とか、幾つか問題が起きたところが現行法で十分に抑制できていないとすれば、更に実効性のある規律にしていくことが必要だし、そういう議論もしていく必要がありますが、もう少し横断的に、全体として行政がきちんと監視できるといった規定も必要なのではないか。

消費者安全法には、財産分野について、多数消費者財産被害事態というものが規律されていて、これが正に隙間を作らないための規律であるということで導入された経緯があります。

ただ、これも30ページの下の脚注49にありますとおり、先般、本会議でヒアリングをしたところでは、導入当初に勧告が2件、命令はない。専ら注意喚起の道具として使われているということでした。この間、各種被害が繰り返されていることからすれば、ちょっとこれでは規定として不十分なのではないか。諸外国の法制、例えばフランス法などを見ても、ここももう一歩、見直す必要があるのではないかといった、かなり幅広の思いを持って提案しているところです。

とりあえず、その2点を申し上げておきたいと思います。

○鹿野座長 ありがとうございました。

2点、御指摘をいただきました。これは報告書の趣旨を更に御説明いただいたということだと思います。

お話の中にあったように、特に第1点のぜい弱性については、私たちの間でもかなり議論をしまして、その上でこういう形で、池本座長代理からも先ほど補足的に説明をしていただいたような形で、まとめた次第です。

これらの点について、何かございますか。

高委員長、お願いいたします。

○高委員長 感想でよろしいですか。

すばらしいものができ上がったなというのが、印象でございます。

私なりに全体をもう一回整理してみますと、最初に大きな変化が起こっていること、消費者を取り巻く環境が大きく変化していることを明確にし、その変化の中で、我々がやらなければいけないことを整理しております。それは、知恵を駆使し、ルールのベストミックス、担い手のベストミックスを実現していくべきとし、これを第1のところで明確にしています。

これを前提とし、まずルールのミックスについて、第2章で整理している。民事ルール、それから行政規制、自主規制、それぞれの本来的な役割を明確にした上で、更にその3者間での相互補完的な関係を生かすことで、より効果的に公正な市場を作りあげていけるのではないかということをここで確認している。

第3章では、更に進み担い手のベストミックスについて触れている。指摘した様々なルールを使って、多様な担い手がそれぞれの責任を負い、更には多様な担い手が連携していくことで、より効果的に公正な市場を作り上げることができるとしている。その展開は、明瞭に整理されていまして、最初に良識的な事業者を想定し、次に中間的な事業者を、最後に悪質な事業者を念頭に置き、内容を整理している。それぞれの、例えば、良識的な事業者について、消費者はどう振る舞うべきか、消費者団体はどう支援すべきか、行政はどう行動すべきか、事業者団体はどう行動すべきかということを整理ししている。その上で、更に、中間的な事業者についても、3者がどういうふうに連携して、それが良識的な事業者に向かうよう働きかけていくかを示している。

最後の悪質な事業者については、これは根絶するという決意が明確に示されており、そのために、それぞれ担わなければいけない役割、特に行政の役割が強調されている。その意味で、この報告書は、非常にクリアな形で、今後の消費者行政のグランドデザインを示していると感じています。

グランドデザインの位置付けが、最後の31ページから32ページの「おわりに」に書かれているのですけれども、31ページの最後の行から、関係省庁においては、今後、消費者法の法制度の整備その他の施策を立案・実施するに当たって、本報告書が提示する観点を踏まえられたい。そのほか、民間の取組の普及・促進に向けた支援を行うこととか、いろいろ他省庁あるいは関係者に求める「結び」になっているのですが、それと同時に、ここには文章にする必要がないのでしょうけれども、この報告書は、今後、消費者委員会が取引分野における消費者問題に関して、本報告書の内容をグランドデザインとして、つまり、これをよりどころとして、具体的な意見を継続的に具申していくというスタンスを明確に示していたと思います。

ですから、他省庁に対する協力の呼びかけも重要ですけれども、消費者委員会として、これを10年間ぐらいは継続的に、このグランドデザインに立って、いろいろ意見を述べていくということを宣言したものと、我々は了解しておくべきではないかと思っております。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございます。

樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 池本座長代理、高委員長からもお話がありましたが、私も、この報告書自体は非常に意義付けの大きいものだと考えています。

特にこのタイトルは消費者法となっているのですが、実際には、市場における企業と消費者の在在り方を、私の立場から言えば、経済学的に言えば、企業と消費者の間でのルール形成という観点を十分に含んでいるものになっているのかなと思います。

今後の市場におけるルールということで言えば、ぜい弱性の問題について、強調しているということは非常に重要なことではないかと思います。これは、近年の行動経済学的な研究の知見ともつながっておりますし、法と経済学という観点でのいろいろな検討ともハーモナイズするような考え方ではないかと思います。

特に企業の中での自主的な取組というところは、かなり重要な意味を持つものではないか。ルール形成ということについては、どうしても、グローバルな状況の中では、ハードローのような形のものは後追い的にならざるを得ないということですけれども、特にプラットフォーマーの問題とか、新たな課題がいろいろと出てきている中で、グローバルなコンセンサスを作って、それに基づいて条約なり規則なりを作るということについては、大変なエネルギーが必要ではないかと思いますが、そういう意味では、企業を中心とした自主ルールへの期待が非常に高くなっていまして、企業がこの市場におけるルール形成において、先導的な役割を果たしていただくということを大いに期待していきたいと思っています。

その意味で、今回の報告書においては、そういった観点も十分盛り込んでいただいているのかなと思っています。そして、具体的に、我が国においては、消費生活アドバイザーを始めとした民間のユニークな仕組みがいろいろありまして、国際的には必ずしも、こういった多くの方々が自主的に消費者問題に取り組んで行こうという仕組みは必ずしもないと聞いていますので、是非、我が国の民間企業が、世界をリードしていけるような体制作りを考えていただければと思います。

細かく見ますと、例えば24ページのところでは、消費生活アドバイザーや消費生活コンサルタント、消費生活専門相談員を始めとする資格制度をより一層普及させることや、人材を育成する方法として活用することは、上記のような人材確保に資すると書いてありますけれども、こういった点については、行政のほうで、是非具体的な方向性をもって民間のそういった仕組みと連動して、そういう企業内の人材の育成について、きちんと基礎的な分野を充実させるようなことを取り組んでいただければと思います。

私も高委員長のお話に同感でありまして、「おわりに」のところにもありますけれども、私のような消費者法の素人としては、消費者法というタイトルは付いていますけれども、市場における企業と消費者の在り方についての基本的な方向性をまとめることができたのではないかと思っておりまして、できるだけ、消費者委員会も含めてですが、今後、議論していく際の一つのベースとして、こういったものを活用していくことができればと。

多くの有識者の方から意見もいただいた上で、意見を集約してきたという経緯もありますので、是非これを有効に、今後、活用するところがポイントだと思いますので、抽象論でとどまってしまっては意味がありませんから、様々な局面で具体的に、特に最近はネット社会が非常に大きなウエートを占めていますので、そういう中でうまく活用していくことができればと思っています。

私も感想だけですが、以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

山本委員、何かございますか。

○山本委員 細かい点に関しましては、この報告書の中に私の考えを入れていただいた部分がございますので、特に逐一申し上げることはございません。

ただ、少し大きなことを2点申し上げたいと思います。

1つ目は、ごく簡単にと思いますけれども、財産に関わるサンクションの問題でして、これは30ページの一番最後の段落に端的に書かれておりますけれども、日本で申しますと課徴金に当たる部分です。もう少し一般的に申し上げれば、違法収益の剥奪あるいは制裁金といった分野ですけれども、これは消費者法の分野に限らず、日本の法制度全体が、他の国に比べて遅れている部分であると思います。

