2019年5月14日

同時発表:環境省

2019年4月29日~5月10日にジュネーブ(スイス)において、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約(POPs条約)の第9回締約国会議(COP9)が開催され、新たに「ジコホル」及び「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質」を同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定されました。これらの物質については、今後、国際的に協調して製造・使用等の廃絶に向けた取組を行うこととなります。また、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩及びペルフルオロオクタンスルホニルフルオリド(PFOSF)について、認めることのできる目的及び個別の適用除外の見直し、条約の有効性の評価などについての議論が行われました。

1.会議の主な結果

(1)条約への規制対象物質の追加

ストックホルム条約(POPs条約)条約締約国会議の下に設置された残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)の第13回会合(2017年10月開催)及び第14回会合(2018年9月開催)における検討結果を受け、POPRCから今次締約国会議に対して条約の附属書A(廃絶)への追加の勧告が行われた2物質群について、適用除外の要否、PFOA関連物質の範囲等が議論された結果、下記の表のとおり、附属書A(廃絶)への追加が決定されました。今後、附属書A(廃絶)に追加された物質については、製造・使用等の廃絶に向けた取組を、条約の下、国際的に協調して行うことになります。

この決定により改正される附属書の発効は、附属書への物質追加に関する通報を国連事務局が各締約国に送付してから1年後になります。我が国においては、それまでに、条約で定められている規制内容に基づき、国内で担保するための所要の措置を講ずることになります。

  • 附属書A(廃絶)への追加
物質名 主な用途 決定された主な規制内容
ジコホル 殺虫剤 ・製造・使用等の禁止
(特定の用途を除外する規定なし)
ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質 フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤等 ・製造・使用等の禁止
(以下の用途を除外する規定あり注1))
―半導体製造におけるフォトリソグラフィ又はエッチングプロセス
―フィルムに施される写真用コーティング
―作業者保護のための撥油・撥水繊維製品
―侵襲性及び埋込型医療機器
―液体燃料から発生する蒸気の抑制及び液体燃料による火災のために配備されたシステム(移動式及び固定式の両方を含む。)における泡消火薬剤
―医薬品の製造を目的としたペルフルオロオクタンブロミド(PFOB)の製造のためのペルフルオロオクタンヨージド(PFOI)の使用
―以下の製品に使用するためのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)の製造
・高機能性の抗腐食性ガスフィルター膜、水処理膜、医療用繊維に用いる膜
・産業用廃熱交換器
・揮発性有機化合物及びPM2.5微粒子の漏えい防止可能な工業用シーリング材
―送電用高圧電線及びケーブルの製造のためのポリフルオロエチレンプロピレン(FEP)の製造
―Oリング、Vベルト及び自動車の内装に使用するプラスチック製装飾品の製造のためのフルオロエラストマーの製造

注1)個別の適用除外の規定については、その効力が発効した日から5年を経過した時点で、その適用除外の効力が失われることになっています。なお、上記の適用除外のうち、「医薬品の製造を目的としたペルフルオロオクタンブロミド(PFOB)の製造のためのペルフルオロオクタンヨージド(PFOI)の使用」については、最長2036年までの適用除外が認められ、COP13(2027年)以降、隔会合ごと(4年ごと)にその必要性が評価されることになりました。
日本としてこれらの用途を適用除外とするか否かについては、今後、国内で検討することとしています。

(備考)上記の表中の情報は省略・簡素化しているため、規制内容の詳細については、下記の条約事務局のホームページから会議文書をご覧ください。
POPs条約ホームページ外部リンク

(2)過去に附属書に追加された化学物質の個別の適用除外等の見直し

2009年の第4回締約国会議(COP4)で附属書B(制限)に追加され、既に発効しているペルフルオロオクタン酸(PFOS)とその塩及びペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(主な用途:界面活性剤、泡消火薬剤)については、いくつかの用途に対して認めることのできる目的及び個別の適用除外が条約上で規定されています。今回の締約国会議では、これらの適用除外等が引き続き必要であるか否かの見直しが行われました。その結果、代替可能な製品の状況等を考慮し、認めることのできる目的として「ハキリアリの防除に用いられる防虫剤」、個別の適用除外として「リサイクルに限定された金属めっき(硬質金属めっき)」及び「液体燃料から発生する蒸気の抑制及び液体燃料による火災のために配備されたシステム(移動式及び固定式の両方を含む。)における泡消火薬剤」に限られることになりました。
 

(3)条約の有効性の評価

2017年の第8回締約国会議(COP8)を受けて事務局により改訂された条約の有効性評価の枠組が採択されました。今後は、採択された枠組及びモニタリング計画に沿って次回の有効性評価が実施される予定です。

我が国としては、引き続き、的確な国別報告書の提出、環境モニタリング調査により得られたデータの提供、東アジアPOPsネットワークにおける活動等を通じて貢献を行っていきます。

2.第9回締約国会議の概要

(1)開催地・会議期間

開催地:ジュネーブ(スイス)
会議期間:2019年4月29日(月曜日)~2019年5月10日(金曜日)(バーゼル条約・ロッテルダム条約・ストックホルム条約の三条約合同締約国会議の一部をなすものとして開催。)

(2)主な議題

  • 条約への規制物質の追加(ジコホル、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質)

  • 過去に附属書に追加された化学物質(ペルフルオロオクタン酸(PFOS)とその塩及びペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド)の適用除外等の見直し

  • 条約の有効性の評価

(3)出席者

会議の議長はモハメッド・カシャシュネ氏(ヨルダン)が務め、我が国からは、外務省、経済産業省及び環境省から構成される政府代表団が出席しました。

【参考】残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)とは
POPs条約とは、環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質(POPs:PersistentOrganicPollutants)の、製造及び使用の廃絶・制限、放出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約です。
対象物質については、POPs検討委員会(POPRC)において議論されたのち、締約国会議(COP)において決定されます。

締約国会議で規制対象物質の追加が決定された後、日本など条約を批准している加盟国は、これらの物質の製造、使用等を国内の法令で規制することにより、条約の内容を担保することになっています。
経済産業省関連情報ホームページ外部リンク
POPs条約ホームページ(英語)外部リンク
POPs条約の加盟国(英語)<Ratificationの欄に日付の記載がある国>外部リンク

担当

製造産業局化学物質管理課長 徳増
担当者:松下、秋山、池川
電 話:03-3501-1511(内線 3691~5)
03-3501-0080(直通)
03-3501-6604(FAX)