1. 1 本6日(現地時間同日),ラオス人民民主共和国の首都ビエンチャンにおいて,我が方引原毅駐ラオス大使と,各国際機関代表者との間で,ラオスに対する4件の無償資金協力(合計8.5億円)に関する交換公文の署名及び書簡の交換が行われました。

    2 対象案件の概要は,それぞれ以下のとおりです。
     なお,この協力は,いずれもラオスにおける2018年7月以降の一連の水害で大きな被害を受けた地域の迅速な復旧・復興に貢献するためのものです。

    (1)水害被災地域の学校やコミュニティにおける水・衛生環境改善に資する資機材の供与や研修の実施に対する支援
     (無償資金協力「水害被災地域における学校及びその周辺地域の水と衛生に関する改善計画(UNICEF連携)」)【供与額:2.5億円】

     先般の水害で被害を受けた多くの学校においては,水・衛生関連の設備・物資(例えばトイレや手洗い用水場,石鹸等)が著しく不足しており,復学した児童・生徒の安全且つ衛生的な学習環境の実現に向けた阻害要因になっています。また,これらの設備・資機材の不足により,下痢やコレラ等の学校内感染も危惧されており,こうした疾病が学校を通じて児童・生徒に一斉に広がらないよう速やかな環境改善が望まれています。
     この計画は,このような状況を背景に,甚大な水害被害のあった学校やコミュニティを対象に,児童・生徒のための水・衛生関連の環境改善に必要な設備・物資の供与や,災害対応能力を強化するための研修等を行い,児童・生徒の安全かつ衛生的な学習環境の実現や疾病等蔓延の予防,ひいては迅速な災害からの復興を目指すためのものです。この計画により,約7,500人の児童・生徒が安全な水にアクセス出来るようになることが期待されます。

    (2)水害被災地域の学校における教育・学習環境の改善に資する資機材の供与や研修の実施に対する支援
     (無償資金協力「水害被災地域における学校教育セクターの復旧・復興支援計画(UNICEF連携)」)【供与額:2.5億円】

     先般の水害で影響を受けた多くの学校においては,教科書や関連教材・教育指導書などの教具も深刻な被害を受け,必要な教材が依然として不足しています。また,未曾有の水害に襲われた地域の児童・生徒の心理的なケア(トラウマケア)や,将来の類似の災害への備えに係る研修についてもニーズが高くなっています。
     この計画は,このような状況を背景に,甚大な水害被害のあった地域の学校を対象に,学校教育の復旧・回復を行うために必要な資機材や物資(教科書,学用品,教師用指導書等)の供与や児童・生徒に対する心理ケアなどの研修等を行い,被災地の学校教育環境の改善,ひいては迅速な災害からの復興を目指すためのものです。この計画により,約18,800人の児童・生徒に学用品の配布などがなされることが期待されます。

    (3)水害被災地域の農村やコミュニティにおける農業・生計回復に資する資機材の供与や研修の実施に対する支援
     (無償資金協力「水害被災地域における農業セクターの復旧・復興支援計画(FAO連携)」)【供与額:1.0億円】

     ラオスにおいては,農林水産業はGDPの約25%,就労人口約70%を占める主要産業ですが,先般の水害において,全国において90,000haの水田と11,000haの農地が破壊されました。こうした水田・農地の荒廃により,災害後,一部の県では食料品の価格も30%~50%ほど高騰しています。また,水田・農地の荒廃は,ペストや各種感染症の遠因にもなっていることから,これらの早急な復旧・復興は,被害を受けた農民の生計回復や被災地における病気の予防に加え,ラオス全土への安定的な食糧供給の観点からも喫緊の課題となっています。
     この計画は,このような状況を背景に,被災農家の水田・農地の緊急の回復を行うために必要な資機材や物資(種苗,家畜,農機具等)の供与や研修等を行い,被災地の農業基盤の復旧,ひいては迅速な災害からの復興を目指すためのものです。この計画により,約4,000世帯の農地や農民の生計の回復に貢献することが期待されます。

    (4)水害被災地域のコミュニティにおける住宅の再建に資する資機材の供与や研修の実施に対する支援
     (無償資金協力「水害被災地域における住宅セクターの復旧・復興支援計画(UN連携/UN-Habitat実施)」)【供与額:2.5億円】

     先般の水害は,被災地域の住宅にも深刻な被害を与えました。被災者の中には,依然として被災キャンプや遠方の親戚宅,一部の仮設住宅などで不便な生活を強いられている人も多く,早急な住宅の復興が望まれています。また,住居そのもののみならず,水害被害により復旧・復興のために必要な資機材や日用品等(特に住居等の修理に必要な工具等)までも流されており,こうした物資も引き続き現地で不足しています。
     この計画は,このような状況を背景に,甚大な水害被害のあった地域を中心に,被災地の住宅再建に資する資機材や日用品などの供与や,災害に強い住環境作りに向けた研修の実施等を行い,被災したコミュニティの住環境の改善,ひいては迅速な災害からの復興を目指すためのものです。この計画により,約6,000世帯の住宅再建等に寄与することが期待されます。

    3 この4件の協力は,a target=”_blank” href=”https://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/la/page4_004403.html”>2018年10月の日・ラオス首脳会談における,安倍総理大臣からの「被災地の復興に向け,協力していきたい」という表明を具現化する取組の一環です。

    [参考]ラオス人民民主共和国基礎データ
     ラオス人民民主共和国は,面積約24万平方キロメートル,人口約649万人(2015年,ラオス統計局),一人当たり国民総所得(GNI)は2,270ドル(2017年,世界銀行)。