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日時

2018年7月5日(木)10:00~12:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員
【説明者】
消費者機構日本代表理事・副理事長 佐々木幸孝氏
消費者機構日本専務理事 磯辺浩一氏
埼玉消費者被害をなくす会専務理事・事務局長 岩岡宏保氏
京都消費者契約ネットワーク事務局・専門委員 伊吹健人氏
国民生活センター相談情報部長 保木口知子氏
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 関係団体からのヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

  • 議事次第(PDF形式:115KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料1】 消費者団体訴訟制度の実効性を確保するための課題(特定非営利活動法人消費者機構日本提出資料)(PDF形式:262KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料2-1】 ワーキング・グループへの報告(特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会提出資料)(PDF形式:287KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料2-2】 消費者被害防止サポーターの現況(特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会提出資料)(PDF形式:315KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料2-3】 なくす会への情報提供ツールと取扱結果について(特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会提出資料)(PDF形式:175KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料3-1】 京都消費者契約ネットワークからの報告(特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク提出資料)(PDF形式:225KB)PDFを別ウィンドウで開きます
     ※ 【資料3-1】については、2018年7月9日(WG終了後)、提出者より一部修正が行われました。
  • 【資料3-2】 差止請求訴訟一覧(特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク提出資料)(PDF形式:205KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料3-3】 差止請求・申入れ一覧(特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク提出資料)(PDF形式:217KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料3-4】 2018年度活動計算予算(特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク提出資料)(PDF形式:141KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料4】 消費生活相談における法律等の活用状況について~あっせん時の活用を中心に~(独立行政法人国民生活センター提出資料)(PDF形式:831KB)PDFを別ウィンドウで開きます

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、時間になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第5回会合を開催いたします。

本日は所用によりまして、山本委員が御欠席、樋口委員が遅れての出席との連絡をいただいています。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料につきましては、議事次第下部に記載しております。資料1から資料4となっております。不足がございましたら、事務局までお申し出いただければ幸いです。

それでは、鹿野座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.関係団体からのヒアリング≫

○鹿野座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、消費者法分野におけるルール形成の在り方の重要な論点のうち、「適格消費者団体の位置付けと役割」及び「消費生活相談における問題意識と課題」の2点について検討を行いたいと思います。

まず、前半で「適格消費者団体の位置付けと役割」の検討に当たり、参考人として4名の方々にお越しいただいています。

特定非営利活動法人で、適格消費者団体でいらっしゃる、消費者機構日本、略称をCOJとおっしゃるようですけれども、その代表理事・副理事長でいらっしゃいます、佐々木幸孝様。

同じく、消費者機構日本の専務理事でいらっしゃいます、磯辺浩一様。

それから、特定非営利活動法人で、適格消費者団体の、埼玉消費者被害をなくす会の専務理事・事務局長でいらっしゃいます、岩岡宏保様。

そして、特定非営利活動法人で、適格消費者団体でいらっしゃる、京都消費者契約ネットワーク(略称KCCN)の事務局・専門委員でいらっしゃいます、伊吹健人様の4名の方々にお越しいただいております。

会議の進行につきましては、適格消費者団体の皆様からそれぞれお話を伺った上で、まとめて意見交換を行いたいと考えております。

適格消費者団体は、現在、全国で18団体が認定されております。消費者庁によると、適格消費者団体による差止請求訴訟の提起件数は、本年5月末で54件を数えると報告されているところです。

また、これら適格消費者団体のうち新たな認定要件を満たす団体は内閣総理大臣の認定を受け、特定適格消費者団体として活動を行うことができるとされており、現在は、本日お越しいただいている消費者機構日本、埼玉消費者被害をなくす会を含め、3つの団体が特定適格消費者団体としての認定を受けているようでございます。

適格消費者団体におかれましては、差止請求、訴訟といった消費者団体訴訟制度を担う主体となっており、消費者被害の救済、防止に取り組んでいらっしゃいます。それ以外にも消費者向けの学習会等の開催のほか、消費者関連法制に関する提言を提出され、あるいは行政機関と連携した取組など、多岐にわたる活動に取り組まれている。そのような団体が多いと伺っているところです。

公正な市場を実現するためには、こうした適格消費者団体の活動をどのように位置付けるのか、また、現在ある課題は何かということを検討することがとても重要であると考えておるところでございます。

それでは、消費者機構日本の佐々木様、磯辺様、埼玉消費者被害をなくす会の岩岡様、京都消費者契約ネットワークの伊吹様の順で、それぞれの取組等につきまして、15分程度でまずはお話しください。よろしくお願いします。

○消費者機構日本磯辺専務理事 それでは、消費者機構日本から、まずは御説明します。お手元の資料1「消費者団体訴訟制度の実効性を確保するための課題」ということで、制度の実効性をより確保していくための制度上の課題に絞って報告をするという趣旨で準備をいたしました。

1つは、差止請求制度については私のほうから御報告し、被害回復制度については佐々木副理事長のから御報告をするという分担にしたいと思っております。

委員の皆様限りの資料でお手元にありますのが、消費者機構日本の設立以来の申入れ・申出事案等ですが、昨年度末、2018年3月末までで、累計で是正された事案が100件に至っております。そのうち訴訟にまで至ったものが4件で、多くが訴訟前の裁判外の申入れで改善が図られているということでして、特にお手元の資料の14番より上は適格消費者団体の認定を受ける以前の事案ですけれども、そこでは是正に至ったものの割合は比較的少なく、むしろ行政に申出等をして終了するという事案が多かったわけですが、適格消費者団体の認定を受けて以降については、裁判外のやりとりでおおむね改善が図られているということでして、背景に差止請求制度があることが効果的に機能していると言えるのではないかと思っております。

その上で、なお、私どもが実務を進める上でネックになっている点を中心に、4点ほど御報告をさせていただきたいと思います。

1つは消費者契約法9条1号の平均的損害の関係ですけれども、立証が困難な場合が多くて、なかなか裁判外で納得のいく解決が図られるというところに至らない事案があるということです。1つは美容医療医院の事例を挙げていますけれども、他の同規模の医院をかなり回りまして、それら医院の違約金の額に比べ、当該医院はずいぶん前の時期から高率で違約金を取っているということについて問題指摘をした事例があります。その件については、相手方が自らの事業の特殊性を主張してきたということで、それで終わっております。事業の特殊性がどのように具体的にキャンセル規定の水準と結びついているのかというところまでについては回答が得られず、それについては逆に先方から、具体的な水準があるのであれば申入れをする側が提示すべきだというようなやりとりで終了しているという事案です。この点、平均的損害の立証の軽減の手当てがされれば、更に踏み込んだ改善が図られる事例であるのではないかと思っているところです。

それと、一番私どもが差止請求の活動をする上で苦慮しますのは、相手方事業者からの回答が速やかに得られない場合です。もちろん電話をかけたりとか書面で再三にわたって督促をしたりということがあるわけですけれども、なかなか回答が得られない。だからといって差止請求訴訟に移行していくかということになりますと、団体の資源に限りがございます。大体年間の予算で2件の差止請求訴訟までを予算化しておりまして、それを超えると財政力を超えるという事情がございます。そのような場合、最近では、国民生活センターのADRの活用をしておりまして、これまで3件については、相手方からすみやかな対応が得られなかった事案について、ADRを利用することで相手方が協議に応じてくるような事例も出ているところでございます。

それと、個別事業者の差止めにとどまらず、業界全体で対応が進むようにするためにどうするのかという点が非常に大きな問題としてあると思っておりまして、いろいろな分野で差止請求をしますけれども、ある事業者の差止請求をすると、同種の事業者について消費者から情報提供が寄せられて、次に差止請求をするということを繰り返しております。業種に応じて一定、考え方がまとまりましたら、業界全体で対応していただくようなことが速やかにできないかなと常々思っているところでございます。

この間、対応いただいた事例としては、家電公取協の公正競争規約を見直していただいた事例があります。また、これは私どもが訴訟をした事例ではなくて、京都消費者契約ネットワークの訴訟で判決をとられているものの結果ですけれども、経済産業省で冠婚葬祭互助会の解約手数料の在り方に関する研究会を持たれた例とかが、業界全体に影響が及んだ良い例ではないかと思うわけですが、なかなか行政の関与が弱い業界にはそういう対応促進を図るためにどうするか手だてがないというところです。一つの対応策としては、約款等の推奨行為に対する差止請求権という点も、これは制度設立以来の課題ではありますが、検討に値するのではないかと改めて思っておるところです。

それと、食品表示法に差止請求権が入れられていますけれども、まだどの団体も裁判外も含めて一件も行使をしていないということだと思います。ここは食品成分分析機関との連携、分析費用の費用面での対応の課題があります。また、端緒の情報としては、普通の消費者の被害というよりも、実際の原料と表示の違いですから、内部通報的なものがないと難しいと思いますが、そういう意味では、公益通報窓口としてきちんと適格消費者団体が対応するのだということを対外的に示していくようなことも併せて必要なのかなと思います。この両方がセットでないとなかなか踏み込めない、情報も集まらないという状況ではないかと思っております。

とりあえず私のほうからは以上です。

○消費者機構日本佐々木代表理事・副理事長 佐々木のほうから、被害回復制度についての特定適格消費者団体としての活動について御報告させていただきます。この制度につきましては、施行後1年9か月程度経っているわけですけれども、いまだに共通義務確認訴訟の提起に至った事案は、私どもの団体を含めてありません。訴訟外の活動としてどんなことをやっているのかということについて、私どもの団体で、今まで公表している案件が4件ほどありますので、それを御報告しまして、活動のアウトラインを御理解いただければと思います。

最初はリゾートクラブの案件ですけれども、これは割合大手のリゾートクラブで、会員に対して事業者のほうから一方的にリゾートクラブを廃止するという通知が送られたというものです。このリゾートクラブは結構評判がいいところで、当初200万ほどの預託金を預けて会員になる会員権でしたが、流通市場では300万円近くの価格が付き、それを購入しておられる方もいらっしゃるというようなところでございます。

