平成30年12月11日(火曜日)
10時43分~10時56分
於:記者会見室

冒頭発言

今日は私の方からは特にございません。

質疑応答

産業革新投資機構

Q:1点、産業革新投資機構について、新たな経営体制については、今後JIC連絡室を中心に検討していかれると思いますが、新社長を含めた新たな人選、人事、大臣としては、どういったことを考慮する必要があるか、お考えをお聞かせください。

A:まだ日本にはアメリカのように、リスクマネーを潤沢に供給するという仕組みができていないという中で、JICのような官民ファンドの役割というのは、引き続きあるというふうに認識をしております。
ただ、今回JICを立ち上げるに当たっては、例えばガバナンスについては、個々の企業への投資について、一々口を挟まずに、国が大きな方向性を示す、あるいは報酬については、グローバル人材をしっかりと集められる水準で、かつ、国民の納得を得られるようにという形で、大まかに方針を決めて、立ち上げていたわけですけれども、今回の事態のように、取締役側となかなか溝が埋まらなかったということが発生したわけであります。過去のことを振り返るのではなくて、できるだけ早く体制を立て直したいというふうに思います。
ある意味、今回の事態というのは、我々にとっては、この官民ファンドのあるべきストラクチャーをきっちりと再構築をするチャンスだというふうにも捉えております。ガバナンスの面、報酬の面、しっかりと後になって問題が出るようなことがないように、精緻に専門家の意見も聞きながら、設計をしていきたいというふうに思っております。
ある意味、他の官民ファンドのロールモデルになるようなストラクチャーをしっかりと構築をしていきたいというふうに思っております。

Q:専門家の意見というのは、これは第三者委員会ということですか。

A:第三者諮問委員会という形にしたいと思っておりますが、ともかく実際に投資の分野で活動をしてきた知見のある方の意見をしっかり聞きながら、JICの体制というもの、特にガバナンスと報酬というところを、もう一度精緻に設計をし直したいというふうに思っております。

USTRの公聴会

Q:少し話題は変わるのですけれども、USTRが米東部時間の10日に、来る対日貿易協定交渉に関する公聴会を開きました。その中で、ステークホルダーが自動車分野については対米輸出制限を求めたり、また自動車の関連団体からは為替条項を求める声がありました。
こうした要求というのは、今月中にもUSTRがまとめる交渉目的通知に反映される見通しですが、今後、日米の貿易協定交渉開始に向け、どのように御覧になっていますか。公聴会の話です。

A:公聴会において、そういう意見が出ているということは、承知をしているところであります。ただ、まだ日米の交渉は開始をされてないわけでありますので、結果を予断することは差し控えたいと思いますが、いずれにしても今後、日米の貿易投資を拡大するような、建設的な議論が日米交渉で行われることを期待したいというふうに思っています。

産業投資革新機構

Q:JICの話に戻らせていただいて、当初、交渉をされていた糟谷官房長ですけれども、普通民間の感覚で言うと、そういう対立のきっかけになった当事者というのは、出直すときには、別の人間に替えて出直すというのが普通よくあることだと思うのですけれども、その人がまた連絡室のトップをやるというのは、なかなか見られないことだと思うのですが、これはどういう考えでこうなったのでしょうか。

A:紙を出したという経緯については、いろいろな考え方、言い分も関係者にはあろうかと思いますけれども、これについては、私と事務次官が処分、あるいは給与の自主返納という形で、これは一つのけじめをつけたというふうに考えております。お詫びもしているわけであります。私も経済産業省を代表して、そのことについてはお詫びを申し上げているわけであります。
一方で、JIC連絡室長に任命をした糟谷官房長は、これは経済産業政策局長時代から、この官民ファンドに関して取り組んできていて、深い知見を持っているわけであります。今回のこのJIC立ち上げの根拠法についても、彼が一から作ってきたわけであります。今回、官房長の身分はしっかりと保ったまま、新たな体制の立ち上げに専念をさせたいというふうに思っています。
紙を出した当人であるからこそ、この事態の収拾にきちっと責任を持って当たらせるということが重要だというふうに考えています。

日立の英国原発建設

Q:別な話なのですけれども、昨日、日立が原発の撤退を検討する報道があって、日立の株価が非常に上がったということがありまして、投資家は原発撤退というのがこの会社にとって得であるというふうに見ているのではないかと思うのですけれども、大臣のお考えをお伺いできますでしょうか。

A:まず、報道されているような事実自体、全く承知をしておりません。個社の株価については、いろいろなファクターで上下するものでありますので、コメントは控えたいと思います。

中国の鉄・アルミ生産

Q:中国についてなのですけれども、貿易戦争の一つの原因は中国の過剰な鉄、アルミの生産があると言われておりますけれども、中国はそれを十分意識して対応してきているとは思いますが、大臣はどう評価されていらっしゃいますか。

