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日時

2018年1月26日(金)14:30~16:00

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、石井委員、浦郷委員、亀井委員、川出委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 高委員長、池本委員長代理、鹿野委員、樋口委員
【消費者庁】
小野審議官
廣瀬消費者制度課長
太田消費者制度課企画官
消費者制度課担当者
【内閣府】
幸田内閣府審議官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎、高委員長の高ははしごだか

議事次第

  1. 開会
  2. 公益通報者保護制度の概要及びこれまでの検討状況
  3. 今後の検討の進め方
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

  • 議事次第(PDF形式:176KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料1】 諮問書(PDF形式:95KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料2】 公益通報者保護制度の概要と制度の実効性向上に関する検討の経緯(消費者庁提出資料)
     表紙から8ページ(PDF形式:636KB)PDFを別ウィンドウで開きます
     9から14ページ(PDF形式:921KB)PDFを別ウィンドウで開きます
     15から22ページ(PDF形式:714KB)PDFを別ウィンドウで開きます
     23から28ページ(PDF形式:819KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料3】 公益通報者保護専門調査会スケジュール(案)(PDF形式:176KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料1】 公益通報者保護専門調査会委員名簿(PDF形式:93KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料2】 公益通報者保護専門調査会設置・運営規程(PDF形式:186KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料3】 下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ(PDF形式:249KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料4】 公益通報者保護法(平成十六年六月十八日法律第百二十二号)(PDF形式:169KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料5】 通報対象となる法律一覧(464本)(消費者庁提出資料)(PDF形式:387KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料6】 公益通報者保護法案に対する附帯決議(PDF形式:140KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料7】 公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会最終報告書(消費者庁提出資料)
    ※消費者庁ウェブサイト『公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会』へのリンクとなります。
    【ページ中段、「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」最終報告書[PDF: 2.2MB]を御参照ください】
  • 【参考資料8】 「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会最終報告書」に関する御意見募集の結果について(消費者庁提出資料)(PDF形式:406KB)PDFを別ウィンドウで開きます

≪1.開会≫

○友行企画官 時間になりましたので、始めたいと思います。

皆様、本日はお忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまから「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

公益通報者保護専門調査会は、第1次の委員会において設置されておりまして、形としては再開ということになりますが、第5次の委員会としては本日が初めての会合となります。

本日は、所用により後藤委員が御欠席。また、柿崎委員、林委員が遅れての御出席との御連絡をいただいております。

最初に配付資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。不足がございましたら事務局までお願いいたします。

本専門調査会の構成員につきましては、消費者委員会高委員長より指名されておりまして、参考資料1のとおりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

座長については、高委員長から指名を受けました山本委員に務めていただくことになりましたので、御報告させていただきます。

本日は、消費者委員会から高委員長、池本委員長代理、鹿野委員にオブザーバーとして御出席いただいております。後ほど樋口委員も参加される予定となっております。

また、参考資料2の本専門調査会設置・運営規程第8条に、「専門調査会は、調査審議に当たって、必要に応じ消費者庁の協力を得ることができる」と定められておりまして、消費者庁から毎回御出席いただき、その御協力を得ることといたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

同じく設置・運営規程第6条にございますように、会議は原則公開となります。本日の会議につきましても公開とし、議事録についても後日、公開することといたします。

それでは、ここからは山本座長に議事進行をよろしくお願いいたします。

○山本座長 このたびは消費者委員会の高委員長から御指名を受けまして、この専門調査会の座長を務めさせていただくことになりました山本と申します。よろしくお願いいたします。

私は専門が行政法という分野でございますけれども、この公益通報者保護制度は、様々な法分野にまたがった問題を含んでおります。それから、いろいろな観点が検討する上で必要である。消費者の目線はもちろんですけれども、事業者側あるいは労働者等々、様々な方々、ステークホルダーの方の視点、観点を考えて制度を構想していく必要があるということがございまして、この専門調査会は様々な分野あるいは様々な立場の委員の方に御参加をいただいております。ぜひそれぞれの視点から闊達に意見交換をしていただいて、是非良い方向で制度について検討することができればと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

続きまして、座長代理でございますけれども、先ほどの参考資料2の設置・運営規程第2条第4項によりますと、座長があらかじめ座長代理を指名することとされております。本日、御本人は途中から出席をされる御予定ということですが、あらかじめ内諾は頂いておりますので、私といたしましては明治大学法学部教授の柿崎委員にお願いをしたいと思います。

本専門調査会につきましては、参考資料2の公益通報者保護専門調査会設置・運営規程、それから、参考資料3になりますけれども、下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせに沿って運営をしていきたいと思います。これら参考資料2及び参考資料3の内容につきまして、何か御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、この申し合わせ、設置・運営規程に従って会の運営を進めてまいりたいと思います。

本専門調査会の開催に際しまして、消費者委員会の高委員長から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○高委員長 紹介いただきました消費者委員会の委員長を務めております高と申します。

皆さん方には本専門調査会、大変お忙しいところお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。

先ほど山本座長からも説明がございましたけれども、皆さん方いろいろ違ったお立場から、また、いろいろな御専門の立場から、豊富な御経験をお持ちの方ばかりだと私どもは考えておりますので、本当に忌憚なく自由に議論をしていただいて、後で説明がございますけれども、皆さん方からいただいた意見を踏まえて委員会のほうで答申という形にまとめていくことになるのですが、そのための十分な議論を行っていただきたくお願いします。

私どもは一応、オブザーバーという立場で余り発言することは期待されていないのですが、冒頭ですので、こういう点は是非とも議論していただけないかなと思っているところを挙げさせてもらいます。

これは二つの極論ですので、もちろんそれは無理だということであれば、それでも結構でございますけれども、我々が目指すところは、立場は違いますけれども、より効果的な有効な機能する仕組みを作るにはどうすればいいかという点で一致しているのではないかと思います。その中で極論を二つ申し上げますけれども、一つは不正な利益を得るための目的での使用というのは公益通報にはならないと第2条に記載されているのですが、私の経験から言うと、企業の中には濫用される方もいるわけで、極端な濫用者が出てくると、他の人たちが社内の通報の仕組みを使わなくなるというリスクがあります。そういう意味で濫用者に対する問題というのもどこかで議論していただきたいなというのが1点です。これは企業側の方々はそのとおりだとおっしゃるかもしれませんけれども、逆の立場の方は、いや濫用者の問題はそこまで重要でないと言うかもしれません。

もう一点は、問題行為を見たときに通報することについて、これを義務化するかという議論です。というのは、人は、自分が被害を受けている場合には通報するものです。例えばパワハラとかセクハラとか、そういうときには会社の窓口に対してこういう問題があるのですけれどもということで相談するのですが、社内で行われている他の方がやっている行為についての通報というのはなかなか行わない。今回、大手企業の中でいろいろな問題が表に出てきましたね。それは見ている人はいるのだけれども、自分が何らかの不利益を被っているわけではないということで、積極的に通報することがなかったということです。それで是非とも義務化してほしいということではなくて、そういった議論もあり得るのかなと考えています。例えば辞めた後に通報される方というのは、実は在職中、その問題を知っていた方でもあるわけです。ですからこういう議論も是非ともしていただければと思います。

長くなりましたけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

○山本座長 どうもありがとうございました。

次に、専門調査会委員の皆様に、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。お席の順番に1人1分程度でお願いをいたします。

