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    夫と事実上の離婚状態となった女性(夫の氏を称して婚姻)が,他の男性の子を懐胎し,(元)夫との婚姻中又は離婚から300日以内にその子を出生した場合には,原則として,その子は(元)夫の子と推定され,(元)夫とその女性が婚姻していた当時の戸籍に記載されることになります。しかし,その女性が,(元)夫に子の存在を知られたくないなど,何らかの理由から,出生届を提出しないために,子が戸籍に記載されないことがあります。(嫡出推定制度については,民法772条(嫡出推定制度)に関するQ&AのページのQ2を参照ください。)この子が自ら法的な手続をとることができるようになった場合で,母が既に離婚しているときは,どうしたら戸籍に記載されることができるのでしょうか。戸籍に記載されるための手続を知りたい方は,次のQ&Aを読んでみてください。

Q1:相談窓口

Q2:戸籍に記載されるための手続の概要

Q3:元夫を父とする戸籍の記載を求める方法

Q4:元夫を父としない戸籍の記載を求める方法

Q5:無戸籍の方が戸籍に記載されるまでの間の婚姻の届出及び行政上のサービス

 

Q1    相談窓口

Q1-1   出生の届出がされず,戸籍がつくられていない子が自ら法的な手続をとることができるようになった場合に,戸籍に記載されるための手続について相談するには,どこに相談したらいいですか。

A1-1   全国の法務局・地方法務局及びその支局(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kakukyoku_index.html)において相談を受けています。                「無戸籍の解消のための相談窓口」に関するポスターについてはこちら【PDF】
       また,全国の弁護士会(http://www,nichibenren.or.jp/contact/consultation/stateless.html)においても相談を受けています。


Q1-2   相談に行くときに,持参したらよい物はありますか。
A1-2   次の書類をお持ちください。
 (1) 無戸籍の方が住民票に記載されている場合は,その住民票の写し
 (2) 母が戸籍に記載されている場合は,無戸籍の方の出生時の母の戸籍又は除籍の謄本等
 (3) 母子関係のあることを証する資料(注)
(注)資料の例は,次のとおりです。
  ア 医師,助産師等が発行した出生証明書
  イ 母子健康手帳
  ウ 幼稚園,保育園等に入園していたときの記録,小学校等の在学証明書等
  エ 母子共に写っている写真


Q2    戸籍に記載されるための手続の概要

Q2-1   無戸籍の方が自ら法的な手続をとることができるようになった場合で,母が既に離婚しているときは,どのような手続を行えば,戸籍に記載されるのでしょうか。


無戸籍の方が自らを戸籍に記載するための手続

A2-1   母の元夫を父とする戸籍の記載を求めるか,元夫を父としない戸籍の記載を求めるかによって,手続が異なります。
 無戸籍の方が元夫を父とする戸籍の記載を求める場合には,法務局において母子関係の認定をすることができる限り,裁判手続によることなく手続をすることができます。この場合には,原則として,元夫の氏を称し,その戸籍に記載されることになります(詳しくは→ Q3-1から Q3-5まで参照)。ただし,その後,母の戸籍に記載を移す手段があります(詳しくは→ Q3-7参照)。
   無戸籍の方が元夫を父としない戸籍の記載を求める場合には,裁判手続において嫡出推定の及ばない事情が証明されれば,嫡出否認の手続によることなく元夫との父子関係を争うことが可能とされており,その結果,元夫との間に父子関係がないことが明らかになれば,母の氏を称し,その戸籍に記載されることになります(詳しくは→ Q4参照)。

 

Q3    元夫を父とする戸籍の記載を求める方法

Q3-1   無戸籍の方が母の元夫を父としてその戸籍に記載されることを求める場合の手続は,どのようなものですか。

A3-1   まず,無戸籍の方から出生証明書や母子手帳など,母子関係があることを証する書面を法務局に提出していただきます。また,法務局では,併せて無戸籍の方本人や関係者から聴き取りを行います。
    このような調査の結果,法務局において母子関係があるとの認定をすることができると判断された場合(認定をすることができない場合については→Q3-3参照)には,無戸籍の方から「出生事項記載申出書」(→Q3-2参照)を提出していただきます(注1)。
   法務局は,元夫の本籍地の市区町村にこの申出書を送付し,送付を受けた市区町村から母に対し,出生の届出をするよう二度の催告をします(注2)。
   それでも出生の届出がされない場合や,母が死亡し,又は所在不明になっていることから催告をすることができない場合には,元夫の本籍地の市区町村長において,法務局長の許可を得た上で,職権で無戸籍の方を元夫の戸籍に記載します。この場合,無戸籍の方は母の元夫の氏を称し,その父欄には元夫の氏名が記載されます。
(注1)母の協力が得られる場合には,最寄りの市区町村又は本籍地の市区町村の戸籍窓口に母から出生の届出をする方法により,元夫の戸籍に記載することもできます。
(注2)母が催告に応じて出生の届出をする場合も,注1と同様になります。


