平成30年11月20日(火)

 今朝の閣議では,法務省案件として主意書に対する答弁書が1件ありました。
 まず,今般判明した,いわゆる失踪技能実習生に係る聴取票に関し,集計の数値の計上等にミスがあったことについては,あってはならないことであり,法務大臣として,心からお詫び申し上げます。
 技能実習制度については,技能実習生への賃金の不払いや最低賃金以下での労働など,一部における労働関係法令違反や,失踪技能実習生の問題などが制度発足以来指摘されていました。そして,これを受けて,新しい技能実習法が与野党の幅広い賛成を得て,平成28年11月に成立し,平成29年11月から施行され,これまで同法に基づく各種の適正化を図ってまいりました。
 今回の聴取票の集計の対象となった技能実習生はいずれも旧制度下のものであり,旧制度下における問題点を解決するために新しい技能実習法に基づいて様々な適正化対策を行ってきたところです。しかし,今回様々な御指摘を受け,また,こういった集計等に関する誤りがあったことも踏まえ,技能実習制度のより適正な運用の在り方について,早急に検討を開始する必要があると判断しました。
 そこで,先週金曜日午前中の衆議院法務委員会終了後,事務方から今回判明した計上ミスの正式な取りまとめ結果の詳細の報告を受け,直ちに,以下の3点の指示しました。
 第1に,技能実習の在り方等について検討するため,「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」を立ち上げるよう指示しました。このプロジェクトチームは,弁護士でもある門山法務大臣政務官を議長とし,金子法務大臣官房政策立案総括審議官を始めとする,大臣官房を中心に構成され,多角的にこの問題を検討してもらいたいと考えています。昨日第1回会合を行いました。
 第2は,今回の聴取票の記載から違法行為が認められる全ての技能実習の実施機関に対して,必要な調査を徹底的に行うよう,入国管理局長に指示しました。
 第3に,技能実習に関わる違法行為の早期把握及び対処のために必要な体制や運用について,このプロジェクトチームで検討するよう指示しました。今回の聴取票の不適切な取扱い経緯についてもここで検討していきます。
 このように,昨年11月から新たな技能実習法が施行され,従来から指摘されている技能実習生に関する不適切,あるいは違法な事案への対策に取り組んでいるところです。今後も技能実習法の適正な運用についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。

技能実習制度に関する質疑について

【記者】
 先ほどのデータの関連ですが,与野党合同ヒアリングのときに提出した資料データは,技能実習生の失踪について,技能実習生側に問題があると見せかけるため,意図的に改ざんしたのではないかという指摘が挙がっています。この指摘についての大臣の所見をお願いします。

【大臣】
 まず,平成29年におけるいわゆる失踪技能実習生の聴取票について,誤ったデータや表現を含む統計資料を国会議員の皆様に示したことについてお詫びを申し上げたいと思います。
 私もそのような不適切な資料を軽信し,結果として誤った御説明を国会で行ったことについてお詫びを申し上げます。
 他方,このような不適切なデータの取扱いや誤解を招きかねない表現ぶりについては,今国会で御審議いただいている入管法等の改正案に影響を与える目的で行われたものではないと考えています。すなわち,聴取対象は,技能実習法施行前の旧制度下の技能実習生であり,昨年11月以降は与野党の幅広い賛成を得て成立した新法の下で,国会審議の過程で指摘されている不適正な実態に対処しています。
 2つ目に,国会議員の皆様に示した聴取票の統計資料の中に,誤解を招きかねない表現がありましたが,このような表現は,遅くとも聴取票の失踪動機欄が自由記載方式であった平成27年夏頃から国会答弁など対外的な説明の場で使用されており,その後この失踪動機欄に「低賃金」などの項目が設けられたチェック方式になりました。しかしながら,その後も漫然とこの表現が使用されており,本年6月にも,この表現を使用して作成された資料が「外国人技能実習制度の活用を推進する議員連盟」に示されました。そして,今国会で示された資料も,この資料に基づいて作成されたものです。
 また,データ処理上の誤りについては,複数選択方式である失踪動機欄の集計作業時にエクセル操作を誤るなど,極めて軽率なものです。入管法等の改正案は,旧制度における不適切な技能実習の実態を適正化するための新たな技能実習制度のうち,外国人保護に資する取組をも踏まえたものです。そのことをしっかりと御理解いただけるように,法案審議の場で説明に努めつつ,他方で昨年11月に施行された新たな技能実習制度の適正な運用にも努めてまいりたいと考えています。