まず石井委員からお願いします。

○石井委員 トップバッターを切らせていただきます。

現在、川崎重工業株式会社と三井住友海上火災保険株式会社で社外の監査役をいたしております石井と申します。

昨年6月の株主総会でこういう立場になったばかりでございますけれども、今、監査役という立場で企業のコンプライアンスをしっかり固めていく、内部統制というものを有効に、適正に機能させるという観点で、この通報制度というのは大変重要と受け止めております。その点、いつも私はチェックを実はしてきたものですから、不思議な御縁といいましょうか、そういう感じを思っております。

もともと私は厚生労働省で労働分野の仕事に長く携わってきておりまして、そういう意味での不利益取扱いという観点で今回の問題に大変縁が深いと受け止めております。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

○山本座長 浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 全国消費者団体連絡会の事務局長をしております浦郷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

本当に企業の不祥事というのは後が絶たないと思います。この公益通報という仕組みは広い意味で消費者の利益の保護という観点ではとても重要なものだと思っています。でも現状、通報者の保護というところでは適正に行われているとは言えないなと感じております。先ほど高委員長から通報の義務化ということも出ましたけれども、通報した後の自身の不利益を考えると、見て見ぬふりをせざるを得ない状況もできているのかなということも感じております。これでは広い意味で消費者の不利益につながるということにもなりますので、今回の専門調査会では改正することを念頭に、制度としてきちんと機能するような見直しに向けての議論となるように進めていただきたいと思います。そこに向けて消費者の視点で意見を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山本座長 亀井委員、お願いします。

○亀井委員 デロイトトーマツリスクサービスの亀井と申します。

私は主に民間企業様からグローバル、日本だけではなくて海外拠点を含めて内部通報をお受け付けする外部窓口のサービスを提供させていただいております。そういった経緯で非常に数多くの企業様、内部通報制度の御担当部署の方と情報交換をさせていただくことがございまして、この大役を仰せつかったときには私で務まるのかなと思いましたけれども、そういった御担当部署の方の生の声を何とかこの専門調査会に反映させていただけるように、必要なときに意見を申し述べさせていただきたいと思います。

先ほど高委員長が、濫用するとおっしゃられたのですけれども、当人は全く濫用するつもりではないのですが、企業側の御担当部署の方からすると単なる不満や悩みの相談窓口のようなことになっているというのが多発しておりまして、私ども日夜そういった通報をたくさん受け付けております。もはや公益通報でもなければ内部通報でもないのではないか。こういった問題も少し取り上げていただければなと考えております。

すみません、1分を超過してしまいました。申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。

○山本座長 川出委員、お願いします。

○川出委員 東京大学法学政治学研究科の川出でございます。

私の専門は刑事訴訟法と刑事政策でして、このテーマからはある意味で一番遠いかもしれませんが、刑事政策というのは、ある目的を達成するために、他の制裁や処分と比較しつつ、刑事制裁をどのような場合に使うのが最も有効なのかということも研究対象としています。公益通報者保護制度に関しては刑罰の導入の当否が一つのテーマになっているようですので、そのような観点から意見を述べさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

○山本座長 中村委員、お願いします。

○中村委員 セブン&アイ・ホールディングスで法務を担当しております中村と申します。

私は十数年前に前身の株式会社イトーヨーカ堂というところで内部通報の制度を立ち上げまして、現状では直接は関与しておりませんが、サポートする立場にございます。そうした中で今いろいろ御意見がございましたけれども、ヘルプライン制度というものは企業の中では有用なものだと捉えておりますが、他方で必ずしも公益通報ということとはつながらず、企業内の風通しの良さに寄与する部分というのがどちらかというと大きいのではないかと考えておりまして、そういうものの声を殺さないような形での制度の維持ということで、意見を述べさせていただきたいと思います。

以上です。ありがとうございます。

○山本座長 春田委員、お願いします。

○春田委員 連合の経済政策局の春田と申します。

私の立場からすると、働く者の立場ということで、とりわけ働く者の立場から通報者の保護、救済というところを強化していく観点から、議論に参加させていただきたいと思っております。

先ほども話があったとおり、昨今、企業不祥事が後を絶たない中で、公益通報者保護制度は非常に重要性を増していると認識しております。とりわけその実効性を高めるためにも法改正を含む見直しを含め、迅速に行っていく必要があるのではないかと認識しております。是非ともよろしくお願いしたいと思っています。

本日、別の案件がございまして3時過ぎぐらいに退席させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

○山本座長 水町委員、お願いします。

○水町委員 東京大学社会科学研究所の水町と申します。専門は労働法です。

今回この会議で研究対象となる制度については、主な適用対象者が労働者ということで、私の専門とする労働法とまさに重なり合うところがありますし、理論的に考えてみると、そもそも消費者法と労働法は基本的なところで通底しているところもあるようには思います。ただ、私はこの分野をこれまで専門的に論文等で書いたことはありませんので、特に今回は現場の実態等をいろいろ教えていただきながら、勉強しながら議論に参加させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○山本座長 林委員が今、御到着いたしましたけれども、いきなりというのはあれですので、少し私が話をしてから御挨拶をお願いします。


≪2.公益通報者保護制度の概要及びこれまでの検討状況≫

○山本座長 それでは、議事に入りたいと思います。まず最初に資料1を御覧ください。資料のとおり、平成30年1月15日付で内閣総理大臣より消費者委員会に対しまして諮問がなされ、これを受けて第265回消費者委員会本会議において、本専門調査会の再開が決定されました。これより審議を行うことといたします。

最初の議題は、公益通報者保護制度の概要及びこれまでの検討状況です。消費者庁から資料2を御提出いただいておりますので、消費者庁から御説明をお願いいたしますけれども、林委員、よろしいですか。

○林委員 弁護士の林と申します。遅れまして申し訳ございません。

私は日弁連の消費者問題対策委員会でPL・公益通報部会の部会長をさせていただいております。その関係もありまして、今回の取りまとめに対する意見書であるとかも書かせていただいておりまして、今回この専門委員に選任していただきまして意見を言わせていただこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本座長 それでは、消費者庁からお願いをいたします。

○太田消費者制度課企画官 消費者庁消費者制度課で公益通報者保護制度を担当しております太田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

今回は、本専門調査会の再開後の最初の会合でございますので、御議論をいただくための導入といたしまして、制度の概要でありますとか、これまでの検討の経緯について御説明をさせていただきたいと思います。

まず初めに制度の概要でございます。資料2の4ページ目を御覧ください。こちらは公益通報者保護法の制定の経緯をお示ししたものでございます。御案内のように、2000年代初頭に食品偽装でありますとか、自動車のリコール隠しといった消費者の安全・安心を損なうような不祥事が、組織内部からの通報を契機として相次いで明らかになるということがございました。こういったことを踏まえまして、一定の要件を満たす通報を行った通報者を保護するといったことを通じて、事業者の法令遵守を推進し、国民の安全・安心を確保することを目的としてこの法律が制定されたということでございます。平成16年6月に公布されまして、平成18年4月に施行ということで、施行から11年余りが経過したといったところでございます。

本法制定時の議論におきましては、このような制度は日本の企業文化に必ずしもなじまないのではないかといった御意見でありますとか、先ほどお話がございましたように、濫用的な通報を助長するのではないかといった強い御懸念もございましたけれども、関係する皆様の御理解と御協力をいただきまして、各事業者において内部通報制度の整備が進むなど、それなりに定着してきたのではないかと考えているところでございます。

