令和元年5月7日(火)

 本日から令和の時代になっての業務が開始しました。新しい時代においても,皆様よろしくお願いします。
 まず,閣議に関して,本日は法務省案件はありませんでした。
 私から報告が1件あります。私は,5月1日から5月5日にかけて,アメリカ合衆国,ニューヨーク及びワシントンDCに出張してまいりました。
 ニューヨークにおいては,グテーレス国連事務総長と会談し,来年,京都で開催される第14回国連犯罪防止刑事司法会議,いわゆる京都コングレスの重要性について認識を共有するとともに,同会議への参加を要請しました。
 また,ワシントンDCにおいては,連邦司法省のバー司法長官と会談し,司法分野における日米同盟の強化について協議し,確認しました。
 この他,様々な方とお会いし,また,アメリカ同時多発テロの現場であるワールドトレードセンタービル跡のメモリアルパークにも参り,法務大臣として初めて献花をし,改めてテロの防止について決意させていただきました。
 もとより,日本人の方も含まれていますが,改めて犠牲になられた方々に対する哀悼の意を捧げてまいりました。
 法務省では,司法外交について,前任の上川法務大臣当時から,しっかり取り組むことを表明してまいりましたが,今回の成果を踏まえ,さらにしっかりと推進していきたいと考えています。

新元号の下における法務行政に関する質疑について

【記者】
 冒頭にも御発言がありましたが,平成が終わって,5月1日から新たな元号「令和」となりました。新しい元号の下,法務大臣としてどのように法務行政に臨まれるか,御所感をお願いします。

【大臣】
 いよいよ「令和」の時代がスタートしました。新天皇が御即位され,令和元年が幕を開けたわけです。「令和」の時代の始まりに当たり,国連のグテーレス事務総長と会談の機会を持ち,SDGs(持続可能な開発目標)の推進を始め,様々な観点で意見交換をさせていただいたことは,極めて有意義であったと考えています。私もSDGsのバッジを着けていますが,SDGsの考え方に立って法務行政を推進してまいりたいと考えています。それは例えば,外国人共生社会の実現です。日本にいる中長期在留者が過去最高を更新し続けており,また,本年4月には,「特定技能」制度がいよいよ開始した状況下において,日本人と外国人との多文化共生社会の実現は,まさにSDGsが目指す「誰一人取り残さない社会」の実現の理念にも合致する,喫緊の重要課題であると考えています。
 そうしたことから,私自身は,令和元年を「多文化共生元年」と位置付け,官民・地域が一体となって,我が国で生活する皆さんが手を携えて安心して暮らしていける,多文化共生社会の実現を力強く推進していきたいと考えています。
  また,SDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会の実現という観点では,再犯防止も重要な課題です。
  再犯防止については,先ほど少し述べさせていただいた京都コングレスでも取り上げられる課題だと考えていますが,京都コングレスまで1年を切り,我が国の安全・安心な社会,法遵守の文化の浸透度を世界にアピールできるテーマのひとつでもありますので,引き続き積極的な取組を行いたいと考えています。
  そして,「誰一人取り残さない」の中にはもちろん児童も含まれます。今,児童虐待・いじめに苦しむ児童が多いと言われる中で,これら児童に対する人権侵害への対処も重要な課題です。子どもたちはこれからの時代を担う宝であり,児童虐待やいじめに対して,政府を挙げて更なる取組が必要ですし,法務省としてもその中心としてしっかり取り組んでまいりたいと考えています。
  もう一つは,法的インフラ整備です。
  現在,国会に対して,民事執行法,表題部所有者不明土地適正化法,あるいは戸籍とマイナンバーの連携などの戸籍法改正など,5本の審議をお願いしているところですが,こうした社会・経済が持続可能な形で発展していけるようにするために,そのインフラとなる基本法の整備が重要であり,その一環として,これら5本の法律が今国会で成立するよう万全を期していきたいと考えています。
  さらに加えて,所有者不明土地問題の解決に向けた迅速な取組をしっかりと国の最重要課題として関係省庁とともに取り組んでまいりたいと考えています。
  そして,最後に,「司法外交」は,SDGsの達成に大きく貢献する取組です。法制度整備支援を始め,法務省においてこれまで地道に進めてきた個々の取組を体系化し,総合的・戦略的に展開していくことが重要です。今回の外国出張で感じたことは,日本,とりわけ法務省の動向というのが,国際的にも関心を呼んでいる,そして,法務省が取り組んでいる法制度整備支援などについて強い関心が示されているということです。
  そうしたことをしっかりとこちらも取り組んでいくとともに,国際社会にアピールして,国際貢献をしっかり行っていきたいと考えています。そうしたことを通じて,国際社会における我が国のプレゼンスを高めることができると考えていますので,今後とも,司法外交を力強く推進してまいりたいと考えています。
  「令和」という元号は,万葉集を基にするものですが,万葉集とは,当時の天皇から庶民まで,それぞれの思いを歌にしたものを集めたものです。「令和」の時代を国民がそれぞれの思いを実現する時代にしていけるように,これまで先人が築き上げられ,国民に信頼されてきた法務行政を受け継ぎつつ,時代の変化に合わせて変革すべきは変革するという姿勢で,様々な課題にしっかりと向き合い,引き続き国民の胸に落ちる法務行政の実現に力を尽くしてまいりたいと考えています。

