2018年12月17日

製品データ(CAD, CAM, CAE等のデジタル・データ)は、自動車、航空、電気・電子産業等製造業での製品開発において、不可欠な道具になっています。製品形状等の製品データは、データ作成後にデータ変換が行われながら様々なITシステムで利用されます。このため、データ変換によって生じる新たなデータには、信頼できるデータであるかの確認(同一性検証)が必要になります。
ISO 10303-62:(製品データの同一性検証規格)は、製品開発工程のどの段階でも安心して製品データを使用できるための、データの信頼性保証の中核機能として、日本が提案して開発された規格です。本規格はあらゆるデータがつながる、Connected Industries の技術基盤としてデジタル・データの普及に貢献することが期待されます。

1.背景

製品データはCAD等のシステムを用いて設計された後、製品ライフサイクルの中で解析評価といった個々の工程で最適と判断されたITシステムに利用されます。他のITシステムに渡る際には、多くの場合、データ変換が必要になりますが、その結果、製品形状、寸法等の実数データには微小なデータの変化が生じてしまいます。

この変化が、渡った先で実行しようとしている応用機能に支障がないか、つまり、データが依然として高い信頼性で使用できるかの確認・保証は、製品開発において非常に重要です。


(出典:一般社団法人日本自動車工業会資料)

この規格は、この分野での豊富な知見をもつ日本人技術者に加え、海外航空機メーカー、デジタル・データ分野等の代表的技術者で構成された国際チームで開発されました。また、規格提案時に、どのような世界を構築したいかをあらかじめ主要関係国に説明・合意形成を行ったことから、規格発行のための投票では全参加国が賛成票を投じ、短期間で規格を発行することができました。

2.規格の概要

この規格には、2つの製品モデルデータの同一性をチェックするための豊富な機能が設定されています。ユーザは同一性検証の対象モデルに合せて適切な機能を選ぶとともに、合否判定(同一性判定)のしきい値や要求計算精度等を入力して、この規格を実装したITツールに判定させます。判定の結果は、規格に用意されている結果出力機能の中から、同一性の満足の有無、データのどこに致命的な非同一性があるか等の詳細情報等を適切に選択して得ることができます。

この規格では、製造業で特に使用頻度の高い形状データ、個々の部品データを組み立てたアセンブリ・データ、PMI(製品製造情報)のデータを対象として、市場の要求に応じて順次対象データを最小コストで追加することができるような規格の構成にしました。

3.規格の活用

製品開発において、2つの製品データが許容誤差内で同一か否かを確認したい場面は多々あると考えられます。

例(1) 長期保存されていたデータが意図したデータと同じかを確認したい
例(2) 設計変更前後のデータを比較して、設計変更箇所を知りたい
例(3) CADシステムのバージョンアップの前後で同じはずのデータの同一性を確認したい

この規格では、こうした実務の種々な場面で効果を発揮することが期待でき、既に発刊しているISO 10303-59:(製品形状の品質規格、日本提案)とあわせて、製品データの信頼性検証に関する規格としての車の両輪が整備されたことになります。

これらの規格は、自動車、航空共通の製品モデルデータ規格(ISO 10303-242)で採用され、精度が要求されコストの高い重要部品の開発の際に、開発期間の短縮、製品の差別化・優位性の維持等に資するとともに、今後のデジタル・データの普及に一層貢献することが期待されます。

担当

産業技術環境局 国際標準課長 藤代
担当者:岡本、田中
電話:03-3501-1511(内線 3426~7)
03-3501-9277(直通)