平成31年3月15日、安倍総理は、都内で開催されたB20東京サミットの閉会セッションに出席しました。

 総理は、挨拶で次のように述べました。

「本日は、G20大阪サミットの議長として、各国経済界を代表する皆様の前で御挨拶できることを、大変光栄に存じます。
 日本国を代表して皆様の来日を心から歓迎いたします。リーマンショック後の金融危機に対し、国際社会が結束することで世界経済の持続的な成長を確保していく。その決意の下に、主要経済国の首脳たちが一堂に会し、初めてG20サミットが開催されて以来、10年が経ちました。
 この間、定期的に、G20、20か国のリーダーたちが集い、折々の景気の現状について認識を共有しながら様々な課題に共に立ち向かう姿勢を世界に向けて発信する。正に、世界経済の牽引(けんいん)役としてG20は大きな役割を果たしてまいりました。
 足元でも米中の貿易摩擦やブレクジットの行方などにより、世界経済の先行きに対する不透明感が増しています。こうした中で、G20の重要性はますます高まっています。結束こそG20の原点であります。本年の大阪サミットでは、世界経済の持続的な成長に向けた私たちG20の強いコミットメントを改めて確認したいと考えています。
 安倍内閣の下、日本経済はアベノミクス3本の矢の経済政策によって10パーセント以上成長しました。今や、東京だけではなく47全ての都道府県で求人が求職を上回っている、これは日本にとって史上初めての出来事であります。
 この成長軌道をより確かなものとする。そのためには、3本の矢の中でも未来をしっかり見据えた成長戦略こそが何より重要であります。
 人口知能、ロボット、ビッグデータ。世界は今、第4次産業革命の真っただ中にあります。格差の拡大、少子高齢化、気候変動。世界は様々な困難に直面していますが、私たちはこうした革新的なイノベーションを最大限に活用することで、その克服に向けて取り組んでいかなければなりません。
 その先頭に立つべきは、世界のGDPの80パーセント以上を占めるG20、なかんずく経済界のリーダーたち。B20の役割はとても大きなものがあります。
 そうした中で、本日の提言は誠に時宜を得たものであり、共に力を合わせて、Society 5.0という新しい時代を切り拓(ひら)いていきたいと考えています。Society 5.0時代の石油とも呼ぶべきデータについて、プライバシーやセキュリティを適切に保護しつつ国境を越えた自由な流通を確保していかなければなりません。
 先般のダボス会議で私は、data free flow with trustという考え方を提唱しました。国際的なルール作りに向けた、大阪トラックを、本年のG20大阪サミットの機会にスタートさせたいと、考えています。そのことによって、WTO改革に向けた動きに新風を吹き込んでいきたい。自由で公正なルールに基づく貿易体制の更なる進化へとつなげてまいります。
 環境分野への投資を拡大し、環境と成長の好循環をつくり上げることも重要です。世界の英知を結集して、例えば二酸化炭素を資源として、有効利用するようなイノベーションを加速する。そうすれば気候変動問題は大きく解決に向かうでしょう。海で溶けるバイオプラスチックの量産化が成功すれば、プラスチックゴミによる海洋汚染の問題は劇的な改善を遂げるはずです。
 地球規模課題の取組を前進させることも、持続可能な世界の実現に向けた本年のG20のアジェンダであると考えています。こうした世界的な課題を一国のみによって解決することはできない。国際社会の一致した取組が欠かせません。
 他方、現下の国際情勢をめぐっては国際協調の進展に対して多くの悲観論が存在していることも事実です。しかし最後に、フランスの哲学者、アランのこの有名な言葉を紹介して私の挨拶を締めくくりたいと思います。悲観主義は、気分によるものである。楽観主義は、意思によるものである。本年のG20サミットにおいて私たちはきっと様々な課題の解決に向けた方策を見つけることができる。私は、楽観主義者であります。なぜなら、20か国のリーダーたちは世界的な課題の解決に向けた強い意思を共有しているからこそ、このサミットに集うからであります。私も議長として強い意思をもってリーダーシップを発揮していく。各国の違いを強調するのではなく、その共通点を見出すことを通じて、合意を探るべく全力を尽くしてまいります。是非、B20の皆さんにも御協力いただきたいと思います。
 産業界とも力を合わせ、G20大阪サミットを成功させたいと考えています。その明確な意思を最後に皆様の前で明確に申し上げまして私の御挨拶とさせていただきたいと思います。御静聴ありがとうございました。」

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