その中で、消費者法の分野に関わるところは日本法の中ではむしろ努力をして、だんだん拡充をしていっているという状態にあるわけでして、その点は私も評価しているわけですけれども、ただ、全体的にと申しますか、海外の状況等々と比べた場合には、まだ全体に遅れている部分がある。まだまだいろいろ工夫をする、制度を拡充していく余地があると思いますので、その点は是非、関係省庁におかれまして努力を重ねていただければと思います。

それから、破産申し立てあるいは財産保全等の問題は、技術的にも詰めていくといろいろ難しい問題があるところではあります。ただ、注のところにも書かれておりますように、消費者庁におかれても、既に5年以上前に報告書を出されていて、問題点の摘示検討はされておりまして、なかなかその後、これが難しい問題であるということで、進んでいないということがございますが、今後、少しでもこういった点に関する検討が進められることを望みたいと思います。

大きな2つ目は、連携の話です。この報告書の後半のほうでは大きく連携の問題が取り上げられていまして、要は行政機関と事業者団体による自主規制と、適格消費者団体等との連携ということが書かれておりまして、これは、ずっと前から言われていることではあるのですけれども、更にこれを拡充していく必要があるという点については、報告書にも書かれておりますし、私もそのように思います。

連携の必要性という点で申し上げますと、これも諸外国と比べてということを申し上げれば、そしてこれも消費者法の分野に限らない話なのですけれども、日本の行政機関というのは、既に非常にスリム化が進んでいて、まず公務員の数が非常に少ないということがございます。アメリカの規制機関は、日本と比べようもないほど大きな規模を持っておりまして、日本はそもそもリソースが行政機関の側も非常に不足している。非常に苦しい中でやりくりをしなければいけないということがある。

この中にも出てきますけれども、特に消費者庁は全く地方支分部局等を持っていませんので、その意味でも、リソースの部分の制約が非常に大きいということがあります。

更に踏み込んで言えば、この中にも書かれていますけれども、例えば先導的な問題提起的なことは、なかなか行政機関でやることに限界があって、消費者団体等に担っていただくことが有益な部分がある。

あるいは、事業者団体との関係で言えば、やはり事業者団体のほうが現場に近いということがありますので、そこにおいて、むしろ先導的な規律等を担っていただく必要があるといったことがありまして、連携の必要性は非常に大きいということがございます。

そういう点から申し上げれば、27ページの中ほどに、適格消費者団体あるいは特定適格消費者団体の機能と義務と権限の間の関係、もう少し言えば、こういった団体の資源と権限と義務との関係が書かれておりまして、ここは現在のような法制度が法制度として成り立たないと言っているわけではもちろんございません。権限と義務と資源が必然的に法的に連動しなくてはいけないと言っているわけでもありません。

しかし、政策として、今、先ほどから申し上げているような連携の必要性ということに鑑みると、それを進めていく必要があるといった政策目的との関係で、もう少し消費者団体の活用を考えることが必要であり、政策的にそれは一貫しているのではないかということがここに書かれていると私は理解をしております。

その上で、連携の在り方という点は、もちろん理論的な意味での難しさもあろうかと思います。例えば、ADR部門と規制部門との間の連携は非常に微妙なところがあると思いますし、それから、実際上も、連携が現場でうまくいっているかというと、それも難しい。現場でどのようにやればうまくいくかというのもなかなか難しいところがあると思いますけれども、それは行政機関の側も、あるいは連携する消費者団体なり事業者団体の側も努力をして、今後、一歩進めていただきたいと考えます。

行政機関に関しては、制度作りというところから始めて、あるいは意識の持ち方の問題もあろうかと思いますし、消費者団体に関しては、この場でも何度か出てきていると思いますが、若い世代につないでいくことが今後、必要だろうと思います。消費者団体の持続可能性と申しますか、今のような社会環境の中で、若い人にいかに関心を持ってもらって、こういった団体の活動を継続的につなげていくかという問題が非常に大きな問題としてあると思いますので、それを考える場合には、消費者団体の側も、今後の在り方をいろいろ考えていただかなければいけない部分があるのではないかと思います。