5ページ目を御覧ください。法律の概要でございます。「2.公益通報の対象」でございますが、1にございますように保護の対象となるのは労働者ということでございます。これには派遣社員なども含みますし、公務員も含むことになっております。それから、先ほど御指摘がございましたように、不正の目的でないことという要件がございます。不正な利益を得たり、他人に損害を加えたりするような不正の目的の通報については、そもそもこの法律の保護の対象とならないということでございます。

4としまして、通報対象事実というものがございますが、こちらは下の※にお示ししていますように、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に係る法律のうち、罰則規定のあるものを法律の別表及び政令で指定しているという立て付けになってございまして、現時点で464法律がその対象となってございます。

6といたしまして、所定の通報先というふうにございますけれども、本法におきましては大きく三つの通報先を想定してございまして、まず一つは下の図の一番上にございます事業者ということで、これには行政機関も含むということでございます。いわゆる内部通報と言われているものでございます。2番目といたしまして、図の右側にございますように処分等の権限を有する行政機関、一般に行政通報と言われているようなものでございます。3番目といたしまして左側にございますように、報道機関や消費者団体等ということで、その他外部への通報と言われているものでございます。そして、それぞれ通報先に応じて保護されるための要件が定められておりまして、事業者内部への通報につきましては思料するということで足りるわけでございますが、外部への通報ということになりますと、保護されるための要件が上乗せされているという立て付けになってございます。事業者内部での自浄作用を期待するという観点から、こういった形にしているわけでございますけれども、それが期待できないような場合もあるということで、このような仕組みとしているところでございます。ただし、内部通報を先にしなくてはならないということではございませんで、要件を満たせばどこに通報しても保護されるという仕組みとなっております。

本法による保護の効果でございますが、3ポツのところをごらんいただきますと、所定の要件を満たす通報を行った者を公益通報者といたしまして、解雇その他の不利益取扱いから保護するという仕組みでございます。本法は民事ルールを定めたものでございますので、通報を理由として不利益取扱いを受けたという通報者は、最終的には裁判所に訴えを提起していただきまして、その中で解決を図っていくという仕組みになってございます。

6ページ、法律の概要の続きでございます。1番から3番にかけまして、通報に係る当事者、すなわち通報者、事業者、行政機関のそれぞれが遵守すべき義務を定めております。このように本法は、法令遵守や国民の安全・安心の確保といった法の目的を踏まえまして、各当事者が誠実にこの制度を運用することを求めているということでございます。

その下の4番、5番にかけまして、一般法理やその他の法令との関係に関する解釈規定についてお示ししております。労働者等が通報を行った場合、本法以外にも、労働契約法の解雇権濫用に関する一般法理でありますとか、民法の信義則など、さらに判例法理などを含めた一般法理によっても保護されるということでございますし、労働基準法などのその他の個別法令によっても保護される可能性があるわけでございます。こういった法令等の規定の適用を妨げないというような解釈規定を設けております。

逆に言いますと、公益通報者保護法の要件を満たさないような通報につきましても、一般法理や個別の法令による保護の対象となる場合があるということでございます。

その関係をお示ししましたのが7ページの概念図でございます。公益通報者保護法の意義は、一般法理ですとか個別の法令によって保護される通報のうち、特に公益性が高いと考えられるものを明確化して、保護の対象となることについての予見可能性を高めるという点にあろうかと思います。他方、濃い青色で示している部分は本法による保護の対象にはならないわけでありますけれども、ここについても一般法理ですとか個別の法令による保護の対象とはなり得るということでございます。

ただこの点について、通報者のお立場からは、自分が通報を行おうとする場合に、それが保護の対象となるかどうかがなかなか分かりにくいといった御懸念が示されております。さらに、通報の受け手となる事業者でありますとか行政機関などにおきましては、本法を反対解釈することにより、本法の対象とならない通報については十分対応しなくても良いのではないかといった根強い誤解も生じているという現状にございます。

こういった問題を踏まえまして、公益通報者保護法による保護の範囲をどのように設定するのが適当なのかといったことが、御議論をいただく上での主要な論点の一つになるのではないかと考えております。

8ページ目は、本法に基づく各種ガイドラインをお示ししておりまして、法律には抽象的な規定しか規定しておりませんので、事業者ですとか行政機関が通報に適切に対応するための具体的な指針を定めているということでございまして、法令に加えて、こういったガイドラインや、それを踏まえて各事業者や行政機関が定める内部規程などが一体となりまして、公益通報者保護制度が成り立っているということでございます。

以上が制度の概要でございまして、2番目といたしまして制度の意義について簡単に御説明をしたいと思います。10ページ目を御覧ください。こちらは消費者行政の体制において公益通報者保護制度がどのように位置付けられるのかを示したものでございまして、図の右側の事業者の中に青い四角で事業者等とございまして、各方面に矢印が伸びておりますが、これが公益通報のイメージであります。資料の上の方にございますように、本制度には大きく二つ目的があるということでございます。まず一つ目は、事業者内部で自浄作用を発揮していただきまして、法令遵守を確保していただくことでございます。

二つ目は、事業者内部の労働者等からの情報をもとに、行政機関が法令違反の事実などを早期に把握して適切な法執行に生かしていくということでありまして、行政機関による法執行力の強化にも役立っているということでございます。

11ページですが、まず事業者内部での自浄作用を働かせるという観点から、幾つかその効果についてデータを御紹介したいと思います。まず11ページの左側のグラフは事業者における不正発見の端緒が何だったのかをお示ししたものでございます。事業者内における不正発見の端緒として、内部通報が第1位として挙げられているということで、内部監査の1.5倍に上るという結果になっております。その右側に制度の導入の効果をお示ししてございますけれども、違法行為の抑止力として機能している、自浄作用による違法行為の是正機会の拡充といったことが挙げられてございます。

12ページですが、実効性のある内部通報制度を整備しているかどうかということは、消費者、取引先、従業員など、事業者を取り巻く様々な関係者、ステークホルダーにも関心が持たれているという調査結果でございます。もちろん各ステークホルダーは品質や価格などの様々な要素に基づいて判断するわけでございますが、他の条件が同じ場合という前提で質問すると、こういった制度を整備している企業を選択したいというお答えが多くなっているということでございます。CSR活動の一環としても非常に重要なポイントなのではないかということでございます。

13ページ目は、金融市場との関係、IR活動の一環としてもこの制度は非常に重要なのではないかということを示したものでございます。近年、金融市場においてESG投資が非常に重視されつつあるわけですけれども、そのうちのGに対応するGovernance、企業統治のところでございますが、その一環として各企業の内部通報制度を評価するような例もたくさん見られるということで、その事例をお示ししております。

このように、内部通報制度を整備することについては負担が重いといった御意見ですとか、あるいは事業者と通報者との対立の構図の中でこれを捉えるような議論もあるわけでございますが、本来、実効的な内部通報制度を導入し、整備するということは、事業者とその関係者の双方にとって大きなメリットがあるのだということを御理解いただければと思います。

14ページですが、こちらは行政機関による法執行との関係を見たものでございますけれども、左の図に各行政機関における通報の受理件数でありますとか、是正措置の件数についてお示ししてございます。近年、上昇傾向にあるということでございまして、直近の平成28年度でございますけれども、受理件数で5,000件程度、是正措置で3,500件程度という数字となっております。

右側の図が、その主な内訳でございますけれども、労働法関係が突出して多くなっているわけでございますが、その他の分野でも通報が法執行に生かされているということでございます。なお、ここでお示ししている件数は、各行政機関の担当窓口が把握しているものを集計したものですが、各部局で受け付けて対応したものなど、担当窓口が把握していないものも含めれば、件数はさらに増えると御理解いただければと思います。

