冒頭発言

(1)WTO紛争解決『韓国による日本産水産物等の輸入規制』上級委員会報告書の公表

【河野外務大臣】今般,WTOの上級委員会が,我が国が申立てておりました日本産の水産物の韓国での輸入規制に関して,報告書を公表いたしました。
 この報告書において,韓国による輸入規制に関して,日本産の食品は科学的に安全であり,韓国の安全基準を十分クリアするものとしたパネルの事実認定が,上級委員会でも維持されたということは,非常に重要だと思っております。
 他方,パネルの判断の一部が取り消され,韓国が是正措置をとらなかった場合に,日本が対抗措置をとることができない状況となったことは,誠に残念でございます。今後,韓国との二国間の協議の中でしっかり働きかけをして,輸入規制の早期撤廃を求めたいと思っております。
 日本の食品の安全,科学的な安全性というものが確認されたこともあり,輸入規制をしている,まだ残っているいくつかの国に対して,規制の撤廃をしっかりと求めていきたいと思っております。

(2)河野大臣の中国訪問

【河野外務大臣】明日13日から月曜日15日にかけて,中国・北京を訪問いたします。王毅(おう・き)国務委員兼外交部長との間で,ハイレベル往来を含む日中関係の今後の取り進め方について議論をしっかりしたいと思っております。また「日中青少年交流推進年」ということで,その開幕行事に出席をして,若い世代を中心とする国民交流を盛り上げていきたいと思っております。
 また,第5回となります日中ハイレベル経済対話に,日本側の議長として出席し,経済分野の多岐にわたる議題について,関係閣僚の間で率直な議論をしたいと思っております。日中関係を新たな段階に押し上げる,そういう一つのステップにしていきたいと思っているところです。

WTO紛争解決『韓国による日本産水産物等の輸入規制』上級委員会報告書の公表

【NHK 奥住記者】今日のWTOの報告書を受けて,韓国外務省はさっそく輸入規制を維持するというふうなコメントを発表しています。また記者会見では,韓国政府はこの措置を恒久的に続けるというふうにも発言していますけれども,受け止めと,大事な対抗措置をとれない中で,どのように事態を打開していくのか,お考えをお聞かせください。

【河野外務大臣】日本産の食品が安全であるということが確認されたわけでございますし,韓国から日本に750万人の方が来られて,日本での和食を含め,食事を含め,楽しまれているという状況の中で意味のない輸入規制を続けるということは,二国間関係にも大きな影響を及ぼすことになりますので,今回のこの上級委員会の報告書を受けて,韓国は一刻も早くこの輸入規制を撤廃する必要があると思っておりますので,韓国に対してしっかり,今日も韓国大使に朝早く来ていただいて,日本側からこの上級委員会の報告書を受けて一刻も早く輸入規制を撤廃することを求めました。しっかりと韓国が対応してくれることを望みたいと思います。

【産経新聞 力武記者】今回の上級委員会の報告というのは,パネルの段階での報告の判断とか結論の導き方に瑕疵があるということで,それを取り消したわけですけれども,かといって一審に差し戻しができるわけでもなくて,その仕組みもないという中で,結論としては白黒はっきりせずに,輸入規制の撤廃をせよとも言っていなければ,撤廃しなくてよいとも言っていない。結局今回の結論は,日韓間の紛争の解決にはなっていないと思うんですけれども,結局のところ,当事国間でまた協議せよということになると,そもそもWTOの紛争解決手続というのは,一体なんなんだろうというような疑問も持つわけですけれども,大臣として,このWTOのあり方そのものについて,どのように思われていますでしょうか。

【河野外務大臣】今回はっきりしたのは,科学的に日本の食品の安全ということが認められたわけでございます。輸入規制というのは,科学的な根拠に基づいて行われなければならないということを考えれば,韓国側が輸入規制をする根拠はなくなったということで,韓国政府が国際法,国際ルールを尊重するという立場であるならば,一刻も早い輸入規制の撤廃という措置をとることになると思いますので,韓国政府の立場というのが国際的に知れ渡っていくということになろうかと思います。
 WTOの上級委員会はいま定員7名のところ,必要な委員の数がぎりぎり3人ということになっておりまして,これは委員をしっかりと選任していかないと,上級委員会も機能しないという,かなり切羽詰まった状況にあるわけでございます。WTOの中で,例えばeコマース,デジタル経済のようなルール作りが必要な部分と,いまある機能をしっかりと維持していくということ。まだまだWTOの中でこのWTOルールをしっかりと機能させていくために,国際社会としてやっていかなければならないことが多々あるという認識は,先般のG7の外相会合の中でも共有をされたと言ってよろしいかと思いますので,日本としてこのWTOの現代化に向けて,しっかり取り組んでいきたいと思います。

