2019年2月27日

企業の産業保安や製品安全に関する取組について、積極的な情報開示を促進し、投資家や金融機関等による適切な評価を可能とすることで、保安力に応じた企業価値の向上を実現していくため、今般、企業における安全に関する情報開示を促進する際の手引きとなる「産業保安及び製品安全における統合的開示ガイダンス」をとりまとめました。

1.背景

昨今、高齢化や人手不足等の社会構造の変化や、海外生産比率の増加等の産業構造の変化により、日本では当たり前の事と捉えられがちなプラントにおける保安・保全、労働安全及び製品安全が脅かされています。また、SDGs等の世界的な流れにおいても、安全性の強化が持続的成長の一要素として掲げられており、より一層安全に対する社会的な意識が高まっています。

こうした中、一般の市民に対するアカウンタビリティの社会的要請からだけではなく、投資家に対しても安全に関する情報開示を積極的に発信していく意義があります。また、投資家は事故が投資先の企業価値減少につながることからも、企業の安全に関する情報に対する関心を有するにもかかわらず、現状では投資家が目を通す統合報告書において、安全に関する情報開示が十分になされていません。

そのため、企業における安全に関する情報開示を促進するべく、研究者・機関投資家等からなる研究会による議論を経て、「産業保安及び製品安全における統合的開示ガイダンス」をとりまとめました。

本ガイダンスは2017年5月に策定された「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」を基に、「安全」というテーマにフォーカスし、「価値観、ビジネスモデル、持続可能性・成長性、戦略、成果と重要な指標(KPI)、ガバナンス等を一貫したストーリーで企業の価値創造を構想する」という考え方に基づいた「統合的思考」に焦点を当てています。

企業は統合的思考に基づく情報開示(統合的開示)により、統合報告書を介した投資家との対話を通じて投資家の適切な評価を受けることで、安全に関する取組が企業価値の向上につながっていくという好循環が生まれることが期待されます。

2.ガイダンスの概要

第I章では、本ガイダンスにおける重要な考え方となっている「統合的思考」に対する理解の深化を図るべく、統合的思考に基づく情報開示(統合的開示)が特に出来ていると評価された企業2社を取り上げ、具体的事例について説明しています。

その上で、第II章では価値協創ガイダンスに基づく項目(価値観、ビジネスモデル、持続可能性・成長性、戦略、成果と重要な成果指標(KPI)、ガバナンス)について、安全にフォーカスしその考え方を解説しています。

3.今後の方向性

本ガイダンスは企業の安全に関する情報開示や、それに基づく投資家との対話を通じた適切な評価による企業価値の向上、もって社会の安全性の向上を実現するための第1歩です。

企業においては、安全に関する取組を情報開示する際の手引きとして本ガイダンスを活用するとともに、投資家との対話を通じて、経営者が企業価値の創造のあり方を改めて見つめ直し、更なる行動に結びつけていくことが期待されます。

投資家においては、中長期的な観点から企業を評価する際の参考情報として本ガイダンスを活用いただくとともに、安全に関する情報が一方的に開示・説明されるのを待つのではなく、情報・認識のギャップを埋めていくために、本ガイダンスを参照しつつ企業と主体的に対話し、投資判断等に有用な情報の開示を働きかけることが期待されます。

当省においても、本ガイダンスの活用状況等も踏まえ内容の改良を引き続き行っていくとともに、企業の情報開示が促進されるような仕組み作りについても検討してまいります。

関連資料

担当

産業保安グループ 保安課長 後藤
製品安全課長 原
担当者:高橋、小町
電 話:03-3501-1511(内線4941~3)
03-3501-8628(直通)