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2018年3月8日
消費者委員会

消費者契約法の一部を改正する法律案に対する意見

平成26年8月5日付けで、内閣総理大臣から当委員会に諮問のあった消費者契約法(平成12年法律第61号)の契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律等について、当委員会は平成29年8月8日付けで以下のとおり答申した。

○ 措置すべき内容を含むとされた論点のうち、法改正を行うべきとされた事項については、速やかに消費者契約法改正法案を策定した上で国会に提出し、改正法案が成立した場合においては、現行法の内容及び改正法の内容について幅広く周知活動を行うこと及び解釈の明確化が必要な点については逐条解説等において明確化を図ることなど、必要な取組を進めることが適当である。

○  ぜい弱な消費者の保護の必要性等現下の消費者問題における社会情勢、民法改正及び成年年齢の引下げ等にかかる立法の動向等を総合的に勘案した結果、特に3点の付言事項(下記1(1)~(3)参照)を早急に検討し、明らかにすべき喫緊の課題として付言する。

この度、「消費者契約法の一部を改正する法律案」(以下「法律案」という。)が閣議決定され、国会に提出された。当委員会としては、本法律案成立後、更に対応が必要な下記の事項について、消費者庁に対して速やかにその検討を進めることを強く要請する。

1 付言事項への対応について

以下の事項を早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題として答申に付言をしており、早急に検討するべきである。

  • (1)消費者契約における約款等の契約条件の事前開示につき、事業者が、合 理的な方法で、消費者が契約締結前に、契約条項(新民法第548条の2 以下の「定型約款」を含む。)をあらかじめ認識できるよう努めること。
  • (2)合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるい わゆる「つけ込み型」勧誘の類型につき、特に、高齢者・若年成人・障 害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもた らす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権。
  • (3)消費者に対する配慮に努める事業者の義務につき、考慮すべき要因とな る個別の消費者の事情として、「当該消費者契約の目的となるものにつ いての知識及び経験」のほか、「当該消費者の年齢」等が含まれること。

2 「平均的な損害の額」の立証に関する規律の在り方について

法第9条第1号の「平均的な損害の額」に関し、消費者が「事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額」を立証した場合には、その額が「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」と推定される旨の規定を設けることについて、更に精査が必要であり、引き続き検討するとのことであるが、その精査及び検討方法等について明らかにした上で、法律上に規定を設けるために必要な事項について速やかに検討するべきである。

3 「困惑類型の追加」について

消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院消費者問題に関する特別委員会・平成28年4月28日、参議院地方・消費者問題に関する特別委員会・平成28年5月20日)で措置を講ずることとされていた「困惑類型の追加」についても当委員会において更なる調査・審議を行ったうえで答申した。この「困惑類型の追加」への対応のうち、「不安をあおる告知」と「人間関係の濫用」について、法律案において「社会生活上の経験が乏しいこと」が要件に付加されることによって特に若年層の被害対応に重点が置かれたものとなっている。答申の趣旨を実現するため、高齢者等の被害対応についても今後速やかに検討するべきである。

以上