冒頭発言

(1)河野大臣のモロッコ,チュニジア,アルジェリア訪問

【河野外務大臣】12月23日から29日まで,モロッコ,チュニジア及びアルジェリアを訪問いたします。
 就任後,北アフリカへの訪問は初めてとなりますが,3か国はアラブの春を乗り越え,一定の安定を実現した地域であります。地理的な優位性あるいは若い労働力が豊富にあるということ,また,アフリカへのゲートウェイという観点から,日本企業にとっても大変高いポテンシャルがある地域だと考えております。
 日本の外務大臣が3か国を同時に訪問するのは初めてでありますので,地域全体に対して少し日本の外交を展開できるようなことを考えたいと思っております。特にモロッコは,最後にバイの文脈で日本の外務大臣が訪問したのは,倉成外務大臣以来,31年ぶりということになります。
 これまで中東・アラブに関しては,「河野四箇条」に基づいて具体的な協力の実施といったことをやってまいりましたので,それを確認し,それぞれの国の安定に向けて,様々な日本が支援ができること,あるいは日本企業の活動の促進のための環境整備といったことを強化してまいりたいと思っております。
 また,来年のTICAD7,横浜で開催しますが,3か国にもこのTICAD7の成功に向けていろいろな連携をしてまいりたいと思っております。

(2)第5回・国際女性会議(WAW!)の開催

【河野外務大臣】来年3月23日及び24日の土日に,第5回・国際女性会議(WAW!)を東京で開催いたします。安倍政権の最重要課題の一つである「女性が輝く社会」を国内外で実現するために,2014年から開催している会議でございます。
 この第5回の会議では,技術革新,教育と人材育成,地方活性化,メディア,平和・安全保障,女性と起業,企業におけるダイバーシティ,あるいは無償労働の再分配等といった幅広い切り口での議論を考えております。プログラムを外務省のホームページで公開しておりますので,是非,ご覧をいただきたいと思っております。
 また,G20に女性の経済的活躍という視点から,提言を行なうことになっている民間主導のグループの「W20」と同時に開催をしたいと思っておりまして,WAW!とW20を同時に開催することによって,日本の関連する取組を世界に広く発信をしていきたいと思っております。
 この第5回の会議は,誰でも無料で一般聴衆者として参加できるようにしたいと思っております。参加者の募集は1月早々にも開始予定でございます。外務省のホームページ,その他で随時情報発信していきたいと思っております。また,この会合には,女性の外務大臣8名が,既に参加という意思表示をしてくださっております。

日韓関係(金杉アジア大洋州局長の韓国出張)

【NHK 奥住記者】韓国の関連で2点お伺いします。今日,金杉局長の韓国訪問が発表されました。徴用をめぐる判決後初めてとなる日韓の局長級の協議が開かれることになりますけれども,期待することをお願いします。それと,徴用をめぐる問題で,韓国人やその遺族ら1000人あまりが韓国政府を相手取って,補償を求める訴えをソウルで起こしましたけれども,これについて受け止めがあればお願いします。

【河野外務大臣】金杉局長は,在韓国の日本の大使館,あるいは総領事館等の公館の会議に出席してもらうことになっております。また,先方,韓国側とも様々意見交換をすることになっておりますので,非常に難しい問題もありますが,現在の日韓関係について,しっかりと意見交換をしてもらいたいとお願いをしているところでございます。
 韓国側での様々訴訟の話はございますが,日本側の立場はこれまでも政府として明確にしておりますし,その旨韓国側にはお伝えをしてございます。韓国側が李洛淵(イ・ナギョン)総理を中心に,対応を検討してくださっているわけでございますので,しっかりとした対応が行なわれることを期待したいと思います。

来年度外務省予算

【時事通信 越後記者】予算について伺います。本日閣議決定されました19年度の予算案で,大臣の出張費としてチャーター機などの費用には,4億2000万円計上されましたけれども,概算からすると削られたという形にはなりますが,今年度の6倍に相当する額になります。この感想をお聞かせください。

