令和元年5月15日
農林水産省


向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)については次のとおりです。

・水稲では、縞葉枯病の発生が南関東及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。本病はヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病であるため、当該虫を対象とした適切な防除を実施してください。
・野菜類では、いちごのハダニ類の発生が四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
・果樹では、もものせん孔細菌病の発生が、南東北、東海、近畿及び中国の一部の地域で多くなると予想されています。薬剤による防除を実施するとともに、園内を注意深く観察し、り病部を確実に除去してください。このほか、かんきつのハダニ類等、地域によっては多くなると予想されている病害虫があるので注意してください。

発生予察情報について

国及び都道府県では、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、有害動植物の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、有害動植物の発生調査結果等を分析し、有害動植物の発生動向及び防除対策に係る情報として、発生予察情報を提供しています。
本予報に掲載している情報の詳細は、都道府県病害虫防除所のホームページ等を参照してください。

発生予察について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
都道府県病害虫防除所
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html

気象

気象庁の向こう1か月の予報(5月9日付け)では、全国的に気温は高く、降水量は日本海側は平年並みか少ない、沖縄・奄美は平年並か多いと予想されています。
気象庁ホームページ
参照URL:http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/001_00.html (外部リンク)

水稲

各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

作物名 病害虫名 発生が「多い」と予想される地域    発生が「やや多い」と予想される地域
水稲 イネミズゾウムシ   北陸、近畿、中国、四国、北九州
縞葉枯病(ヒメトビウンカ) 南関東 、北陸 近畿
ばか苗病   北陸、四国
もみ枯細菌病   北東北、北陸

注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。

縞葉枯病の発生が、南関東及び北陸の一部の地域で多くなると予想されているほか、埼玉県から注意報が発表されています。本病は、ヒメトビウンカがウイルスを媒介することにより発病するため、当該虫を対象とした防除を実施することが対策上重要になります。近年、本圃で本病の発生が高まっている地域にあっては、ヒメトビウンカに効果の高い育苗箱施用剤による防除の実施を検討してください。

麦類

各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

作物名 病害虫名 発生が「多い」と予想される地域    発生が「やや多い」と予想される地域
うどんこ病 東海 北東北、南関東、南九州
赤さび病   東北、東海

  注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。

・赤かび病の防除は、本病に感染しやすい時期を捉えた薬剤散布が重要であり、麦の種類に応じて下表の時期に最初の薬剤散布を行うことが重要です。昨冬から今春にかけて気温の上昇が大きかった地域では、平年よりも早く出穂しているほ場もあることから、都道府県の提供する発生予察情報等を参考に、地域ごとの散布適期を確認して適切に薬剤散布を実施してください。
なお、散布適期に降雨が続く場合は、降雨の合間に実施してください。

麦の種類 最初の防除を行う生育時期
小麦 開花を始めた時期から開花最盛期まで
二条大麦 穂揃い期の10日後
六条大麦 開花を始めた時期から開花最盛期まで

 

野菜・花き

各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

作物名 病害虫名 発生が「多い」と予想される地域    発生が「やや多い」と予想される地域
いちご アザミウマ類   北陸、近畿、北九州
ハダニ類 四国、北九州 北陸、近畿、中国
キャベツ アブラムシ類   関東、近畿、北九州
きゅうり アザミウマ類   南関東、南九州
アブラムシ類 四国 南関東
コナジラミ類 北九州 南関東
うどんこ病 北九州 近畿、四国
灰色かび病 東海  
べと病 南九州 東海、北九州
レタス アブラムシ類 四国  
トマト アブラムシ類   南関東、中国
コナジラミ類   関東、甲信、東海、北九州
灰色かび病   北関東、南九州
葉かび病   近畿、北九州
なす ハダニ類 東海  
うどんこ病 東海  
ばれいしょ アブラムシ類 東海  
たまねぎ アザミウマ類 四国 近畿、北九州
べと病   北陸、中国、四国
ねぎ アザミウマ類 近畿 北陸、四国
さび病 四国  
アブラナ科野菜 コナガ 東海 南関東、近畿

注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。

 

いちご

・ハダニ類の発生が、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は、気温の上昇とともに増加する傾向があり、発生密度が高くなってからでは防除が困難となります。ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
なお、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けるとともに、化学合成農薬だけでない各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。

 

果樹

各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

作物名 病害虫名 発生が「多い」と予想される地域    発生が「やや多い」と予想される地域
かんきつ アブラムシ類   四国、北九州
ハダニ類 東海、四国、北九州 南関東、近畿
かいよう病 四国 近畿、九州
そうか病 東海 近畿
なし アブラムシ類   関東、北九州
シンクイムシ類   北関東、北陸
ハマキムシ類 北陸  
黒星病 北東北、近畿 北陸、東海
黒斑病 近畿 中国
もも せん孔細菌病 南東北、東海、近畿、中国 北東北
りんご 黒星病 北海道、東北  
果樹共通 果樹カメムシ類   中国、四国
ハダニ類 近畿 東海、九州
ハマキムシ類 南関東 東海、南九州
炭そ病 近畿 南九州

注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。

かんきつ

ハダニ類の発生が、東海、四国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。園内を注意深く観察し、発生状況に応じて防除を実施してください。
なお、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県の発生予察情報等を参考に、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。