【記者】
 冒頭の発言にあった,「外国人技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」ですが,本月16日に発足されて,同19日に初会合が行われているということですが,発表が本日になった理由を教えてください。

【大臣】
 16日午前の法務委員会での審議終了後に報告を聞いて,私が直ちに設置を決断したものです。その後本日まで記者会見の場がなかったということもあり,プロジェクトチームの発足後,最初の記者会見の機会であるこの場で発表させていただきました。

【記者】
 先の通常国会では,働き方改革を巡り,不適切なデータの取扱いがあって,安倍首相が答弁を撤回されました。今回法務省でも,データの取扱いを巡って誤りが見つかったことについて野党は批判を強めています。重要法案を巡って相次いでデータの誤りがあったことについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 他省庁のケースを引用されましたが,その件について法務大臣として意見を申し上げるべき立場にはありません。
 まずは平成29年の技能実習について,失踪者からの聴取票の数値の取りまとめに際し,誤って集計した数値や誤解を招きかねない表現を含む資料を国会議員の皆様にお示ししてしまったことについて,改めて法務大臣としてお詫びを申し上げます。また,このような誤った集計結果に基づいて,結果として誤った数字を国会審議の場で,私自身がお答えしてしまったことについては,心から申し訳なく思っています。
 この国会における答弁については,今回の取りまとめ結果を踏まえ,必要な修正については法案についての委員会審議の場などで適切に行いたいと考えています。
 他方で,今回の聴取票というものについて,誤解を招きかねない表現ぶりがありました。平成27年の夏頃からこういった表現を自由記載欄の記載などに基づいて行っていたものであり,今回あえてそうしたというものではないものの,漫然と使用したことについては,私の方から厳しく指摘しました。
 また,数値についても,計上ミス,エクセルの操作を誤るという初歩的なミスをしたことは,非常にけしからんことであり,しっかりと指示したところです。
 技能実習制度に対する様々な厳しい御指摘があり,それに関しては与野党共通の認識になっていました。その認識に基づいて平成28年11月に新たな技能実習法が与野党の幅広い賛成を得て成立し,昨年11月から施行され,例えば外国人技能実習機構を設け,機構による技能実習生からの相談受付体制や,転籍,支援体制の整備を行う,あるいは監理団体を許可制にするとか,監理団体に対して,受入れ機関に対する適正な監査や,技能実習生との面談を義務づけるなど,人権侵害禁止規定や罰則なども整理し,立入検査などを含めて実施していたところです。そうしたことで技能実習生の問題については,新法の下で適正の確保に向けて努めてきたところです。
 そして,今回の新たな外国人受入れ制度というのは,深刻な人材不足に対応するために一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れようというものであって,本国への技能移転を目的とする技能実習制度とは全く異なる制度です。人材不足は極めて深刻であり,待ったなしの課題であるため,この法案の趣旨について丁寧に説明してまいりたいと考えています。

【記者】
 今回の聴取票データの集計作業は,いつ,どのような目的で,どの部署で行ったものかということと,また,この誤ったデータを対外的に最初に用いたのはいつ,どのような目的によるものか,教えてください。

【大臣】
 まず,この平成29年の失踪技能実習生に関するデータですが,これは今正確な時期については特定できないものの,遅くとも平成30年5月に本省入国管理局において集計作業を行って,聴取票も集計を行った結果を部内で報告していると聞いています。
 その際には既に誤った数字を計上しており,遅くともこの頃までに集計ミスが発生していたものと考えています。
 また,対外的なデータ公表については,平成30年6月に,「外国人技能実習制度の活用を推進する議員連盟」において,この平成29年の失踪技能実習生の状況を説明するために,この集計結果に基づいた資料をお配りさせていただいたと聞いています。今国会の法案に関連して示された資料もこの資料に基づいて作成されており,漫然と表現ぶりや数値を引き継いでいたと聞いています。