Q3-2 「出生事項記載申出書」とは,どのようなものですか。
A3-2   無戸籍の方本人を含め,出生届の届出義務者(父母等)ではない方が,市区町村長に対し,無戸籍の方が出生した事実を戸籍に記載をするよう申し出るための書面です。その様式は,【別添】[PDF]のとおりです。


Q3-3   法務局において母子関係の認定をすることができない場合には,どのような手続をとればよいのですか。
A3-3   家庭裁判所においては,DNA鑑定等の結果に基づいて,母子関係の認定をすることができます。裁判手続の具体的な方法としては,(1)母を相手として,母子関係があることの確認を求める親子関係存在確認の手続(→Q3-4参照)があります。また,証拠となる資料が乏しい等の理由により,裁判手続においても母子関係が認められなかったような場合には,無戸籍の方を戸籍に記載するための裁判手続として,(2)就籍許可の手続(→Q3-6参照)があります。これらの手続をとった上で,市区町村の戸籍窓口で就籍の届出を行う必要があります。


Q3-4   母との間の親子関係存在確認の手続は,どのようなものですか。
A3-4   親子関係存在確認の手続は,親子関係の存否という家庭内のプライバシーに関わる問題を扱うものですから,できる限り非公開の場で行うとともに,話合いによって解決することが望ましいと考えられます。そこで,公開の法廷で行われる人事訴訟(→詳しくは裁判所HP「人事訴訟手続」)を提起する前に,まずは非公開の調停手続(→詳しくは裁判所HP「調停手続一般」)によること(調停前置主義)とされています。具体的には,無戸籍の方が母を相手方として,調停を申し立てることになります。
    調停とは,当事者間の話合いによって事件を解決する手続ですが,親子関係存在確認の手続は,子の母が誰であるかという子の福祉にとって極めて重要な事柄を決めるものですから,単に当事者間で子の母が誰であるかということについての合意が成立しただけでは,調停成立(=事件解決)にはなりません。この手続においては,(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子と母との間に親子関係があることを確認する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立すること,(2)当事者間に母子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて,(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めた場合に,申立ての趣旨に沿った審判(合意に相当する審判。家事事件手続法277条)がされることになっており,それ以外の場合には,調停は不成立として終了します。例えば,(2)について当事者間で母子関係について争いがある場合や,(3)についてDNA鑑定等の事実の調査をした結果,母とされる者と子との間に母子関係が存在するという事実が認められなかったような場合には,調停は不成立となります。
    調停が不成立となった場合に,調停の申立人が,更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考えるときは,家庭裁判所に,親子関係存在確認の訴えを提起することができ,この中で母子関係の存否について審理されることになります。この場合には,訴訟手続の中で,母子関係のあることを主張し,立証する必要があります。家庭裁判所は,母子関係の存在を認めることができれば,母子関係があることを確認する旨の判決をします。
    その上で,無戸籍の方において,市区町村の戸籍窓口に就籍届書,裁判書の謄本(親子関係存在確認の申立て又は請求を認容する審判書又は判決書の謄本)及び確定証明書(審判や判決が確定したことを示す証明書。審判又は判決をした裁判所の書記官が発行します。)を提出していただくことによって,無戸籍の方は母の元夫の戸籍に記載されます。この場合,無戸籍の方は元夫の氏を称し,その父欄には元夫の氏名が記載されます。


Q3-5   母が死亡し,又は所在不明となっている場合にも親子関係存在確認の手続をとることができるのですか。
A3-5   母が死亡している場合には,調停を経ずに,検察官を被告として,親子関係存在確認の訴えを提起することができます(家事事件手続法257条2項ただし書。人事訴訟法12条3項)。また,母が所在不明の場合にも,調停を経ずに,親子関係存在確認の訴えを提起した上で,公示送達の方法によって訴状を送達することができます(家事事件手続法257条2項ただし書。民事訴訟法110条)。いずれの場合も,家庭裁判所は,母が出頭しないまま審理を行い,判決をすることができます。