A:世界の粗鋼生産の半分を占める中国の鉄鋼生産能力の削減というものは、非常に重要であります。今、現状において、この削減は一定程度進展をしているというふうに認識をしています。
一方で、まだ過剰生産能力の問題が完全に解決されたわけではないというふうに思っています。中国を含む世界全体で更なる削減に向けた継続的な取組が必要だと考えています。
日本は、今月からまさにこの問題を話し合う鉄鋼グローバルフォーラムの議長国になるわけであります。議長国として、パリ閣僚会合の合意に基づいて、各国の鉄鋼生産能力の詳細データや政府の支援策について、メンバー国相互のレビューを通じて実態を解明して、各国に行動を促していきたいというふうに思っています。
まさにそのために、今日から13日まで、事務レベル会合を東京において主催することになっております。

産業投資革新機構

Q:またJIC関連なのですけれども、先週大臣は会見でも御発言をされておりましたが、今回辞任に至ったことを受けて、その後、来年度の概算要求などで、その取下げなど、新たに決まったことがあればお聞かせください。

A:現経営陣が辞任表明をしたということで、当面この予算要求の時期に現実問題としてマネジメント機能が実質的に不在になる。そういうことが昨日、明らかになったわけでありますので、来年度の1,600億円の財投要求については、これは全額要求取下げを行わざるを得ないというふうに考えております。
ただ、そもそも今回の財投要求は、JICの資本の厚みを増すことを目的としたものであります。この点JICは、今年9月の法人発足時にINCJから全ての資産を継承しておりまして、現預金1,604億円程度も引き継がれているわけであります。この資金や、あるいは政府保証借り入れということによって、当面の投資事業は十分行うことができると考えています。
また、JICの100%子会社でありますINCJについては、これらの資金から借り入れを行って、これは期限としては来年3月までということになりますが、ベンチャー投資などの事業活動が可能ということになっているわけであります。
いずれにしても、糟谷室長のもとでJICの再立ち上げをできるだけ早く、来年春までにもしっかりと立ち上げて、今後の活動に支障がないように努めていきたいというふうに思いますし、その時点で何らかの必要が出れば、予算上の対応も改めて考えていきたいというふうに思っています。
いずれにしても、経営陣が実質的に不在というこの12月の中に、新たな予算要求というのは、ふさわしくないというふうに考えておりますので、今回は取り下げさせていただきたいと思っています。

Q:機構の関係のですけれども、3点簡単にコメントいただきたく思うのですが、今後のコンセプトなのですけれども、田中さんが昨日の会見で言いたかったことは、新産業の育成とリターンの最大化というのは、かなりナローパスであるというふうに彼は言いたかったのだと思うのですが、どういうふうなピクチャーを描いていくのかというのを大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
それと、二つ目は後任人事なのですけれども、民間なのか、あるいは役所のOBの方なのか、具体的にというわけではないのですが、ざっくりとどういう人物が望ましいのかというふうにお考えなのか。
それから、認可済みの1号ファンドの件なのですけれども、2,200億円認可済みだと思うのですが、昨日田中さんは会見で清算するというふうにおっしゃったのですけれども、何か報告はありましたか。

A:まず、新産業の育成とリターンの最大化のバランスというのは、これはJICだけではなくて、官民ファンド全体に共通する大きな課題だというふうに思っています。
私は、基本的には官民ファンドの性格というのは、政策面の目標をしっかりと貫徹をするということが重要だと思っています。リターンについては、これはリターンが常に最大であれば、今度は逆に民業圧迫という問題も出てくるわけであります。リターンはある程度国民の資産を棄損をしないというレベルを維持をしながら、政策目標をしっかりと実現をしていくということが重要だと思っています。
いずれにしても、有識者としっかり議論して、今度はボタンの掛け違いが起こらないように、どういう姿を目指すかということについては、精緻に議論をしていきたいというふうに思っています。
人事についてでありますけれども、既に現役出向という形で、経済産業省、財務省からは出向している取締役がいるわけでありますから、政府との調和、コーディネーションという意味では、この人物が十分役割を果たすというふうに思っていますので、人事については、基本は民間でこの投資分野で経験のある方ということが大原則になろうかというふうに思っておりますし、これから有識者との間でしっかりと議論をするガバナンスの在り方、報酬の在り方について、十分納得をして引き受けていただく方ということが前提になろうかというふうに思っています。
1号ファンドについては、これから糟谷室長を中心に、JIC側としっかり話し合いをしますけれども、どうしても辞任を表明されている取締役のネットワークと関係してきているという面もありますので、そういったことを踏まえながら考えていきたいというふうに思っています。

Q:JICの関連で、社外取締役の皆さんが文書を発表して、その中でゾンビ救済機関に変質するのではないかという懸念があると言っていました。こうした懸念に関しては、そういう心配はないとおっしゃられますか。

A:ゾンビ救済機関になることはないと思っています。もともとこれは私も国会答弁等で言ってきているように、この会社に投資しろとかするなということを言うつもりは全くなかったのです。今回、溝が埋まらなかったのは、まさに孫ファンドみたいなものを作って、国の目が届かないような投資があっていいのかどうかというところの溝が埋まらなかったということでありますので、それは個社へ向けての投資に一々政府が指図をするということとは、全く違うわけであります。

以上

最終更新日:2018年12月11日