【記者】
 野党から,今までの調査結果は実習生側に問題があるということを強調していて,雇用者側,受入側に問題性があるのを隠すためではないかという指摘があるのですが,それについての大臣の意見をお聞かせください。

【大臣】
 ことさら技能実習生側に問題があると強調するためではないと考えています。これまで公表していたデータについては,「低賃金」に関するチェック項目を総括するに当たり,従来の表現ぶりを漫然と使用し,「より高い賃金を求めて」と取りまとめて議員の皆様にお示ししたものです。当時の集計結果が誤っていたということで大変申し訳ないのですが,これについて当時の集計結果についてチェック数の多いものの順に,「実習終了後も稼働したい」,「指導が厳しい」,「暴力を受けた」,「帰国を強制」という上位5項目を機械的に並べたと聞いています。
 今申し上げたように,例えば「暴力を受けた」であるとか,「帰国を強制された」という項目も示しているところであり,雇用者側に都合の悪いデータを隠しているものではないと報告を受けていますが,数値が間違っていた結果より低い数値になった項目もあり,この点において不適切であったことは間違いなく,現に,こういったことが二度とないように厳しく指示したところです。

【記者】
 提出した聴取票データの資料で,「より高い賃金を求めて」という記載があったと思うのですが,どうしてこういう記載になったのかということと,いつ,誰が,どういう方針で決めたのかということをお聞かせください。

【大臣】
 「より高い賃金を求めて」という表現ぶりについては,元々平成27年に聴取票の書式を改訂するまでは,「失踪動機について」の項目の「原因・理由・動機等」欄が,項目があらかじめ決めたチェック方式ではなく,自由記載欄でした。この自由記載欄の記述に基づいて,その当時から低賃金を理由に他の就労先を求めて失踪した者について,自由記載欄は本人の聞き取りを元に作成し,「より高い賃金を求めて」という言葉で対外的に説明していました。
 先ほど申し上げたように,その年の11月以降,聴き取りを行う入国警備官がチェックする方式に改めた以降も,結局従前からの表現ぶりを安易に漫然と使用していたということです。
 しかしながら,失踪した技能実習生の中には,契約賃金以下,最低賃金以下の状況から適正な額の賃金を求めて,失踪した技能実習生もいるのではないかという御指摘をいただいており,選択肢である「低賃金」,「低賃金(契約賃金以下)」,「低賃金(最低賃金以下)」を明示すべきであったところ,あたかも,「より高い賃金を求め」が選択肢として存在していたかのような無用な誤解を招きかねない表現ぶりであったと考えています。
 
【記者】
 先ほど御自身の答弁について,「法案審議の場で」ということをおっしゃっていましたが,改めて修正する必要があるというお考えかの確認と,修正の必要があるとお考えの場合,どの答弁について,どのように修正等を行うのか,国会に説明するつもりかということをお聞かせください。

【大臣】
 国会の場で申し上げたことですから,国会の場で必要な修正をさせていただきたいと考えています。今年の6月に「外国人技能実習制度の活用を推進する議員連盟」で示した誤った資料に基づいて作成された資料については,結果的に誤ったものであることは間違いありません。経緯も含め,国会の場でしっかりと御説明をさせていただきたいと思います。

【記者】
 今回の問題を踏まえて,前の法務大臣の国会答弁等について修正を行う必要はないとお考えでしょうか。

【大臣】
 私より前の法務大臣の国会答弁等も含めて,判明した今回の取りまとめ結果を踏まえ,現在,その修正の要否等について精査を行っているところです。その上で,必要な修正については法案についての委員会審議の場などで適切に行いたいと考えています。

【記者】
 今回,法務省から示された資料では,聴取票のチェック項目や入国警備官が一対一で行っている聴取方法についても,ミスの理由になったとされています。この辺りについても見直すということで議論の対象になっているのでしょうか。

【大臣】
 プロジェクトチームにおいては,弁護士であり実務経験も長い門山法務大臣政務官に議長をお願いしているところです。そのプロジェクトチームにおいて,技能実習制度の実情把握の方法,あるいは今後の対応策,改善策についても幅広く多角的に検討していただくということになっています。

