平成31年3月7日、安倍総理は、都内で開催された第28回JA(農業協同組合)全国大会に出席しました。

 総理は、挨拶で次のように述べました。

「全国から大変多くの皆様が参加される中で、3年に1度のJA全国大会が開催されましたこと、心からお慶(よろこ)び申し上げます。
 私のふるさとは、山口県の長門(ながと)市というところでございまして、町村合併する前は油谷町と呼ばれていました。さらにその前は、へき村と呼ばれる村でありまして、私の祖父はそこの村長をしておりました。その地域の主たる産業は、当時から今日に至るまで農林水産業であります。山陰でございますから、中山間地域。棚田が広がっております。私もよく地元に総理になる前はよく帰っていたんですが、選挙のときにくまなく街宣車で走ってまいります。この棚田が海に向かってずっと続いていく。この地域に至りますと、うぐいす嬢も思わずその景色に見とれて、私の名前を呼び続けるのを忘れてしまう。これを正に息をのむほど美しいというのではないかと、こう思うわけであります。確かに美しい風景ではございますが、しかしこの美しい棚田を支えていくことは容易なことではないと思います。生産性だけでは割り切れない。しかし、この地域の皆さんが歯を食いしばって棚田を守っていくことによって、水を涵養(かんよう)し、環境を守り、伝統や文化を守ってきた。そして皆さんその誇りと共に生きてきたんだろうと、こう思うところであります。
 正に日本という国は、古(いにしえ)より朝早く起きて、額に汗して田畑を耕し、水を分かち合い、五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈ってきた瑞穂(みずほ)の国であります。皆で助け合いながら、この美しい田園風景を守ってきた。地域を守り、環境を守り、日本の伝統や文化を守ってきた。正に農は国の基(もとい)であります。JAの皆様におかれましては、国民への食糧の安定供給と安全の確保、そして農業の振興に大いに貢献を頂いておりますことに改めて敬意を表する次第であります。
 農は国の基。しかし一方、農業者の平均年齢が66歳を超えるなど、農業をめぐる状況は非常に厳しい。守るためにこそ、新たな挑戦を進めなければなりません。安倍内閣では、こうした状況を正面から受け止め、農業の活性化は待ったなしとの強い危機感の下、米の生産調整の見直し、農地バンクによる農地集積や輸出促進、若者の新規就農の支援など、生産性を向上させ、マーケットを内外に広げる政策を進めてきました。それと同時に、日本型直接支払制度を創設し、中山間地域に対する直接支払など、地域を元気にする政策も展開してまいりました。また農家の皆様が大きな不安を感じておられるTPP(環太平洋パートナーシップ)や、日EU(欧州連合)・EPA(経済連携協定)については、我が国が世界に誇る牛肉など、輸出拡大の重点品目の全てで相手国の関税撤廃を獲得する一方、米や牛肉、豚肉など重要5品目を中心に関税撤廃の例外はしっかり確保し、関税割当やセーフガードなどの処置を確保しました。攻めるべきは攻め、守るべきは守る。6年前、この大会で皆様にお約束したことを守ることができた。私はそう考えております。さらに、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、これまでに累計約1.3兆円の予算を措置しています。産地パワーアップ事業や、畜産クラスター事業といった体質強化策、また、牛・豚マルキンの補填率の引上げといった経営安定対策の充実など、引き続ききめ細やかな対策を講じてまいります。
 安倍内閣では、生産農業所得は3年連続で増加して9,000億円も拡大し、40歳以下の新規就農者も4年連続で2万人を超えています。農林水産物・食品の輸出は6年連続で過去最高を更新し、昨年は9,000億円を超え、輸出目標1兆円ももう手の届くところまでまいりました。こうした成果は、政策だけで得られるものではありません。これまでの間、JAグループの皆様が農家と徹底的に話し合い、従来の取組を柔軟な発想で見直し、実践する自己改革を進めてこられた成果であります。正にこの成果が表れ始めた結果でもあります。農協が先頭に立って、輸出も含めた新たな販路を開拓する。入札によって、肥料や農薬の価格引下げを実現する。農協が出資した農業法人で、新規就農者を育成する。各地の農協で日々続けられているこうした一つ一つの自己改革の積み重ね、それによって農業所得の向上などの具体的な成果となって実を結んでいるものと確信しています。安倍内閣では、若者が夢や希望を持って飛び込んでいける強い農業をつくり、美しく活力ある農村を実現する決意で、この6年間新しい農業を切り拓(ひら)くために充実させてきた政策を、更に力強く展開してまいります。JAグループの皆様におかれましても、自己改革を不断に進めていただき、平成のその先の時代に向かって若者が自らの未来を託すことができる農林水産新時代を、皆様、共に築いていこうではありませんか。
 最後に、今回の全国大会が、JAグループの更なる挑戦を生み出し、自己改革の勢いを加速させる場となることを期待し、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。」

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