そこが突然会員権の譲渡を禁止して、近々に現在の会員権制度自体を廃止するという通知が送ってきましたので、会員から私どものほうにも情報が寄せられるという状況がございました。それに対して、一方的に会員権制度を廃止することはできない、それによって被った損害については、会員は損害賠償を請求する権利がある、という申入れをいたしました。それに対して、事業者のほうは、ちょっと誤解を招く通知を送ってしまったけれども、会員制度の内容についてまだ検討中であり、確としたものではないというような回答が寄せられ、その後最終的には、現在の会員制度については廃止を撤回して継続するという事業者からの回答が寄せられました。そういうことで、一応申入れとしては終了したという事案でございます。

2番目はシャンプー販売の事案です。ノンシリコンであるということをうたって、4,000~5,000円位でシャンプーを販売していたのですが、実際にはシャンプーの中にシリコンが入っていたということで、事業者が自主回収を行いました。回収の内容が、シリコンが入っていないシャンプーを渡されるというのであれば消費者も納得したのでしょうが、シリコンが入っているというシャンプー自体はそのままにして、表示のほうをシリコンが入っていますという表示に変えたものを消費者に渡すということだったものですから、消費者としては納得できないということで苦情が寄せられました。これに対して、私たちのほうで申入れの一歩手前の要請ということで、返金の対応をするようにという要請をいたしましたところ、事業者側の代理人がすぐに交渉を申入れてきまして、交渉をする中で返金対応をすることになりました。ただ一部返金対応の対象外となっているものもあって、全部の返金ではありませんけれども、いかんせんシャンプーが1本4,000~5,000円位のものであるので、この制度に乗せるということになりますと、私たちが試算してもかなり持ち出しになってしまう案件だということもありまして、返金の範囲を広げてもらうという交渉を現在も続けているところです。

3番目は韓国から人気グループを呼んで公演をするということで、チケットを購入した消費者がいらっしゃるわけですけれども、公演の予定日に公演が行われなかったという事件でございます。事案としてははっきりした事案なのですけれども、これについては、返金の対応をするようにということで要請をしましたが、回答がないまま今日に至っているという状況でございます。私どもが事業者を調査したところでは、めぼしい資産がないことが判明しています。ただ、かなりの数の方がチケットを購入しているわけで、その代金がどこに行ったのかということで、被害者の方は納得できないという思いを抱いているところでございます。

4番目は最近多い情報商材のケースですけれども、確実にもうかるという趣旨で勧誘がされて情報商材を購入しているわけですが、実際には勧誘のように儲かるものではなく、違法な勧誘であるということで、代金の返還を要請するという通知を出しているところです。事業者のほうは、一応求められれば返金している、というような回答をしているのですが、実際にもうかっているのだというようなことも言っていまして、こちらとは見解に隔たりがあるという状況です。

このような案件を含め検討してきた事案を基にして、これまで、共通義務確認訴訟の提起に至っていない要因なのですけれども、1つは施行日以降の契約事案あるいは不法行為事案しか対象にならないということで、当初寄せられた情報はほとんどそこで対象にならない事案が多かったということでございます。そんな中で、先ほど申し上げた1番の事案が、ちょうど施行日の平成28年10月1日に消費者に通知を送ったということでしたので、対象として取り上げたということになります。最近は施行からかなりたってきていますので、この制約はかなり緩んでいるということは言えるかと思います。

多数性の要件を満たすかどうかの判断が難しい場合があるということですけれども、一応私どものほうで共通性の要件を満たすと思われる事案につきましては、PIO-NETの情報の提供を受けまして多数性の要件を満たしているかどうか検討しているのですが、国民生活センターの情報提供には処理結果が表示されていませんので、実際に相談を寄せられた人が、その後、回収ができているのかどうかというところまでの確認が得られないというところがありまして、この制度自体が一旦開始されますと、止められないというところがありますので、多数性の要件が十分なのかどうかというところについて、かなり慎重に判断せざるを得ないというところがございます。

それから、共通性、多数性、支配性、これは3要件と言われていますけれども、これを満たしたとしても、相手方事業者の資力の問題で、損害金等の回収が見込めない事案も多いということでございます。相手方の事業者の資力が十分ではない場合には、債権の回収が困難になるわけですけれども、そうした場合に、手続に参加していただいた消費者に対して、費用倒れになってしまう可能性も出てくる。もちろん特定適格消費者団体としても費用倒れになってしまうわけですけれども、そういった事態を回避するために、提訴の判断については相手方事業者の資力がかなり重要な要素になってきますので、この辺も慎重な判断を行っているというところがございます。

先ほど申しました4件の事案の中で、1番、2番のような、ある程度事業者がしっかりしたところですと、こちらから申入れをしますと、その段階で対応して事実上の被害回復が図られるということがあるのですが、3番、4番のような事業者、ちょっと問題がある事業者ですと、なかなか交渉では解決が図れませんので、訴訟の対象になってくるわけですけれども、その場合に資力面が判断する上で重要になってきて、今のところ提訴が行われていないということが言えると思います。

制度活用をより容易にするための問題意識です。まず、損害金の回収が見込めない事案への対応策ですが、こういう事案で事業者を相手にする場合なのですけれども、相手方事業者に資力がない場合であっても、事業者から他に資金が流れているということが考えられるので、例えば弁護士が個別事件で訴訟をするとすれば、関連する役員個人とか、あるいは関係する会社を共同不法行為の相手方として訴えるということが考えられると思うのですが、この制度の場合は、役員等が資産をたとえ持っていたとしても、それを相手にすることができない。被告適格が限定されていますので、できないというところもこの制度を使いにくくしているところではないかと思われます。

またこの制度では共通義務確認訴訟を提起しますと、相手方からの回収が困難な場合でも通知公告を行わなければいけないことになっています。これは被害者全員が全額回収できた場合とか、相手方事業者が破産した場合は例外になるのだというような消費者庁の解釈が出されていますけれども、それ以外の場合には最後まで手続を行わなければいけないということになりますので、非常に費用がかかって、労多くして余り効果が上がらないということになりますので、そういうことがないように提訴の段階から判断をしなければならないということで、提訴に踏み切るのがなかなか難しい場合があります。

被害回復訴訟手続の途中に相手方が倒産状態になった場合ですけれども、現行制度では、特定適格消費者団体は債権者ではないために破産の申立てができません。そうしますと、先ほど言いましたように、最後まで手続を遂げなければならないということになりますので、この点も何らかの手当てがあるといいのかなと思っています。

それから、先方の資産の確認の方法の拡充。この点も、特定適格消費者団体とはいえ特にそういう調査方法についての権限を持っているわけではないので、この辺も何らかの拡充が望めないのかということです。

事案の中には行政が既に景表法とか特商法に基づいて業務停止命令とか措置命令を取られている事案もあるわけなのですけれども、そういう事案はこの制度で取り上げやすいように思われるのですが、行政は立入検査権等があって資料を収集できるので、立証面で有利であるわけです。特定適格消費者団体は特にそのような権限を持っておりませんので、事業者のほうで、処分とは別に事実関係について争われますと、立証が非常に困難になります。そういう意味で、行政機関から、なかなか難しい点があるのは承知しておりますけれども、行政処分が行われた際の手持ちの情報等の提供が行われるようなことが、公益的な仕事をするわけですので、何らかその辺の手だてがないのだろうかということでございます。

PIO-NETの点は先ほども言いましたように、処理結果まで提供を受けられると非常にありがたいということです。

1人当たりの被害額は、先ほどのシャンプー事件などですと数千円といったところで、私たちのところに寄せられる被害情報としては、数万円といったごく少額の被害も多いわけです。そういったものに対応するために、通知とか授権、意思確認の費用について低廉化するようなことができないか。民訴法のIT化が検討されているわけですけれども、そういったものが消費者と団体とのやりとりの効率化に利用できないかということを考えている次第でございます。

私のほうからの報告は、この程度でございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

続きまして、埼玉消費者被害をなくす会の岩岡様、お願いします。

○埼玉消費者被害をなくす会岩岡専務理事 資料は2-1を中心に報告させていただきます。資料2-1の太字、ゴシックで書いてあるところが、今日、なくす会から説明をしてもらいたいと言われている中身です。それに対応して資料を作りました。

1番目は差止請求・申入れについて、申入れに対する事業者の対応状況(‘お問合せ’への対応を含む。)ということですけれども、(1)とその下の表は、昨年度、2017年度の1年間、こんな形で進められましたというまとめになっております。訴訟については、NTTドコモについては敗訴いたしまして、東京高裁に上告していて、次の期日が7月18日となっております。台企画については、5月18日に裁判上の和解ということで終了しております。

41条書面は4件、申入れが9件、問合せが15事業者で17件ということなので、下の(2)にも書いてございますけれども、問合せ、申入れ、41条書面、訴訟という4段階で進めていくわけですが、問合せと申入れでほぼ8割方が、こちらが望む改善が図られているということになっているのかなと思っています。あとは例外的に事業者のほうから面談を求められるときには割と積極的に対応をさせていただいております。

次の(3)で、まずは消費者から情報が電話なりインターネットで寄せられるわけですけれども、それはあくまでも一方からの情報であるので、事業者である相手側からも事実だとか内容についてきちんと確認をする必要があると考えておりまして、ほぼ全ての案件で問合せから丁寧に進めているという状況です。

(3)が2つ出てしまって申し訳ないのですけれども、最後のなくす会の情報提供ツールと取り扱い結果について、これは資料2-3になりますが、表紙1枚で、日付としては2015年9月17日ということで古いのですが、この状況については今も変わっておりませんので、センター紹介というところ、要するに、センターに相談された方が相談員に勧められて、なくす会に情報提供をしたらいかがですかと言われて、その消費者から情報提供があるということですが、それについての検討事案になっていくものが7割を占めているということです。ですから、事案の中身について、適格消費者団体に適するものかどうかということについて、相談員も理解していただいて、そういうお勧めをしていく。消費者からの情報提供ですので、そういう結果になるということだと思います。