3番目といたしまして、制度の現状と課題について御説明いたします。16ページ目を御覧ください。こちらは民間事業者における内部通報制度の普及・整備状況についてお示ししたものでございます。(1)にございますように法制度の認知度につきましては、中小企業や労働者への周知が必ずしも十分ではないという状況でございます。消費者庁としましても制度の周知・広報活動は一生懸命やってきているところでございますが、それだけでは十分ではないという状況でございます。

(2)の事業者における制度の導入割合でございますけれども、特に中小企業で進んでいないという結果になってございます。このような制度をどの程度の規模の企業にまで整備を求めるのかという点については、議論の余地はあるわけでございますが、少なくとも一定の規模を有する中小企業については、底上げを図っていくことが必要なのではないかということでございます。

他方、大企業におきましては100%近くの企業で導入されているわけでございますけれども、(4)に示されますとおり、その整備状況は様々であるということでございまして、制度のメリットを認識して積極的な取組をされる企業もあれば、制度は導入したものの、形骸化しているというような企業も存在するということで、その取組状況に大きな格差があるという状況でございます。

17ページは内部通報制度が機能不全に陥っているのでなはいかと指摘された企業不祥事の事例を集めたものでございます。残念なことに法施行後におきましても、こういった制度の機能不全が指摘されるような不祥事が多発しているということでございまして、結果として問題が深刻化する、企業価値が大きく毀損するという大変残念な結果に陥っている例が多いということでございます。

18ページ目を御覧ください。行政機関についても同様の問題が存在するということでございます。(1)は国、都道府県、市区町村別に通報窓口の整備率を示したものでございますが、国、都道府県ではある程度整備が進んでいるわけでございますけれども、市区町村レベルになりますと、人員、予算等の制約などもございまして、必ずしもその水準が十分でないという状況でございます。

さらに(2)を御覧いただきますと、これは都道府県別に市区町村の窓口の整備率を見たものでございますけれども、都道府県ごとに非常に大きな格差が存在しているという問題がございます。もちろん人員、予算等の制約もあるわけでございますが、都道府県ごとの取組姿勢の違いがこのような結果につながっている面もあるのではないかと考えております。

19ページ目、こちらは行政機関において不適切な対応が行われたといった事例を御紹介したものでございます。体制整備が必ずしも十分でないという中で、行政機関におきましても通報の放置、不適切な調査、通報に関する秘密の漏えいといった形で不適切な対応が行われてしまっているということでございまして、行政機関といたしましてもこのような問題を真摯に受け止めまして、襟を正していかなければいけないと考えております。

20ページは、通報者が正当な通報を行った後、不利益取扱いを受けた事例をお示ししてございます。ここでは基本的に通報者が裁判を提起して勝訴した事例をお示ししておりますが、最後のものは役員による通報ということでマスコミに大きく報じられた事例でございます。これらの事例は裁判、報道等を通じて表沙汰になったものでございますけれども、それに至らないような、通報者が泣き寝入りをしてしまうような事例もたくさん存在するものと承知しております。

21ページは制度に対する労働者の信頼度という観点から消費者庁が行った調査の結果をお示ししたものでございます。勤務先に不正があるという場合に通報するとお答えになった労働者への質問でございますが、最初の通報先として勤務先以外の行政機関でありますとか報道機関を選択すると回答した労働者の割合が約半数に上っているということでございまして、その理由といたしましては十分対応してくれないのではないか、あるいは不利益を受けるおそれがあるのではないかというような御懸念が挙げられてございます。このような状況は、企業にとっては非常に大きなリスク要因になり得るのではないかということでございます。

22ページも同様の結果でございまして、通報するとしても匿名通報にしたいという割合が多くなっております。

以上を踏まえまして、4番目といたしましてこれまでの検討の経緯ということでございます。24ページ目を御覧ください。こちらは政府における検討の経緯を示したものでございますが、その発端となるのはこの法律が成立した際に付けられた附則第2条というものでございまして、法律の施行後5年を目途として施行状況について検討し、必要な措置を講ずるということが定められております。これを踏まえまして先ほど御紹介がございましたように、第1次の消費者委員会におきまして公益通報者保護専門調査会を設置していただきまして、一度御議論をいただいたという経緯がございます。ただ、この際は法改正までは合意に至りませんで、もう少し立法事実となるような実態把握を行うべきではないかという御提言をいただいたところでございます。これを踏まえまして、消費者庁で実態調査、有識者へのヒアリングなどを重ねまして、消費者基本計画での決定を受けて、まずは消費者庁において有識者による検討会を開催したということでございます。

その検討会の最終報告書の概要を25ページ目にお示ししております。左下の名簿にございますように、東大の宇賀克也先生に座長を務めていただきまして、御覧のようなメンバー、スケジュールで報告書を取りまとめていただいたということでございます。右側に最終報告書の概要とございますが、最終報告書の提言の内容として大きく二つの柱がございまして、まず一つ目として1の第1次報告書に主に対応するものでございますが、制度の運用改善により対応が可能なものについては速やかに実施すべきだということで、各種のガイドラインの改正、策定あるいは事業者のインセンティブとなるような認証制度の創設などの御提言をいただいたところでございます。ガイドラインの改正などにつきましては、既に消費者庁で実施しておりまして、現在、その周知・普及活動を行っているという状況にございます。さらに認証制度につきましてもまさに現在、その制度設計について検討しているところでございまして、準備が整い次第、順次、実施していきたいと考えております。

二つ目の柱といたしまして、法改正が必要なものということでございますが、右側の2のワーキング・グループ報告書に対応するところでございまして、この詳細について26ページにお示しをしております。このワーキング・グループ報告書のポイントでございますが、法律の専門家にメンバーとなっていただき、法改正に係る論点について御検討いただき、法改正の方向性などについて明確化していただいたということでございます。

各論点によって提言内容に濃淡がございまして、留保条件なども示されておりますけれども、大きく三つの方向性が示されているということでございまして、まず一つ目として民事ルールとしての機能を拡充し、それにより通報者保護のための法律としてより使いやすいものとすべきではないかということでございます。

二つ目として、不利益取扱いの抑止あるいは通報者を迅速に救済するための何らかの機能を追加していくべきではないかということでございます。

三つ目といたしまして、通報の受け手となる事業者でありますとか行政機関の体制整備を強化するということ、大きく三つの方向性をお示ししていただいたということでございます。

これを受けまして、その親検討会におきましても御審議いただきまして、おおむねこのワーキング・グループ報告書の方向性に沿って法改正の具体化に向けた検討を進めるべきだということが提言されましたが、関係する当事者が多くて様々な議論があり得るということで、法改正の具体化に当たりましては、関係団体でありますとか国民等からの意見をよく聞いた上で、十分に意見を集約した上で進めるべきだという御提言をいただいたところでございます。

27ページでございますけれども、消費者庁ではこういった御提言を踏まえまして法改正に関するパブリックコメントを行いまして、平成29年4月にその結果を公表してございます。左側に積極的な御意見、右側に慎重な御意見ということで大別してございますが、消費者団体や労働団体、弁護士会などからは積極的な御意見、経済団体、中小企業団体などからは慎重な御意見が多かったということでございます。

積極的な御意見につきましては、論点ごとに幅がございますけれども、おおむね検討会の最終報告書に示された方向性に従って法改正を行うべきだという御意見が多かったということでございます。他方、慎重な御意見につきましては、最初の全般のところにございますように、適切な形で制度が設計されなければ濫用的な通報が増加する、あるいは風評被害など不測の損害が生じるのではないかといった御懸念が示されているところでございます。

