平成31年3月23日、安倍総理は、都内で開催された第5回国際女性会議WAW!/W20に出席しました。

 総理は、開会の挨拶を行い、その後、W20による提言の手交を受けました。

 開会の挨拶で、総理は次のように述べました。

「バチェレ国連人権高等弁務官、ミケティ・アルゼンチン副大統領、そしてマララ女史、御列席の皆様、皆様の参加を得て本日ここに国際女性会議とW20との合同セッションが開催できますことを大変うれしく思います。W20の皆様からはこの後、提言を頂くこととなっておりますが、これまでの精力的な活動に心より感謝申し上げます。本年のG20議長国として、日本はW20の活動の更なる発展のために支援を惜しみません。そのことをまず冒頭申し上げたいと思います。
 日本が主催する国際女性会議は今回で5回目となりますが、初めて春に開催することとしました。その狙い通り、2日前、世界中からお集まりいただく皆さんを歓迎するかのように、我が国の春を象徴する美しい桜の花がここ東京でも開花いたしました。今朝は桜の木々もびっくりするほどの寒さとなり、ここは狙いが大きく外れたのでありますが、日程は調整できても当日の天候まで調整することはさすがにできませんでした。ただ、気温が低くても一旦咲いた花がつぼみに戻ることはありません。このホテルの日本庭園にも桜があるそうですので、是非会議の合間に春の訪れを目だけでも楽しんでいただきたいと思います。
 これから満開の美しい姿に向かって一日一日ダイナミックに変化を遂げていく桜のように、日本は今、全ての女性が輝く社会に向かってものすごいスピードでその景色を一変させようとしています。安倍内閣の6年間で新たに280万人を超える女性が仕事に就く選択をしました。男性の育児参加を強く促す育児休業制度の改革、保育の受け皿も前政権の2.5倍のペースで整備してきました。長時間労働の慣行を断ち切り、ライフスタイルに合わせた多様な働き方ができるよう、労働制度の改革も進めています。こうした結果として、現役世代の女性就業率は6年間で8.9パーセントアップしました。これは他のG20諸国を大きく上回る最大の伸びです。確固たるビジョンと具体的な行動があれば社会は変えることができる。その証だと考えています。
 日本は5年前のブリスベンG20サミットで合意された25by25目標を重視しています。G20諸国がそれそれ男女間の就業率の格差を2025年までに25パーセント減少させる。このビジョンを実現する上でも具体的な行動が必要です。各国におけるコミットメントの実施状況をG20プロセスの中でしっかりとフォローアップしながら、共に目標実現に向かって歩みを進めていく。行動のための枠組づくりに、日本は本年のG20議長国としてW20の皆さんとも連携しながら、リーダーシップを発揮していく。そう決意しています。2025年にはちょうど我が国で万国博覧会が開催されます。未来社会のデザインをテーマとするこの大阪・関西万博にG20の皆さんにも是非お越しいただき、25by25の実現を共に祝福したいと思います。
 日本経済はこの6年間で10パーセント以上成長しましたが、そのメインエンジンはウィメノミクスです。これは単に労働力が増加するという意味ではありません。女性の労働参加にはもっと大きな価値があります。バチェレ国連人権高等弁務官、いや、チリの前大統領とお呼びする方が私たち日本人にはより分かりやすいかもしれません。我が国のパートナーとして、共にTPP11協定の妥結に尽力してくださったことに改めて感謝申し上げます。一昨年の1月、米国の離脱表明によってTPPは一時漂流しました。我が国もすぐには動きを取ることはできませんでした。自戒の念を込めて申し上げれば、突然のショックに対して男たちはしばしば呆然とし、対応が遅れがちです。しかしあなたは違った。チリの呼びかけにより、僅か2か月後には閣僚会合が開かれ、世界で保護主義の懸念が高まる中で、交渉のモメンタムを維持することができました。その後、難航した交渉が僅か1年で妥結できたのもミチェルが一貫して早期合意を目指す努力を示し続けた結果です。女性の皆さんのしなやかなリーダーシップ、粘り強く一致点を見出そうとする姿勢こそが、現在、ややもすると対立点ばかりが強調されがちな世界において、最も求められているものではないでしょうか。そして、男性だけでなく、そうした女性たちの能力もいかすダイバーシティこそが様々な社会問題を解決し、経済を力強い成長へと導く大きな力となるはずです。