それが次の2番目、行政との連携についてのところにも関係していくわけですけれども、資料2-1の2ページになりますが、行政との連携については、消費生活課、県のほうの窓口と、消費生活支援センターと、我がなくす会のところで、年2回の定期協議をずっと継続しております。定期協議の合間にセンターと当会の事務局のほうでの懇談も年数回やっているということです。ですから、情報面の支援と、後ほど出てきますけれども財政的な支援についての両方をいただいているのかなという認識をしております。

「消費生活相談情報の提供と利用に関する覚書」をセンターと2012年に締結しておりまして、それに従いまして、検討事案に関する埼玉県内の相談窓口に寄せられている相談状況の情報提供を受けているということになります。

県のセンターということですけれども、当然埼玉県内の63市町村がありますが、そこの相談窓口にも寄せられている情報についても提供いただけるような状況になっております。必要に応じて国民生活センターへの情報提供も申請しているというようなことです。

(3)ですけれども、埼玉県が行っている消費生活相談員等への研修の中で「あっせん処理能力の向上と適格消費者団体の活用」というテーマがありまして、それを年1回設定していただいて、そこに『なくす会への情報提供の助言に、ご協力ください』というような冊子も、これはオブザーバーと委員の限定のもので、ちょっと厚手の紙ですけれども、それについてもセンターのほうに5枚から10枚置かせていただいて、相談員がすぐ手にとって相談のときに対応できるような感じで進めております。

話が前後してしまって申し訳ないのですけれども「あっせん処理能力の向上と適格消費者団体の活用」については、相談された中身が、あっせんがふさわしいのか、行政処分がふさわしいのか、行政のほうで直接裁判をする案件なのか、あるいは適格消費者団体というところに自分の被害は救済されないけれども将来の被害を防ぐという意味で情報提供をしたらいかがですかというのにふさわしい案件というように、その説明を講座の中でしていただいておりまして、そのようなことで相談員にも理解を深めていただいているということになっています。

次の委託事業における取組としては、埼玉県から埼玉消費者被害をなくす会は「消費者被害防止サポーター活動推進事業」と「高齢者等見守り促進事業」、「インターネット適正広告推進事業」について取り組んでいます。2017年度は養成講座を18回、フォローアップ研修&交流会を12回、全体のフォローアップを3回ということで、養成講座には316人の方に参加をいただき、フォローアップと交流会には157人、全体の交流会には82人が参加をしているということで、サポーターについても244人増えて、これは昨年度末ですが、595人になっています。

それを支える講座等支援チームを作っておりまして、弁護士4人、司法書士1人、相談員2人、高齢者等見守り促進事業の推進委員が5人いますので、その5人と、あとは事務局で構成していて、そこで講座の中身を検討したり、テキストを作ったりというようなことでやっているということです。併せて、講師の手配も同じチームでやっておりまして、2017年度は弁護士10人、司法書士7人、相談員18人の合計延べ35人で分担して講師をやったということになっております。

高齢者等見守り促進事業は、主な役割は埼玉県の63市町村に消費者安全確保地域協議会を設置していくことを促進すること。現在、11市町にありますけれども、あとは消費者被害防止サポーター養成講座で、サポーターになっていただいた方が市町村ごとに活動できるようにしていくことを進めているということで、次のページになりますが、2つの要素がありまして、消費者がグループ化をしていくことと、市町村の行政担当者が前向きにやっていただけるようにするということがポイントだと思っておりまして、昨年は61回訪問しているということです。

インターネットの適正広告については、まず、景品表示法の講座をやりまして、フォローアップ研修も行いましたけれども、年間では1万1,835件のチェックを行いまして、16について啓発メールを送ったということです。これについては、弁護士4人のチームを作って進めているということになっています。

ちょっと時間がなくなってしまったので、受託事業と差止請求等との両立については、1つは差止請求のところでの事務局機能とか弁護士、司法書士、相談員による検討委員会などへ影響をなるべく及ぼさないように運営しております。埼玉県からの受託料で人員を補強して、事務所スペースも拡張して、デスクだとかパソコン等の整備も賄っておりまして、2016年度と2017年度は一定手元に残すことができましたけれども、2018年度は御存じのように消費者庁の予算が大分減りまして、委託料も大きく影響して減少しているということで、一定規模の事業になっておりますので、単年度では、2018年度は赤字予算という状況になっています。

そういうことで、(3)にありますけれども、現状の埼玉県からの受託事業については、被害の未然防止、拡大防止につながっているわけですが、いわゆる差止請求や被害回復という直接的なところとは言えないので、そこら辺について関わる受託事業も増やしてもらいたいという考えがあります。

(4)でありますけれども、消費者庁から新たに「消費者被害の実態調査業務(北関東地方)」について受託ができましたので、多少赤字は改善できるのかなと思っています。

次の大きなところで、必要な支援策についてですけれども、まず、権限の強化・拡充については、通信販売業者に関する権限の強化について3点ほどお願いしたいと思っています。

マル1としては、広告表示義務違反と不適正申込画面の禁止を差止請求の対象に加えてほしいということです。理由としては、消費生活相談のうち通販のトラブルが多数を占めている現状の中で、虚偽誇大広告の禁止違反だけが差止請求の対象になっているので、それでは不十分ではないかということと、インターネットの通販については、地域を限定しないトラブルが発生しているので、行政権限の範囲が限定されている都道府県では、なかなか行使が困難ではないかと考えているからです。

2つ目としては、虚偽誇大広告について合理的根拠資料の提出要求による不実証広告規制の権限を付与してほしいということです。これは先ほどCOJのほうからあった内容と重複していると思いますけれども、適格消費者団体については、報告徴収・立入検査権限がないために、事業者の内部情報を入手することが極めて困難だということ。それから、現状では、適格消費者団体が不当表示を取り上げることができるのは、契約条件に関する不当表示に事実上限られていて、商品の品質効果に関して取り上げることは困難なためです。例外としては、京都消費者契約ネットワークのクロレラの事件がありましたけれども、これは医療の関係だったので例外的だったのかなと思っております。適格消費者団体の体制に照らして、立入検査権限は実施困難だけれども、合理的な根拠資料の提出要求と不実証広告の規制は、適格消費者団体でも活用ができるのではないかということです。

3つ目としては、不当表示の差止請求を行使できる要件として「違反行為を現に行い又は行うおそれがあるとき」という意味について、実質的に拡大できないかということです。理由としては、インターネット広告では、差止請求の申入れをして訴訟を準備している間に広告表示を一部修正、あるいは変更後の広告表示について申入れを送付しなおして訴訟の準備をする間に、再度一部修正するケースが多く、当会が求める改善が実施されているものではないのに、都度申入れ内容を変更する必要が発生していて、なかなか前に進むことが難しいという状況があります。行政庁が行う措置命令については「違反行為が既になくなっている場合においても、することができる」という規定になっているので、適格消費者団体はこれと同じという権限を与えるか、そうではないにしても、短期間に変更するインターネットの広告についても対処できるような、実効性のある規定を設けてほしいと考えているということです。

資料2-2は、県の受託事業の状況について1年間のものをまとめたものを1枚お付けしました。机上配付資料としては、なくす会のニュースレターが1つと、サポーターのほうのニュースも、こんな活動をやっていますということをお伝えしたくて、新しいものを2つほど配付させていただきました。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

続きまして、京都消費者契約ネットワークの伊吹様、よろしくお願いします。

○京都消費者契約ネットワーク伊吹事務局・専門委員 京都消費者契約ネットワークからは、事務局・専門委員の伊吹から御報告させていただきます。資料は3-1以降の資料になります。

3-1のレジュメを基にお話しさせていただきますが、御報告の内容は大きく分けて2つで、1つは差止請求・申入れとそれらに対する事業者の対応状況、もう一つは必要な支援策についてということになります。

まず、差止請求関連のところですけれども、こちらは事業者のほうの対応状況に応じて幾つか分けて記載させていただいています。まず、(1)は差止請求・申入れにより対象行為が改善されたものです。こちらは例えば水素水商品のインターネット上の広告がありまして、これは人の疾病に対する予防・治療の効果効能があるかのようにうたう表示について申入れなどを行った結果、表示が削除されるなどしたという例です。

(2)は差止訴訟の提起後に対象行為が改善されたものの例です。1つの例は、健康食品のお試し価格表示です。実際には通常価格での定期購入が条件となっているのに、特別価格で初回の1回から購入できるかのような表示について、訴訟提起後に表示が改善されたため、和解が成立したというものがございます。もう一つが結婚式場の解約金条項です。こちらも訴訟提起後に対象となる解約金条項を記載した約款を使用しないとする和解が成立した事例がございます。

(3)が差止訴訟の判決後に対象行為が改善されたものです。1つ目がアの不動産賃貸借契約の定額補修分担金条項です。こちらはレジュメの訂正がございまして、正確には確定した控訴審判決が請求一部認容になっていまして、こちらのほうで一審が命じた差止部分が維持されて差し止められたというものになっています。イが冠婚葬祭互助会の解約金条項で、確定した控訴審判決の請求一部認容の内容に従って、解約金条項が実際に改善されています。こちらは全国的なモデル約款の解約金条項もその後変更されていますし、先ほど磯辺様から御報告がありました経産省の研究会での発展にもつながっています。

ウが未公開株の勧誘事例でして、こちらも第一審判決の請求全部認容判決が確定し、差し止められています。エがクロレラチラシ事件でして、こちらは対象事業者によると、第一審判決は請求全部認容でしたが、その後に差止請求の対象となっていたチラシの配布自体は取りやめて、内容を変更したチラシを配布しているというふうにされています。オはインターネット接続サービスの解約料条項です。こちらも第一審判決で請求全部認容されたものがありまして、その後、解約料条項が実際に変更されています。

(4)はその他で2つ挙げているのですが、1つは携帯電話の解約料条項です。いわゆる2年縛りと言われる問題ですけれども、2ページに進みまして、最終的な結論としては、判決としては敗訴したものが確定しているのですが、その後、総務省や公正取引員会で見直しの議論がなされ、総務省による直近の指導にも発展しているという発展の仕方をしています。