【河野外務大臣】来年のTICADですとか,あるいは太平洋の島嶼国を始め,なかなか訪問をするときに,商用機で連携がうまくいかない地域がまだ残っております。そういう所をしっかり訪問するために,チャーター機の予算をお願いしたところでありますので,来年もしっかりと日本外交に務めてまいりたいと思っているところでございます。

【時事通信 越後記者】大臣は,これまで外相専用機というものを要望されてきましたけれども,これに関しては今後も取得を求めていくお考えでしょうか。

【河野外務大臣】様々な保秘の観点から,あるいは効率的,効果的な出張の観点から,閣僚の専用機というのがあってもいいかと思います。現在の政府専用機は非常に大型でございますので,もう少しコストがかからずに出張ができるような,閣僚の専用機というのがあってもいいかと思いますので,これについては引き続き,財務当局と様々やり取りをしていきたいと思います。

マティス国防長官の辞任

【朝日新聞 清宮記者】2点お伺いしたいんですが,1点目は,米国のマティス国防長官の辞任が発表されましたが,日本としても同盟関係で重要視してきた相手だと思うんですが,受け止めをお願いします。関連も少しするんですが,その背景に米国のシリアからの米軍の撤退があるとも言われておりますが,この件については中東の不安定化が指摘されていますが,受け止めをお願いします。

【河野外務大臣】マティス長官とは「2+2」を始め,国防総省を訪問し,意見交換もじっくりやらせていただいたこともございますし,つい最近は,マナーマ対話の折に意見交換をさせていただきました。大変真摯な方で,私も尊敬申し上げておりましたし,日米関係について,北朝鮮問題のような当面直面する課題,そして長期的な課題についても意見交換を始めさせていただいていたところで,これからいろいろ議論をしていきたい,意見交換を続けていきたいと思っておりましたので,突然のこういう形でのアナウンスに驚いております。まだ,後任がどなたになるか承知をしておりませんけれども,長官のような方がなかなかそう簡単に後任,探せるかどうか分かりませんが,後任の方ともこうしたいい議論を続けさせていただきたいと思っております。
 また,中東は全域にわたって,やや不安定な状況が続いているところでありますので,日米を始め,様々な政府と意見交換をしっかりとしながら連携をしてまいりたいと思っておりますし,シリアにおいては,全ての支援を必要とするシリア国民に日本としては支援を継続できるような努力を続けてまいりたいと思っております。

今年の漢字

【日経新聞 林記者】年末ということで伺いたいんですけれども,大臣の今年一年の漢字を教えていただきたいのと,その意味についても教えてください。

【河野外務大臣】漢字は,この間の記者クラブで書きましたが「飛」という字を書きました。日本から海外に出張する場合には船というのはあまりないものですから,今年はたくさん飛んだなという気がしておりますし,飛行機の中でしっかり寝られるようになりましたし,来年もきちんと日本外交を展開してまいりたいと,そういう意味で,今年は「飛」というふうにさせていただきました。

日韓関係(旧朝鮮半島出身労働者関連)

【東亜日報 金記者】韓国の徴用工弁護士の団体から,来週24日11時までに新日鉄から答えが出なければ,韓国で財産を差し押さえる動きがあるかもしれませんが,これに対する日本側の措置は何があるかお伺いします。

【河野外務大臣】韓国側で李洛淵総理を中心に,この問題についてしっかりと検討をしていただいていると認識をしておりますので,この問題について日本側の企業が,不当に不利益を被ることはないと信じております。

中国を拠点とするサイバー攻撃グループAPT10

【共同通信 福田記者】アメリカの司法省が,中国国家安全部と繋がりが指摘されるハッカー集団,APT10のメンバー二人を起訴しました。中国は反発しています。日本も標的になっているということですが,受け止めをお願いします。

【河野外務大臣】サイバー空間であっても国際法がきちんと適用され,国際秩序が維持されるというのが大事だと思います。このAPT10と言われるグループが中国を拠点として,日本にもかなり広範囲に,なおかつ長期にわたる攻撃をしているということを確認しておりますので,こうした行為は断固非難したいと思いますし,ルールに基づく秩序をサイバー空間でも維持するという断固たる決意には,日本としてもそれを強く支持していきたいと思っております。

日韓関係(日韓合意)