【朝日新聞 清宮記者】WTOの関係で今回,事前には一審パネルと同じく日本が勝訴になるという見方が多かったと思うんですが,政府与党からも今回見通しが甘かったというか,勝てるだろうという油断があったのではないかという指摘もあがっていますが,その点,どのようにお考えになりますか。

【河野外務大臣】パネルの決定が上級委員会で覆るというのは少なからずございます。今回もしっかり準備をして臨んだと思いますが,これからこの報告書をしっかり分析をしていきたいと思っております。

日米地位協定と他国地位協定との比較(沖縄県による報告書(欧州編)の公表)

【朝日新聞 清宮記者】本日,沖縄県が日米地位協定に関連して,他国との地位協定の比較を発表しました。ドイツ・イタリア・ベルギー・イギリスなどでは,国内法が適用されて,米軍機の飛行などを規制していると。日本は国内法が原則として適用されていないということで,日本政府に地位協定の改定を改めて求めていますが,受け止めをお願いします。

【河野外務大臣】NATOのような相互防衛義務を負っている国とそうでない国,あるいはこの地位協定というのは様々,合同委員会合意のようなものを含め,あるいは様々な国内法を含めた一つの体系でございますから,その中の何かを取り出して比較するということに全く意味はありません。

WTO紛争解決『韓国による日本産水産物等の輸入規制』上級委員会報告書の公表

【共同通信 福田記者】WTOの関連なんですが,韓国への働きかけについてなんですけれども,どのようなものを想定されているのか。例えば局長級になるのか,それよりもハイレベルのものを検討されているのか。現時点での認識を教えてください。

【河野外務大臣】特に今の時点で何か予定されているものはございません。

【毎日新聞 秋山記者】再三,科学的には日本の食品は安全だということは立証されていると,従来,日本政府もそのように主張してきていると思うんですけれども,にもかかわらず,まだいくつかの国でこういう規制が残っている,ずっと交渉されている立場から,何故この問題が科学的な理屈によって解決されないのか,この点についてはどうお考えでしょうか。

【河野外務大臣】残念ながら,国内政治と関連されてしまっているということが多々あると思います。先般の台湾の公民投票もですね,与野党入れ替わった時に主張が入れ替わるというようなこともございました。また,香港はそういう中で4件の輸入を認めていただきました。まだ,若干,書類やらいろんなものが煩雑であって,完全にその他の件とイコール・フィッティングになっていないものですから,そういうことについての改善を,先般キャリー・ラムさんいらっしゃった時に求めましたが,だんだん分かってきてくださっていて,科学的に安全性に問題はないことは分かっている,あとは国内の政治的な問題,政治的な配慮だと,実際に相手側から言われることも少なからずございます。そういう中でしっかりとした判断をしてくれる政府が増えてきたと思いますので,輸入規制が残っている国・地域に関してはしっかりとした理解をいただいて,輸入規制撤廃を求めていきたいと思っております。

米韓首脳会談

【NHK 奥住記者】米韓の首脳会談が行われまして,北朝鮮への対応をめぐって,制裁のあり方について違いが浮き彫りになったというふうにメディアで伝えられています。大臣はこの米韓首脳会談を今回どのようにご覧になりましたでしょうか。

【河野外務大臣】北朝鮮が核・ミサイルをCVIDしなければならないというアメリカの方針を,我々は100%支持しておりますし,経済制裁の解除には,それに向けて北朝鮮がしっかり動いて,CVIDを実現するということが大事だというトランプ大統領の方針に,我々は同意をしておりますので,しっかりとやっていきたいと思っております。韓国が言う南北協力というのは,この安保理決議の枠組みの中で行われるというふうに我々は承知をしております。

河野大臣の中国訪問

【共同通信 江藤記者】中国訪問について発表されました。先日のG7で,各国,中国への警戒感も含めてだと思うんですけれども,関心が高いとおっしゃっていました。そういった文脈でどういうことを伝えたいかと,あと,まだ食品の輸入規制,中国も続いているんですが,その辺に関してどういったことを伝えたいか,お願いします。

【河野外務大臣】今の米中の交渉などを含めた世界的なマクロの問題というのを,日中間で取り上げたいと思っておりますし,中国におけるビジネス環境の整備,あるいは知的所有権の保護,技術移転に関することなど,日本側であるいは日本以外でも,懸念の声があがっていることについては,率直に意見交換をしてまいりたいと思っております。また,東シナ海の状況についてもですね,日本としては原理原則に則った主張をしっかりして,これについても中国側としっかり議論をしていきたいと考えているところでございます。