以上がこれまでの検討の経緯の概略でございますけれども、これまでのこういった御議論を参考にしていただきつつ、公益通報者保護法の規律の在り方でありますとか、行政の果たすべき役割といったところにつきまして、適切な制度設計は具体的にどういうものなのかということにつきまして、御審議をいただければと考えております。

私からの御説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明をもとにいたしまして、公益通報者保護制度全般について、あるいは今後この専門調査会において検討すべき論点などについて意見交換を行いたいと思います。後ほど、次回以降の進行について資料3を使って説明があるかと思いますけれども、次回にこの専門調査会で検討すべき論点について整理をしようと考えておりますので、今日は大まかにこういったことを議論すべきではないかといったような大きな論点出しなどを中心にして御意見を伺いたいと思います。

あわせて今いろいろ御説明がございましたので、事実確認としてこれはどうなっているのかといったようなことについて確認をいただくことでも構いませんので、御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

先ほど既に高委員長から問題提起をいただいて、それに対する応答も若干ございましたけれども、そのほかただいまの説明を踏まえましていかがでしょうか。あるいは特に私はこういうところに関心があるという形でも構いません。それでは、石井委員、お願いします。

○石井委員 まさに今、座長がおっしゃった言葉に少し頼った形で、ざっくばらん的に話をさせていただきたいと思うのですが、私は今回いただきました資料を拝見いたしまして若干ショックだったのは21ページでございます。会社の中で問題を見つけた場合に、勤務先の不正についての最初の通報先として勤務先以外が約半数になってしまっている。やはり勤務先できちんと通報を受け止め対応するのが当たり前の状態にしていくことが極めて重要と思っております。これは会社の側から見ても早い段階でリスクを受け止めて対応すると迅速性が確保できますし、行政機関に仮に通報されたときにも、結局、会社のほうで対応するまで時間が掛かるわけでございまして、その経過によって被害が拡大する可能性もある。あるいは通報者本人が多分いきなり外に通報するのではなくて、まず悶々としているだろうと思うのです。どうしようかと悩んでいる時間の間にも被害は拡大していく可能性がある。意を決して通報する。そして通報した結果、それがようやく解消に向かうまでの時間的な経過。様々なことを考えた場合にやはり一番近いところで、当事者のところで対応できるという姿、そこに持っていくということは大変重要と思います。

そうした場合になぜなかなか勤務先のほうに行かないのか。もちろんこの中に通報しても十分対応してくれないとか、あるいは不利益な取扱いを受けるおそれがあるという回答、これは事実なのだろうと思うのですが、企業が社員を外部通報に追い込んでしまっているような状況もあるのかなと。その中身としては、自浄作用ということに余り期待が持たれていないとか、あるいはどうしても自分が通報したということが漏れてしまうとの不安があって、自分はそういうことをする人間だというのが知れ渡ることによって同僚等との関係で人間関係を悪くするのではないかとか、多分いろいろな悩みを抱えた状態というのが推察されるのですが、そのようなことを解消していく、すなわち勤務先できちんと受け止められるような状態にしていくことも論点になるかどうか分からないのですが、重要な視点として忘れてはいけないのではないかという感じがいたします。

そういうことを考えた場合に、今回の議論の中で法改正というのがメーンになるのは当然だと思うのですが、それだけに絞る必要もないのではないか。例えば今回の資料の中で中小企業に比べて大企業では既に内部通報制度の導入は相当なされている。これは99.2%という物すごい数字だと思います。これはもちろん公益通報者保護法制定が功を奏しているはずでございます。それがなければここまでいかないと思いますが、私は企業の中に入ってみてコーポレートガバナンスコードが非常に効いているなという印象を強く持っておりまして、ほかに様々な使える手段というものがあるのではないかという感じも持っております。

周知の関係も非常に課題が大きいわけでございますが、これまでにない新たな取組とか、どこに力を入れると効果的になるのかということも法律以外のものとして、これも忘れないで議論の中に付け加えていくような形になっていけば有り難いなと思っております。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

ただいまのように具体的な個別の論点というよりは、こういう観点を是非据えて議論をしていったらいいのではないかという御意見でも構いませんが、いかがでしょう。それでは、お願いします。

○亀井委員 今、皮切りに石井委員がおっしゃっていただいたのですごくお話しやすくなりました。ありがとうございます。

私からのお願いといたしましては、資料2の27ページにございますパブリックコメント結果の概要の欄に記載されております全般あるいは通報者の範囲、通報対象事実の範囲、このあたりに関して深い議論を重ねていけたらよいかなと思っております。

冒頭の御挨拶でも申し上げましたけれども、不満や単なる悩みのはけ口になってしまっている企業様が非常に多くありまして、私の感覚値的なところも入り混じってしまっているかもしれませんが、先ほど石井委員から御指摘いただいたように、通報窓口は開設しているのだけれども、さっぱり利用されない。あるいは物すごく利用される。ただし、不満ばかりというような非常に両極端の状態になってしまっていまして、内部通報制度、公益通報者保護法として定義する対象というのが一体何なのか。それ以外に労働者の方ですとか従業員の方が悩んでいらっしゃって、欲しいと思っていらっしゃる機能が何なのかというのをはっきりさせて、機能分化させて定着させるというような、法律ではなかなか賄い切れない部分も、行政から何らかの指針ですとかガイドを出していただけると、民間企業を含めていろいろな組織では内部通報制度を非常に実装しやすくなるのではないかと思います。ですので、かなりぼやけておりますけれども、何回か専門調査会を重ねるうちに少しずつ具体的な論点にしていただければと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。ただいま法改正というよりはガイドライン等々との関係の問題が少し出てまいりましたけれども、究極的な目的は公益通報者保護制度がうまく機能するようにという、先ほどの高委員長からのお話にありましたように、これが究極の目的であって、それを実現するためにある部分は法改正をする必要が出てくるかもしれないけれども、ある部分では法改正の問題というよりは、むしろそのガイドライン等々あるいはその実務運用等の問題もあろうかと思いますので、そのあたりは当然、両方とも議論の中には含めた上で、最終的にこれは法改正が必要な論点なのか、あるいはむしろそうでない形で対応するのが適切かという振り分けをしていくことになるかと思いますので、その辺はもちろん両方含めて議論していきたいと思います。

そのほかにいかがでしょうか。それでは、お願いします。

○中村委員 私も、今御発言いただいた委員の方々と同じような方向性でのお話になりまして、法改正でこの部分は是非議論していただきたいということではないですが、先ほども御指摘がありました企業の方に通報しようという労働者が少ないという点についてなのですけれども、一つは私ども十数年前に内部通報の制度を社内に導入する際にいろいろ議論をした中で、それ以降ずっと匿名の通報を受け付けるというふうにしております。それはやはり不安というものがあって、現実的には通報が匿名である場合に、それでは解決に持っていけるかというと、解決できない場合が多々ございます。と申しますのは特に労働関係といいますか、パワハラであったりとか、そういった通報である場合には事実確認をしていかなければいけませんし、仮に例えば食品衛生法上の問題であったとしても、どこのお店で何が起こっていてということの事実なくして事実の確認をしていくことはできませんので、最終的に匿名のままでいくことはなかなか難しいのですけれども、そうは言っても最初から名前を言わないと受け付けないということでありますと、なかなか通報しにくいということで、まずは匿名でも受け付けるという形にしております。