事業者団体に関しても、いろいろな課題があろうかと思いますので、是非そこのところもお互いに連携をして、今後に向けて、生産的な議論を続けていただければと私としては願っております。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 今、連携の話が出ましたが、私の立場でもう一点だけ補足説明、強調させていただきたいことがあります。

今、山本委員からお話があった適格消費者団体のことについては、ほぼ御指摘いただいたとおり、権限や義務と資源、体制のことをもっとバランスがとれるように促進していくということは全く同感ですが、申し上げたいのは、そのもう一つ広がりのある消費者団体そのもののことについてです。

この報告書では、24ページから25ページ辺り、特に25ページの(2)、(3)のところで、消費者団体そのものの役割をもっと見直して、促進していく必要があるということを強調してあります。

この間、個々の消費者に対する消費者教育の推進、消費者市民社会の構築という形での議論や法制度、施策が一方にありました。他方で、適格消費者団体の設立支援、役割という議論がありました。ただ、その中間の個々の消費者一人一人ではなくて、地域でグループとなって一緒に行動する消費者団体ということに向けた施策が不十分だったのではないか。

1970年代に、物価のモニターや表示のモニターということで、地方公共団体が地域の消費者に呼びかけて、学習をし、調査をし、発表するというような消費者の取組を推進し、それが消費者団体として定着していったという歴史があります。ただ、それがその後、自治体からの支援も薄くなり、消費者団体が弱体化してきてしまっているというところがあります。

私自身も実感するのが、例えば適格消費者団体を他の地域で作ろうといっても、それを協力、支援していく消費者団体の基盤がなかなかないのですという声を、残念ながら各地で聞いています。それに限らず、例えば最近の施策の高齢者の見守りネットワーク、官民連携で消費者被害を防ごうといっても、官民連携の民の主体の側が非常に薄く、弱くなってしまっているということがあります。

更には、このワーキングの中でも少し議論しましたが、2040年に向けて人口が更に減少していく。そうすると、地方公共団体、特に市町村が行政機能をフル装備でやっていくことそのものが難しくなってきているのだと。そんな話も出ています。

問題は、そういう問題を一つ一つの市町村ではなくて、もっと広域で連携して、行政の中での対応も一方では議論が必要なのでしょうけれども、消費者問題との関係でいくと、だからこそ今のうちに地域の官民連携の民の主体をしっかりと育てておく。その意味で、改めて消費者団体の育成支援と連携ということについて、施策の力点を置いてく必要があるのではないか。

ただ、その場合に、いわゆる消費者問題だけを専門としてやるグループと限定すべきではないし、社会の実情からすれば本当にいろいろな課題がありますから、地域の中で、環境問題もあれば男女共同参画もあれば、地域の市町の自治会、町内会のようなものもあります。様々な団体に全体的に消費者問題について学んでいただき、これも活動の一つの項目に加えてもらう。そういう広がりをつくる。そうなってくると、地方自治体の消費者行政部門だけで担えることではない。自治体全体の中で広げていく必要がある。そういう課題にもなっていくのだろうと思います。

実は今回のこの報告書では、地方公共団体の消費者行政、地方消費者行政の課題は余り触れていません。これはこれで非常に広がりのある重たい課題なので、別途、検討の場を作ろうということにこの委員会では方針を先般決めております。そのときに、またこの地域における官民連携、消費者団体との育成と連携という議論が必要になってくるのだろうと思います。

その点だけ加えます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

他にいかがでしょうか。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 いろいろ長い検討を経て、報告書の素案が固まったということなので、根本的なことを言うつもりはないのですが、率直に言うと、報告書のタイトルが堅いなと。副題ぐらいあってもいいのではないか。これは私の率直な感想ですが、例えば公正な市場のためのルールのベストミックスを目指してとか、公式な副題ではなくてもいいのですが、概要で、いろいろな方に見ていただくときに、法律の素人なので申し訳ありません。消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ報告書というのでは、なかなか注目してくれないので、そういう簡単な副題を入れたらどうかと個人的に思いました。

