冒頭発言

【河野外務大臣】先ほど,釣魚台におきまして日中ハイレベル経済対話を行いました。日本側は私が,中国側は王毅国務委員兼外交部長が議長を務め,双方から複数の経済関係閣僚が出席し,約3時間40分にわたり,予定を少しオーバーしましたが,貿易投資分野をはじめとする二国間の課題,G20,WTO,地球規模課題といった多国間課題について意見交換を行いました。冒頭私からは,GDP世界第2位,3位の日中両国が地域及び世界の平和と繁栄に大きな責任を有しており,自由で公正な貿易投資を発展させ,地域世界の繁栄に貢献すべく連携していく必要性を指摘いたしました。その後,国際ルール・慣行に則った貿易投資の推進やビジネス環境改善の重要性,イノベーション分野での協力などについて議論を行う中で,強制技術移転,知的財産権の保護,データの取り扱い,産業補助金などの構造的な問題について日本側の懸念,問題意識をしっかりと伝達をいたしました。また,日本産食品の輸出拡大についても,規制の緩和撤廃を日本側から強く要請をするとともに,日本産牛肉などの畜産物の中国への輸出解禁に向けた重要なステップとなる動物衛生・検疫協定につき実質合意に至ったことを歓迎し,早期の締結に向けた連携の確認をいたしました。さらに金融・証券市場協力のさらなる強化,日中社保協定の早期発効に向けた連携,省エネ環境分野の協力の強化,観光交流の促進,日中第三国市場協力や日中イノベーション協力対話などの適切なフォローアップについて閣僚レベルで認識を共有いたしました。また,地球規模課題など6月のG20大阪サミットに向けて協力していくことでも認識が一致しました。次回,第6回となる次回の会合は日本で開催をするということで一致をしております。

 また,このハイレベル経済対話に先立って,午前中は無人レジでのキャッシュレス決済が可能なスーパーマーケットの「フーマー」,ロボットなどの自動化技術をかなり導入している火鍋料理屋の「海底ロウ」を視察し,イノベーション技術が中国の人々の生活にどう影響を与えているのかというのを自ら実感することができました。
 また,昨年の秋,日中両国は今年を「日中青少年交流推進年」と定め,関連の交流活動を集中的に実施することで一致をいたしましたが,今日の午後,この推進年の開幕式に王毅国務委員兼外交部長とともに出席をし,大学生と交流をさせていただきました。日中関係を長期にわたって安定的なものにしていくためにはこうした若い世代の相互理解が不可欠であり引き続き政府としてもこの青少年交流の強化に力を入れていきたいと思います。
 昨日も,北京外国語大学で日本語を学んでいる学生さん,それからJETプログラムで日本の自治体でこれから働こうという中国各地から来ている若者と交流させていただきましたが,こうした人たちがこれから日中の架け橋になってくれることを期待したいと思います。
 また,今日の午後は北京で開催中の「日本映画週間」の開幕式にも参加をいたしました。昨年「日中映画共同製作協定」を発効させましたけれども,こうした枠組みによる交流も政府としてしっかり後押ししていきたいというふうに思っております。私からは以上です。

質疑応答

【記者】冒頭言及ありましたけれども,知的財産や技術移転について,米中の貿易摩擦で話題になっている件ですけれども,日本側の懸念,問題意識を伝達したということですけれども,具体的にどのような懸念,問題意識をお伝えになって,それに対して中国側はどのような反応をしたのでしょうか。

【河野外務大臣】これから民間の様々な投資,あるいは経済協力等を進めていく中において,この技術移転が強制される,あるいは知的財産が保護されないということが様々な企業が二の足を踏むことに繋がってるという問題提起をいたしました。中国側から様々ご説明がありました。それでこの懸念というのがすべて払拭されるか,そこは今後しっかり日中両国の間で詰めていかなければならないというふうに思います。

【記者】牛肉の輸入規制について伺います。輸出の解禁に向けた協定の大筋合意ということですけれども,締結の時期ですとか,具体的に解禁される時期について目処は立ちましたでしょうか。

【河野外務大臣】この動物衛生・検疫の協定がそのまま解禁に繋がるわけではありませんけども,解禁に向けた重要なステップであるということは間違いありません。実質合意いたしましたので,しっかりとここから先,畜産物の輸出解禁に向けてですね,繋げていきたいというふうに思っています。