それに関連して申し上げたいことは、一つ目はそのように私どもではしたのですけれども、制度導入に当たって他の企業さんにおいては匿名の通報というのは受け入れ難いというか、名前も示さないような通報に信頼性があるのかというようなお考えの企業さんもあったようにお聞きしておりまして、制度をうまく機能させる、あるいは何かあったときに通報してもらうために、どういう仕組みがいいのかというノウハウ的なものについても、私どもは匿名で受けるという形で考えておりますが、そのほかにもあると思いますので、そのようなことの開示を皆さんに広めていくことも大事ではないかと思います。

もう一つ、匿名ということの関連で、その通報というか御連絡を受けていろいろ解決に当たっていく際に、多くは先ほどから御指摘がありますように、いわゆる公益通報ということには該当せずに、例えばパートさん同士の争いであったり、職場の仲間同士でうまくいかないというような事例がかなり多くございます。そうしたときに、結局のところお話を聞いてもう少し仲よくしましょうというか、そのような形である意味、終わってしまうような事例がある中で、そうすると結果として通報しても何にもならなかったではないかというような結果に、通報した側からするとなってしまうというような事例もありまして、そういったことから公益通報ということに該当することはどうなのかということを、通報する方にも分かりやすくするということが必要なのかなということと、そうは言っても余りにもそれ以外は受け付けませんという形になると間口を狭めてしまうことになるので、一方で広く間口というかいろいろなことも受けるということとをどう両立させたらいいのかということを考えていかなければいけないのかなと思っております。

雑駁な話で恐縮ですが、よろしくお願いします。

○山本座長 どうもありがとうございました。

そのほかにいかがでしょうか。先ほどからお話が出ているのは、公益通報者保護制度が本来期待したような通報がなかなか出てこない。一方では全然通報がない。他方では公益通報に当たらないようなものも含めて、いろいろな通報が出てきているといったような中で、公益通報者保護制度が本来、期待をしているような通報がなるべく出てくるような仕組みをどのように作っていったらいいのか。これは先ほどのお話ですと、27ページの幾つかの現在の法律の要件設定の部分に問題があるのかもしれないし、あるいは要件設定の問題というよりは、むしろ実際の運用のほうにいろいろ問題があるということかもしれないし、その両方かもしれないということかと思いますけれども、そのほかにいかがでしょうか。あるいは先ほど匿名の問題も出てきましたが、これは通報を受けた事業者の側のある意味、情報管理の問題ともかなり関わっているのかなと思いますが、そのほかにいかがでしょう。あるいは御発言でない委員の方。

それでは、水町委員、お願いします。

○水町委員 恐らく検討会の報告書の中でほとんど検討され尽くしているのかもしれませんが、2つだけ労働法、法律家の観点から申し上げますと、制度を作るに当たって民事で不利益取扱いの禁止、裁判になったら違法とされますよというこれまでの仕組みと、行政措置とか刑事罰を導入するというときの制度の仕組みが大きく異なるというところをどう考えるかというのが大切なのだと思います。

今の公益通報者保護法による不利益取扱いの禁止なのですが、民事で不利益取扱い禁止という効果を発動するための要件として、このようなきちんと型にはまった定義、要件が必要なのか。これが余り狭いので実際上、裁判にするときも公益通報者保護法を使わずに、解雇権濫用法理は分かりやすいけれども、それ以外に例えば内部通報者保護法理というものがこの法律ができる前から蓄積されて、懲戒処分を無効にするかどうかというときによく使われていますが、ここで資料の中で出てきた裁判例のほとんども公益通報者保護法で裁判上、違法とされたのではなくて、今までの一般法理でやられたものがある。なので公益通報者保護法でぎゅっと絞っておいても、絞ったら絞っただけほかの法理で使えますよということ。これが一般の人にどれくらい認識されているかどうかは別にして、法的にはそういう問題になる。

ただ、他方で新しく法律で行政措置とか刑事罰を検討しようとなると、これは要件事実なり構成要件をきちんとしなければいけないので、今の仕組みみたいなものが当然の前提になるのではないかという気もします。ただ、どういう制度のアウトプットにするかによって要件とか制度の設計の仕方が違ってくると思うので、そこの整理をしながら少し生産的なゴールに向けた議論をすることが必要かなというのが一つ。

あとは今、法律の話をしましたが、裁判で民事に頼るだけだと余り実効的な制度ができないというのは労働法の世界でもそうで、その場合にサポートするのが行政がいいのか、刑事罰がいいのかというのもなかなか難しいところですが、そういう行政とか刑事罰でサンクションを与えるという方法と、インセンティブ、認証を与えるというところで政府が認証制度をしたらどれくらいインセンティブがあるかというのは労働法の中でもいろいろ言われていますが、むしろそれよりも先ほど石井委員もおっしゃったようなコーポレートガバナンスとか、企業の中でこういうものを充実させれば企業として非常に対外的にもアピールできるし、長期的に見れば大きな利益になるんだという制度をどう会社法の議論であるような形で促していくのか。これはそういう前向きな取組をどうサポートするかという観点であれば、匿名性のほうがむしろ企業にとっていいのではないかというようなこともありますし、この法律の制度設計のときにどのぐらい縛りをかけるかと少し違う議論になってくるような気もします。議論としては全体を視野に入れながら、国として政府としてどこまでのことが制度的にふさわしいこととしてできるかという議論になるのかなと思います。

○山本座長 ありがとうございました。大変重要な指摘だったと思いますけれども、そのほかにいかがでしょうか。それでは、お願いします。

○浦郷委員 やはりこのような制度があるということで、自分の会社の中でおかしいなと思ったことがあったら、通報できる、自分も守られるというものであってほしいと思います。通報の濫用という話も出ていますけれども、現場ではそういうことも出てきているかと思います。実際にどういうことが起こっているのか私たちはよく分からないので事例なども含めて出していただいて、そこら辺は議論をしていきたいと思います。先ほどの挨拶のところでも申し上げましたけれども、通報したことで不利益を受けている方も実際にいらっしゃるということで、法律的なところは詳しくないのでそこをどのように対処していけばいいのかよく分かりませんけれども、そのような不利益な取扱いを受けている人たちを救済するような改正というところも論点として考えていただきたいと思っております。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。それでは、お願いします。

○川出委員 資料によると、裁判にまでなっているものだけでも、不利益取扱いがなされた事例が実際にこれだけあるわけですね。極めて単純に考えると、民事上の効果というのは、事業者がやってはいけない不利益な取扱いをしたときに、それを元の状態に戻すというだけのことですから、事業者から見れば、それによって何か現実的な不利益を受けるわけではないともいえます。そう考えると、原状回復にプラスした制裁が必要ではないかとも思えます。ただ、そういった制裁が加えられることが、これまでであれば不利益取扱いをしていた事業者に対してどれほどの抑止になるのかという点は、なかなか難しいかもしれませんけれども、これまでの不利益取扱いの実態を調査するなどした上で検討する必要があるように思います。ここでいう制裁には刑事罰も含まれますが、刑事罰を導入するかどうかについては、それによる抑止がどの程度図れるかということと併せて、規定だけ置いて結局使われないのでは意味がありませんので、不利益取扱いが実際に刑事事件として立件され、処罰がなされるためにはどのような仕組みにする必要があるのかという点も検討する必要があると思います。