Q3-6   就籍許可の裁判手続は,どのようなものですか。
A3-6   就籍許可の裁判手続は,家庭裁判所の許可により,本籍を有しない者について本籍を設け,戸籍に記載するための手続です。相手方はなく,調停を経る必要もありません。
    家庭裁判所は,その審理において,無戸籍の方が日本国籍を有しており,かつ,戸籍法110条1項に規定する「本籍を有しない者」(「本籍の有無が不明である場合」を含む。)と認められれば,就籍許可の審判をします。一般的には,通称を戸籍上の氏名として就籍許可の審判がされます。
    日本国籍を有するかどうかは国籍法の規定によることとなります。国籍法2条は,(1)父母のいずれかが日本国籍を有している場合(1号2号)だけでなく,(2)日本で生まれた場合において,父母がともに知れないとき又は国籍を有しないとき(3号)も,子は出生により日本国籍を取得すると規定しています。最高裁判所は,「国籍法2条3号にいう『父母がともに知れないとき』とは,父及び母のいずれもが特定されないときをいい,ある者が父又は母である可能性が高くても,これを特定するに至らないときも,右の要件に当たる」としています(最判平成7年1月27日)。
    就籍許可の審判を経た上で,無戸籍の方が,市区町村の戸籍窓口に就籍届書及び裁判書の謄本を提出していただくことによって,無戸籍の方の新戸籍が編製されます。この場合,無戸籍の方は許可された氏を称し,その父母欄は空欄となります。


Q3-7   無戸籍の方が母の元夫の戸籍に記載された後,母の戸籍に記載を移すことはできますか。
A3-7   無戸籍の方が母の元夫の氏を称してその戸籍に記載されても,その後,裁判手続により,離婚後の母の氏に変更し,その戸籍に記載を移すことができます。
    元夫の氏を称して婚姻した母は,離婚により婚姻前の氏に復し,元夫とは別の戸籍に記載されることになります。しかし,母と子の氏が同じでなければ一つの戸籍に同籍できません。そこで,家庭裁判所において,無戸籍の方について,「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許可(民法791条1項)を得た上で,母の戸籍への入籍の届出をすることによって,無戸籍の方は母の戸籍に記載されることになります。この場合,無戸籍の方は母の氏を称し,その父欄には元夫の氏名が記載されます。なお,元夫の戸籍中,無戸籍の方の記載部分には,「除籍」との記載が加えられます。


Q4    元夫を父としない戸籍の記載を求める方法


Q4-1   無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合の手続は,どのようなものですか。
A4-1   嫡出推定が及ぶ場合には,母の元夫からの嫡出否認の手続によらなければ,父子関係を争えないのが原則です(→民法772条(嫡出推定制度)に関するQ&AのページのQ4-1参照)。しかしながら,嫡出否認の訴えに関し,申立てをすることができるのは元夫のみで,しかも,申立てをすることができる期間は,元夫が子の出生を知った時から1年以内に限定されていますので,無戸籍の方が自ら法的な手続をとることができるようになった頃にはこの期間を過ぎていることが多いものと考えられます。
    もっとも,戸籍事務の担当者に,嫡出推定が及ばないということがはっきり分かれば,嫡出否認の手続によることなく,戸籍上元夫の子とはしないという取扱いが可能です。そのような例としては,まず,離婚後300日以内に出生した子であっても,医師の作成した証明書により,婚姻中に懐胎した子ではないこと(=離婚後に懐胎したこと)を直接証明することができる場合があります(→民法772条(嫡出推定制度)に関するQ&AのページのQ3-2参照)。 
    このほかにも,裁判手続において嫡出推定が及ばない事情が証明されれば,嫡出否認の手続によることなく元夫との父子関係を争うことが可能とされており,その結果,元夫との間に父子関係がないことが明らかになれば,戸籍上も元夫の子として取り扱わないことが可能です。どのような場合に嫡出推定が及ばない事情があるといえるかについて,最高裁判所は,「妻が子を懐胎すべき時期に,既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合」と判示しており(最判平成12年3月14日),一般的には,母の懐胎時に外観上婚姻の実態がない場合をいうと解されています。裁判手続によらなければならないのは,このような事情があるか否かについて,市区町村の戸籍窓口で調査し認定することは困難なためです。
    裁判手続の具体的な方法としては,(1)元夫を相手として,父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確認の手続,(2)血縁上の父を相手として,子であると認めることを求める強制認知の手続があります。これらの方法であれば,元夫からしかできない嫡出否認の手続と異なり,無戸籍の方又は母が自ら行うことができます。(→ Q4-2参照)。