イが結婚式の解約金条項で、具体的には訴訟の中での事業者の対応ということで取り上げておるのですが、被告事業者のほうが、訴訟において、解約金の額が消費者契約法9条1号の平均的な損害の額を超えないということを主張しつつも、立証責任が団体側にあるということを理由として、根拠資料を提出しないという状況が続きました。当団体から再三提出を要請したことについて、被告事業者から訴訟提起後に作成された一覧表が提出されましたが、その中には一見して明らかな誤記などが多数存在して、信用性に疑義があるのではないかということが問題になりました。団体からは、訴訟上の手続である文書提出命令の申立てをしましたが、裁判所のほうでは提出義務は認められませんでした。また、裁判所のほうが適切に指揮できるのではないかというところもあるのですが、裁判所のほうでは、証拠が提出されるのが望ましいということは述べていましたが、積極的に提出するまでは至らなかったという状況になっております。

以上が概要ですけれども、詳しい内容は資料3-2、資料3-3が当団体の差止請求活動の一覧になっておりますので、また適宜御覧いただければと思います。

2ページの2、必要な支援策についてです。まず、前提となる適格消費者団体や特定適格消費者団体の役割についてですけれども、これまでの御報告からもお分かりのとおり、不特定多数の消費者、言わば公衆の利益の実現あるいは市場の公正の確保という観点から、民間団体が公的な作用をかわりに担っていると理解しております。こういった前提からして、やはり支援が必要であろうということを考えています。

まず、(2)が経済的な支援です。京都消費者契約ネットワークの経済状況として、資料3-4に今年度予算を挙げておりますけれども、予算上の収益は約130万円。これだけのもので活動していかなければならないという状況です。主な原資は会員の方からの会費や寄附です。これだけでは賄い切れませんので、実質的には役員、事務局、専門委員あるいは訴訟代理人の弁護士については、一部の事務局職員を除き無報酬、ボランティアで対応していただいているという状況になっています。こういった状況からすると、なかなか団体として継続して、かつ、より効果的な活動をしていくのにはかなり苦しい状況であるということが御理解いただけるかと思います。

こういった状況からすると、幾つかの支援が必要だと考えていまして、まず、1つは団体に対する恒常的な資金援助です。さらに、他に考えられるものとしましては、差止実績に応じた資金援助なども考えられるのではないかと思っております。例えば、差止請求により対象行為が改善された場合などや勝訴判決が得られた場合などに一定の資金援助をいただくというものです。もう一つは、鑑定料などの調査委託費用の援助です。こちらは差止請求活動を行う上で参考としたり、証拠としたりする専門家による鑑定、意見などにかかる費用を援助いただくというものです。先ほどからお話がありますとおり、例えば景品表示法の優良誤認表示とか、食品表示法上の差止請求に当たっては、商品の効能効果とか原産地、成分などの分析が必要になりますけれども、そういったところの専門家による鑑定にかかる費用、あるいは適格消費者団体が扱う訴訟は消費者法分野でも先端的な問題を扱いますので、法的論点についても研究者の方に御意見をいただいたりすることもあるかと思いますので、そういった費用が考えられます。別の観点としまして、団体と連携する地方消費者行政への財政支援も必要であると考えております。

また、別の観点からの支援としまして、(3)が権限強化・拡充という問題です。3ページに移りまして、まず、アが差止対象の拡張です。こちらは先ほど埼玉消費者被害をなくす会のほうからもお話がありましたけれども、特定商取引法上の差止対象行為が限定されているというのが問題であると考えています。特に誇大広告についても、例えば定期購入の販売条件等が対象になっていないということもありますし、他の問題として拒否者への勧誘、勧誘目的の不明示など、勧誘における問題についても対象としていくべきだと考えています。

イが差止請求権の強化です。これも先ほど埼玉消費者被害をなくす会のほうから御報告がありましたが、差止対象行為がなされなくなっている場合にも対象となることの明文化です。事業者のほうが差止めを受けた、あるいは訴訟を提起された段階で、一旦はその行為を取りやめておく。それだけで、もし判決で請求が認容されなくなるとすると、その後にまた再開されるおそれが出てきてしまう。例えば景品表示法の措置命令の規定では、既になくなっている場合でも対象とすることが明文化されていますので、こういったものを参考に手当てするのが必要ではないかと考えています。

ウが事業者に対して資料の提出を求める権限の付与です。適格消費者団体や特定適格消費者団体に、差止請求や訴訟手続を追行する中で、対象となる事業者に対して、事業者が保有する資料で、対象行為に関係するものの提出を求める権限を与えるというものです。まず、例として約款を挙げていますが、そもそも差止請求の段階で約款自体が明らかにならないので、詳細の検討が進まないということもありますので、約款の開示、あるいは解約金の算出根拠資料、商品の効能効果の根拠資料などが考えられます。これらについては、違反がなされた場合の真実擬制などの制裁も必要かと考えています。

先ほどの結婚式場の事件にありましたように、解約金などの問題に関しましては、消費者契約法9条1号の平均的な損害の額の立証責任の転換という手当ても必要であると考えています。情報としては、事業者としては解約金を定める際に、本来その根拠となる資料に基づいて算出しているはずであり、その資料は全て事業者側にありますので、それを事業者側に立証させるというのは何ら不当ではないと考えています。

(4)が行政との連携の可能性ですが、まず、当団体が実際に過去に行った例としましては、先ほどもお話ししました未公開株の勧誘事例について、行政あるいは弁護士会とも連携したという例があります。未公開株の勧誘事例について、行政、弁護士会、KCCNで連携して、まずは110番を行いまして、多くの方から被害情報を集めました。その上で、被害回復については弁護士会のほうで弁護団を立ち上げて集団提訴をする。さらに、今後の予防のために適格消費者団体から差止請求をして訴訟提起をする。行政からは、京都府から警告などをするという形で、三位一体で活動をして、予防と救済の双方を図ったという事例がございます。

今後の発展としましても、まず、情報共有という形で、団体が行政からの情報提供を受け、差止請求・被害回復に生かすというのは必要だと考えています。逆に、行政のほうが現場で活動する団体のほうから情報提供を受け、行政指導、行政処分等に生かすことも考えられると思います。例えばインターネット上の広告などへの対応につきましては、かなり多数のものがインターネット上には存在しますので、適格消費者団体が全て対応していくというのは物理的に限界があるかと思いますので、そういったところは行政のほうで対応していくということが必要ではないかと考えています。

あとはPIO-NET等の相談情報の一層の活用ということで、こちらの相談情報につきましては、いずれも事業者の行為の態様とか時期・期間、苦情・被害の実態、規模などを把握する上で大変重要な情報だと考えています。団体が適時に情報を把握できるようにするためには、PIO-NET端末の配備が必要だと考えています。先ほどのような団体の状況などを考えますと、配備・維持に関して費用負担を伴わない形が望ましいと考えています。

その他としまして、消費者、事業者への消費者団体訴訟制度の周知があるかと思います。今後、団体自体の活動を全国的に知っていただくことが必要になっていると考えています。

あとはレジュメに書かせていただいていないのですけれども、このような消費者契約法などの法律の運用を担う立場として、ルール形成の在り方についてお伝えしておきたいことが最後に1点だけございます。それは昨今、民事ルールの規定が個別化・具体化される傾向にあるということについてです。先の消費者契約法専門調査会では、明確なルールでなければ事業活動が萎縮するというような趣旨の指摘がありました。また、本年6月に成立した消費者契約法の改正法でも、追加された取消事由について、個別的な事例を対象として、要件もかなり具体化されたものになっています。このような傾向が進んでいくと、消費者契約法を初めとする民事ルールにおいて、包括的な規定を置くことがなされなくなるのではないかということを懸念しております。

しかしながら、当団体のこれまでの差止請求活動の経験からしましても、包括的な規定は消費者被害の予防、救済のために不可欠と言えますし、包括的な規定により実務上支障が生じるということは言えないと考えています。例えば現行の消費者契約法でも、不当条項規制に関しましては8条から9条までの個別的なリストと10条の包括的な規定が存在します。社会的に存在する不当条項は様々ですし、時代の流れによっても変容するかと思います。10条の包括的な規定は、そういった不当条項に適切に対応するのに不可欠なものだと考えています。例えば建物賃貸借契約の定額補修金分担条項とか、不当な原状回復条項などは、包括的な規定がなければ対応できなかったものです。また、10条の判断基準や考慮要素は最高裁判決などによって具体化されていますし、個々の事例における法適用に当たっても、社会通念に基づいて適切に運用されています。民事ルールである消費者契約法は、事前規制ではなく事後規制を定めたものですから、裁判手続において適切に運用されていることが確保できる以上は、それを超えて行政ルールや刑事ルールのような予見可能性を求めるべきではないと言えます。

不当勧誘行為については、その対応が様々であって、また、時代の流れにより変容するということは全く同じだと考えています。それにもかかわらず、現在の消費者契約法には、不当勧誘規制についての包括的な規定がいまだに設けられていません。

限定的な類型しか規定されていない現状では、消費者被害の予防・救済の観点からは不十分な状態になっていると言わざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。

以上で報告を終わります。

○鹿野座長 ありがとうございました。

3つの適格消費者団体にそれぞれの特徴的な活動状況をお話しいただくとともに、かなり具体的なところまで含めて、課題について御指摘、御意見等をいただきました。ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。それぞれ本当にリアルな取組の状況の御報告をありがとうございました。まず、差止請求制度についての課題に関連して、情報や権限の側面と財政の側面とがありましたが、財政の側面に関して、COJの方に1点質問があります。

先ほどの報告の中では特に触れていらっしゃらなかったかと思うのですが、民間の団体、スマイル基金というものを立ち上げて、民間からの寄附を集め、適格消費者団体の取組に財政支援をしようという取組をなさっておられますが、寄附の集まり具合というのか、あるいは社会の反応がどうなのか。これについて今後どのような取組が必要なのかという点について、少し紹介していただければと思います。