【記者】締結は年内に・・・。

【河野外務大臣】なるべく早期に,というふうに考えております。

【記者】ハイレベル経済対話の中でですね,いわゆる5Gの問題について中国側から何か発言があったか,それに対して日本からどういった発言をされたのか,お願いします。

【河野外務大臣】5Gに関して中国側から関心の表明がありました。それに対して,日本側から,特定の企業等を視野において何かやっているわけではなく,この新しい5Gいう技術の中でサイバーリスクがあってはならないわけですから,そういう一般的なガイドラインということでご説明申し上げました。

【記者】今しがたあった5Gの問題ですけれども,中国側から関心の表明があったということですけれども,具体的にどのような形で関心の表明があったのでしょうか。

【河野外務大臣】ファーウェイについて,中国側から,日本側の,日本企業の動向について関心の表明があったということでございます。日本政府としては,それはもう,民間企業のことですから,民間企業の調達について政府が口をはさむことはありませんが,サイバーリスクに関する懸念というのはそれぞれの国であるわけですから,そこは様々,一般的なガイドライン,ルールというものは当然に決められるものですが,これは特定の企業などを念頭に置いたものではない,ということを説明いたしました。

【記者】先ほど輸入規制の話もありましたが,輸入規制については日本側から撤廃を求めたということですけれども,中国側からは求めたのに対して何か反応はありましたでしょうか。

【河野外務大臣】今度の動物に関する検疫,あるいは動物衛生・検疫に関する協定について,大筋合意をしておりますので,なるべく速やかに発効できるよう連携していきたいということをこちらから申し上げ,また農作物について早期の撤廃,輸入規制の撤廃ということを申し上げました。これは引き続き政府間でしっかりフォローアップしていきたいと思います。

【記者】中国側としては,撤廃はまだかかりそうだ,という形でしょうか。

【河野外務大臣】これからいろいろ,様々,詰めていきたいと思います。

【記者】大臣がハイレベル対話の冒頭の発言で,G20の大阪サミットの習近平国家主席の訪日も見据えてというような発言がありましたが,具体的にその辺りの話は出たんでしょうか。

【河野外務大臣】そうしたことは,明日の外相会談でまた意見交換をすることになろうかと思います。

【記者】それとですね,「一帯一路」の関連ですけれども,ヨーロッパ等ではイタリアが参加したりしているという情報もありますけれども,具体的に中国側から「一帯一路」の話が出たりだとか,日本側から何か中国側から出た「一帯一路」の話についてアクションをしたりということはあったのでしょうか。

【河野外務大臣】中国側から「一帯一路」に関する取り組みについて説明がありました。日本側としては開放性,透明性,経済性,あるいは被援助国の債務の健全性といった国際的に共通の考え方に沿ってこうしたプロジェクトが行われることは,世界経済にも資するということを申し上げました。

【記者】今日,夕食会があったと思うんですけれども,夕食会でどのようなやり取りがあったのかということ,ご紹介できることがあれば教えてください。

【河野外務大臣】夕食会は完全に社交でした。

【記者】米中貿易摩擦についてですけれども,米中で摩擦していますけれども,そのあたり何かこう懸念であったりとか,日本に対しての説明だったりですとか,あったのでしょうか。

【河野外務大臣】日本側からこの米中の貿易に関しては,WTOの枠組みの中で解決されるべきであって,今行われている交渉を注視していると申し上げました。また,中国の様々な補助金ですとか,技術の強制移転,あるいは知的財産権の保護といったことに関する懸念を払拭するような努力をしっかりして欲しいということは日本側から申し上げました。

【記者】明日は外相会談がありますが,今日は経済の話であったりというのがメインだったと思うのですが,明日の外相会談ではどのような形の話をしたい,どのように望みたいと思ってらっしゃいますか。

【河野外務大臣】明日は少し多国間の話,地域情勢,国際情勢,安全保障といったことについて,意見交換をしていきたいと思っています。

【記者】具体的には二国間・・・多国間の話もとおっしゃいましたけれども,もちろんバイの会談になると思うんですけれども,二国間の懸念であったりとか,ガスの油田の話だったりですとか,というところについての懸念等は伝達されるつもりでしょうか。

【河野外務大臣】東シナ海の問題というのは触れざるをえないと思いますし,様々な地域情勢,国際情勢について,意見交換をしっかり王毅さんとしていきたいと思います。

【記者】全体的な雰囲気になりますけれども,ハイレベル対話等昨日からいろいろ参加されていますが,大臣来られて,中国のこの今の雰囲気というのは,関係改善というかさらに進んでいくような雰囲気はありますでしょうか。

【河野外務大臣】もう日中関係は正常化したと言ってよろしいというふうに思っています。