Q4-2   親子関係不存在確認の手続は,どのようなものですか。また,強制認知の手続は,どのようなものですか。
A4-2   これらの手続においても,調停前置主義が妥当し,まず家庭裁判所に調停を申し立てるべきことは,親子関係存在確認の手続の場合と同様です(→Q3-4参照)。
    具体的には,例えば,親子関係不存在確認の手続の場合であれば子が母の元夫を相手方として,強制認知の手続の場合であれば子が血縁上の父を相手方として,それぞれ調停を申し立てることになります(→詳しくは裁判所HP「親子関係不存在確認調停」及び「認知調停」)。各手続における申立人と相手方,手続的要件は図2のとおりです(元夫の裁判手続への関与の有無等については→民法772条(嫡出推定制度)に関するQ&AのページのQ4-4Q4-5参照。親子関係不存在確認の調停手続に要する期間等については→民法772条(嫡出推定制度)に関するQ&AのページのQ4-7参照)。なお,親子関係不存在確認の手続を経ずに,強制認知の手続をとることも可能です(→Q4-3参照)。
    これらの手続においても,申立ての趣旨に沿った審判がされるためには,嫡出否認の手続と同様に,(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子と元夫との間に親子関係がないことを確認する。」,「子が血縁上の父の子であることを認知する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること,(2)当事者間に父子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて,(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めたことが必要となります。
    調停が不成立となった場合に,調停の申立人が,更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考えるときは,家庭裁判所に,親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起することができ,この中で父子関係の存否について審理されることになります。この場合には,訴訟手続の中で,嫡出推定が及ばない事情があること(→Q4-1参照)を主張し,立証する必要があります。 なお,これらの裁判手続においては,父子関係の存否を検討する当然の前提として,母子関係の存否についても審理され,事実の認定がされることになります。

親子関係不存在確認及び強制認知の手続における申立人・相手方・手続的要件


Q4-3  親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。
A4-3   親子関係不存在確認の手続と強制認知の手続は選択的であり,優劣関係にはないことから,親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能です。


Q4-4   母の元夫又は血縁上の父が死亡し,又は所在不明となっている場合にも親子関係不存在確認の手続又は強制認知の手続をとることができるのですか。
A4-4   親子関係不存在確認の手続の場合,母の元夫が死亡しているときには,調停を経ずに,検察官を被告として,親子関係不存在確認の訴えを提起することができます。
    強制認知の手続の場合,血縁上の父が死亡しているときには,調停を経ずに,その死亡の日から3年以内に限り,検察官を被告として,強制認知の訴えを提起することができます。
    また,いずれの手続の場合も,元夫又は血縁上の父が所在不明のときには,調停を経ずに,親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起した上で,公示送達の方法によって訴状を送達することができます。いずれの場合も,家庭裁判所は,元夫又は血縁上の父が出頭しないまま審理を行い,判決をすることができます。