○鹿野座長 それでは、よろしくお願いします。

○消費者機構日本磯辺専務理事 スマイル基金につきましては、全国消費者団体連絡会が幅広く呼びかけをさせていただいて、法律専門家の方々や消費者団体の関係者の方々に御支援をいただき、また、事業者や事業者団体にも会員として参加をいただくという形で設立された基金でして、まだ初年度の事業中ということになります。

そういう意味で、私は直接の当事者ではありませんので、仄聞する限りでということになりますけれども、初年度の年間の助成規模は300万円ということで、これはその年度に集まった寄附金をそのまま助成に回すということで、何か大きな基金が既にあって、その運用で助成をするということではなくて、毎年集めた寄附金を適格消費者団体等消費者団体の公益的活動への助成に回すという活動をしているということでございます。初年度につきまして、間もなく9月から8月が年度の区切りになっていますので、間もなく初年度の事業が終わるのですけれども、ほぼ300万円の助成事業が行えるということで、既に150万円の助成事業を1回行い、次に2回目、150万円の助成事業ということで、先日、応募が締め切られたという段階だと思います。

ここにつきましては、設立時に特に法律専門家の方々から寄附を相当いただいたと聞いておりまして、そのようなこともあって、初年度の300万円の事業については達成ができるということと、助成の対象につきましては、集まった金額が300万円程度だったということも含めて、適格消費者団体の差止請求訴訟を行っている適格消費者団体の差止請求関係業務に使ってもらおうということで、そこに限定をして助成事業を初年度は行い、1回目の150万円は6団体から応募があって6団体に助成をしたと伺っております。これは公表もされております。

そのような状況でスタートしたということですが、要は、毎年寄附金を集めて助成事業に回すということですので、確実な、定期的な寄附先の確保、さらに、寄附をいただく相手先をどう広げていくかというようなことが当面非常に大きな課題ということで、次年度の事業計画をどう組むかという議論がされているのではないかと思います。

とりあえず、私の知っているところです。

○鹿野座長 ありがとうございました。

高委員長、お願いします。

○高委員長 御説明ありがとうございました。今日の御説明を聞きまして、皆さん方の活動が報われなかったら、日本には公正な市場などできないな、ということを強く感じました。やるべきことはたくさんあるなと思いまして、今度、私どもも1つひとつ課題を潰していきたいと思っております。

まず、最初の感想というか、ちょっと私の中で整理させていただいて、質問は1つだけなのですけれども、3つ論点があったかと思っております。最初は、特に消費者庁との関係ということになるのでしょうか。皆さん方がやっておられるお仕事は、この活動は明らかに公的な役割を担っておられるわけです。そういう意味で、資源云々という話をするときは、消費者庁の機能と皆さん方がやっておられる活動をどのように関係付けるのか。ここをきちんと整理したほうがいいなと思いました。もともとこのワーキング・グループの問題意識は、民事ルールと行政措置の関係をどう整理するかということですので、改めて1番目、ここはまず整理しなければいけないと思いました。

2番目ですけれども、それぞれ差止請求にかかわるところ、被害回復にかかわるところ、そういった活動をしていただいているのですけれども、もしこれがもっと皆さん方がやりやすいような形になれば、恐らく申入れとか問合せだけで問題はほとんど解決していくことになるのだろうと思いました。その意味で、差止請求のところ、被害回復のところで皆さん方が問題に感じているところを確実に潰していかなければいけないと思いました。例えば通販の業者に対する権限の強化も正にそのとおりでありますし、合理的な根拠資料の提出権限、これに併せてその他の資料の提出を求めること、解約金の算出根拠の資料の提出とか、こういったものがなかったら、確かに皆さん方がやろうと思っている活動はうまく進んでいかないということで、我々ももっともっと知恵を絞っていかなければいけないと思いました。それから、不当表示に対する差止請求を行う、行使する場合の要件の拡大という話。これは京都消費者契約ネットワークでも差止対象の拡張という話をしていただいておりまして、この部分もきちんとやらなければ、現在、起こっている消費者問題にはうまく対応できないと感じました。今、申し上げた2番目のところは、法的な措置、枠組みをどう作り上げるかという話になるかと思います。

3番目が経済的な支援。情報を提供するという支援の話もありますけれども、財政的な支援は本気になって考えないと、活動だけやればやるほど、今の状況が続けば続くほど、それぞれの活動が財政的に細っていくわけですから、結局何もできない団体になっていくという意味で、これでは公正な市場など構築することができなくなると感じました。ですから、皆さん方がやっておられる活動が、持続的に独立して、もちろん寄附も重要ですけれども、持続して展開できるような仕組みを考えていかなければいけないと思いました。

京都消費者契約ネットワークの方に聞きたいのですけれども、質問です。財政的支援のところで、2ページの2の(2)のウがあるのですけれども、差止実績に応じた資金援助だけでいいのですかというのが、私の質問です。というのは、差止めまでいかなくても、いろいろな活動をされているわけではないですか。これはこれだけで十分だとお考えなのか、あるいはもしその前段のところでも、例えば申入れで終わったものについても、このような形で考えてもらえるとありがたいとか、その辺に関しても御意見をいただけるとありがたいです。

○京都消費者契約ネットワーク伊吹事務局・専門委員 KCCNの伊吹です。御質問ありがとうございます。

今、正にお話しいただいたところは私もそうだと考えていまして、経済的な支援につきましても、今、ここで例えばで書いているもので十分だとも考えておりません。その前段階からの差止請求活動とか、そういった活動の内容なども考慮いただいて支援いただくというのが一番かと考えています。その中で、一番分かりやすい例としては、こういった結果が得られたという例が分かりやすいので、まずはこういったところから議論を前提として進めていって、更に広げていただくのが一番良いかなと考えております。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本です。特定適格としての集団的被害回復のことに関連して、COJの方にお聞きしたいと思います。先ほども、まだ1年数カ月たっても訴訟提起に至ったものがないというお話がありました。それに関連しての質問が1つと、それから、訴訟前の申入れで事実上返金対応をする動きが出ているということに関連しての質問が1つ。2つあります。

まず、訴訟提起に至ったものがないということに関連して、先日、ある方からこういう質問を受けたことがあります。どう考えればいいのか。分かりやすい例として、ジャパンライフという去年から今年の初めに大問題になった事件がありますが、消費者庁が4回にわたって業務停止命令をかけてもなかなか倒産しないでいた業者です。商品預託取引で商品が存在しないということだから、不実の告知を共通争点で確認すれば全ての契約者共通の争点で一気に解決できるのではないか。あれが集団的被害回復の制度で申立てができなかったのはなぜなのでしょうか。こういう質問があったのです。これを先ほど幾つか課題があるというようにおっしゃったこととの具体的な事件との関係ではどう見ればいいのかという点について、御説明いただければというのが第1点です。

2点目は、訴訟にまで至らなくても申入れをして返金姿勢を示されたということ。これは差止請求制度でも、訴訟にまで至らなくても任意に中止する。それはそれで早期解決という意味では、事業者にとっても、消費者にとっても喜ばしい事態なのかもしれません。被害回復についても自主的返金ができれば喜ばしいことかもしれませんが、その場合に何か制度的な課題があるのではないか。実はその問題意識は、行政機関が、例えば業務停止命令に併せて指示処分をするときには、全員に通知をしなさいと。顧客全員に、例えば不実告知であったことを通知しなさい、何に対してどういう文面で通知したかを報告しなさいと、そういう指示ができる。それに対して、この期間内に何件消費者からの申出があり、それに対してどう対応したか、あるいはどう対応する予定かを報告しなさいと、そのような指示処分の形でやっているのです。被害回復制度については、訴訟になって第一次の判決が出て、その後にどう動くというのは制度化されていますけれども、事前の申入れで対応するということについては、制度的な手当てが実はないのですね。その辺り、現実問題としてそういう案件が今後出てくる場合に一体どうすればいいのかという点について、これは本当にこれからの課題かもしれませんが、教えていただければと思います。

○鹿野座長 それでは、2点お願いします。

○消費者機構日本佐々木代表理事・副理事長 最初のジャパンライフの件ですけれども、あれはたしか債権に見合う資産がないという破産状態にあることがかなり明らかになっている事案だったと思うのです。被害回復の手続も、全被害者の損害回復を目指すという点で、非常に破産手続と似ているわけですけれども、あくまでもこれは裁判手続を通して、共通義務確認の訴訟において判決をとって、その後、簡易な手続で配当するというような、ある程度時間を要する裁判手続を経るもので即効性のあるものではありません。また破産手続のような管財人が内部に入って財産を調査して、どこに資金が流れていくとか、そんなところまで調査するような手段もないです。

先ほど言ったように、この手続を始めてしまうと最後までやめられないというか、手続を遂行しなければならないので、この事件に関しては早期に破産手続でやるしかないのではないかと私たちのほうでは判断していました。確かに事案としてはこの制度になじむ面もあるとは思いましたけれども相手方の資力の問題とか、資金流れの解明など、そういった点を考えたときには、破産手続のほうがふさわしい事案だなとは考えておりました。それが1点についての回答になっているかどうか。もし足りないところがあったらまた御質問いただければと思います。

2点目の自主的な事業者に対して対応を求めるといった場合に、手続の中では、確かに何ら規定がされていないわけですから、本当に事業者と交渉の中で、これはここまでやってくださいというようなことを言って、それを相手方が納得してやりますと言ったときにやってもらえるという点で、行政のように、いつの期間にどこまでをやれということは、こちらのほうとしては求めますけれども、相手方が応じないとそのままになってしまうということです。しかも、では、と言って訴訟を起こして、訴訟の手続の中で、和解の形で第1段階目の共通義務確認の訴訟の和解の中で、そういう柔軟なことができるかというと、これはもうできないわけですね。そこでできる和解は、事業者の責任の有無だけを確定する和解しかできませんので、非常に硬直的な和解しかできなくなってしまう。

むしろ柔軟なことをやろうとすると、1つは、そのときに共通義務確認訴訟の外で、訴訟外で和解ができるのかという問題があるのですが、そこもちょっと消費者庁のほうの見解としては否定的なところがありますので、やはり間違いなくやろうとすると、共通義務確認訴訟の中で、責任の有無だけについての和解をするということになりますので、そうすると、訴訟前の段階で事業者と交渉する中で柔軟な解決を求めるということになってきます。