なし

・黒星病の発生が、北東北及び近畿の一部の地域で多くなると予想されています。対策にあっては、り病部の除去、薬剤散布等の防除を実施してください。
また、薬剤の選定にあっては、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしてください。

もも

せん孔細菌病の発生が、南東北、東海、近畿及び中国の一部の地域で多くなると予想されており、前回の予報発表以降に和歌山県、岡山県、愛知県及び福島県から注意報が発表されています。
本病は、春期に枝に形成される春型枝病斑(スプリングキャンカー)が伝染源となり、降雨や風により発生が助長されます。前年の発生が多かった地域では、当該病斑が形成されやすい環境となっているため発生が多くなると予想されます。園内を注意深く観察し、発病枝が確認されたら確実に除去し園外に持ち出し処分してください。

りんご

黒星病の発生が、北海道及び東北の一部の地域で多くなると予想されており、北海道及び岩手県から注意報が発表されています。本病の対策にあっては、り病部の除去、薬剤散布等の防除を実施してください。
また、本病はDMI剤等に対して耐性菌が発生しているので、薬剤の選定にあっては、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適切に選定してください。 

 

都道府県が発表した警報、注意報及び特殊報

平成31年4月17日以降、都道府県が発表している警報、注意報及び特殊報は以下のとおりです。

警報

重要な病害虫が大発生することが予測され、かつ、早急に防除措置を講ずる必要がある場合に発表します。

発表はありません。

 

注意報

警報を発表するほどではありませんが、重要な病害虫が多発することが予測され、かつ、早めに防除措置を講じる必要がある場合に発表します。

発表月日 都道府県 対象作物 対象病害虫
4月19日 和歌山県 もも モモせん孔細菌病
4月19日 宮崎県 水稲 スクミリンゴカイ
4月22日 北海道 りんご リンゴ黒星病
4月22日 北海道 りんご リンゴ腐らん病
4月23日 埼玉県 水稲 イネ縞葉枯病(ヒメトビウンカ)
4月23日 岡山県 もも モモせん孔細菌病
4月24日 岩手県 りんご リンゴ黒星病
4月25日 愛知県 もも モモせん孔細菌病
5月8日 福井県 野菜類・花き類 ネキリムシ類
(カブラヤガ、タマナヤガ)
5月10日 埼玉県 チャハマキ
5月13日 福島県 もも モモせん孔細菌病
5月13日 千葉県 水稲 スクミリンゴガイ

 

特殊報

各都道府県において、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表します。
病害虫の生態等の生物学的情報や防除に関する情報の詳細については、各都道府県の病害虫防除所のホームページ等を参照してください。

発表月日 都道府県  対象作物 対象病害虫
4月25日 三重県 ねぎ ジャガイモクロバネキノコバエ
4月25日 沖縄県 マンゴー マンゴーすす点病

 

病害虫防除に関する留意事項

一般

病害虫の防除を効果的に実施するためには、注意深くほ場観察を行うことにより、病害虫の発生状況を的確に把握することが必要となります。病害虫の発生は天候の影響を大きく受けるので、天気の推移に注意しつつ、各都道府県の防除指針に従い、適期に適切な防除を実施してください。

薬剤防除を実施する場合は、病害虫が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。また、農薬の使用基準を遵守して適切な薬剤を選択するとともに、散布対象外の農作物等に農薬が飛散しないよう対策を講じてください。

露地栽培

引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。

施設栽培

ウイルス病を媒介するアザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類等の侵入や野外への飛び出しを防止するため、施設の開口部に防虫ネットを設置する等の対策を実施してください。また、雑草はこれら害虫の発生源となるので、施設内及び周辺の除草を定期的に行うよう努めてください。引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。

作物残さは、害虫の発生源となり、り病葉及びり病果は、病害の伝染源となります。栽培終了後は、蒸し込み処理等を行い、作物残さでの生存虫を死滅させてから搬出し、土中に埋める等、確実に処分をしてください。

施設内が過湿になると、病害の発生が助長されるため、雨水が施設内に入らないように留意するとともに、過度なかん水を回避する、循環扇を設置する、換気を行う、作物の株間の通風を図る等により、施設内が過湿にならないように管理してください。また、病害の早期発見に努め、伝染源となるり病葉及びり病果は除去し、適期に薬剤防除を実施してください。

用語解説

(地域)
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 
    北東北:青森県、岩手県、秋田県 
    南東北:宮城県、山形県、福島県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 
    北関東:茨城県、栃木県、群馬県 
    南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
甲信:山梨県、長野県
北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 
    北九州:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県 
    南九州:熊本県、宮崎県、鹿児島県 
沖縄:沖縄県

(発生量(程度))
多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
(平年値は過去10年間の平均)

(参考)今後の発表予定日
第3号:6月12日(水曜日)
第4号:7月10日(水曜日)
第5号:7月24日(水曜日)
第6号:8月7日(水曜日)
第7号:9月11日(水曜日)
第8号:10月16日(水曜日) 
第9号:11月13日(水曜日) 
第10号:令和2年2月12日(水曜日)

(参考)これまでの発表
第1号:4月17日(水曜日) 

お問合せ先

消費・安全局植物防疫課

担当者:白石、渡邉、宮木、山口
代表:03-3502-8111(内線4562)
ダイヤルイン:03-3502-3382
FAX番号:03-3502-3386