○山本座長 ありがとうございました。制度といいますか、法的な仕組みとしてはいろいろな仕組みがあって、民事もあれば行政の仕組みもあるし、行政措置と言ってもまたいろいろあるわけで、公表のような措置もあれば行政処分を行うということもあるし、行政的なものもあるわけですし、刑事制裁というような手法もあるということで、さらに言えばそういった法的な義務付け等々ではなくて、むしろインセンティブの付与、先ほど水町委員が言われましたけれども、そういういろいろな手法がありますので、それをどういうふうに組み合わせていくとうまく制度が機能するかということを考えていく必要があるかなと思います。それから、一般法理とこの特別な法制度との関係の問題ももちろんございますし、これは前の消費者庁での検討会の報告書の中でもかなり指摘をされていた点かと思いますけれども、そのほかにいかがでしょうか。それでは、林委員、お願いします。

○林委員 今までの検討会の取りまとめ、ワーキング・グループの検討結果により問題点というのはだいぶ絞り込まれていると思います。公益通報者保護法が余りにも要件が厳し過ぎて使えないということを労働関係の方もそうやっておっしゃっていますし、私は改正したほうがいいと思うのです。運用だけで何とかするということでは、変わっていかないと思うのです。公益通報した人を保護するだけではなくて、それが結局は法令遵守につながっていくということで、ひいては消費者の保護にもつながっていくということを念頭に置いていただきたいなと思っています。

そういう意味では行政罰とか刑事罰が要るのかどうかという問題に関しては、あったほうがサンクションにはなるのだろうなと思いますし、それを使わなくても別にいいと思うのです。あるということによって一つの歯止めになるのではないかと思います。他方、インセンティブ、認証制度というのも考えられています。企業側にしてみれば公益通報、内部通報制度を取り入れようというインセンティブになっていくと思います。このように多角的に考えていかれたらいいのではないかと思います。検討会やワーキング・グループも実施されてきたのですから、ガイドラインだけでもいいというのではなく、法律の改正につなげていっていただきたいと思います。

○山本座長 ありがとうございました。

先ほどから少し出ていますけれども、もちろんこの専門調査会では制度としてどういうものを考えていくかということを検討するわけですが、その前提として具体的にこういう問題がある、あるいはこういう制度を作った場合には、具体的にこういう事象が生じる可能性があるといったようなことを是非、あらかじめ分かるところは資料として出していただきたいと思いますし、それから、この専門調査会で出た後でむしろもう少し検討して、こういうことがあるのではないかということを出していただくこともあるかと思いますけれども、あらかじめ資料を用意していただく段階で、できるだけそういった具体的な問題を提示していただければと思いますし、また、この場でもいろいろな経験をお持ちの委員がいらっしゃいますので、こういうことをやった場合には、具体的にこういうことが出てくる可能性がかなりあるのではないか。あるいは現状、具体的にこういうところが困っているといったことを是非提示していただいた上で、検討を深めていきたいと思います。

そのほかにいかがでしょうか。それでは、池本委員長代理、お願いします。

○池本委員長代理 オブザーバーの委員長代理、池本でございます。

皆さんの議論をお伺いして感じたことと、私の問題意識と重ねて申し上げます。

報告をいただいた中で、一方では労働者が企業内での内部通報についてなかなか信頼が置けない、外部へいきなり通報という選択肢しかないと考えている人が非常に多い。ここをきちんとしていくということは、むしろ内部通報の制度をもっと信頼できるような形にしていく必要がある。

他方でパブコメの中では濫用のおそれがあるという言葉が繰り返し出ています。

ただ、今お伺いしたところで言うと、濫用というか、本人は別に濫用しているつもりではなくて目的外使用が多い。それは既に亀井委員あるいは中村委員がおっしゃったような、関連する別の窓口と機能を分化して両方が見える状態にして、従業員に示すというような工夫が必要なのだろうと思います。そういうものとして先駆的例がどのようなものがあるのだろうか。あればそういうものを紹介していただきたい。

もちろん濫用的に繰り返し使うという事例があるということは、恐らく間違いないのだろうと思います。

ただ、私は企業の消費者相談、顧客相談窓口の方とお話をする機会が何度もあるのですが、そういう中でも必ず出てくるのは、クレーマー対策というのは大変なんですよということをよく聞きます。ただ、だからといって顧客相談窓口を絞ってしまえというのではなくて、それを絞ったら全然違うネットへいきなり流されるだけの話ですから、そこは大変だけれども、企業として信頼確保のために一定の時間は割かなければいけない。

むしろ顧客相談窓口の方々は、いろいろな企業の方と集まって対応策についてのノウハウを交流したり、そのようなことをやっておられるのです。そういう中での研修で最近の法制度がどうなっているか話してくれとか、そのような形で研修を相互にしながら情報交換をしておられる。公益通報者の内部通報窓口の担当者の資質をどう育て、あるいはどう交流しておられるのか。そういうことについても何か先駆的な例があれば情報を共有していくとよいのかなと。そういうことによって濫用のおそれとか、そういうことについての抵抗感というのが、少し先が見えてくるのではないか。

その上で先ほど石井委員がおっしゃったような、本来は通報されるべきものが見送ろうかということで通報されないがために、2年も3年もたって大問題になったことがいきなり出てきて、企業の社会的信頼どころか海外との取引すら危うくなるというような、そうなっていくのが一番悲しい状態です。そこで適正に情報が通報されるために現在の要件で足りるのか足りないのか。あるいはそういうことについて不適正な対応をする企業がもしあるとすれば、それは今の民事効だけでいいものと行政的なサンクションをつけるものが全く同じではないはずですから、そこの要件をどうするのかというふうに議論を積み上げていっていただければと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

先ほど具体的な問題というふうに申し上げましたけれども、もちろん具体的な取組としてこういうものがあるという、参考になる取組ももちろん示していただければと思いますが、そのほかにいかがでしょうか。

私から若干個人的に気になっていることは、公益通報者保護法が制定されたのが平成16年で既に10年近くたっていますけれども、この間に公益通報者保護制度に直接関わるわけではないのですが、しかし、間接的には少し関わりがあるのかなというような法制度等の改正がいろいろ行われていると思います。

例えばこの報告書の中にも少し出てきていますけれども、行政手続法の36条の3に何人も不利益処分を求めることができるといった規定が入っているとか、あるいは個人情報保護に関しても、かなり事業者に対していろいろな情報保護の義務付け等がかなり強く行われるようになっているということもあります。それから、法改正ということではありませんけれども、今、少し話が出ましたが、まさにインターネットとか情報の環境も非常に変わってきている。ある意味で個人が非常に簡単にいろいろな情報を出せるようになっている状況もありますので、抽象的な言い方になってしまいますけれども、是非この間の周辺の法制度の動きであるとか、あるいはその他の社会環境の変化ということも踏まえる必要があるのではないかと思います。

そのほかにいかがでしょうか。柿崎委員が今、御到着いただいて、いきなり御挨拶をお願いするのもと思いますけれども、よろしいですか。皆さんも既に1分ずつ御挨拶をされているのですが、お願いできますか。

○柿崎委員 明治大学の柿崎でございます。大変遅くなりまして、申し訳ございません。

明治大学では会社法等を中心に教えております。ただ、専門といたしましては、ずっと内部統制、コンプライアンスプログラム等を中心に研究をしております。その関係上、公益通報者保護法のことも諸外国のものと比較しながら研究論文を書いておりまして、そういうことで御縁があって、この度こちらに寄せていただいているのかなあと思っております。私も公益通報者保護法の改正については大変関心を持っておりますので、微力ながら何らかのお役に立てればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○山本座長 ありがとうございます。

