冒頭発言

(1)フィリピンとの協力覚書の署名

【河野外務大臣】本19日,今年4月の特定技能の制度開始に向けて,我が国関係省庁とフィリピンの労働雇用省との間で,悪質な仲介事業者の排除等を目的とする協力覚書の署名が行われます。我が国は9か国との間で協力覚書の作成に向けた協議を行ってきており,このフィリピンが署名の第1号となります。
この協力覚書によって,悪質な仲介事業者等に関する情報の速やかな共有,制度の適正な運用を阻害する問題を是正するための協議の実施といったことを期待しております。
今月25日には,カンボジアとの間で署名を行うことを予定しているほか,近日中に,ネパール,ミャンマーとの間でも協力覚書の署名・交換を予定しています。その他の国についても,協議がまとまり次第,署名を行っていく予定にしております。

(2)第2回「アメリカで沖縄の未来を考える」(TOFU)プログラム

【河野外務大臣】第2回TOFUプログラム,「アメリカで沖縄の未来を考える(Think of Okinawa’s Future in the United States)」プログラムに参加する沖縄県の高校生・大学生24名を,明日3月20日から27日まで米国に派遣する予定でございます。
 このプログラムは,沖縄の将来を担う若者を米国に派遣し,関係者との意見交換や各種視察を通じて,英語教育の機会を提供することを目的としているほか,語学としての英語力の向上のみならず,参加者が同盟国であるアメリカの今のありのままの姿を直接見ることで,国際社会における日本の役割について視野を広げてもらいたい,より幅広い視点をもって沖縄の未来を考えられる人材に成長できるような訪問としていただきたい,そして,「沖縄の国際化」の一助となることを期待しております。参加者はワシントンD.C.とニューヨークを訪問し,米国の連邦政府機関,あるいは国連本部を訪問する予定になっております。
 たしか去年,私(大臣)も米国で,プログラムの参加者にお目にかかったと思います。

(3)地方創生支援 長崎県知事との共催レセプション

【河野外務大臣】3月25日,「地方創生支援飯倉公館活用対外発信事業」の一環で,長崎県知事との共催レセプションを開催する予定にしております。この対象は,駐日外交団,駐日外国商工会議所,外国プレス等であり,文化・歴史,産業など地方の多様な魅力を内外に発信することを目的としております。長崎県は,昨年の6月でしたか,「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録されたということもありまして,こうした歴史文化を広く紹介するとともに,和牛,水産物,果物などの県産品を広く紹介したいというご意向のようです。

フィリピンとの協力覚書の署名

【読売新聞 梁田記者】冒頭ご説明のあった技能制度の協定にも絡む話ですが,こういった外国人を受け入れるという意味では,日本各地いろいろな自治体で先進事例があって,独自に受け入れに当たっていろいろな実習生を保護するといった協定を国家と結んでいるような例というのもあります。そういった事例を収集して外務省としての政策を練るというのは大切なのかと思うんですけれども,逆に外務省というのはもともとあまり地方への出先機関がないところでなかなか交流が薄いかと思うんですけれども,これから外国人を多く受け入れていくという中で自治体との連携というところで,大臣としてお考えがあれば伺えればと思います。

【河野外務大臣】外務省としては主に相手国との間で様々なやりとりをすることになろうかと思います。現在の技能実習生の制度でも,外国で供託金を取っていたり,あるいは非常に悪質な仲介事業が行われていたりということを,いまベトナムをはじめ,出先の大使館でそれを防ぐべく努力をしているわけでございますので,外務省としては地方自治体云々というよりは,むしろ外国ときちっとこうした問題が起きないような枠組みを作ることに努力してまいりたいと思っております。おそらく国内では入管を中心に様々な省庁が対応することになろうかと思います。

在外公館名称位置給与法

【NHK 小泉記者】本日の衆議院本会議で在外公館名称位置給与法の改正案が通過しました。この法案ではセントクリストファー・ネーヴィスとカーボヴェルデの国名からヴの表記がなくなるということになるかと思います。改めてこの法案の改正に対する受け止めや外交への効果を伺いたいと思います。また,平成15年にも多くの国名が変わっていますけれども,これについても大臣の思い入れが強いようにお聞きしているので,ご自身の経験も踏まえて伺いたいと思います。