そういう意味で、事業者との交渉をいかに充実してやっていくのかというところで今は対応しているのですけれども、先ほど言いましたシャンプーの場合ですと、一部の返金、事業者にとっては、通販で売っているものについては顧客が分かっているわけですけれども、それでも、ボトルを持ってこなければ返金しませんよというようなことを言われていまして、使い切ったボトルをとっている消費者がいるというのもなかなか考えにくくて、そこはもっと柔軟にしてもらいたいと言っているところなのですが、だからといって、訴訟というところまでも、ちょっと踏み切れないというところで、結局交渉でやっているといったところです。

○池本座長代理 ありがとうございます。第1点目の質問に関連して確認的なことですが、もう破産であるという状況が見えると、集団的被害回復の制度ではどうにも対応できないということですが、先ほどの冒頭の御説明の中で、破産申立権限がないことに手当てが必要だという説明がありましたが、破産申立権があれば、場合によっては、最終的にはその申立てを含めた手続の着手ということもあり得たのでしょうか。と申しますのが、ジャパンライフの件では、行政処分が4回出てもなかなか潰れない。各地に弁護団ができ始めたけれども、弁護団のところに被害者が相当数集まらないと破産の申立ての債権が集まらないので申立てができないので、結局ずっと3月くらいまでずるずる延びたといういきさつがあります。その辺りで、被害回復制度と破産とをつなぐものを誰がどのように権限を持てばいいのかということについて確認したいと思います。

○消費者機構日本佐々木代表理事・副理事長 破産の申立ては、事業者にとってある程度、死刑宣告に近いことになるわけですから、破産の申立権限を与えるということに対しては、非常に事業者側のほうからも抵抗があるところだと思うのです。今まで消費者庁に破産権限を与えたらどうなのかという議論は、違法収益の剥奪などの議論で大分されましたけれども、これもなかなか難しくて、今、できていないわけですが、今のジャパンライフの件を見ても分かるように、どこか公的なところに破産権限を与えないと、こういう問題で被害者の方がどうしたらいいのかということで右往左往する状況をなくすことはできないのではないかということは思われますので、問題提起という意味で、特定適格消費者団体にということでもないのですけれども、そういうある程度公的なところに破産の申立権限を与える必要があるのではないかという意味で、問題提起の意味で書かせていただいたところでございます。

○鹿野座長 よろしいでしょうか。他にいかがですか。

それでは、私からも1点お聞かせください。埼玉消費者被害をなくす会について、行政との連携の一環として、経済支援にも関わって委託事業に関する取組があるということを伺いました。これは、財政的な支援の一形態と言いましょうか、これによって団体に財源ができているということで興味深く伺いました。そこでさらにお聞きしたいのですが、受託事業としては消費者被害防止サポーター活動推進事業と高齢者等の見守り促進事業と、インターネット適正広告推進事業ということで、これは行政のほうでこの事業について委託先を募集しますという形で募集があって、埼玉消費者被害をなくす会がそれに応募されて、委託関係ができるというような形なのでしょうか。

また、それとも関連するのですが、こういう形での委託事業が進められるということ自体はとてもいい取組の例だと思うのですが、先ほどの差止請求その他の活動については、必ずしもこれは直結しないということになりましょうか。

この辺りについて、先ほども御意見はいただいたのですけれども、更に何かお考え等があればお聞かせください。

○埼玉消費者被害をなくす会岩岡専務理事 まず、1点目の質問で、委託の始まりのところは、埼玉県からこういう事業があるのだけれども委託を受けてくれないかというか、受託しないかというような声かけがあって、それに対して検討して、やらせていただきましょうということがあるのです。だから、一般的な公募、募集に応募してという形ではないということです。

それから、3ページの真ん中のちょっと下、(3)に書いてあることだと思いますけれども、今の受託事業は消費者教育にもなっているわけで、そういう意味で、消費者にとっては極めていい中身なので、こちらの思いとしても一生懸命やっていきたいということで一致しているのだと思いますが、やはりここにも書いてありますように、差止請求とか被害回復とは直接的には関係のない業務なので、そういう業務についても受託事業として、中身があれば、新たなことを始めないでも、被害回復はまだ本格的に始まっていませんけれども、差止請求に関連した内部の運用のところの中身自体が受託事業的に扱ってもらえるようになると、新たな負荷をかけずに、逆に言うと、京都の消費者契約ネットワークからも報告がありましたが、ほぼ無償のボランティアで専門家も含めてやっているというところに対しても、一定の費用とか、お支払いすることができたりということになりますので、そのような支援が始まっていくことが必要なのかなということを(3)では書かせていただいた。それでたまたまというか、申し訳ないのですけれども、(4)で消費者庁のほうから、今、私が申し上げたような内容での消費者被害の実態調査業務ということで、北海道、東北とか幾つかに分けていますが、その北関東地方に応募させていただいてとれたということになっていますので、そういうことが広がっていくことが必要ではないかということです。

○鹿野座長 ありがとうございました。

適格消費者団体の差止請求とか、あるいは特定適格消費者団体の被害回復制度の活用ということが一方であり、他方で、それ以外にもかなり幅広く消費者の利益を擁護するための活動をやっていらっしゃるということがあって、恐らく経済的な支援等にかかわる問題は、その両面がきちんと確保される必要があるということだと思います。訴訟がどれぐらい提起されているかというのは団体によって違うわけなのですが、先ほども話題になりましたように、訴訟の提起より前のところで決着が付くという案件もかなりあって、その前の段階で調査をしたりというところにもかなり、人件費まで含めて費用がかかっているということだとすると、それをどのように位置付けるかも、考えなければいけない課題ということなのだと思います。

他にいかがでしょうか。

○高委員長 そういう意味で、被害回復のところでCOJの方に4件紹介いただいたのですけれども、印象をお聞きしたいのですが、今後、時間をかけていけば、被害回復の関係の仕事をやる中で、自律的に消費者団体の財政が回っていくような可能性はあるのでしょうか。今日の話を聞くと、まず不可能だという印象を受けたのですが。

○消費者機構日本佐々木代表理事・副理事長 私たちが適格消費者団体を始めてしばらくたった頃に、財政的に自立していくという一つの光明としてこの制度があったわけです。この制度ができれば、この制度に携わっていく中で自主的な財源が生まれてくるというようなことを希望として持っていたわけなのですけれども、今のところはおっしゃるとおり、なかなかこの制度でというのは難しいなと思っております。

磯辺さん、どうですか。

○消費者機構日本磯辺専務理事 同じ感覚でして、訴訟に至り得るとすれば回収可能性が厳しい事案が多くて、そこのところで今はちゅうちょしています。今、話しているのは少々持ち出しになっても仕方がないので、一旦制度を活用してみて、共通義務確認訴訟で請求は認められたけれども被害回復にまでは及ばなかったのだという課題を明らかにする意味で訴訟をやらざるを得ないのではないかというぐらい、ちょっと内部では話をしているような状況もあります回収が確実にできるところは、裁判の前の段階のやりとりで自主的に返金されるということがおおむねになっていくのではないかと感じているところです。

○鹿野座長 よろしいでしょうか。他にはいかがでしょうか。

それでは、予定した時間もほぼ参りましたので、ここで3つの適格消費者団体からのヒアリングは終わらせていただきたいと思います。先ほど高委員長からもありましたけれども、大きな課題が今日、いよいよ明確に見えてきたのではないかと思います。そもそも公的な目的のための活動をしていらっしゃるというときに、行政、特に消費者庁の機能との関係をどのように見るのかということが、まずは整理として必要だと思いますし、それとも関わって、行政との情報共有とか、あるいは経済的な支援等の在り方を改めて考えなければいけないと思いました。

さらには、より具体的な御提案についても、今日複数いただいたところでございます。行政との違いとして存在する合理的な資料の提供等にかかわる問題とか、あるいは平均的な損害の立証。これはずっと前から消費者契約法について議論があるところですけれども、そういう問題も含め、様々な問題について御提起をいただきました。

また、最後に京都消費者契約ネットワークからいただいた、消費者契約法の民事規定の在り方についてのご発言に関しては、私自身民法をやっておりますので、問題意識をもっているところです。民事ルールであるはずの消費者契約法が、通常の民事ルールからかけ離れたような格好になっています。確かに1つには、それでも消費者問題の解決にとって具体的な要件が定められていると、それに当てはまる事例については、かなりその適用をしやすい。そういうプラス面はあると思うのです。けれども、そういう限定的な要件立てによって、本来解釈で柔軟な運用をやっていけるはずの民事ルールが、その狭い要件に当たるかどうかということだけで適用が否定されるようなことになってしまう恐れがあり、それでよいのかということ、包括規定あるいは受け皿規定が必要なのではないかということを、私も強く感じているところであります。そういうことも含めて、今後、更に検討してまいりたいと思います。

皆様におかれましては、今日はとても有益なお話をいただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、席の交代をしていただきます。

(佐々木氏、磯辺氏、岩岡氏、伊吹氏退席)

(国民生活センター着席)

○鹿野座長 続きまして、独立行政法人国民生活センターから「消費生活相談における問題意識と課題」について御説明をお願いしたいと思います。

本日は、国民生活センター相談情報部の保木口知子部長及び担当者の方にお越しいただいております。

国民生活センター及び全国の消費生活センターにおかれましては、日々の相談・あっせん等の業務の中で、消費者の立場に立って紛争解決に臨んでいらっしゃるところであります。

民事ルールや行政規制などの消費者法の在り方について、実際に事業者との間であっせんや交渉を行うという現場において、法律をどのように活用していらっしゃるのか、また、そのような現場の活動の中で課題がどこにあるのか、あるいはどのようなルールが使いやすいのかなどのお話をいただければと考えているところです。