≪3.今後の検討の進め方≫

○山本座長 もしよろしければ、次の今後の検討の進め方に議論を進めたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

それでは、次に本専門調査会の今後の検討の進め方等について事務局から御説明をいただきたいと思います。

○友行企画官 資料3を御覧いただけますでしょうか。公益通報者保護専門調査会スケジュール(案)とお示ししておりまして、一番上の段は本日のところでございますけれども、次回以降の進め方の御提案でございますが、次回は制度の実効性向上に向けたこれまでの取組と課題についてということで、消費者庁様から御説明いただき、あと、個別論点についての検討の進め方を議題として挙げておりまして、こちらは今日論点として御意見をいただいたものをまとめまして、また御議論いただくという形ではどうかと思っております。その後、個別論点の検討について入っていただきまして、7月頃に中間的な整理をしまして、8月頃に委員の先生方からの御要望に応じまして各界からのヒアリングなどを行いまして、9月くらいから取りまとめに向けた検討を行っていただき、秋頃に消費者委員会の本委員会へ報告という流れを今、想定しておりますが、このあたりにつきまして御議論いただければと思います。日程のほうは多少、前後動いたりするかと思いますが、全体の流れとしてはこのようなことではどうかと考えております。

○山本座長 ありがとうございました。

ただいまの事務局からの説明内容に対しまして御質問、御意見のある方はお願いしたいと思います。いかがでしょうか。あるいはこういった資料を用意してほしいと。先ほどそれぞれのテーマに関してその都度、具体的な資料を用意していただきたいという、具体的な事例あるいは問題等を示していただきたいということがございましたけれども、それ以外に何かこういうものを出してほしいとか、そういったことも含めて進め方等に関しまして何か御質問、御意見はございますでしょうか。お願いします。

○亀井委員 この場で思い付かなったような、こういったことを論点にしていただきたいというような内容を例えば運営しておられる事務局の方に、後ほどお送りして論点に加えていただくというようなことは可能なのでしょうか。

○友行企画官 はい、大丈夫でございます。

○亀井委員 ありがとうございます。

○山本座長 それは事務局に言っていただければ対応いたします。もちろん議論している最中にさらに論点が付け加わっていくことももちろんございますけれども、そのほかにございますでしょうか。

もし柿崎委員から具体的に、先ほどいろいろ私はこういうところに関心があるとか、こういうことを議論したいとか、こういう観点があるのではないかということをそれぞれ出していただいたのですけれども、何かございますか。いきなりですのでもし何もないということであれば結構ですが。

○柿崎委員 どういう御意見が出たかというのが。私の関心事ということで。

○山本座長 全くそれで構いません。

○柿崎委員 今日は全体の見通しについてディスカッションをする場ということだったのですね。

○山本座長 そのとおりです。

○柿崎委員 もう既に大まかには「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会最終報告書」のほうは拝見しているのですけれども、私の関心事としては、一つは公益通報の一元的な窓口を作って、そこに行政機関への2号通報をどのように対応させていくべきか、また現実的な対応としてどういう構築の仕方が可能なのかという問題があります。2号通報の立て付けは、全て1号通報と3号通報の実効性に関わってくることだと思うのですけれども、3号通報というのは、通常、マスコミへの通報ということになりますので、守秘義務を課すのは難しい。しかし、では1号通報に頼るだけで、全て企業に丸投げして、内部通報体制を整備せよというふうになると、それは企業のほうで体力差もありますから、その間を取り持つ形で、きちんと真ん中の2号通報の受け手である行政機関が、いかにして実効性のある一元的な窓口を設けるなり、他の行政機関との横の連携をとっていくことができるのかという点に大変興味を持っております。

もう一点、これは公益通報者保護法の規制立て付け全体に言えることですけれども、例えば私が研究しているアメリカの内部告発制度に関しては、現在、特に機能しているのは、証券市場の監督機関であるSECが窓口を作っているものになります。そうしますと金融市場、証券市場の機能の確保との関わりから行政処分の迅速性が問題となってきますので、できるだけ行政機関の窓口に迅速に通報が届くように工夫されていて、その後のSECの対応にも企業の対応についても迅速性が求められております。つまり適時性、タイムリーな対応がとても重視されているのですが、日本の公益通報者保護法の規制にはこうした視点が余り見えてきていないかなという気がいたしました。この点、企業の不正というのは、通報を受けてから、あまり悠長にやっていますと、それはどんどん2次被害、3次被害という形に発展していきますので、その適時性の観点からの規制の在り方について少し議論をしていきたいと思います。

三つ目は、かなりセンシティブなお話で、多分これから議論されると思うのですけれども、報復行為をした場合の刑事責任についてです。継続審議が必要という意見がございましたので、その点についても審議していきたいと私は思っております。ただ、これはやはりそれぞれのお国柄、企業文化といいますか、内部通報、公益通報の意義を現在の日本がどのように捉えているのかということをよく勘案しながら進めていかなければいけないなと思います。報復行為をすること自体はとても悪いことなんだというメッセージをどのような形で出すか。それは刑事罰という形で出すのか、もっと別の行政処分等の形で出すのか、どういう方法がいいのかというのはもう一歩、突っ込んで議論しなければならないと思います。もちろん諸外国で刑事罰を置いているところがありますが、そこと日本とどこが違って、なぜ日本では受け入れられないのかということを、もっと国民の理解が進めば受け入れられる余地ができるのか。それとも、今、入れてもいいのか。そのあたりは突っ込んで議論をしていきたいと考えております。

○山本座長 ありがとうございました。

確かに1号通報も重要ですけれども、2号通報、3号通報あたりをどうするかというところも非常に重要な論点ですので、そこも議論をしていきたいと思います。

それから、今、少し話に出ました諸外国の話ですけれども、これは数年前に消費者庁で委託調査をしていますね。

○太田消費者制度課企画官 はい、行っておりますが、その後いろいろ制度改正等あろうかと思いますので、どういう形でお出しできるか後ほど検討したいと思います。

○山本座長 数年前のものですので、その後また動きが当然あるところなのです。それをそのまま使うというわけにはいかないと思いますけれども、できる範囲で出していただければと思います。ただ、そのレポートをざっと見ましたが、なかなかそれぞれの国がそれぞれ悩みながら制度を作り、あるいは運用しているという感じがあって、直にこの国のこの制度を導入するとうまくいくというようなレファレンスとなるような国がぱっと一つあるというわけでもどうもなく、しかもそれぞれの国によって対応の仕方がかなり違っていて、それは当然、背後には公益通報に関する考え方もあるし、その国の法制度一般の体制の在り方の違いもあるので、どのように参考にするのかというのは難しいところがあるのですけれども、ただ、それぞれの国がそれぞれ悩みつつやっているということですので、情報としてそれも知っておくことは有益なのではないかと思いますので、可能な範囲でお願いできればと思います。

そのほかにございますでしょうか。全体を通じて進め方に関して、あるいは先ほどの最初の議論に戻っていただいても構いませんけれども、何かございますか。よろしいでしょうか。

それでは、今日はこのあたりにさせていただきたいと思います。

ただいまの委員の皆様からいただいた御意見を踏まえまして、次回以降、論点を少しずつまとめていくような作業をしていきたいと思います。

事務局から何かございますか。


≪4.閉会≫

○友行企画官 次回の日程につきましては、また追って御連絡させていただきます。

○山本座長 それでは、以上をもちまして本日は閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)