2019年4月15日

現行の食品調理加工施設などでの微生物の観察については、そのサンプルを採取して別室において調整及び培養の過程を行い顕微鏡で観察しています。しかし、この方法は長時間を要するため、簡単に確認できる手法が求められていました。携帯形微生物観察器は、現場ですぐに観察が可能となることから、食品加工施設を始め、医療施設、飲食店、教育施設など幅広い分野で活用されることが期待される簡易検査ツールです。今回、「新市場創造型標準化制度」を活用して、携帯形微生物観察器の信頼性を担保できるよう、解像力や堅牢性についての基準を定めたJIS B7271(携帯形微生物観察器)を制定しました。食品、医療、畜産、農業、水産など広範囲な産業での使用が可能で、現場で簡便に微生物の観察ができ、安全・衛生管理面のサポートにつながることが期待できます。

1.JIS制定の目的

現行の食品工場や食品調理加工施設などで微生物を観察する場合、ガラスが割れたときのことを考慮してガラスの持ち込みが不可能なため、従来のプレパラートを使う顕微鏡は、現場に持ち込めません。そのため、微生物の観察については、そのサンプルを採取して別室で調整及び培養の過程を経て顕微鏡で観察しています。この方法は、観察に長い時間がかかり、簡単に確認できる手法が求められていました。携帯形微生物観察器は、プレパラートを必要とせず、また試料の調整、培養の必要がなく、試料ステージに水分を含ませた試料を直接乗せて観察できるために現場ですぐに観察が可能となることから、食品加工施設を始め、医療施設、飲食店、教育施設などで活用が期待される微生物の簡易検査ツールです。

今回、携帯形微生物観察器の信頼性を担保し、利用者が正確に使用できるようにするため、解像力や堅牢性についての基準を定めたJISB7271(携帯形微生物観察器)を制定しました。

※携帯形微生物観察器の特徴

  1. プレパラートの不要
    この観察器では、従来の顕微鏡観察では必要なプレパラートが必要ありません。

  2. サンプルの調整及び培養の不要
    現在の顕微鏡で資料を観察する場合は、サンプルの調整及び培養の過程が必要ですが、本観察器は、試料ステージに直接試料を乗せて観察するため、現場ですぐに観察が可能です。

  3. 受像装置の不要(スマートフォンでの代用)
    本観察器の受像装置は、カメラ機能を搭載したスマートフォンなどが使用でき、専用の受像装置は必要ありません。


携帯形簡易微生物観察器

 


スマートフォンに映された画像例

2.JIS制定の主なポイント

本JISは、携帯形微生物観察器の解像力や堅牢性の基準を規定しました。主な規定事項は次のとおりです。

  1. 適用範囲
    細菌類などの微生物を、プレパラート作成などの前処理を必要とせず、簡易に即時観察できる光学機器であって、観察器は受像装置を接続して観察することができ、かつ、観察器単体でも接眼レンズを通して目視で観察できるもの。

  2. 視野径
    観察器で観察できる対象の領域の直径は0.02mm以上で、製造業者が指定する視野径の±5%以内である。

  3. 解像力
    視野内の中心及び周辺4点の計5点ともに1000LP/mm以上の解像力である。
    (解像力1000LP/mmとは、0.5μm間隔で並んだ0.5μm幅の線の縞模様が分離して見える)

  4. 耐衝撃性
    ピーク加速度100gn(ポータブル機器が携帯時やハンドリング時に受ける耐衝撃レベル)を与えた後でも、構造的損傷がなく正常に作動し、視野径、解像力を保つ。

  5. 耐高温高湿性
    温度40度及び相対湿度93%の環境下に48時間さらしても視野径、解像力を保つ。

3.期待される効果

食品、医療、畜産、農業、水産など広範囲な産業での使用が可能で、現場で簡便に微生物の観察ができ、安全・衛生管理面のサポートにつながることが期待できます。

日本工業標準調査会(JISC)のHP外部リンクから、JIS B7271でJIS検索すると本文を閲覧できます。

担当

産業技術環境局 国際標準課長 黒田
担当者:根岸
電 話:03-3501-1511(内線 3423~5)
03-3501-9277(直通)