【河野外務大臣】かつて外務省はですね,ヨルダンにある大使館をジョルダン,在ジョルダン日本国大使館とか,イギリスにある大使館を在連合王国日本国大使館というような呼び名をしておりました。ノルウェーをノールウェーとかですね,ベトナムをヴィエトナムとかニューヨークをニュー・ヨークとかですね,あまりに一般的な表記と違うものですからたびたび表記の是正を求めておりましたが,当時の外務省は頑として受け付けず,「ジョルダンをヨルダンにしたら外国で日本の旅行者が迷う」みたいなことまで言っておりました。
 私(大臣)が総務大臣政務官になったときに,総務省が定員を担当しておりますので,この名称位置給与法の閣議請議の稟議を否決しました。総務省中の世界地図を見たけれども,ジョルダンなんていう国はなかった。この法案は別表はおかしいと言って否決をしたところ,当時の杉浦外務副大臣が飛んでこられて,「全部直すからなんとか閣議請議させてくれ」ということでしたので,「どうぞ」ということにして,いま中国の大使館にいる四方公使が担当で,全部表記を直してくれました。
 それ以降,国名やらあるいは現地の地名を変えるということがあれば,現地の発音表記に合わせて修正をしてきておりますし,今回のウに濁点のようなあまりなじみのない表記については,なじみやすい表記に変えるということをその後やってまいりまして,今回スワジランドの国名変更と,ウに濁点が国名についている二つの国の表記を改めるということにしたものであります。

新疆テロ対策の白書

【共同通信 斎藤記者】中国におけるウイグル民族の人権問題についてお伺いしたいと思います。中国の国務院弁公室が昨日,新疆ウイグル自治区の反テロ政策という言い方なんですが,これをテーマにした白書を発表しました。この白書では,テロリストと白書が呼ぶ人,約1万3,000人を拘束し,爆発装置2,000個あまりを押収,違法な宗教活動4,800件以上を取り締まったと,このように伝えています。民主主義と思想・言論の自由を重んじる我が国として,中国にこの問題をめぐって懸念を伝える必要があるかどうか,これについて大臣のご見解をお伺いしたいと思います。

【河野外務大臣】テロ対策という観点もあれば,人権侵害と言われている部分もありますので,日本政府としてしっかりと注視していきたいと思っておりますし,必要があれば中国に対して問題提起はしてまいりたいと思います。

ソーシャルメディアの規制

【時事通信 越後記者】ニュージーランドで起きたテロの関係なんですけれども,オーストラリアのモリソン首相が,この事件に関連してソーシャルメディアを使って容疑者が事件の全容を,放映と言うんでしょうか,流したということが問題になっていると,G20でもソーシャルメディアでのこういった事件,犯罪の映像が流れたりしないような形で規制強化を議論してほしいという発言をされているんですけれども,これについて議長国としてどのようにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】モリソン首相の発言を直接,読み聞きしたわけではございませんが,ソーシャルメディアをどのように規制をするかというのは,これは非常に難しい問題だと思いますので,一つの事件があったからと言って国際的にどうこうという事ではないだろうと思っております。ソーシャルメディアによって便利になったところもあれば,難しい状況になった部分というのも当然あるわけですし,フェイクニュースをどうするのか,あるいはフェイクニュースを規制すると言っている国もありますが,それではフェイクニュースかどうかというのはどう判断するのか,様々問題があると思いますので,議論することは必要なのだろうと思います。ただ,一足飛びにこういう方向でという議論になるかどうか,そこは私(大臣)としてはなんとも言えないというふうに思います。

在外公館名称位置給与法

【NHK 小泉記者】先ほどの法改正の関連でもう1点だけお願いします。先ほどのお話に加えて,もう少し,外交の効果というか一般の方への認知の面で一言いただいてもいいでしょうか。

【河野外務大臣】ジョルダン大使館というのは,ヨルダンとは別の国があると思った日本の国民が結構いらっしゃいますし,連合王国ってなんだ,それはUnited Kingdomですと言われれば,ああ,そういうことかと気付いた人はいるかもしれませんけれども,一般に使われている名称と違う名称を使うことが何か国民にとってメリットがあるかと言えば,全くメリットがないわけでありますので,外務省としてはなるべく,分かりやすい一般的に馴染みのある表記に統一すべきだと思っております。これは国名,地名に限らず,実は人の名前も,カショギなのかハーショクジなのか,いろんな議論がございました。なるべく原語に近い発音にするべきだというご意見もあれば,もう,カショギで走っちゃってるから,今更,違うと別な人のようにもとられかねないというご意見もあり,特に人の名前については非常に難しいというのは,その通りでございます。北朝鮮の場合も,北朝鮮は主にハングルですから,どういう漢字を当てるのかというところもあまり統一されなかった人もいらっしゃったようですが,なるべく外務省としては国民の誤解のないように,メディアあるいは様々な出版物その他と合わせて,要するに,これがこの国なんだな,これがこの人名なんだなということが多くの国民の皆様に理解をしていただけるように努力してまいりたいと思います。