ただ、今まで議論を積み重ねていることですので、座長に御検討いただいて、不要ということであれば別にこだわりませんが、何らかの形で広報の段階で、こういうせっかくの報告書がまとまったので、本文はもう変える必要がないと思うのですが、例えば概要に副題をつけるとか、何かそこのところを工夫していただくといいかなと思っています。全くの思いつきですので、座長の御判断にお任せしますが、そういう感想を持ちました。

○鹿野座長 ありがとうございます。

基本的には、この内容を支持していただけるという趣旨の御発言が続きましたが、ただ、樋口委員からは、もうちょっと分かりやすい副題等を付けてはどうかという御提案がありました。

他に、特に御意見というか、こうすべきなのではないかという御意見はございませんでしょうか。

○高委員長 特にないのですけれども、細かなところで若干気づいたものは、後で事務局に申し上げればよろしいでしょうか。字句の問題です。

○鹿野座長 よろしいでしょうか。

それでは、報告書素案について、本日、皆様からいただいた御意見、支持していただけるということで補足的な御発言を頂いたものが多かったと思いますけれども、頂いた御意見を踏まえて、特に副題等をどうするかというところについても、少し検討させていただきたいと思います。

今の点に加え、字句については若干まだ見落としがあるかもしれませんが、その点まで含めまして、修正の仕方についてですが、これらの点については、座長である私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○鹿野座長 ありがとうございます。

それでは、私のほうで素案をもう一度見直し、必要な修正した上で、消費者委員会の本会議において報告をさせていただくということにしたいと思います。

それでは、検討を終えるに当たって、最後に私からも一言申し上げたいと思います。

本ワーキング・グループでは、この報告書の内容につき、タイトルから言うと消費者法分野におけるルール形成の在り方ということなのですけれども、取引分野を中心とするということを前提として、検討を重ねてまいりました。

この報告書の内容は、関係省庁に直ちに具体的な立法作業等に取りかかってもらうことを直接に求めるものではなく、むしろ中長期的な課題として、今後の消費者政策を進める上で考慮してもらいたい点などをまとめたというものであります。そのときの視点、あるいは考えられる方策等について、まとめたというものであります。

ただし、その課題の中には、今日の消費者問題の深刻な状況を考えますと、できるだけ速やかに取り組んでいただきたいというものも含まれているのは事実でございます。

また、今日の御発言にもありましたが、この報告書で示された考え方は、市場の公正に関し行政が全てを担うべきだということではありません。行政にはもちろん頑張っていただきたいし、いただいているのですけれども、リソースに限りがあるということもございますので、それも踏まえて、各市場関係主体の役割分担・連携の在り方について検討したということと、もう一方では、ルールについても、ベストミックスとしてどうあるべきかということなどについて鋭意検討し、まとめたということでございます。

簡単に繰り返すと、この概要版にもありますように、ルールのベストミックスと担い手のベストミックスということ、この2つの大きな柱について検討をしてきたということでございます。ただし、それをうまく機能させるためには、それなりの環境整備が必要でありまして、そのことについて、行政に取り組んでいただくことを期待しているところでございます。

もちろん、先ほど高委員長からも御発言がありましたように、消費者委員会としても今後、こういう考え方をしっかり踏まえて、具体的な対応等をしていく必要があるものと自覚しているところでございます。

関係省庁におかれましては、この報告書の趣旨を受け止めていただき、消費者政策のより一層の発展が図られることを期待しておりますし、それによって、消費者が安全に安心して消費行動を取る ことができるようになること。そして、事業者の健全な努力が適切に評価されて、それが更に公正な市場の形成につながっていくことを期待しているところです。

それでは、本日の検討はこの辺りにさせていただきたいと思います。

事務局からは何かありますか。

○事務局担当者 特にございません。


≪3.閉会≫

○鹿野座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

○事務局担当者 どうもありがとうございました。

本会議の日程につきましては、また改めて御連絡をさせていただきたいと思います。

本日の報告書素案取りまとめまでの間に、座長及び委員の皆様方には多大な御協力をいただきましたこと、事務局からも改めて感謝申し上げます。

ありがとうございました。

(以上)