平成29年10月30日(月)から11月1日(水)にかけて,法務省,最高裁判所,知的財産高等裁判所,特許庁,日本弁護士連合会及び弁護士知財ネットの共催により,「国際知財司法シンポジウム2017~日中韓・ASEAN諸国における知的財産紛争解決~」を開催しました。
 本シンポジウムは,知的財産紛争の司法的解決について,ASEAN+3を構成する各国の裁判官を招いて討議し,模擬裁判やパネルディスカッション等を行うという初めての企画でした。本シンポジウムへは,中国・韓国・ASEAN諸国から合計35名の裁判官・弁護士が来日して討議に参加したほか,3日間を通じてのべ約1300人の方が参加し,盛会のうちに終了しました。
 
 法務省が中心となって企画したシンポジウム2日目においては,シンガポールを除くASEAN9カ国における商標の類否判断に関するパネルディスカッションと,法務省で実施している海外調査研究事業に基づく発表が行われました。
 

国際知財司法シンポジウム2017

パネルディスカッション

 パネルディスカッションを行うに当たり,シンポジウムに先立ち,モデレーターを務めていただいた日弁連知財センター委員長城山康文弁護士,同委員相良由里子弁護士のお二人が中心となって商標の類否判断に関する模擬事例と設問を作成いただきました。この事例と設問を,パネリストとなるASEAN諸国(シンガポールを除く。)の裁判官に事前に配付した上,予め回答を頂いておきました。
 
 ※模擬事例・設問はこちら(日・英)[PDF]
 ※各国からの回答はこちら(日・英)[PDF]
  第1分科会:カンボジアラオスミャンマータイベトナム
  第2分科会:ブルネイインドネシアマレーシアフィリピン
 
 シンポジウム当日は,午前中に分科会形式でのパネルディスカッションを行いました。第1分科会には,カンボジア,ラオス,ミャンマー,タイ及びベトナムの5か国(モデレーター:城山弁護士),第2分科会にはブルネイ,インドネシア,マレーシア及びフィリピンの4か国(モデレーター:相良弁護士)の各裁判官に参加いただき,各国の事前回答を基に,各国の制度・運用の比較について議論しました。
午後は,モデレーターが各分科会における議論を報告した上,全体パネルディスカッションが実施されました。
 
 パネルディスカッションでは,フロアから,日本の知財高裁裁判官にも,日本国内における商標関連制度やその運用について御発言いただきました。これらのパネルディスカッションを通じて,国内外の参加者が,自国の制度を軸としながらアジア各国の制度・運用について相互理解を深めることができたものと思われます。
 
 また,本パネルディスカッションは,上川法務大臣も聴講しました。
 ※法務大臣記者会見の概要はこちら

 


分科会1の様子


分科会2の様子


分科会を聴講する上川法務大臣

プレゼンテーション

 また,その後は,「知財紛争を含む海外調査研究事業」と題するプレゼンテーションが行われました。  
 法務省では,日本企業の海外展開を支援するなどの目的で,日本企業が多く進出し又は今後の進出が見込まれるアジア新興国に法曹有資格者を派遣して現地の法制度や運用等の調査・研究を行い,その調査結果を公表する事業を行っています(同事業の詳細はこちら)。  
 今回のプレゼンテーションでは,このような事業の概要を紹介した後,タイの調査研究を担当された池田崇志弁護士と,ミャンマーの調査研究を担当されている鈴木健文弁護士に,それぞれの調査実施国における知財制度の概要・特徴や,現地日本企業が直面しうる知財紛争の特徴とこれに対する対応方策などについて紹介していただきました。
 タイについては,特許法,著作権法,商標法など知的財産に関する法律が整備されている一方で,知的財産権を扱うタイ法弁護士の数が少ないこと,知的所有権の侵害が刑事罰に直結する場合が多いことなどが紹介され,ミャンマーについては,制定法が存在しない商標,特許,意匠につき,登録法による登録実務などによる対応が行われてきたものの,現在,知的財産分野における制定法の起草作業が進んでいること,起草作業中の商標法と著作権法の草案の概要などが紹介されました。
 プログラムの最後には,会場から発表者に対し,日本企業が現地企業と取引する場合の紛争解決条項の定めに関する留意点等について質問がなされるなど,プログラム全体を通し,法曹実務家のみならず海外展開を今後予定している企業にとっても有益な内容となりました。
※調査研究の概要資料はこちら(日・英)[PDF]
 

プレゼンテーションの様子

総括

 さらに,総括として,2日目最後に佐久間達哉法務総合研究所所長が,3日目最後に菊池浩大臣官房審議官がそれぞれ登壇し,法務省が行っている国際協力等について紹介したほか,本シンポジウムの意義についても触れ,今後も同様の企画を続けていきたいと締めくくりました。
 

2日目の総括をする佐久間法務総合研究所長


閉会挨拶を行う菊池大臣官房審議官

 なお,本シンポジウムの初日は,知財高裁の企画により,日本,中国,韓国及びシンガポールの裁判官及び弁護士が,特許訴訟における証拠収集手続についての模擬裁判を行い,3日目は,特許庁の企画により,知財紛争をテーマにした講演,特許や商標に関するパネルディスカッションが行われ,いずれも盛況でした。
 
 本シンポジウムは,国内外からの参加者に大変好評であっただけでなく,日本を中心とした知財司法分野のネットワークを構築する貴重な一歩ともなりました。
 法務省としては,今後も,こうした企画を継続的に開催し,日本を中心として,知財紛争の司法的解決の在り方に関する相互理解・情報交換等が一層緊密に展開されていくよう取り組んでまいります。
 

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