外国人材受入れに関する質疑について

【記者】
 新たな在留資格「特定技能」の導入と,出入国在留管理庁の発足から1か月が過ぎました。これまでの制度の運用状況など,1か月の取組を振り返っての御所感をお願いします。

【大臣】
 特定技能制度の運用状況については,4月1日から,特定技能制度に係る各種申請を受け付けており,4月26日には,初めての「特定技能1号」への在留資格変更許可に関する通知のほか,登録支援機関の登録が行われ,登録支援機関については,ホームページに公表したところであり,今後も順次手続を進めてまいりたいと考えています。
  他方,総合的対応策に基づいた共生社会に向けた取組として,地方公共団体の一元的相談窓口の整備を支援する外国人受入環境整備交付金について,1次募集で申請いただいた68団体について,全て交付決定を行い,現在,2次募集を6月28日まで行っているところです。
  さらに,総合的対応策に基づく共生社会に向けた取組として,例えば,外国人の日本における生活・就労について情報を提供する生活・就労ガイドブックを,4月1日からホームページに掲載していますが,外国の方により分かりやすいものとなるよう,易しい日本語の専門家と相談しながら,内容の改善について不断に検討してまいりたいと思いますし,また,多言語化についてもしっかりと図ってまいりたいと考えています。
  また,出入国在留管理基本計画を策定させていただきました。これは,出入国在留管理庁の設置等,出入国在留管理行政を遂行する体制が刷新されたことなどを踏まえて,4月26日付けで,従来の出入国管理基本計画を出入国在留管理基本計画に改めて策定したものです。
  この他,日本語教育機関の告示基準の改正についても,今,パブリックコメントを受け付けているところです。これについても,いわゆる日本語教育機関に対する留学生の在り方について,国会でもいろいろ御指摘いただいたところですので,しっかりと検討した上で図っていきたいと考えています。
  このように,今後も出入国在留管理庁においては,新たな基本計画の下で,外国人の人権への十分な配慮を行いつつ,出入国及び在留の管理,そして,新たに加わった外国人の受入環境整備のための総合調整に関する施策にしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。

アメリカ出張に関する質疑について

【記者】
 冒頭大臣から御発言があった,アメリカ出張の件でお伺いします。国連のグテーレス事務総長や,アメリカのバー司法長官と会談を行ったタイミング,コングレスまで1年を切ったタイミングでのねらいや意義,成果などを改めてお伺いします。

