2019年4月9日

経済産業省は、昨年夏より、M&A経験豊富な海外企業や外資系投資ファンドへのインタビュー、日本企業とのグループディスカッションを含むワークショップ等を通じ、M&Aの最前線に立つ国内外企業の「生の声」を集め、日本企業による海外M&Aの課題を整理した報告書にまとめました。

1.報告書作成の背景

近年、日本企業がグローバル規模で成長を実現していく上で、海外M&Aが重要かつ有効なツールとして認識され、日本企業による海外M&Aは増加傾向にあります。一方で、海外M&Aの難易度の高さから、期待されていた成果を十分あげられないケースが少なくありません。こうした背景から、平成29年度に経済産業省は、「我が国企業による海外M&A研究会」を発足させ、日本企業が抱えるM&Aに関する課題を有識者とともに検討し、海外M&Aを有効に活用していく上での留意点や事例を報告書と「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」として取りまとめたところです。

平成30度においては、上記取組をさらに深化させ広く共有することで、日本企業が激しいグローバル競争環境の中で十分に成果を得られるように、以下のような調査を実施し、報告書にまとめました。

2.調査内容

  • 海外M&Aの課題や対応策をさらに具体化させるため、買収契約成立後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)の一環で現地に派遣されている日本企業の駐在員や買収先の経営陣を複数名集めた座談会の開催(米国・英国・シンガポール)および海外企業(米国・英国・独国・シンガポール・インドで計15社)・外資系投資ファンド(日本未進出のファンドを含む計5社)等へのインタビューの実施

  • 「9つの行動」を活用して海外M&Aに関する留意点等を日本企業に幅広く浸透させること、及び日本企業が抱える課題の深堀を行うことを目的として、海外M&Aに取り組んでいる又は取り組もうとしている企業を対象とした、双方向での議論を含む国内ワークショップの開催

  • 海外企業・外資系投資ファンドへのヒアリングを通じて、日本への投資における魅力及び課題と、海外M&Aにおける工夫点や事例等を整理

3.報告書概要

海外M&Aにおける日本企業の課題は、グローバルで事業を行うに当たって直面する「グローバル経営力の不足」、「グローバル経営の制度・仕組みの未整備」、そしてM&Aを効果的に実行するための「M&Aプロセス全体を意識した「型」作りの不備」の3つに整理されます。

  1. グローバル経営力の不足
    – 自社の経営理念・ビジョン・強み、M&Aの位置付けを明確に「伝える力」
    -「伝える力」に必要となる「言語力」
    – 買収後の経営を効果的に推進するための「異なる企業文化への適合力」

  2. グローバル経営の制度・仕組みの未整備
    – 説明責任・結果責任を意識したコーポレートガバナンスへの対応
    – インセンティブの仕組みを含むグローバルスタンダードの報酬制度

  3. M&Aプロセス全体を意識した「型」作りの不備
    – M&Aの戦略、実行、PMIの各プロセスにおいて押さえるべきポイントの明確
    – M&Aへの取組にかかわる組織体制

上記の通り、海外M&Aでは、異なる言語・文化・商慣習・制度を有する海外企業を買収し経営管理していく必要があるため、グローバルで共通とされる経営力を備え、かつ、グローバルで多く取り入れられ、当たり前とされている制度や仕組みに対応することが不可欠であり、国内M&Aとは大きく異なる点といえます。また、M&Aを行う際の戦略から検討・実行、買収後の経営管理までの一連のプロセスの型を持っているかという点も問われています。

4.参考

関連資料

担当

貿易経済協力局 投資促進課長 小泉
担当者:金井、仁平、火口、石丸
電話:03-3501-1511(内線 3181)
03-3501-1662(直通)