平成30年1月19日(金)

 本日の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 本日の閣議において,所有者不明土地等に係る諸課題に対応するため,「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」を開催することが了解されました。閣議後には,第1回の会議が開催され,この問題に係る有識者のヒアリングが行われました。このほか,関係省庁の取組状況等について説明がなされ,法務省の取組状況についても御説明させていただきました。法務省としては,この問題の解決に向け,関係省庁としっかりと連携しながら,スピード感をもって対策を推進してまいりたいと考えています。

民法改正(相続法)要綱案に関する質疑について

【記者】
 法制審議会の民法(相続関係)部会が16日,民法の相続分野を見直す要綱案を取りまとめました。要綱案に対する大臣の評価と期待について教えてください。

【大臣】
 現行民法のうち,第5編の相続の部分は,昭和55年以来大きな改正がされていなかったものですが,この間,高齢化の進展等に伴い,配偶者の死亡により残された高齢配偶者の生活保障を図る必要性が高まるなど相続法の分野の見直しの必要性が生じていました。そこで,平成27年2月に法制審議会に対し,相続法の見直しについて諮問を行い,専門部会である民法(相続関係)部会において,約3年にわたる調査審議を経て,今月16日に要綱案が取りまとめられたものと承知しています。部会においては,長期間大変密度の濃い充実した審議をした上で,要綱案を取りまとめていただき,感謝をしています。この要綱案においては,配偶者の居住の権利を保護するための方策や遺産分割前の預貯金の払戻しを認める方策,自筆証書遺言の方式緩和など多岐にわたる改正項目が掲げられており,諮問の趣旨を踏まえた内容であると受け止めています。今後,法制審議会の総会において調査審議を経て,答申を得た上で,できる限り早い時期に国会に関係法案を提出することができるよう作業を進めてまいりたいと考えています。   

タイ・マレーシア出張に関する質疑について

【記者】
 大臣は先日,タイ・マレーシアへ御出張されましたが,成果などありましたらお聞かせください。

【大臣】
 今回の出張では大きく二つの目的がありました。一つ目は,2020年の京都コングレスへの参加,協力を呼びかけること,二つ目は,国際仲裁の活性化に向けた協力関係を構築することであり,東南アジアの主要国であるタイ及びマレーシアを訪問しました。
 タイでは,タイ仲裁センター及びシリントン少年院を訪問するとともに,副首相兼法務大臣,検事総長,UNODCアジア大洋州事務所長,タイ法務研究所長らと会談したほか,現地に進出している企業関係者や弁護士などから生の声を聞く機会を得ました。マレーシアでは,クアラルンプール地域仲裁センターを訪問するとともに,副首相兼内務大臣と会談したほか,マレーシア進出企業関係者との意見交換を行いました。
 成果ということですが,日本で開催する2020京都コングレスの開催を成功に導くため,ハイレベルでの出席を呼びかけるとともに,両国間の協力関係を強化するため,タイのプラジン副首相兼法務大臣及びケムチャイ検事総長と会談しました。大臣らからは,我が国とのこれまでの協力関係について謝意が述べられたほか,今後,PFIを含む矯正施設の整備や保護の分野における情報交換を実施するための日タイ間の協力関係を構築することについて合意をしました。また,昨年,日本との外交関係樹立60周年を迎えたマレーシアのザヒド副首相兼内務大臣との会談では,京都コングレスへの参加と全面的な協力を依頼するとともに,テロ及び暴力的過激主義対策,あるいは刑務所の過剰収容対策等について率直な意見交換をさせていただき,今後も日マレーシア間の協力関係をより緊密なものとすることを確認したところです。
 国連薬物・犯罪事務所(UNODC)東南アジア大洋州事務所のダグラス所長らとの会談では,我が国から同事務所に対する検事の派遣について,同所長から謝意が述べられました。さらに,京都コングレスに向け,アジア・太平洋地域の犯罪防止・刑事司法,また「法の支配」の促進について,更に協力関係を深めていくことを確認しました。タイの法務研究所(TIJ)では,我が国のUNAFEIの卒業生であるキティポン所長と大変密度の濃い会談をさせていただき,再犯防止,法の支配の促進と法遵守の文化の醸成など,京都コングレスに向けて両国が重視しているテーマを中心に,今後,一層緊密な連携と協力を図っていくこととなりました。
 二つ目の目的である国際仲裁の活性化について,我が国では,国際仲裁の活性化に向けた検討が行われているところ,2015年に新設されたタイ仲裁センター(THAC)では,対外広報や人材育成などの仲裁活性化に向けた取組について,パシット所長らと大変密度の濃い率直な意見交換を行い,引き続き,積極的な情報交換を行っていくことで合意しました。一方,マレーシアのクアラルンプール地域仲裁センター(KLRCA)は,1978年に設立された歴史ある仲裁センターですが,近年,最新設備を備えた施設を整備し,ラジュー同センター代表の下で国際仲裁の振興に積極的に取り組んでいました。同代表と具体的な取組について意見交換をさせていただくとともに,古い施設をリノベートして造られた最新の施設を視察することができました。今後,同センターに対し,当省から人材を派遣するなどして,我が国の国際仲裁の活性化に向けた協力関係を深めていくこととなりました。また,タイ及びマレーシアの両国においては日本企業を含む多くの企業が海外進出しており,これらの企業が直面している法的紛争のリスク,国際仲裁を含む紛争解決の在り方などについて,日系企業関係者や邦人弁護士等から生の声を聞くことができました。
 その他,タイのシリントン少年院は,我が国からの無償資金協力及び専門家による技術協力に基づいて約20年前に建設をされた少年院です。この20年間,少年の社会復帰協力に非常に有効に利用されているということ,そして,その下で多くの少年たちが卒業しているということを実感することができ,20年前の我が国の支援が現地で根付いているということを大変嬉しく見させていただきました。こうしたことを踏まえ,協力関係を今後もしっかりとしてまいりたいと思います。
 以上,申し上げたとおり,今回の出張は大変短い期間でしたが,2か国ともに司法外交を戦略的に進めていく上で貴重な示唆を得ることができました。本年4月からは官房国際課が立ち上がることを見据えて,具体的な取組についてもスピード感を持って取り組んでまいりたいと決意を新たにした次第です。

安倍総理の平昌五輪出席に関する質疑について

【記者】
 カナダの外相会合の際,河野外務大臣が安倍総理の平昌五輪の出席要請を受けていますが,大臣としては総理は五輪に出席すべきだと思われますか。

【大臣】
 平昌五輪への出席は総理御自身の判断であり,法務大臣としてお答えする立場にありません。

(以上)