Q4-5   裁判手続により,母子関係を認定した上で,母の元夫の子でないと認定された場合,戸籍はどうなるのですか。
A4-5   無戸籍の方から出生事項記載申出書(→Q3-2参照),裁判書の謄本(親子関係不存在確認若しくは強制認知の申立て又は請求を認容する審判書又は判決書の謄本)及び確定証明書を市区町村の戸籍窓口に提出していただきます(注1)(注2)。また,強制認知の手続をとっているときは,上記に加え,裁判認知の届書を提出していただきます。
    これを受けて,母の本籍地の市区町村から母に対し,出生の届出をするよう二度の催告をします(注3)。
    それでも出生の届出がされない場合や,母が死亡し,又は所在不明になっていることから催告をすることができない場合には,母の本籍地の市区町村長において,法務局長の許可を得た上で,職権で無戸籍の方を母の戸籍に記載します。この場合,無戸籍の方は母の氏を称し,その父欄は,親子関係不存在確認の手続をとっている場合には空欄となり,強制認知の手続をとっている場合には血縁上の父の氏名が記載されます。
(注1)母が元夫との婚姻中に無戸籍の方を出産し,その後離婚により復氏していた場合には,親子関係不存在確認の手続又は強制認知の手続をとったとしても,子の氏が元夫の氏(無戸籍の方の出生時の母の氏)となり,離婚後の母の氏とは異なることとなるため,そのままでは元夫の戸籍に記載されることになります。そこで,出生事項記載申出書を提出する前に,あらかじめ家庭裁判所において,無戸籍の方について,「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許可(民法791条1項)を得た上で,出生事項記載申出書の「その他」欄に「母の氏を称する入籍」と記載をすることによって,無戸籍の方は母の戸籍に記載されることになります。
(注2)母の協力が得られる場合には,最寄りの市区町村又は本籍地の市区町村の戸籍窓口に母から出生の届出をする方法により,母の戸籍に記載することもできます。
(注3)母が催告に応じて出生の届出をする場合も,注1と同様になります。

Q5    無戸籍の方が戸籍に記載されるまでの間の婚姻の届出及び行政サービス

Q5-1   無戸籍の方が戸籍に記載されるまでの間に婚姻の届出をすることができますか。

A5-1   無戸籍の方を婚姻の当事者の一方とする婚姻の届出がされた場合,相手方の氏を夫婦が称する氏とする届出であり,添付書類から婚姻要件を満たすことが認められるときは,婚姻の届出は受理されることになります。 市区町村の戸籍窓口に婚姻届書を提出する際に添付すべき書類として,次の書類をお持ちください。
(1) 無戸籍の方の配偶者となる方の戸籍謄本等
(2) 無戸籍の方が住民票に記載されている場合は,その住民票の写し
(3) 母が戸籍に記載されている場合は,無戸籍の方の出生時の母の戸籍又は除籍の謄本等
(4) 母子関係のあることを証する資料(注) 
 (注)資料の例は,次のとおりです。
  ア 医師,助産師等が発行した出生証明書
  イ 母子健康手帳
  ウ 幼稚園,保育園等に入園していたときの記録,小学校等の在学証明書等
  エ 母子共に写っている写真 
  なお,上記以外の場合の婚姻の届出や,無籍者の方に関するその他の戸籍の届出をすることをお考えの場合は,最寄りの市区町村の戸籍窓口又は法務局・地方法務局又はその支局(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kakukyoku_index.html)にお尋ねください。


Q5-2   無戸籍の方が戸籍に記載されるまでの間は,行政上のサービス等を受けられないのですか。
A5-2   一定の要件の下,以下のような行政上のサービス等を受けることが可能です。 
(1) 住民票への記載
    出生した子の住民票の記載がされるためには,戸籍法に基づく出生届が受理されていることが必要です。しかしながら,民法772条による嫡出推定が及ぶことに関連して,出生届がされていない場合であっても,親子関係不存在確認や強制認知等外形的に子の身分関係を確定するための手続を行っているときは,市区町村長は,当該手続が行われていることの疎明資料その他必要書類を添付の上申出を受け,申出内容を審査の上適当と認める場合に職権でその子の住民票の記載をすることができることとされています。詳しくは,お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。
 
(2) 国民健康保険の取扱いについて
    他の公的医療保険に加入していない場合,市区町村に居住している実態を確認することができれば,被保険者として適用する取扱いとなります。
 詳しくは,市区町村窓口にお尋ねください。また,手当等の受給に当たっては,上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。
   
(3) 生活保護制度の取扱いについて
    戸籍の有無を要件としておらず,自らの利用し得る資産,能力,その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮している方に対して保護を適用することとしています。
 詳しくは,市区町村窓口にお尋ねください。また,手当等の受給に当たっては,上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。

(4) 旅券
    旅券の発給の申請をするためには,原則として,戸籍謄本又は戸籍抄本を提出しなければなりません。もっとも,人道上やむを得ない理由により,戸籍への記載を待たずに渡航しなければならない特別の事情があると認められる場合には,親子関係不存在確認や強制認知等の手続を行っていることの疎明資料その他必要書類を提出することによって旅券の発給を受けることができることとされています。旅券の発給について,詳しくは,都道府県の旅券事務所にお尋ねください。

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