それでは、恐縮ですが、10分程度でまずはお話をいただきますようお願いします。

○国民生活センター相談情報部保木口部長 まずは本日、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。国民生活センターでは、今、御紹介いただきましたように、実際に直接消費者からの相談も受けているのですが、全国のセンターの相談員の方からの相談も受けております。そのような中で、これまで相談現場では、例えば消費者契約法はちょっと使いにくいというような声も確かにあるのですが、それだけではなくて、改めて相談の場によく登場する法律について、鹿野先生がおっしゃいましたように、なぜ使いやすいのか、逆にどういう点が使いにくいのかといったことを整理してみました。

まだ十分ではないのかもしれませんが、その上で、国民生活センターの消費生活相談現場で実感として、どんな法律であったら使いやすいのかといったところを整理しました。今、おっしゃいましたように、相談の中でも特に法律のルールが生きるあっせんの際の活用を中心に述べさせていただきます。また、事務局にも当初お願いをしたのですが、余り具体的にこの場でお示しすることは、かえって消費者の不利益につながる可能性がなきにしもあらずな面もございますので、資料や説明ではあえて丸くお伝えする部分もございますことを御理解いただきますようお願いいたします。

資料につきましては、こちらの加藤のほうから説明いたします。

○国民生活センター相談情報部担当者 国民生活センター相談情報部の加藤と申します。本日は、よろしくお願いいたします。

それでは、資料について御説明をさせていただければと思います。初めに、2ページ目のところですが、皆様既に御存じかもしれないのですけれども、あっせんについて改めて簡単に御説明ができればと思っておりまして、あっせんとは、結果として最終的に解決したかどうかにかかわらず、解決を目指し、事業者と消費者の主張を調整し、交渉すること。中に入ってお互いのお話を聞いて解決を模索するというような事業をやっておりまして、これは昭和45年の経済企画庁の通知に基づいてやっているというところでお示ししております。

3ページ目、4ページ目があっせんの重要性やあっせんに入るポイントということで、国民生活センターがあっせんをどのように捉えているのかをまとめたものになっておりまして、基本的には個別のトラブルに関するあっせんを行うのですけれども、その対応だけではなくて、あっせんの結果が各地センターの指針になったりですとか、法律の改正とか事業者、省庁への要望、こういったものにもつなげられるようなことを目指してあっせんを行っているというところがあっせんの重要性になります。

そして、あっせんに入るポイントということで5つ挙げていますけれども、これは相談者の方が自分で交渉してもなかなか解決が難しいだろう場合、すなわち自主交渉では難しい場合にあっせんに入るということで、あっせんの特徴をここに示しているというものです。

今回、御説明をさせていただくに当たって御注意いただければというところでまとめたものが5ページ目の内容になっております。法律の活用について今回御紹介させていただいているのですけれども、私どもは解釈権限がある機関ではない。既に御存じだとは思っておるのですけれども、そういうところをいま一度、念のため書かせていただいているというところでして、消費者と事業者とのあっせんの際に法律を使ったとして、それが本当に有効に機能したかどうか、白黒がついたかどうかは、国民生活センターや各種の消費生活センターは、厳密には検証ができない。法律の活用とは違うところで両者の和解というか、お話合いにより納得される解決がされた場合もある可能性があるというところで、このように記載させていただいています。

2ポツ目なのですけれども、あっせんの結果、お金が返ってきたりとか契約が解約になったりとか、そういった結果があった場合でも、事業者のほうで法律上問題があったとか、問題があったのでお金を返しますとか、法律の適用に基づいてお金を返しますというように認めるかどうかは事業者によって様々でして、場合によっては、その理由を説明しないとか、センターが中に入ったのでお金を返しますというような、法律とは違う形の理由でお金を返すケースもゼロではないというところで、注意点として挙げさせていただいています。

このようなことから、国民生活センターは、ある法律を活用した際に、事業者側の主張とか対応理由も加味した上で、法律の趣旨に添って消費者側の希望にかなった、お金が返された、解約ができたという場合に法律が活用できたと考えております。

もう一つ、私どもの行っているあっせんの特徴として、一つの法律を使うだけではなくて、複数の法律を活用してあっせんを行うこともありまして、どの法律が結果的に有効だったのかが不明な場合もありまして、そういった部分も踏まえた上でお話をお聞きいただければというところで考えております。

6ページ目以降が法律の活用状況をまとめておりまして、法律の使いやすさをお話しする前に、どういうことを私どもが法律を使うときに検討しているのかということをお伝えすることによって、活用の使いやすさ、使いづらさが伝わればというところでまとめております。初めに、法律を活用するときなのですけれども、事実関係の確認と法律の当てはめについて、どういう形で使えるだろうかということを検討しております。細かく申し上げますと3つございまして、まず、事実関係の確認について、私どもは相談者の申出をもとに確認をするのですけれども、それを事業者と話をしたときに争いがあるものなのかどうか。また、争いがある場合に、消費者側でその事実が立証できるのか、それとも、立証責任は事業者にあるのか。そういったところについて法律を使う際に確認をしているところです。

次に、事実関係がある程度明らかになった後に確認をする、もしくは事実関係を確認する際に確認するところなのですけれども、両者の争いのない事実に関して、法律の適用可否について争いがある、当てはめの部分について争いがある、もしくは争いが起こる可能性があるものなのか。そういったところを検討のポイントとしています。

3つ目は2ポツ目に関係してくるのですが、法律の適用可否、当てはめのところで検討が必要な場合に、逐条解説やガイドラインがあるかどうかとか、解釈について問い合わせることによって、不明確だった部分を明確にできる問合せの窓口、所轄官庁があるかというところをポイントにしております。

7ページにいきまして、次は、法律の当てはめや事実関係の確認をした後に、消費者の申出、望む解決の水準がどの辺りまで求められるのかというところを検討しています。その際に法律を確認しまして、民事効があるのかどうかとか、民事効があった場合に、取消しなのか、損害賠償請求ができるのか、そういった効果がどのようなものなのかを検討しています。あとは民事効と行政処分・刑事罰がセットになっているかというところも重要になっていまして、そういったところをポイントにあっせんの指針を検討して臨んでいるというところです。

8ページ目以降に検討の際の具体的な事例として載せておるのですけれども、個別の法律をここで記載させていただいているのですが、ここの使いやすさについては深く説明をしてしまうと、冒頭も申し上げましたとおり、消費者の不利益につながってしまうおそれもあるというところで、このような事例について検討しているということで御覧いただければと考えております。事実関係に争いはあるか、争いがある場合に立証可能かというところで5つ事例を挙げておりまして、特商法における法定書面の交付ですとか、事例2は勧誘時のセールストークのときにどうかというところや、広告の表示にどうか、未成年者の契約についてどうか、消費者契約法における平均的損害についてどうかということで考えております。

次に9ページ目ですけれども、具体的事例マル2ということで、法律の当てはめについて争いが起こり得るようなものなのか、そうではなくて、両者争いがなく法律の適用について話合いができるのかというところで事例を4つ御紹介しております。まず、特商法における勧誘の形態についてです。これは事業者が、例えば訪問販売であれば訪問販売と自認して勧誘しているのか、例えば請求訪販という形で特商法の適用がないということで取引をしているのかによっても変わってきます。事例2は適合性原則の考え方について検討をしています。事例3は表示における分かりやすさという主観が入ってしまうようなときにどうかということを検討しています。あとは事例4の信義則違反とか、公序良俗違反とか、民法上の考え方についてどうなのかというところで検討しています。

10ページ目は、法律の適用可否について検討が必要な場合に問い合わせることができる省庁があるかというところで事例を3つ挙げていまして、行政規制のある法律であれば問合せができるということで、特商法や電気通信事業法、金商法を挙げております。問合せの細かい部分を少し申し上げますと、対応の仕方についても若干いろいろなパターンがありまして、個別の案件を踏まえて問合せをさせていただくのですけれども、あくまで一般論であって、個別の案件については、最終的には回答ができないというようなお答えのパターンとか、同じように最終的に個別の判断はできないけれども該当性が非常に高いのではないかとか、省庁や事例によっても回答の言い方が異なる場合がありまして、そこで最終的に個別判断ができない一般論だけで終わってしまうと、相談現場では実際にこの問題にどう対処すればいいのだろうというところで悩んでしまう場合もありますし、可能性が非常に高いということで、おっしゃっていただくと非常に心強くあっせんができるというところで、その部分も法律の使いやすさに関係してくるのではないかと考えております。

11ページ、12ページ目ですけれども、次に、効果の部分とか行政規制・刑事罰がセットになっているかというところでまとめておりまして、クーリング・オフによる契約解除や電気通信事業法による初期契約解除制度や確認措置というものがある一方で、もう一つ、損害賠償請求がある。あとは解除をして契約がなかったことになった後の話なのですけれども、不当利得返還請求で事業者側から請求があったりとか、海外決済をした場合とかドル建てで契約をした場合などで為替差損の問題が生じて、その場合、消費者が払ったお金が全額戻ってこない場合があるというところで、完全に消費者の望むような解決にならない場合があるということで事例4、事例5を挙げております。

12ページなのですけれども、民事効と行政規制・刑事罰がセットになっているかということで、これは消費者と事業者との話合い、あっせんが物別れに終わった場合に、その後、次に何かがあるのかどうかがポイントになっているのかなというところで、事例1から5を挙げています。事例1は特商法におけるクーリング・オフ、事例2と事例3は行政規制・刑事罰のみの場合なのですけれども、挙げている。事例4、事例5で民事効のみの場合ということで挙げていて、事例4は刑事事件が判決確定後になった場合に詐欺取消しで主張した場合にどうなるのかというところで挙げております。事例5は不当条項についてですけれども、これもケース・バイ・ケースというか、事例によって差があるもので、全部免責条項を入れていたりとか、キャンセル料100%のものを入れていたりというときの話合いと、あとはそれが本当に不当なのかどうかがなかなか微妙なラインのときの事例によっても使いやすさが変わってくるのかなと思っております。

