平成23年3月11日
平成22年における「人権侵犯事件」の状況について(概要)
~人権侵害に対する法務省の人権擁護機関の取組~

○新規救済手続開始件数 21,696件 (対前年比2.3%増加)
○処理件数           21,500件 (対前年比0.9%増加)

【新規救済手続開始件数からみた特徴】
(1) 学校におけるいじめに関する人権侵犯事件の増加
               2,714件(対前年比51.9%増加) 
(2) 児童に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件の増加
                 771件(対前年比 6.3%増加) 
(3) 教職員による人権侵犯事件の増加
               1,159件(対前年比21.6%増加) 
(4) 社会福祉施設における人権侵犯事件の増加
                 193件(対前年比26.1%増加)

 法務省の人権擁護機関(以下「人権擁護機関」という。)は,人権侵犯事件調査処理規程(平成16年法務省訓令第2号,以下「処理規程」という。)に基づき,人権侵害を受けた者からの申告等を端緒に人権侵害による被害の救済に努めている。
 平成22年(暦年)における人権侵犯事件の取組状況は,以下のとおりである。

1 人権侵犯事件数(開始件数・処理件数)の動向

(1) 開始件数(図1
 新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数は21,696件であり,対前年比で478件(2.3%)増加した。
(内訳)
◆ 公務員・教育職員等による人権侵犯事件数が4,739件(対前年比1,227件 (34.9%)増加)
◆ 私人間の人権侵犯事件数が16,957件(対前年比749件(4.2%)減少)

(2) 処理件数(図2
 処理した人権侵犯事件数は21,500件であり,対前年比で191件(0.9%)増加した。
(内訳) 
◆ 公務員・教育職員等による人権侵犯事件数が4,608件(対前年比1,061件(29.9%)増加) 
◆ 私人間の人権侵犯事件数が16,892件(対前年比870件(4.9%)減少)  処理内訳別にみると,措置の内容としては,「援助」(注1)が20,193件(全処理件数の93.9%)で最も多く,次いで「要請」(注2)が222件(1.0%),「説示」(注3)が160件(0.7%),「調整」(注4)が78件(0.4%)となっている。 このほか,「措置猶予」(注5)が42件(0.2%),「侵犯事実不存在」が88件(0.4%),「侵犯事実不明確」が606件(2.8%),「啓発」(注6)を行ったものが176件(0.8%)ある。
(注1)法律上の助言を行ったり,関係行政機関や関係ある公私の団体等を紹介すること。
(注2)被害の救済又は予防について実効的な対応ができる者に対し必要な措置を執るよう求めること。
(注3)相手方の反省を促し善処を求めるため事理を説き示すこと。
(注4)被害者と相手方との話合いを仲介すること。
(注5)事案の軽重や反省の程度,懲戒の有無等を考慮して措置を講じないこと。
(注6)事件の関係者や地域社会において,事案に応じた啓発を行うこと。

(3) 特別事件  
 新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数のうち,特別事件(処理規程第22条に規定されている重大な人権侵犯事件)の件数は1,568件で,前年に比べて183件(13.2%)増加した。

2 人権侵犯事件の類型別新規救済手続開始件数の動向

(1) 暴行・虐待事案(図3
 暴行・虐待事案は4,788件(対前年比6.1%減少)で,全事件類型別の中で最も多く全事件数の22.1%を占め,依然として憂慮すべき状況で推移している。
 このうち,いわゆる社会的に弱い立場にあるとされる女性,児童,高齢者,障害者を被害者とする事件の割合が87.2%(4,177件)と非常に高い割合を占めている。

(2) 住居・生活の安全関係事案(図3
   住居・生活の安全関係事案は3,889件(対前年比2.4%減少)で,全事件数の17.9%を占めている。
 このうち,相隣間における騒音等の相隣関係から生じる事件の割合が47.0%(1,826件)と約半数を占めている。

(3)  強制・強要事案(図3
   強制・強要事案(注)は3,564件(対前年比2.2%減少)で,全事件数の16.4%を占めている。
(注) 強制・強要事案とは,家庭内における強制・強要やセクシュアル・ハラスメント,ストーカー行為等を含む。                               

(4)  プライバシー関係事案(図3
 プライバシー関係事案は1,752件(対前年比6.3%減少)で,全事件数の8.1%を占めている。
 このうち,インターネット等によるものの事件の割合が40.2%(705件)を占めている。

3 特徴的な動向

(1) 学校におけるいじめに関する人権侵犯事件の増加(図8
 学校におけるいじめ(注)に関する人権侵犯事件数は,2,714件(対前年比51.9%増加)で,過去最高となった。
   この中には,いじめに関する学校の対応について不信感を抱く被害児童の母親と学校との関係を修復するなどの「調整」を行った事案が含まれている。(別添1事例5
(注)学校におけるいじめに関する人権侵犯事件とは,いじめに対する学校側の不適切な対応等の事案であり ,学校長等を相手方とするものであって,いじめを行った加害児童・生徒を相手方とするものではない。

(2)  児童に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件の増加(図9
 児童に対する暴行・虐待事案に関する人権侵犯事件数は771件(対前年比6.3%増加)で,過去最高となった。
 この中には,実父から性的虐待を受ける被害児童が児童相談所に保護されるに至るなどの「援助」を行った事案が含まれている。(別添1事例2

(3)  教職員による人権侵犯事件の増加(図10
 教職員による人権侵犯事件数は1,159件(対前年比21.6%増加)で過去最高となった。このうち,体罰事案が337件(対前年比25.7%増加)となっている。
 
(4) 社会福祉施設における人権侵犯事件の増加(図11
 高齢者施設,知的障害者更生施設等の社会福祉施設における人権侵犯事件数は193件(対前年比26.1%増加)で過去最高となった。そのうち児童福祉施設職員によるものが45件(23.3%)で,前年に比べ200%増加している。
 この中には,児童自立支援施設における入所児童に対する虐待事案について,「説示」を行った事案が含まれている。(別添1事例8

4 添付資料

 (1) 平成22年中に法務省の人権擁護機関が救済措置を講じた具体的事例(別添1
 (2) 人権侵犯事件統計資料(平成22年1月~12月)(別添2
 (3) 「女性の人権ホットライン」の利用状況について(別添3
 (4)  「子どもの人権110番」の利用状況について(別添4