平成30年4月3日(火)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 本年度に新設された大臣官房国際課が,昨日から業務を開始しました。私は前回法務大臣を務めた後,自民党の司法制度調査会長として,法の支配などの普遍的価値を国の基本に掲げて培ってきた日本型司法制度や,法曹人材を国のソフトパワーとしてしっかりと位置付け,法の支配を国際的に浸透させる「司法外交」を国の施策に明確に位置付けるなどの様々な問題提起をしてまいりました。昨年8月3日に再び法務大臣を拝命して以降,この問題提起を今度は行政府の立場で,「司法外交」の基礎となる施策を充実させるべく取組を進めてまいりました。
 国際課は,正に「司法外交」を推進する攻めの取組を行うための司令塔機能を担うものです。同課の新設により,国内外の国際化の進展に伴い,法務省が直面する国際的課題や法務行政の国際化を求める社会のニーズに的確に対応し,司法分野における国内外の施策を総合的・戦略的に推進し,積極的に世界に向けて発信する,まずそのための礎(いしずえ)を築くことができたものと考えています。
 国際課には,法の支配等の普遍的価値の各国への浸透,ひいては持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた積極的な貢献についても,強く期待を寄せているところです。国際課には,国際化の時代や社会の変化に即応し,社会のニーズに積極果敢に応えるべく,これまで以上に積極的な姿勢で,省内はもとより関係省庁や関係団体とも連携し,「司法外交」を力強く推進する主翼の役割を果たしてほしいと思っています。

民事裁判の全面IT化に関する質疑について

【記者】
 政府の有識者検討会が先月30日,民事裁判の全面IT化を求める提言をまとめました。法制審議会への諮問も視野に入れた検討・準備についても言及されていますが,大臣の受け止めをお聞かせください。

【大臣】
  裁判手続等のIT化については,先月30日に内閣官房に設置された「裁判手続等のIT化検討会」において,その検討結果が取りまとめられたものと承知をしています。この取りまとめにおいては,民事裁判手続の基本である民事訴訟一般を念頭におき,裁判記録の全面的な電子化を前提とする「裁判手続等の全面IT化」を目指すとの基本的方向性が示されたところです。
 具体的には,民事訴訟における「3つのe」として,1点目は「e提出」,これは訴状や準備書面についてオンラインでの提出を可能にするもの。2点目として「e法廷」,これはウェブ会議等を通じて裁判手続に参加することを可能とするもの。また3点目として「e事件管理」,これは訴訟記録にオンラインでアクセスできるようにするもの。この「3つのe」の実現を目指す様々な取組ということです。その上で,民事訴訟制度を所管する法務省においては,2019年度中の法制審議会への諮問を視野に入れ,この「3つのe」の実現に必要な法整備に向けた検討・準備を行うことが望まれるなどとされています。
 近年のIT技術の発展は大変めざましいものがあり,民事裁判手続の効率化・迅速化を果たし,また利用者に対してもサービス向上を図るといった観点から,民事裁判手続におけるIT化を推進することは大変重要と考えています。法務省としては,この取りまとめ結果等を踏まえ,法制審議会への諮問についても視野に入れつつ,関係機関等の協力を得て,司法権の独立にも十分配慮しながら,まずは法整備に向けた検討等の取組を速やかに進めてまいりたいと考えています。
 

司法外交に関する質疑について

【記者】
  先ほど大臣から御発言があった司法外交ですが,国際仲裁であったり,東南アジアの国々への支援をされたりしていると思います。今後,具体的に特にどの分野で,どのくらいのスケジュール感で,こういったことを実現したいということがあれば教えてください。

【大臣】
 大臣官房国際課は課長以下20名の体制により,当面の課題として,まず,2020年に開催される京都コングレス(国連犯罪防止刑事司法会議)の準備。開催まで2年ですので,これに力を入れてまいりたいと思っています。
 2点目としては,国際仲裁の活性化に向けた,必要な基盤整備についてもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。この間,国際仲裁のセンター化を推進している東南アジアの国々を訪問し,様々な情報交換をしてきましたが,日本の役割,また国際仲裁全体の国際的な指標等も含め,あらゆる角度からこの問題に取り組んでまいりたいと思っています。
 3点目としては,アジア諸国からの評価が大変高い法制度整備支援を戦略的に,かつ,そのニーズに応じてさらなる推進を図ってまいりたいと思っています。また,何よりも人材が大切であるということで,諸分野において活躍できる人材の養成も含め,国際社会の中での人的連携も大変大きな要素ですので,戦略的な国際機関等への法曹人材の派遣を通じ,国際関係業務に関する総合的,戦略的な企画と立案を行っていくことをまず念頭におき,直ちに本格稼働する予定です。

(以上)