それをまとめた上で、13ページでどのような法律が使いやすいかをまとめたのですけれども、1つ目は立証責任が事業者側にあったりとか、立証が容易なものは現場では使いやすい法律なのではないかというところです。あとは法律の要件が明確で、両者で争いの余地がないものが使いやすい法律だと。明確ということで少し補足なのですけれども、具体的な要件があるというのは一つなのですが、それと同時にシンプルなものであると現場でも使いやすいということがあります。そして、要件が不明確な場合でも、所管の省庁に問い合わせることによって明確化ができるというような形であれば使いやすいということがあります。

効果の部分ですが、消費者の希望にかなう明確な民事効があるものは使いやすい。特に消費生活相談ですと、契約をなかったことにしたい、お金を返してほしいという御相談が多く寄せられるので、それにかなった民事効があると現場では使いやすいというように考えています。あとは刑事罰や行政処分などが民事効とセットになっているというものと、私たちのあっせんがうまくいかなかった場合でも、その次があるかどうかというところで、事業者が対応するかどうかという判断に影響を及ぼしているものと考えられますので、そういったものがあったほうがお話をする際にやりやすいということがございます。

事務局から、努力義務規定についても少しお話しいただけないかというところで、14ページ、15ページにまとめております。努力義務規定の趣旨を踏まえて対応されるかというのは、事業者によって様々ではあるのですけれども、許可とか登録を取っている事業者は守られる傾向にあるのかなとは思っております。ただ、やはり詐欺的な事業者については、そういったものを破ったとしてもペナルティーは特にございませんので、余り効果がないのかなと感じております。

15ページ目は自主基準について少しまとめておりまして、自主規制についてなのですけれども、基本的には会員内では守られておりまして、コンプライアンスの部門とか、非常にそれを意識して対応をしてくださっているものと感じております。ただ、末端の営業員までは完全に浸透していない場合も一部では見受けられてしまいまして、そこが課題になっているのかなと思っております。事業者団体に所属している事業者であれば、事業者団体の協力を得てスムーズにあっせんもできるということで、ここに記載をさせていただいています。ただ、やはり非会員の方々にとっては、自主規制はそこまで守っていただけないというか、意識をされていないケースが多いように感じております。事業者団体が作る自主基準とかガイドラインは、交渉の際の参考資料、説得材料になり得ますので、どの辺りまで消費者は求めるべきなのかとか、どの辺りまでいってしまうと問題のある契約なのかというときの参考にさせていただいています。あとは最後に詐欺的な事業者のところを少し書かせていただいているのですけれども、詐欺的な事業者にとっては余り効果が見られないのではないかというところでまとめております。

少し時間を超過してしまって恐縮でしたが、以上になります。

○鹿野座長 国民生活センターの加藤様、御説明をありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。

池本座長代理。

○池本座長代理 池本でございます。現場の実情を踏まえた御報告をありがとうございます。

消費生活相談員に対する研修の場でも、一つの規定、例えば取消しとか解除という一つの規定だけで白か黒かで議論するのではなくて、行政規制あるいは自主規制、基準なども含めて、総合的に見て適正な取引なのか、不適正な点がないかということを総合的に説得材料で使うようにということがよく言われていることですが、正に相談の現場の実情がその辺にあるのだろうとお聞きしました。

2点、質問というか感想を含めた質問なのですが、13ページで、あくまでもあっせん、交渉によって解決を目指すという場なので、例えば主観的な要件であるとか、あるいはセールストークの言った、言わないの問題、さらには事業者の故意過失のような内心の要件というようなことについては、非常に解決の手がかりとして使いにくい。それよりは、より具体的な要件、場合によっては、例えば過量販売解除のような外形的に判断できるようなもののほうがあっせんの場では使いやすいというのは非常に実感するところです。

ただ、先ほど京都消費者契約ネットワークから御発言がありましたけれども、具体的な規定を設けるというのは、それにぴったり合うものについては適用できるけれども、手口が少し違ってしまうと適用できない。包括的な規定も必要ではないかという意見がありました。その辺りは、13ページで言いますと、法律の要件が明確で、争いの余地がない、あるいは外形的に判定できる具体的なものがいいという側面と、要件が不明確、抽象的な場合でも、所管庁の解説書とかガイドラインとか自主規制、規約などによって、こういう場合は当たるということがかなり具体的に例示列挙してあれば、それはそれで使えるということになるのではないかと思うのです。

その意味で、特商法で言うと通達や主務省による解説書などの記述について、どのようにお考えか、あるいは行政処分が国や自治体でたくさん出ていると思うのですが、そこでどういう事例がどのように判定されているのかが必ずしも集約した形で公表されていないと思うのですが、その辺りについて何かこうなれば活用しやすいとか、もし感想、御意見があればお伺いしたいところです。

○鹿野座長 それでは、お願いします。

○国民生活センター相談情報部担当者 今も所管の官庁には問合せをさせていただいて、そこの確認をできるという体制は整備されておりますので、そういった意味では、これからも新しい法律ができたときに素早く見解をまとめていただいて、お教えいただいて、逐条解説とか出していただいているので、それをすぐに改正とかホームページに公表等をしていただいて、常に最新の通達の状況が分かるような形でやっていただければ、私どもとしてもそれに基づいてあっせんをさせていただくことができるので、やりやすいのではないかと考えております。

あとは、先ほども少し申し上げたのですけれども、個別の案件について私たちは最終的にあっせんをするという現場なので、個別の案件についてどうなのかというところがポイントになってきまして、一般論としてはお話しくださるのですが、そこでやはり個別は、最終的には個別判断になるとか、漠然とした回答になってしまうと、結局問合せはしたのだけれども、考え方は分かったのですが、この案件ではどうなのかが分からないということで、事例の中で難しいものもあるのですけれども、できれば可能性が高いとか、もし何か言われたら、所管の省庁に事業者から問合せをしてもいいですよとか、そういったことを言ってくださると、非常に現場としては心強くあっせんに臨めるということがあります。

○鹿野座長 ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。

高委員長、お願いします。

○高委員長 ありがとうございました。

4ページのあっせんに入るポイントを見せてもらいますと、もうこれは前提が、事業者側が悪いというような、だから、これはもう事業者側に問題があるというときに大体あっせんに入るという理解でよろしいのでしょうか。それが1点です。

それから、あっせんをやるときに、事業者側から出てくる方、これはいろいろ会社で違うのでしょうけれども、通常お客様対応窓口等があれば、こういう問題は大体解決されるのではないかと思うのですが、あっせんに入るときに、事業者側に問題があると思われるケースでは、会社側から出て来られる方はどういう担当の方なのでしょうか。

○国民生活センター相談情報部担当者 1つ目の質問からなのですけれども、基本的には申出事項で、これは申出が事実であれば問題があるのではないかというときにあっせんに入る形になります。

○高委員長 問題があるということ。

○相談情報部担当者 そうです。ただ、本当に問題があるかどうかが、また申出だけなのでそこから深く確認するためも含めてあっせんに入るということがございます。その結果、事業者側からの話があって、それによって問題がなければそこであっせんが終わることもございますし、そこで争いになったときに、こういう法律の考え方を使って対応しているという状況です。

もう一つが、対応する事業者側の方々なのですけれども、基本的にはおっしゃったとおり、お客様相談窓口とかコンプライアンスの担当部門が多い印象がございます。それは大企業の場合でして、ただ、小さい企業だと、そこまでの体制がない場合は、代表取締役だとか、社長だとか、あとは営業部長だとか、実際に勧誘をした現場の人たちが出てくる場合もありますし、事業者の規模とか形態によって様々でございます。

○高委員長 分かりました。

○鹿野座長 他にはいかがですか。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 御説明ありがとうございます。今、お話を伺っていて、1つ具体的に分かりにくかったところがあります。各省に問い合わせて、解釈などを聞いたときに、一般的な議論にとどまってしまってあっせんに必要な個別事案に関する判断ができないというケースを伺ったのですが、その場合に、国民生活センターのほうで情報を得ている中身を提供しても、各省のほうが判断をしないということなのか。それとも、消費者の個人情報保護との関係もありますから、機微に触れる部分は各省庁には提供しないで、解釈を聞かれているケースなのか。抽象論で恐縮ですが、どちらが一般的なのでしょうか。

○国民生活センター相談情報部担当者 一般的には、個別の案件についての見解をいただきたいときは、個人情報はもちろん伝えませんけれども、個別の状況をお伝えした上でお聞きしています。恐らく個別の当てはめをしないという理由は、行政処分ですとかそういうものが後ろについているので、そこでもう判断をしてしまうとイコール行政処分をしなくてはいけないということにもつながるので、恐らくというか、そこでは個別の判断というところまではいかないのかなと考えております。

○樋口委員 その場合の問合せは口頭でしょうか。それとも、文書ですか。

○国民生活センター相談情報部担当者 口頭である場合がほとんどですが、一部は文書でお送りして、文書で返していただける場合もあります。

○樋口委員 分かりました。ありがとうございました。

○鹿野座長 私からも1点伺ってよろしいですか。もちろんあっせんについては個別案件についてということで承知しているのですが、個別案件について解決を図っている中で、例えば約款条項とかそういう問題について、適切ではないのではないかという指摘を受けて、事業者のほうが自らそれ自体の改善を図って、より広く一般の消費者の利益につながるということもあるのでしょうか。

○国民生活センター相談情報部担当者 消契法の不当条項にかかわる部分なのですが、そこは対応してくださる場合もありまして、一定程度以上の規模の事業者であれば、消契法の趣旨と今、使っている約款を照らし合わせて、私どものほうで法律相談を受けたりして、弁護士の先生の見解も得た上で、やはりこれは消契法上問題がある約款の可能性があるのではないでしょうかという形で投げかけると、直してくださるというケースもあるので、そういった意味では、不当条項の消契法の部分も活用して現場では対応させていただいているというところです。

○鹿野座長 ありがとうございました。

まだまだお伺いしたい気もするのですが、予定した時間が参りましたので、この辺りで本日のヒアリングを終了したいと思います。

国民生活センターにおかれましては、御出席の上、御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。


≪3.閉会≫

○鹿野座長 本日の議事は以上です。

最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○丸山参事官 本日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回の開催につきましては、7月11日水曜日、10時からの開催を予定しております。

○鹿野座長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございました。

(以上)