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2018年1月17日
消費者委員会

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会から、本件に関する意見の報告を受けた。

本意見を踏まえ、消費者庁において意見表明を検討することを求める。


中部電力による電気料金値上げ後のフォローアップに関する専門調査会意見

平成30年1月17日
消費者委員会公共料金等専門調査会

消費者委員会は、平成29年11月14日付けで消費者庁より「中部電力株式会社に対する原価算定期間終了後の事後評価について」の付議を受けた。

これを受け、公共料金等専門調査会では、12月12日に中部電力からヒアリングを行うとともに、電力・ガス取引監視等委員会から同社に対する事後評価の聴取を行った。

その結果を踏まえ、上記付議に対し、専門調査会としての意見は以下のとおりである。

1.全体的な評価

【電力・ガス取引監視等委員会による事後評価】

  • 平成26年度に電気料金改定を行った中部電力に対する原価算定期間終了後の事後評価については、当専門調査会による事後評価に先立ち、電力・ガス取引監視等委員会料金審査専門会合において消費者基本計画工程表(注1)等に基づいて行われた。10月13日及び11月7日に行われた同会合において、中部電力の料金値上げ認可申請に関する消費者庁意見(注2)等を踏まえ、料金原価と実績費用の差異、規制部門と自由化部門の利益率の差異、経営効率化への取組等について検証された。
       会合において、供給エリアの消費者から意見を求め、消費者の視点を取り入れた検証への取組を引き続き行っている点については評価をしたい。

【現行料金の妥当性】

  • 今回の事後評価の対象となる中部電力の料金原価の原価算定期間(平成26~28年度)における実績値について、料金改定時の想定原価と比較すると、費目毎に見れば実績値が想定値を上回ったものもあるが、全体としては、実績値が想定原価を下回った(注3)。実績値が想定原価を下回った要因は、主に燃料費の減少によるものであり、原油価格の低下という変動的な外部要因に基づくものである。このため、電力の現行料金をこれ以上下げる状況であるとはいえない。
  • 他方、今後、原価算定期間に稼働を織り込んでいた浜岡原子力発電所の再稼働が進展した場合には、更なる燃料費、購入電力料の減少が見込まれる。中部電力の料金値上げは、浜岡原子力発電所の停止によるコスト増を主な理由とするものであったことから、そのコストが縮減した場合には、原則としてコスト減に対応した値下げが行われなければならない。
       燃料費や購入電力料以外の項目のコスト増を理由に、料金値下げを回避したり、値下げ幅を縮小する場合には、中部電力は、その理由を十分に説明し、消費者が説明内容を妥当だと納得出来るようにすることが必要である。

2.個別項目

【燃料費、その他経費】

  • 原油価格の低下に加え、石炭火力発電所や高効率LNG火力発電所の稼働率を上げたことにより、燃料費の実績は、想定原価を下回った。一方で、相対的に石油火力発電所の稼働が低下したことに伴い、原油在庫の時価評価の実施に伴う評価損が生じた影響(約110億円(注4))等により、その他経費においては、実績が想定原価を上回った。このため、中部電力は、今後、従来以上に、適時適切な原料調達や機動的な原油の在庫管理に努めるべきである。

【人件費】

  • 人材の質の確保やモチベーションの維持を考慮し、震災後の賞与の引下げ率を緩和した結果、人件費の実績は想定原価を上回った。このような人件費に対する措置については、中部電力の経営努力に基づく経営効率化の深掘分の一部を人件費に還元したと捉えることができ、一定の理解ができる。

【利益使途】

  • 「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議報告書」(平成24年3月)では、料金改定を行わない場合、これまでの利益の使途につき具体的に事業者より説明がなされることが、当該料金妥当性評価のため適当であると述べられている。
       今回、中部電力は、利益の使途や収支見通しについて概要を説明しているが、特に、今後、原価算定期間に稼働を織り込んでいた浜岡原子力発電所の再稼働が進展した場合において、消費者の理解を得るよう、より具体的な説明を行うべきである。

3.今後の課題

  • 平成28年4月以降、電力小売全面自由化がなされ、中部電力においても自由料金メニューや新電力への契約の切替えが進みつつあるものの、現状では既存の規制料金(経過措置料金)で電力サービスの提供を受けている消費者が相当数に上る状況にある(注5)。このため、中部電力を含む電力各社による経営効率化や、原子力発電所の再稼働等に伴う費用の低減が規制料金メニューにも適切に反映されるよう、電力・ガス取引監視等委員会は、継続的な監視を行うとともに、電気事業法に基づく料金変更認可申請命令に係る基準(注6)等に照らし、経営状況等に変化が生じた場合には、公開の場で状況の検証を行うべきである。
  • 中部電力及び電力・ガス取引監視等委員会においては、料金の透明性確保のため、今回も含めた事後評価の結果について、消費者への、より分かりやすい情報提供を更に推進すべきである。
  • 平成28年4月の電力自由化以降、中部電力を含む電力各社について、規制部門の利益率が自由化部門の利益率を下回っている。この要因の一つとして、送配電非関連固定費用の需要補正があげられる。需要補正の結果、規制部門の実績費用が相対的に増加し、利益が低下することによって、規制部門の電気事業利益率や超過利潤の測定に影響を与え、ひいては規制料金引下げの判断にも影響を及ぼす可能性も否定できない。このため、需要補正制度の在り方について、今後積極的に見直しを検討することが必要である。
  • なお、一昨年以降の事後評価の対象となっている電力各社の料金値上げは、主に東日本大震災後の原子力利用率の低下を理由とするものであったため、原発再稼働の進展によりその理由が失われた際に規制料金(経過措置料金)の引下げが適切に行われるかについて、引き続き、電力・ガス取引監視等委員会による適切な監視が行われることが必要である。また、消費者委員会は消費者庁とともに当該状況を注視し、必要に応じてフォローアップを行うこととしたい。

以上

  • (注1)平成27年3月24日消費者政策会議決定
  • (注2)「中部電力株式会社の家庭用電気料金値上げ認可申請に関する意見(消費者庁)」(平成26年4月10日)
  • (注3)想定原価を上回った主な費目は、その他経費の他、人件費、購入電力料、修繕費。想定原価を下回った主な費目は、燃料費の他、減価償却費、公租公課、原子力バックエンド費用(平成29年12月12日開催の第39回公共料金等専門調査会 資料4の16ページ参照)。
  • (注4)料金原価の原価算定期間(平成26~28年度)における原油在庫の評価損の実績と想定原価の差(3カ年平均額)。
  • (注5)中部電力管内の平成29年9月末時点での新電力への契約先の切替え(スイッチング)率は約5.0%(約38万件)、自社内での契約切替え(規制→自由)率は約15.1%(約115万件)。両者を合わせると約20.1%(約153万件)。(平成29年12月20日開催の第6回電力・ガス基本政策小委員会 資料3-1 1ページ参照)
  • (注6)「電気事業法等の一部を改正する法律附則に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準等」(平成28年4月)に基づき、規制部門の電気事業利益率の直近3カ年度平均値が電力会社10社の過去10カ年度平均値を上回り(ステップ1)、かつ前回料金改定以降の超過利潤(≒当期純利益-事業報酬)の累計額が事業報酬の額を超えている、又は自由化部門の収支が直近2年度間連続で赤字である場合(ステップ2)、変更認可申請命令の発動の要否を検討することとなっている。