【記者】
 大臣御自身も聴取票のチェック項目などの見直しの必要性をお感じになっていますか。

【大臣】
 この点についてはプロジェクトチームが発足したところですので,聴取の在り方の実情なども踏まえて,新たな技能実習法に基づく適正な技能実習制度の運用の在り方について,しっかりと検討するよう門山法務大臣政務官を始め,構成員の皆様にお願いしていますので,その検討状況を待ちたいと考えています。

【記者】
 聴取票の問題についてですが,誤ったデータに基づく国会答弁など,国民への誤解を招きかねないことがあったということで,どうしても開示できない部分は別として,それ以外の聴取票原票そのものを国民に開示すべきだというお考えはいかがでしょうか。

【大臣】
 聴取票ですが,個人の情報に関するものや受入れ側の情報が含まれています。そして,この聴取票はそもそも対外的に公表したりする取扱いではないということで,入国警備官の調査の対象となる技能実習生に任意に協力してもらっています。先ほども申し上げたとおり,技能実習生に係る聴取票の内容について,不正,違反行為が認められるものについては,徹底的な調査を行うよう指示したところです。聴取票そのものには,失踪した技能実習生から任意に聴取をした情報がありのまま記載されています。技能実習生自身は入管法の適用上は,入管法に違反し資格外活動を行った者であり,本来,聴取票というのが刑事訴追や入管法に基づく調査等の端緒となり得る情報を含むものとなります。これが開示されることになれば今後の調査ないし捜査への協力が得られなくなる可能性があるため,聴取票のそのものを直接国民の皆さんに開示するということは考えていません。

【記者】
 「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」について,改めてお伺いします。設置目的と今後のスケジュール,また,メンバー構成について教えてください。

【大臣】
 このプロジェクトチームについては,法律家であり実務経験の長い弁護士でもある門山法務大臣政務官の下,政務主導で技能実習制度の適正な運用の在り方等について具体的な検討を行い,運用上の改善を図っていくことを目的としています。そういった中で今回判明した聴取票の取りまとめにおける誤解を招きかねない表現であるとか,集計などの取扱いの誤りも踏まえ,聴取票とその集計方法の見直しも含めた技能実習制度の実情把握の改善,その他,今後の対応策や改善策についてもこのプロジェクトチームで鋭意検討することになっています。
 昨日,第1回検討会を開催したところですが,その後のスケジュールについては,このプロジェクトチームにおいて決めていただくということになっています。
 プロジェクトチームの構成については,議長を門山法務大臣政務官,構成員,事務方のトップは,金子法務大臣官房政策立案総括審議官,大臣官房秘書課から外国人施策推進室長,官房付,入国管理局からも複数名入っているということで,多角的に検討をしていくということです。

【記者】
 プロジェクトチームの検討会の様子を我々メディアに公開するお考えがあるかどうかということと,公開しないのであれば,どういう形で検討会の様子,情報を開示していくのかということをお聞かせください。

【大臣】
 検討会の公開の具体的な中身については,プロジェクトチームにおいて判断していただこうと考えていますが,技能実習の運用や実施の状況について,公にすることにより個人の権利・利益を害することになる個人情報又はその他の正当な利益を害するおそれがある情報を含む,運用上の情報が入っているため,基本的に検討会自体は公開しないことが適切だろうと考えていますが,議事の内容については,議事概要を作成してメディアの皆さんにオープンにしたいと考えています。
 検討結果については,具体的な運用上の改善案等をまとめてもらうということになりますが,聞き取りだけでできるというものではなくて,先ほど申し上げた違法や不正な取扱いが認められる実施機関に対する調査の結果も踏まえながら,改善策をまとめてもらおうと思います。

カルロス・ゴーン氏の逮捕に関する質疑について

【記者】
 昨日,日産自動車のカルロス・ゴーン会長が東京地検特捜部に逮捕されました。それについての大臣の所感と,この事件で司法取引が行われたかどうか,教えていただけますか。

【大臣】
 昨日東京地検が,金融商品取引法違反により日産自動車株式会社の役員であるカルロス・ゴーン・ビシャラらを逮捕したことは承知していますが,これは検察当局において現に捜査中の個別具体的事件に関する事柄であり,法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

(以上)