【産経新聞 力武記者】今月の28日で日韓合意から丸3年ということになるんですけれども,その日韓合意を巡っては,「和解・癒やし財団」が先月,解散を発表されたりして骨抜きされたような状態になっていますが,このところのいわゆる徴用工判決を含めて日韓関係というのはだいぶ悪化しているように思いますけれども,今の日韓関係についてのご認識と,今後,日韓関係はどのように改善していきたいかというお考えについてお聞かせください。

【河野外務大臣】この日韓合意は,国際社会からも高く評価されているものであります。日本としては,この日韓合意による義務は忠実に果たしてまいりましたので,韓国に対してこの日韓合意をしっかりと履行していただくように,引き続き求めていきたいと思っております。
 今年は金大中(キム・デジュン)・小渕パートナーシップ宣言20周年という節目の年でありましたので,康京和(カン・ギョンファ)長官ともずいぶん長い間,日韓関係を未来志向で築いていこうという話をしてまいりましたし,具体的にタスクフォースや有識者会議を立ち上げて色んな方に議論をしていただき,提言をしっかりとまとめていただきました。タスクフォースと有識者会議の両側のメンバーにそれぞれ会って,議論していただくというところまでやったわけでございますが,残念ながらその後,難しい問題が発生をしたことによって,ここのところが少し停滞をしているのは極めて残念と言わざるを得ません。
 しかし,国民の間での交流というのは非常に強くなってきていると思います。両国を行き来する国民の数は増えてきておりますので,このモメンタムは失ってはいけないと思っております。政府間で非常に難しい問題はありますけれども,国民の交流,あるいは自治体の交流,スポーツや文化の交流といったものはしっかりと続けていくべきだと思いますので,是非,そうした交流は続けていただきたい。来年はちょっと節目の年の次の年になりますけれども,未来志向の日韓関係を築くことができるように,そういう環境になったらいいなというふうに思っております。

日米地位協定及びシリア情勢

【毎日新聞 秋山記者】2点伺います。一つは日米地位協定の運用に関してなんですけれども,日米合同委員会で米軍の施設区域の仕様についてはそれぞれ議論されて,合意されたものについては出されていますけれども,なかなか日米合同委員会の中の議論というのは我々,分からないんですけれども,実際の運用上,米側から求めがあったとしても,日本側の意見というか日本側の事情としてそれを受け入れられないということがあれば,それはすなわちそれは日本としてきっちりそこは歯止めがかけられるような運用になっているのでしょうか,というのが一つと,あともう1点,全く別件なんですけれども,先ほどのシリア情勢に関連して,米軍が引くことによってまた力の空白が生まれて,今もう既に様々いろんな動きが出ていますけれども,シリア情勢を概況すると,かなりアサド政権が人口の集中しているエリアは押さえていると,この状況下で今後,日本として,今大使はいらっしゃいませんけれども,アサド政権との外交関係というのはどのようにしていくおつもりでしょうか。

【河野外務大臣】地位協定に基づく合同委員会,様々な議論が行われております。当然,日本として日米同盟に寄与することはしっかりやりますし,日本政府として,それは残念ながらできないということは残念ながらできないということになります。合同委員会の議論について,これはなるべく出せるものはしっかり出して説明をしていくようにしたいとは思っておりますが,なかなか外へ出せないものもありますので,そういうことについて情報公開のやり方というのは,これからもしっかり考えていかなければならないと思っております。
 シリア情勢についてなかなか予断をもって申し上げるのは難しい状況でございますが,米国のこの状況は,シリア情勢にも当然に影響が出てくることになるのではないかと思います。このシリアをどういうふうな国にしていくのか,国造りにしていくのか,様々なプロセスで議論が始まっておりますので,その議論がどこまで進むか日本としては見極めていきたいと思っております。
 日本もシリアの難民の中から,日本の大学院などで勉強して将来の国造りに役立ちたいという方を受け入れを始めておりますし,様々な形でシリアに対する支援をしてきておりますので,このシリアの状況についても,中東政策の中でどうしていくのか真剣に考えていく必要があると思っております。日本として明確な方針が決まれば,それはなるべく早くアナウンスしたいと思います。