平成31年3月28日
農林水産省


農林水産省が平成28年度に、しょうゆの製造事業者(過去に自社で製造したアミノ酸液を原料として使用)を対象に、混合醸造方式又は混合方式しょうゆ及び原料アミノ酸液中の3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(3-MCPD)濃度の実態を調査しました。その結果、
(1)混合醸造方式及び混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度の平均値及び中央値は、平成23年度の調査結果と比べて2分の1に低下した
(2)混合醸造方式及び混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度の最大値は、平成23年度の調査結果と比べて2分の1以下に低下した
ことが判明し、これまで製造事業者が実施している低減措置が有効であることが確認されました。
引き続き、製造事業者と連携し、混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中のクロロプロパノール類の低減措置の普及及びその有効性の検証を行います。

1.調査の背景

しょうゆには、もろみ(蒸煮した大豆等にこうじ菌を培養したもの及び食塩水等を添加したもの)を発酵、熟成させて製造するもの(本醸造方式)、もろみにアミノ酸液等を添加して発酵、熟成させたもの(混合醸造方式)、本醸造方式又は混合醸造方式しょうゆにアミノ酸液等を添加したもの(混合方式)があります。 アミノ酸液の原料である植物性たんぱく質を塩酸で加水分解すると、クロロプロパノール類が生成します。代表的なクロロプロパノール類の一つである3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(3-MCPD)を多量に摂り続けると、腎臓に悪影響が出る可能性があります。

農林水産省は、しょうゆの安全性を向上させる措置の必要性やその方法等を検討するため、平成16年度から平成18年度にしょうゆ及びアミノ酸液中のクロロプロパノール類の実態を調査しました。その結果、

(ア)我が国のしょうゆ生産量の8割以上を占める本醸造方式しょうゆは、3-MCPDを定量限界以上に含まないこと
(イ)混合醸造方式又は混合方式しょうゆの9割以上は3-MCPD濃度が低いこと
(ウ)混合醸造方式又は混合方式しょうゆの製造事業者(以下「製造事業者」といいます。)が自ら製造したアミノ酸液(以下「自製アミノ酸液」といいます。)及びそれを使用した混合醸造方式又は混合方式しょうゆの一部には、3-MCPDを高濃度で含むものがあること

がわかりました。
そこで農林水産省は、平成21、23年度に製造事業者による低減措置の効果を検証するために調査をし、3-MCPD濃度が大きく低減したこと、低減措置が有効であったことを確認しました。

2.調査結果の概要

農林水産省は、平成28年度にも平成23年度同様、低減措置の有効性を検証するため、平成18年度の調査時点で自製アミノ酸液を使用していた製造事業者を対象に、混合醸造方式又は混合方式しょうゆ及びアミノ酸液中の3-MCPDの含有実態を調査しました。低減対策の実施状況等について、当該製造事業者にアンケート調査も実施しました。また、大規模に製造・販売されているアミノ酸液についても最新の含有実態を調査しました。

(1)低減対策の実施状況

  • 全ての製造事業者が3-MCPDの低減に取り組んでいました。
  • 主な対策は、自製アミノ酸液製造の停止または自製アミノ酸液の製造工程へのアルカリ処理の導入でした。
  • 今後、さらなる低減対策の導入を予定している製造事業者も一社ありました。

(2)混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度

  • 最小値が0.007 mg/kg、最大値が1.2 mg/kg、平均値が0.22 mg/kg、中央値が0.035 mg/kgでした。
  • 平成18年度と比べて平均値が10分の1、中央値が20分の1以下に、平成23年度と比べても平均値及び中央値が2分の1以下に低下しました。
  • 3-MCPD濃度が1.2 mg/kgを超える製品が、平成18年度では全体の39%、平成23年度では13%ありましたが、今回の調査ではありませんでした。

(3)アミノ酸液中の3-MCPD濃度

(ア)製造事業者のアミノ酸液(自製アミノ酸液を使用、または大規模に製造・販売されているアルカリ処理がされたアミノ酸液を購入して使用)

  • 最小値が0.014 mg/kg、最大値が5.5 mg/kg、平均値が0.64 mg/kg、中央値が0.072 mg/kgでした。
  • 平成23年度の調査時点で、平成18年度と比べて平均値が10分の1以下、中央値が30分の1以下と著しく低下していました。今回の調査でも、同様に低い水準でした。

(イ)大規模に製造・販売されているアルカリ処理がされたアミノ酸液

  • 平成16年度の調査時点で、低い水準(最小値が0.004 mg/kg、最大値が0.14 mg/kg、平均値が0.047 mg/kg、中央値が0.049 mg/kg)でした。
  • 今回の調査でも、最小値が0.018 mg/kg、最大値が0.29 mg/kg、平均値が0.079 mg/kg、中央値が0.063 mg/kgであり、低い水準でした。

(4)混合醸造方式又は混合方式しょうゆに由来する3-MCPDの推計摂取量

平均的な食生活をしている日本人が、しょうゆとして、最大値で3-MCPDを含む製品だけを摂取し続けると仮定した場合でも、3-MCPD摂取量は、国際機関注1が設定した暫定最大耐容一日摂取量(4 μg/kg 体重)注2の約1割と十分低い値でした。

以上のことから、製造事業者が低減対策を実施したことにより、我が国の混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度が大きく低減したこと、農林水産省が策定した低減措置が有効であることが確認されました。

注1 FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)

FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で開催する専門家会合で、FAOとWHOの加盟国及びコーデックス委員会に対する科学的な助言機関として、食品添加物、汚染物質、動物用医薬品などの安全性を評価しています。

注2 ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの量

 

しょうゆ中の3-MCPD濃度の比較

3.今後の対応

今回の調査で、今後さらなる低減対策の導入を予定している製造事業者も一社あることがわかりました。農林水産省は引き続き、平成18年度の調査時点で自製アミノ酸液を使用していた製造事業者を対象に、低減措置の普及及び有効性の検証を5年に一度行います。

参考

平成28年度調味料中の3-MCPD含有実態調査結果の詳細はこちらを御覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/pdf/h28_report.pdf(PDF:549KB)

食品中のクロロプロパノール類に関する情報
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/index.html

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:阪本、福地
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674
FAX番号:03-3597-0329

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