【大臣】
 まず,グテーレス国連事務総長との会談では,SDGsの全てのゴールの基礎である「法の支配」を国際社会に浸透させるに当たり,京都コングレスが重要な意義を有するとの認識を共有しました。
 その上で,国連事務局としても,京都コングレスに対し,全面的な支持と協力をいただけることを確認し,私から,グテーレス事務総長に対し,京都コングレスへの参加を要請しました。前向きに検討してくださるということでした。
 また,グテーレス国連事務総長からは,我が国が行ってきた法制度整備支援,あるいはUNAFEIにおける人材育成のためのセミナーやプログラムへの取組について,高い評価をいただいたところです。
 次に,バー司法長官との会談についてです。日米同盟の多面的な深化については総理やトランプ大統領との間でも話し合われていますが,司法分野というのは中でも重要な分野であるという認識で一致しました。そうした中で,司法分野,例えばテロ等を含む組織的犯罪やサイバー犯罪等の防止などの対策,あるいはコラプション(腐敗)といったものへの対策において,日米間の緊密な協力関係が極めて重要であるという認識を共有しました。
 また,併せて,一昨年のTOC条約や腐敗防止条約(UNCAC)への批准について高い評価をいただいたところです。
 そうしたことから,今後,日米関係をより一層強化し,相互理解,情報共有,意見交換を深めていくことを確認した次第です。
 バー司法長官についても,京都コングレスへの参加を要請して,これも前向きに検討していただけるということでした。
 この他国連開発計画(UNDP)の総裁補や,投資紛争解決国際センター(ICSID)においても意見交換をさせていただきました。
 いずれの会談も非常に有意義で,例えば,グテーレス国連事務総長ともバー司法長官とも,他の事柄も含め,非常に和やかな雰囲気の中で多くの意見交換を行うことができました。いずれも日本の貢献に対して非常に高く評価をしていただいているところです。両者との間でも良好な人間関係を構築することができ,大変有意義であったと考えています。「司法外交」を進めていく上では,face to faceでトップ同士が語り合うということが極めて大事です。国会の日程等もありますが,可能な範囲でしっかりと進めてまいりたいと考えています。
 もう一つはやはり,京都コングレスについてです。これは各国の法務大臣や検事総長クラスが集う国連のこの分野最大の会議ですので,これをしっかりと成功させる必要があります。京都コングレスというのは,「法の支配」という各国が共通で重要視している分野において,我が国がリーダーシップを示す非常に重要な機会であると考えています。
 今回の出張の成果を踏まえ,京都コングレスの成功に向けた準備も加速させてまいりたいと考えています。

恩赦等に関する質疑について

【記者】
 恩赦について伺います。連休中にも一部報道で出ていましたが,10月に即位礼正殿の儀があります。それに併せて恩赦を検討するお考えはありますか。
 2点目として,過去に恩赦に併せて公務員の懲戒処分の免除等がなされた経緯がありましたが,それについて検討していますか。

【大臣】
 御指摘の恩赦を実施するか否かについては,現時点で,何も決まっていません。

刑事司法制度に関する質疑について

【記者】
 CSISで,大臣は謙虚でおっしゃられませんでしたが,日本の,自民党のニューリーダーとして呼ばれたこと,おめでとうございます。
 これからの令和時代を見据えての課題等を先ほどおっしゃったと思うのですが,その中で刑事司法制度については言及がなかったように思います。カルロス・ゴーン氏の事件をきっかけに,海外から日本の司法制度に対する批判があると思いますが,例えば,取調べを受けるときに,弁護士の立ち会いを認めていないという批判がありますが,その刑事司法制度は数年前に改正がされて,「これ以上変える必要は無い。むしろ今の制度が良い。」と理解して良いのでしょうか。元特捜検事として,今の制度が良くて変える必要がないという御意見であればその理由を説明してください。

【大臣】
 まず,刑事司法制度というのは,それぞれの国の法文化に基づいて,また,それぞれの制度において様々な発展を遂げてきた制度であると思います。そのため,例えばアメリカなどではプリ・バーゲニング等が非常に多く活用されていると承知しています。また,例えばフランスにおいては予審判事制度というのがあったり,それぞれの法文化においてそれぞれの制度があるのだろうと考えています。我が国においても,そういった中で刑事司法についてこれまで不断の検討がされてきたのであろうと思います。また,本年6月1日には,取調べの録音・録画の制度も施行されます。
 人権の尊重と実体的真実の発見ということの中で,各国それぞれが制度を検証しているのだろうと考えています。そのため,一つの事象をとらえて,この点が他の国と違うからそれはおかしいという議論にはあまりくみしたくないと考えています。
 ただ他方で,我が国の制度がどのような制度なのかということについては,日本国内の報道機関に対しては,半ば前提のものとして説明してきた部分があるのですが,外国のプレスに対してもしっかりと説明する機会がなければならないと思っていますので,どのような形で情報提供させていただければ良いかということも含めて検討してまいりたいと考えています。

【記者】
 ということは,今の刑事司法制度については変える必要がないとお考えですか。

【大臣】
 まず,私どもは行政機関,法執行機関です。そのため,与えられた法律の中で基本的人権を尊重する,そして実体的真実を発見するといった目的,これは刑事訴訟法であれば刑事訴訟法の目的ですが,そうしたことを踏まえて法律の枠の中でしっかりと取り組んでいくということがまず大前提にあると考えています。

(以上)