 ですから私は6年前、我が国の上場企業に対し、少なくとも1人は女性役員を登用するよう要請しました。しかし、ただお願いするだけでは真の変革は起こせません。W20の皆さんも重視しておられるように、重要なことは変革につながるエコシステムをつくり上げることです。企業の情報開示ルールを変更し、女性役員の数をしっかりと有価証券報告書に記載するよう義務付けました。こうした中で、我が国の上場企業における女性役員は6年間で2.7倍に増えました。さらに昨年はコーポレートガバナンス・コードを改訂し、経営におけるジェンダーを含むダイバーシティの重要性を明記しました。女性役員がいない企業では投資家にその理由を説明する必要が生じます。この変革によって我が国の女性役員の数は更に加速度的に増加するでしょう。その上でこのエコシステムを完成させるためには、手本となるようなロールモデルが欠かせません。ミケティ副大統領、障害者の社会的包摂に向けた長年にわたる御尽力に、心から敬意を表します。御自身が体に障害を持ちながらも、経済学者として、そして政治家として、そして社会課題に取り組むリーダーとして、多方面で活躍されている姿は、次の時代を担う世界中の女性たちに強いインスピレーションを与えてくれることでしょう。この国際女性会議の役割の1つは、1人でも多くのロールモデルとなる女性をお招きし、その姿を世界に発信していくことです。WAW!が世界中の女性たちを常に勇気づける合言葉となるような、そうしたフォーラムに成長するよう今後も一層の努力を重ねていく考えです。
 世界ではいまだ6,000万人を超える子供たちが小学校に通えていません。そして字を読むことすらできない人たちの3分の2が残念ながら女性であると言われています。マララ女史の母国パキスタンに住む女の子ライバもかつてはその一人でした。父親から学校に通うことを禁じられていたそうです。しかし、日本が支援したノンフォーマル小学校に内緒で通うことで教育を受けることができました。ある日その成長ぶりを目の当たりにしたお父さんはライバの通学を許すようになり、今やコミュニティ教育委員会のメンバーとして地域の他の女性たちの学ぶ機会を増やすために奮闘するようになっているといいます。ライバ自身も自分のお母さんやお姉さん、近所の女性たちに字を教え、教育の輪がどんどん広がっています。日本はこれからも途上国における女子教育機会の拡大に大きな役割を果たす考えです。2020年までの3年間で少なくとも400万人に上る途上国の女性たちに質の高い教育、人材育成の機会を提供してまいります。世界人口のレポートによれば、世界中の全ての女の子が、12年間の質の高い教育を受けることができれば女性の生涯収入は合計で最大30兆ドル増加するとされています。教育の充実は単なる社会政策ではありません。持続可能な経済成長への最大の鍵であります。日本は本年のG20大阪サミットで議長国としてこの問題をしっかりと提議していきます。全ての女の子が少なくとも12年間の質の高い教育にアクセスできる。そうした世界を目指すG20としての決意を首脳たちと確認したいと考えています。
 1冊の本、1本のペンがあれば世界は変えることができる。かつてマララ女史が国連で行ったこの歴史的なスピーチに、その魂のこもった言葉の一つ一つに、勇気付けられたのは私だけではなかったと思います。そして1人の女性がいれば世界は変えることができる。そう強く感じたことを今も覚えています。いわんや多くの女性がしっかりと声を上げ、一人一人が行動を起こせば絶対に世界を変えることができる。その思いの下に、翌年我が国はこの国際女性会議を立ち上げました。この会議を通じて、日本はこれからも女性のエンパワーメントへの強い信念を、皆さんと共にしっかりと声にして発信し、そして一人一人の行動につなげていきたいと考えています。一つの声、一つの行動があれば世界は変わることができるのです。これからも共に力を合わせていきましょう。皆様御清聴ありがとうございました。」

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